2010年1月19日 商工文教委員会
雇用対策に関する質疑(大要)
・失業者の実態について
【斉藤委員】
新年を迎えて、年末年始は岩手県や市町村を含め特別の相談体制を敷いたと。私も激励に駆け付けたが、一昨年は派遣村が問題になり、今度は公設派遣村と。国や自治体が責任をもって失業者や求職者に対応するというので、この1年間そういう点でいけば顕著な前進があったのではないか。その相談の中身を示していただきたい。
それから今の雇用情勢でまず第一に対応しなければいけないのは、有効求人倍率が去年の2月から0.3台である。12月もおそらく0.3台だろうと言われている。これはおそらく戦後初めてぐらいの深刻な状況である。失業した後再就職できない、失業者が長期に職を確保できないという深刻な状況の中で、失業者の実態を把握して、具体的な要求にこたえるきめ細かな対策が今必要ではないかと思われるが、この状況についてどのように把握されているか。
【雇用対策課長】
年末の生活就労相談の相談内容だが、県においては昨年の12月29日30日と県庁の県民室と奥州市のいわて求職者総合支援センターで行い、その内容については、相談件数は野べ90件あった。内容は、職業相談が32件、生活福祉資金が25件、労働相談が18件、生活保護8件という形で、一人で複数の項目を相談されるという方も多く見られた。そういう点では、ワンストップサービスのメリットというのがあったのではないかと認識している。
失業者の実態について。例えば、マリオスの岩手地域共同就職支援センターと奥州市の求職者総合支援センターの相談状況を見ると、地域共同就職支援センターの場合は、これまで4月から延べ25305件の各種相談がされており、いわゆる生活就労相談が594件。奥州市の求職者総合支援センターの場合は、6月から12月の7ヶ月間で25448件の相談が寄せられ、そのうち生活就労相談については、1063件ということで、こういったことから県南部のほうが生活就労相談の割合が高い。求職者総合支援センターの分析結果を見ると、一人で再来される方が比較的多い傾向にある。例えば、12月の件数が220件あるが、そのうち新規が53件で再来が167件ということで、失業の長期化にともない再来される方が多いということで、長くそういった相談や悩みをお持ちである方が多いのではないかと認識している。
【斉藤委員】
実は昨年末に奥州市と八幡平市で市民アンケートを行った。奥州市では500世帯から回答があり、「現在ご家族に失業中または求職中の方がいらっしゃいますか」という質問に対し、奥州の場合は28.5%であった。これは大変な規模であり、有効求人倍率以上に失業者の数というのは多いのではないか。農村部の八幡平市でみると、11.8%である。農村部でも1割以上。奥州の場合は約3割失業者がいる。まったく生活費をまかなえないというのが奥州の場合55.4%だった。大変深刻な事態であり、これだけ長期に厳しい状況が続いているということは求職をあきらめている方も出ているのではないか。40件50件やっても採用されないとあきらめてしまう。データ以上に実態は大変深刻ではないか。だから県、各地域の出先でもこういう失業者の方が具体的に何を求めているのか、そこをよく把握してきめ細かな対策をとる必要があるのではないか。町の体制ではなくて、困っている実態というのはある程度分かるので、そういう方々に対して一人たりとも路頭に迷わせない、生活を支える、就労の条件を切り開いていくという、地方自治体というのは県民の命と暮らしを守るというのが最大の仕事なので、相談に来たら対応するというのではなくて、自ら実態と要求をつかんで対応することが必要ではないか。
【雇用対策課長】
奥州市の求職者総合支援センターにおいても、こういった状況を踏まえて一人一人の相談をきめ細かく、長期にやっていくという仕組みをやっており、主にキャリアカウンセリングを用いて、専門の就職に向かってのいろんな心構えだとか、いろんな面接のための準備だとかそういった長期に失業されている方というのはいろんな心の部分も含め悩みをお持ちだということで、こちらの方でも最後まで就職できるように一人一人フォローしていこうという体制で現在業務を進めている。
【斉藤委員】
もう一つ実態を紹介すると、水沢のハローワーク前で労働組合や民主団体が求職者にアンケートをとったものだが、57.8%が前は正規職員だったと。派遣切り期間工切りから始まり、今正規の人減らしに変わってきている。そういう点でも深刻さが増しているので前に出た対策をしていただきたい。
生活の支援という点でいけば、最後のセーフティーネットは生活保護である。年末の相談にも8件あったようだが、資料の中で、生活保護開始件数1280件というのがあったが、この数は失業とか減収を理由にした保護開始件数が1280件と受け止めていいのか。
【雇用対策課長】
先ほどの1280件というのは、21年4月から12月までの累計であるが、そのうちいわゆる収入減によるものが351件となっている。
【斉藤委員】
そうであればきちんと明記していただきたい。
今失業者の中で、雇用保険を受給しているのが、岩手労働局の資料で約9300件、一方で岩手県内の失業率は5.3%で38000人となっている。これは小さく見積もった数だと思っているが、9300人しか雇用保険をもらっていないとすれば、まさに収入の手立てがない人が約7割を占めているということになる。こういう点でも大変失業者の実態は深刻である。
・大企業・誘致企業における人員削減について
【斉藤委員】
誘致企業のリストラ・人員削減というのが岩手県の場合にはきわめて重大だったと。特にソニーが12月までに工場閉鎖し、残務整理の20人だけがとどまっている。富士通も10月12月3月と1130名の人員削減・再配置が進められている。県内の主だった誘致企業の人員削減の計画と状況はどうなっているか。
【企業立地推進課総括課長】
昨年の12月末までに誘致企業の中で雇い止めや人員削減等を行ったもので、我々の方で把握している範囲ではあるが、合計で約3100名程度となっている。
【斉藤委員】
何社で3100人か。多いところはどこか。
【企業立地推進課総括課長】
18社で3100人である。富士通の1130人、ソニーの派遣等も含め870人、その他100人を超えるぐらいの人員削減ということもある。
【斉藤委員】
特に富士通は、前回聞いたら700人が退職だと。ソニーは424人が退職だと。富士通はもっと退職者が増えるのではないかと。700人となると400人以上が再配置に応じるということになる。そこまで再配置に応じられる職員はいないと思うが、一番新しいデータを把握しているか。
それから、退職者の動向、退職者に対する企業側の対応はどうなっているか、県はそこにどういう働きかけをしているか。
【企業立地推進課総括課長】
今我々の方で把握しているのは700名程度が退職する見込みであるということで、それ以上の数値は持ち合わせていない。
会社側に対する県の動きだが、富士通の再配置の発表以降さまざまな動きをしてきた。最初のうちは、計画そのものの再編ということも含めて知事・副知事以下度々機会を通じて要請していたが、なかなか難しいという状況になって、直近のところでは、やむを得ず退職せざるを得ない従業員に対して、しっかり会社としてフォローするようにということ、あるいは、できるだけ地元に雇用を残すよう努力すること、将来ぜひ岩手の今の工場で新たな事業を展開してほしいというところに重点を移してさまざまな要請をしている。
今後ともそういった形で引き続き、会社側に対しては、しっかり要請していきたい。
【斉藤委員】
誘致企業の工場閉鎖や再配置という首切り・人減らしは、まったく合理性がなかったと思う。ソニーについては、昨年3月期末決算の内部留保というのが、労働総研というシンクタンクで出ているが、ソニーは3兆5479億円で127億円増やしている。内部留保を増やしながら、株主には配当を増やしながら工場閉鎖して労働者を首切ると。ヨーロッパだったら絶対に許されないやり方である。
富士通は内部留保を減らしたが、6658億円の内部留保をいまだにもっている。こういう点でも1130人の人減らし、700人の退職というのは県内でも最大規模だと。今までアルプス電機やアイワは500人ぐらいだった。それを上回る規模で、今度はソニーもということで、岩手経済を支えてきた誘致企業が本来こういう強引なことをすべきではなかったと思うが、やむなく退職された方、追い込まれた方については、今まで岩手県が求めてきたように最後の一人まで企業に再就職の責任を果たさせるということをやっていただきたい。しかし聞くところによると、富士通は12月末で退職した方々に対するハローワークの説明会、自分の工場も貸さなかった。だから北上と金ヶ崎の2会場で説明会をやった。こんなことは許されない。そういう意味でいくと、こういう大企業の横暴というのを許さないと、雇用を守る、地域経済を守るというのは大企業の社会的責任、これはヨーロッパでは当たり前のことである。そういうことをしっかり岩手県が強く求めていくべきではないか。アイワやアルプス電機のときには曲がりなりにもそれを貫いたと聞いているが、そういう取り組みをきっちりするべきだと思うがいかがか。
【商工労働観光部長】
雇用を守るということについては、企業の社会的責任ということでご指摘の通りだと思っており、我々もそういう観点で何度となく企業のトップの方に知事・副知事・私からも、最後の一人まで確実に就職をお世話していただくようにお願いしている。
【斉藤委員】
今までの岩手県の成果を崩さないように知事、部長先頭にやっていただきたい。
日本経済の最大の問題は、大企業だけが一人勝ちして、企業の内部留保はこの10年間で200兆から400兆円に倍増し、雇用者報酬は280兆円から253兆円に減った。OECDの先進国の中で雇用者報酬が減った国はない。巨額の利益を上げながら労働者の賃金には結びつかなかった。中小企業の下請け単価は絞り込まれた。その結果日本の内需が冷え込み、アメリカ発の経済危機が先進国の中で一番打撃を受けた。そういう点でも、大企業1人儲ければいいというようなことは、国政でも地方政治の場でも許されないということを、新しく政治が変わった中でしっかり確立していくことが必要である。
【斉藤委員】
関東自動車について。関東自動車は景気が良くなったと。新しい2車種の生産、出荷も始まった。しかし関東自動車は新たに250人の採用にあたって6ヶ月の期間工である。また使い捨て労働のやり方は正しくない。一昨年の秋、派遣切り・期間工切りがされた。非正規だったために真っ先に首切られたというのは今までにない事態である。景気が少し良くなったらまた非正規の採用だと。これはいかがなものか。もちろん3年4年期間工で働いている方々もいるので、長く働いている期間工の方々は早く正規にし、やはり正規として採用を増やすというところに岩手県のトップ企業として見本を示す必要がある。関東自動車は現状はどうなっているか。そういう要請はしっかりしているか。
【企業立地推進課総括課長】
1月15日現在の状況だが、今のところ工場全体の社員数は2470名で、正規が1670名。この正規の数字はときどき厳しい時期もあるが一貫して増えている。我々も常々あらゆる機会に正規の拡大を要請しており、そういう形での要請を会社としてもある程度受け入れていただいているものと考えている。今後とも引き続き努めてまいりたい。
【斉藤委員】
トヨタもそうなのだが、ちょっと景気が良くなれば期間工・非正規である。それが今労働者派遣法の抜本改正で問われているのだから、きちんと県としても強くもとめていただきたい。自動車産業はトヨタを見て見習うので、岩手は関東自動車を見て見習う。そういうふうにならないようにしていただきたい。
・職業訓練施設の廃止について
【斉藤委員】
職業訓練施設の廃止というのが12月末に提案をされて、岩手県が関係市と一緒に民主党県連に要請をしたと。民主党県政に要請すれば解決するのかと思うが、職業訓練というのは今の雇用危機を打開する上ではもっとも重要な課題である。ところが国がそれを廃止するというのは逆行現象ではないか。本当に許されない。民主党県連どころか、厚労相に直訴しなければいけないのではないか。どういう理由でこういう廃止が出されているのか。北上の場合は、目標以上に利用が多かったということも聞いている。そういう職業訓練施設・センターの実績も一つは紹介して、これにどう対応するのか。
もう一つは、その職業訓練の中で、訓練生活基金の給付で、これが一番有効性があるが、いわばもう失業保険もなくなった、収入の手立てがなくなったときに単身の場合には10万、世帯があれば13万円、給付されながら訓練ができる。ところが全国で36万人ぐらいの予算規模、これは決して多くはないと思うが、年末で9000件ぐらいにとどまっていたと聞いたが、この岩手県内ではどれだけの利用実績になっているのか。こういう職業訓練こそ条件改善し、抜本的に拡充する必要があるのではないか。
【労働課長】
情報処理技能者養成施設および地域センターの廃止決定を受けた、国への要望について。なぜ廃止することになったのかということだが、独立行政法人を取り巻く環境が厳しさを増しており、その業務について一層のスリム化が必要であるということで、さらなる予算の縮小が厳しく求められる中で、施設の運営についても22年度末をもって廃止することとなったということで、突然の廃止という形になった。
施設の利用状況だが、北上市にあるコンピュータ・アカデミーについては、21年度は12月末現在で96%とうかがっている。それ以外の地域センターについても、20年度は盛岡が75%、二戸が53%、両磐が66%、胆江が48%だったが、21年度はそれぞれ盛岡85%、二戸56%、両磐87%、胆江62%と利用率が上がっている。
訓練生活支援給付だが、岩手労働局によると1月8日現在の生活訓練給付金については、相談件数が1478件、申請件数が268件という状況になっている。
【雇用対策・労働室長】
今回の施設の廃止に対する対応だが、県としては再就職にあたっての職業訓練というのはきわめて重要であるということ、これらの施設、例えば北上のコンピュータ・アカデミーだと北上地域の情報処理関連産業の人材育成にきわめて重要な役割を果たしてきたということ、その他の職業訓練施設についてもその地域の中核的な職業訓練施設、特にも本県においては民間の職業訓練施設が少なく、こういった地域センターが離職者等の対策に向けた訓練にきわめて重要な役割を果たしているということから、県としてはこの存続を非常に重要なものと考えており、まずは民主党県連を通じて国に強く要望している。また、こういった動きが今後いろいろ出てくると思うが、そういった動きを踏まえてさらなる動きもまた考えていきたい。
【斉藤委員】
職業訓練センターについては、これから通常国会でまさに雇用問題が最大のテーマの一つで、そういうときにこういった国の施設を廃止するのは逆行現象で、今の国会審議の中でこそ解決してもらわなくてはならない。ぜひこういうときに知事が先頭に立って、強力な人脈をつくって、全国を引っ張るような役割を果たすべきである。
それから訓練生活給付の申請がたった268件だった。あまりにも少なすぎる。全国で少なくとも36万人が対象といわれているときに、100分の1岩手でやるとしたら3600人である。なぜこれだけ少ないことになっているのか。こういう給付を求めている失業者は多い。何が障害となっているのか、それを改善すべきではないか。
【労働課長】
岩手労働局によると、申請件数が少ない理由について、相談者のうち年収要件が主たる生計者ではないということで対象外となるケースが多いと聞いている。給付金の支給対象となる方は、ハローワーク所長のあっせんを受けて基金訓練、公共職業訓練を受講する方で、雇用保険等受給できない方、そして世帯の主たる生計者であると、そして申請時点で年収見込みが200万円以下かつ世帯全体の年収見込みが300万円以下であるということがある。また世帯全体で保有する金融資産が800万円以下、現在住んでいるところ以外に土地・建物を所有していない方ということが支給対象となっている。
【斉藤委員】
国でさえ、不十分ながら36万人の予算を計上し、岩手はたった268件にとどまっているというのは、条件が厳しすぎるからだと思う。必要な雇用対策が少ない予算も執行されないとしたら、その制度が悪い。その改善を求めていくべきである。例えば、ハローワーク所長のあっせんを受けて基金訓練、公共職業訓練を受講する方と。その他の者は対象となっていない。その他の訓練も含めて対象とするとか。それから共稼ぎでも二人合わせても所得が少ない方は多いわけで、主たる生計者でなくても大変である。夫婦で失業しているケースもあると思うので、使われていない実態を見て、使われて当たり前というふうに改善すべき課題を行政としてしっかりつかんで改善を求めていただきたい。
・新規高卒者の就職問題について
【斉藤委員】
これは特別に重大な問題である。最初に社会に出るときに、仕事がなかった、最初から失業と。これはあってはならないことである。その点で、努力して以前の氷河期よりは上回り、それは皆さんがこの間150人求人を増やしたとかその努力を評価するものである。しかし今の雇用情勢からいくと、なかなかこれから100%就職決めるというのは至難の業だと思うが、一人たりとも新しく社会に出るときに路頭に迷わせないという対策にあらゆる手立てをつくしていただきたい。
奥州市の求職者総合支援センターの金野さんはこんなアドバイスもしている。「県内希望者も県内だけに絞らないで失業しないように県外も含めて就職の可能性を広げてほしい」と。個人の置かれた状況や要求はあると思うが、やはり本当に一人たりとも路頭に迷わせない、就職に結びつけるという取り組みを特段の努力と対策でやっていただきたい。もうあと2ヶ月ということになるが、どういう手立てを考えているか。
【雇用対策課長】
新規高卒者への対応だが、第一に、今年度中はとにかく就職指導を強化し、振興局に配置されている就職支援員あるいはハローワークのジョブサポーター等とも連携しながら、なるべく一人でも多くの方々が就職できるような取り組みをしていきたい。2月にも、ジョブカフェと連携しながら、最終的にまだ決まっていない方への面接対策や就職支援のためのセミナーをやって、その後ハローワークを中心にした就職面接会を開催する予定で、そこで何とか最終的に就職に結び付けたい。もし不幸にしてそれでなかなか決まらなかったという方については、ハローワークやジョブカフェ等への誘導を、教育委員会と連携しながら話し合いを進めているところだが、何とか卒業式前に誘導し、4月以降の卒業後も個別の生徒が就職活動に困らないように支援していきたい。
【斉藤委員】
経済雇用対策で、岩手県も100人臨時職員として採用すると。市町村も厳しい財政状況の中でも独自に雇用を確保するという方向も示されている。岩手県の場合は2月から前倒しという話もあるが、市町村も含めてそういう自治体自ら雇用を増やすという状況はどうなっているか。
【雇用対策課長】
この件については、昨年10月に国から緊急雇用対策が示され、その中で緊急雇用創出事業の前倒し実施というのが強く求められている。これを受けて、9月補正で総額77億円の基金を当初3年間で使おうというものを2年間で使おうということで措置し、あわせて市町村に対しても、担当者会議を設け、事業の前倒し実施と場合によっては市町村による直接雇用をなるべく何とかやってほしいという要請をしている。
県の臨時職員については、現在調整中だが、100人採用予定のところに各部局から現在120名の要望がきている。そのうち23名が前倒し実施の要望が出ており、なんとかその方向で措置できるように調整中である。
市町村の動向については、細かな数値は把握していないが、新聞報道等ではいろんな市町村で取り組みが進められていると認識している。