2010年3月3日 2月定例県議会・本会議
議案に対する質疑(大要)


・授業料等の延滞金の徴収に関する条例について

【斉藤議員】
 日本共産党の斉藤信でございます。議案に対する質疑を行います。
 議案第23号は、地方自治法に基づく延滞金の徴収等に関する条例であります。
この内容は、公立学校授業料等、児童福祉法に定める保護措置費等や母子保健法に定める未熟児養育自己負担金、生活保護費返還金などが延滞した場合、年14.6%の延滞利子をかけようとするものです。対象の多くが低所得者であり生活弱者であります。こうした方々が延滞したからといって、年14.6%のサラ金並みの延滞利子をかけることは、冷たい県政のやり方ではないでしょうか。深刻な経済危機と貧困が広がっている時になぜ実施しようとするのでしょうか。全国的な状況はどうなっているのでしょうか。

【総務部長】
 近年、滞納が多額に上り、さらに増加傾向にあることから、県民負担の公平性確保と、新規滞納債権の発生抑止をその目的として制定しようとするものである。
 さまざまな事情により、納付期限までに納入できない方に対しては、納付期限が到来する前に納付相談等を重点的に行うとともに、督促を行った後においても、その状況に応じた相談に応じることにしており、さらには、延滞金の免除規定を有しているところである。このような十分な配慮を行いながら、条例の制定趣旨に則り運用していく考えである。
 また、本条例と同様の条例を制定している都道府県は、現在29団体である。

・高校授業料未納者、県立病院の滞納者への対応について

【斉藤議員】
 議案第42号は、包括外部監査契約の締結に関し議決を求めるものであります。
 契約の相手方は、今年度と同じ久保直生氏であります。今年度の包括外部監査報告書を見ますと、一般会計と公営企業会計の債権管理につい監査されています。実態と問題点が明らかにされていることは評価しますが、監査意見を見ますと県立高校授業料の未納の生徒に対して出席停止処分の適用を求めるなど乱暴な内容となっています。
 来年度から県立高校の授業料は実質無償化が実施されます。本来高校教育を含め授業料等の教育費を無償化することこそ求められており、国際人権規約第13条2項でも明記されている世界の流れであります。子どもの貧困率が14.2%と諸外国と比べても深刻となっているときに、子ども・生徒への教育の保障こそ優先されるべきものです。今年度の包括外部監査の報告書を知事と教育長はどう受け止めているでしょうか。未収金・滞納の解決も重要な課題ですが、教育を受ける権利、人権の保障こそ守るべきと考えますがいかがでしょうか。また、県立高校、私立高校において授業料等の未納のため、卒業ができなくなったという事態は決してあってはならないことと考えますが、09年度、10年度の状況はどうなっているでしょうか。
 県立病院の未収金についても、滞納者に対して法的措置の検討を求めています。しかし、県立中央病院の滞納者を見ても産婦人科と小児科の滞納者が多く、若い世代の貧困化を思わせます。そもそも医療費3割負担という世界に例にない重い負担こそ解決すべき問題ではないでしょうか。また、なぜ、今年度と同じ方と包括外部監査の契約を結ぼうとするのでしょうか。

【達増知事】
 包括外部監査人の監査結果報告書には、地方自治法第252条の37の規定に基づく「是正を求める監査結果の報告」と第252条38第2項の規定に基づく「組織や運営の一層の合理化に資するため参考とすべき監査人の意見」とがある。
 県立学校授業料については、「監査人の意見」の方であるが、今後教育委員会において未納になっている債権の実情と合わせて生徒個々の家庭事情等を十分に踏まえながら、適切に対応されるものと考えている。
【教育長】
 包括外部監査報告書についてだが、他県においては、条例等に基づき出席停止のほか退学させている事例もあるが、本県においては実際に滞納しているのは、保護者であることから、まず保護者個々の事情を勘案しながら徴収努力を強化して対応していきたいと考えている。
 また、来年度以降は、高校授業料が無償化されることにより、こうした問題は生じないものと認識している。
 なお、県立高校においては、09年度、10年度とも授業料等の未納のために卒業できなかったという状況はない。
【総務部長】
 授業料の未納で卒業できない者がいるかという質問だが、県内私立高校については、平成20年度21年度の両年度においても、そのような事実はない旨の報告を受けている。
 包括外部監査契約の継続についてだが、地方自治法の規定により同一の者と連続して3回まで包括外部監査契約を締結できる。契約の相手方としようとしている公認会計士については、これまで的確に対応していただいていると考えており、引き続き契約を結ぼうとするものである。
【医療局長】
 県立病院の未集金について。医療費の3割負担の問題については、国の保健医療制度の中で議論していただきたいと考えているが、県立病院の滞納者に対する対応の実態としては、未集金発生後、電話や督促状等による請求のほか、基幹病院に訪問回収専門員を配置し、回収等に取り組んでおり、支払いが困難な滞納者に対しては、分割納入等の相談にも応じているところである。
 なお、再三にわたる督促に対して、故意に納入しないいわゆる悪質な滞納者については、法的措置を実施することとしているが、実施にあたっては滞納者の個々の事情も十分考慮した上で進めることとしている。

・介護従事者処遇改善および介護サービス施設等整備臨時特例基金について

【斉藤議員】
 議案第44号は、2009年度岩手県一般会計補正予算(第6号)であります。
 158億円余の大型補正となっています。第一に、介護業務従事者処遇改善等臨時特例基金積立金が10億7850万円余基金に積み増しされます。これまでの基金の活用でどれだけの事業所でどう処遇改善が行われたのでしょうか(何件、率)。期限付きの基金ですが今回の積み増しの理由と今後の見通しはどうなっているでしょうか。
 第二に、介護サービス施設等整備臨時特例基金積立金が26億0916万円余基金に積み増しされます。目的が小規模な施設等の整備を促進するためとなっていますが、小規模な施設に限定されるのでしょうか。なぜ小規模な施設なのでしょうか。これまでの整備実績はどうなっているでしょうか。

【保健福祉部長】
 介護業務従事者処遇改善等臨時特例基金について。当該基金を活用して行う介護業務従事者処遇改善交付金事業については、昨年12月日現在で、県内の対象事業所のうち、1012カ所が申請を行っており、申請率は87%となっている。申請した事業所においては、全体額からの試算では、介護職員1人あたり月額15000円程度の賃金改善効果が見込まれているところであるが、具体的な改善状況については、承知していないのでご了承願いたい。この基金については、6月補正予算に計上し、造成したが、その時点では、国の制度の詳細が判明していなかったので、承知しうる範囲内の確実な情報で積算したところである。その後、国の制度の詳細が示され、今般内示があったことから、今回6月補正予算計上額との差額を積み増ししようとするものである。今回の事業は3年間の限定となっており、県としては、これまでも介護に直接従事する職員のみならず、介護関係職員全体の処遇について恒久的な制度改善を国に要望してきたところである。引き続き要望を行うとともに、当面はこの基金が有効に活用されるよう交付金申請の働きかけを強化し、さらに申請率の向上に努めていく。
 介護サービス施設等整備臨時特例基金について。当該基金を活用して行う介護サービス施設等整備臨時特例事業については、これまでは国から市町村に交付される「地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金」により実施してきた地域密着型サービス拠点等の施設整備の助成に代わるものとして創設したと国から説明を受けている。国が示した通知において、小規模特養ホーム、認知症対応型グループホームおよび小規模多機能型居宅介護事業所などが対象とされているものである。具体的な整備実績については、整備事業が始まった本年度において、8市町村に対し小規模特養ホーム3カ所、認知症対応型グループホーム20カ所など計28カ所を整備することとしている。
 
・子育て支援対策臨時特例基金積立金と待機児童の解消について

【斉藤議員】
 第三に、子育て支援対策臨時特例基金積立金が4億2361万円余積み増しされます。これまでの実績はどうなっているでしょうか。特に緊急に整備が求められている保育所の整備はどうなっているでしょうか。保育所の待機児童の解消を図れるのでしょうか。また、保育所待機児童を把握する場合、認可保育所の定員に対する待機児童数、認可保育所に入れないために無認可保育所に入所している数も把握するべきと考えますが実態はどうなっているでしょうか。

【保健福祉部長】
 当該基金を活用して、今年度は、市町村が行う保育所整備や病児・病後児保育施設の整備に対する助成等を行っているが、特にお尋ねの保育整備については、今年度6市町村で10カ所整備する予定である。
 現在、当該基金や他の交付金を活用し、待機児童が発生している当該4市のうち、3市においては、平成22年度までに待機児童83人を上回る365人の定員増を行う整備計画となっている。
 今回の保育所整備に当たっては、市町村に対し、待機児童数のほか認可外保育施設の利用状況も十分把握の上、整備計画を策定するよう助言、要請をしている。
 今後、保育の実施責任がある市町村が、まずはこれらの保育ニーズをどのように把握しているのか、県としてその実態を調査したいと考えている。

・農業用ダムの状況、堆砂や機能が後退した状況について

【斉藤議員】
 第四に、土地改良施設危機管理設備強化事業費に4億1348万円計上されています。農業用ダム等の改修や崩落の恐れのある貯水池法面の補強を実施するとなっていますが、農業用ダムの状況、堆砂や機能が後退した状況はどうなっているでしょうか。

【農林水産部長】
 県内には、農業用水の水源や農村地域の洪水調節を目的とした農業用ダムが27カ所あり、県が所有するものが19カ所、国が所有するものが8カ所となっている。
 これらのダムの堆砂状況は、法令の定めに基づき定期的に調査しており、現在のところ貯水容量が不足するなどの問題は生じていない。しかしながら、中には完成後50年以上を経過したダムもあり、経年変化や寒冷積雪など厳しい気象条件により、貯水池周辺の法面崩落や管理計測器などの老朽化が進んでいるものも見受けられることから、今回国の補正予算を活用し、老朽化した管理設備の補修等を緊急的に行おうとするものである。
 
・超過勤務の実態とサービス残業の根絶について

【斉藤議員】
 第五に、超過勤務手当の減額はどうなっているでしょうか(知事部局、教育委員会、警察本部、医療局、企業局)。サービス残業はないのでしょうか。
 警察本部の補正では、職員人件費が3億7789万円減額されています。超過勤務時間と超過勤務手当の支給はどうなっているでしょうか。まず、サービス残業を根絶すべきではないでしょうか。
 人事委員会委員長にお聞きします。超過勤務・サービス残業の実態調査と改善の取り組みをどう行っているでしょうか。

【総務部長】
 超過勤務手当の減額について。超過勤務手当の2月補正の状況については、一般会計については各部局においてそれぞれ増減があるが、全体では1億円余の減となっている。また、特別会計である医療局は、4億390万円余の増、企業局は1690万円余の減額となっている。
 超過勤務については、管理監督者が職員間の業務の平準化や業務の効率化を行うなど、所定の勤務時間内で業務遂行がなされるよう努めているところだが、やむを得ず超過勤務を行わせなければならないときには、管理監督者による事前命令とその実施後の確認を適切に行い、その縮減に努めている。
【警察本部長】
 平成21年4月から12月における超過勤務手当の支給実績は、職員一人当たり月平均で16.1時間となっている。
 超過勤務時間の縮減については、毎週金曜日を定時退庁日とする「リフレッシュデー」を平成20年1月から本部および全警察署において実施するなど、職員の処遇改善に努めている。
【人事委員会委員長】
 人事委員会では毎年度、労働基準監督機関として職権を有する全事業場に対して、労働基準法および労働安全衛生法等の遵守状況等について書面調査を行っているところだが、昨年度から平成13年の厚労省通知に基づく自己申告制をとる場合において使用者が講じる3項目の措置の実施状況を調査項目に加えて調査を行ったところであり、今年度においても、職員の超過勤務時間の確認方法や超過勤務縮減の取り組み等に関する項目を新たに追加して調査したところである。
 この調査結果に基づき、平成21年11月9日付で各任命権者に対し、超過勤務の縮減をより一層図るため、超過勤務命令権者による事前命令と事後確認の徹底等について文書により通知したほか、本年1月には超過勤務の多い6カ所の事業場に出向いて職員からの聞き取りを行うなどにより、超過勤務にかかる実態の把握にも努めているところである。
 今後においても、事業場の長や任命権者に対して必要な調査・指導を行っていく。

・津付ダム付け替え国道397号1号トンネル築造工事の低い落札率について
 
【斉藤議員】
 議案第65号は、津付ダム付け替え国道397号1号トンネル築造工事の請負契約案件であります。9億7310万円の予定価格に対して、7億2975万円、落札率74.99%となっています。この落札率では赤字となるのではないでしょうか。下請け企業に対するしわ寄せが行われるのではないでしょうか。低入札調査が行われたと思いますがその結果はどうだったでしょうか。
 津付ダム建設事業は、国のダム事業見直しの検証対象となっています。国土交通大臣からの連絡文書でも工事を進めないように求められているものです。国のダム事業見直しの基準、方針が定まってから、その検証を踏まえて進めるべきではないでしょうか。

【総務部長】
 調査基準価格を下回る低入札であることから、工事費内訳書の分析、施工体制、工程計画、下請けの発注予定、資材の購入予定、過去に施工した類似工事の状況など詳細な調査を行ったが、契約内容に適合した理工が確保されると認められたことから落札決定した。
 なお、契約締結後においても、引き続き工事完成まで追跡調査を行い、適切な施工管理等に努めていきたい。
【県土整備部長】
 「平成22年度政府予算案」では、補助ダムについても、ダム本体工事の契約を行っていないダムなどを検証の対象とするダムとされたところである。
 検証の対象となるダム事業については、基本的に用地買収、生活再建工事、転流工工事、本体工事の各段階に新たに入らず、現段階を継続する必要最小限の予算案とするとしている。
 したがい、提案している議案の工事は、ダム本体工事等の新たな段階に入るものではなく、また来年度の県予算案も生活再建の段階である付替道路工事を継続する内容等で提案しているものである。
 なお、新たな基準が夏ごろに示される予定であり、その段階で大規模事業評価専門委員会に報告し、意見を聴く予定である。


≪再質問≫

・延滞金条例について

【斉藤議員】
 私が指摘したように、この対象は生活弱者、低所得者である。そして延滞した場合には14.6%、5年経ったら借金が倍になる。この条例の中には、「納期限の翌日から1ヶ月を経過するまでは年7.3%」だと。まさに岩手県版サラ金条例ではないか。低所得者やそういう方々こそ県庁の敷居が高いのである。相談に来ないからという形でサラ金並の延滞金を課すというのは本来やるべきではない。延滞金免除の規定はどうなるのか。低所得者の実態、支払えない実態がある場合にはどうするのか。相談が来なかったら直ちに延滞金をかけるのか。

【総務部長】
 延滞金の話があったが、税法もしくは税条例と全く同一の率となっている。また、この条例の制定趣旨は、県民負担の公平性確保と新規滞納債権の発生抑止にあり、議員からお話のあった個別事案については、それぞれ県民の方々の状況、対応に則しながら適切に対応していきたい。

・超過勤務手当について

【斉藤議員】
 警察本部長にお聞きする。支給が現在16.1時間分だと。おそらく半分しか出ていない。そして人事委員会の調査実施結果についての文書の中にも、「特にも県警本部は適正に支給されるような配分となるよう配慮に努めるべき」だと。これは総務部長にも出ている。
 警察は今度の補正で3億7700万円職員人件費を削減する。一方でなぜ超過勤務手当を半分も出さないのか。これだけ削減できる財源があったら、サービス残業を根絶すべきである。不正支出はそれとして、出すものは出さなかったらいけない。犯罪行為である。
 人事委員会委員長にお聞きするが、人事委員会が行った調査の中には、「実態に基づいて超過勤務手当が支給されている」というのが86%だった。残りが14%になるが実態に基づかなかったらいけないのではないか。
 それと今回新たに届け出申告制にかかわる調査も行っていることは評価するが、「結局適正な申告を阻害する措置や要因がある場合における改善の措置」というのは、やっていない。もの言えない職場だったら「こういうことは問題ない」となってしまう。だからこそ3つの措置というのは、きっちり全ての事業場でやらなければいけない。そういう点でいけば、調査結果を踏まえてもっと改善を求めるべき中身があるのではないかと思うがいかがか。

【人事委員会委員長】
 人事委員会での調査については、事前命令、事後確認の流れ、並びに記録の方法、超過勤務縮減に向けた事業場としての取り組み状況のそれぞれについて、関係書類等により調査したほか、庶務担当課長等に対するヒアリングを実施した。その結果、超過勤務命令者が職員の自己申告を阻害する等の不適切な事例は見受けられなかった。またヒアリングを行ったところ、管理監督者が率先して帰るように努め、部下職員が帰りやすい環境作りに努めているとか、朝礼等において定時退庁の意識付けを図っている等の取り組みが行われていることを確認している。
【警察本部長】
 職員人件費の関係だが、減額補正となった主な理由としては、県人事委員会の勧告に基づく平成21年12月の給与条例などの改正により、期末勤勉手当の支給割合が低くなったことによるものである。
 職員人件費の全体では、減額となっているが、超過勤務手当予算については、警察本部においても他の部局と同様に、年齢構成の変動だとか年度途中の欠員の発生などにより、そういったことで減額要因があった一方で、昨年8月の総選挙違反取締活動による増額要因が生じたことから、2月補正予算においてそれを補うための措置をお願いしているところである。その結果として、超過勤務手当予算については927万円余の増額補正となっている。


≪再再質問≫

・延滞金条例について

【斉藤議員】
 経済的に困難な低所得者生活弱者にも延滞金をつけるのか。延滞金の免除の中身について示していただきたい。

【総務部長】
 条例の規定の中で、延滞金については、災害その他延滞金を納付することができないというやむを得ない事情があると認める場合については、その全部または一部について免除することができるという規定を盛り込んでいる。
 したがい、個々の滞納者の実情に即して適切に対応していきたい。

・県警の超過勤務手当について

【斉藤議員】
 半分しか超過勤務手当を出さないというのはなぜか。

【警察本部長】
 今年度の数字が手元にあるが、4月から12月までにおける超過勤務手当の支給実績は、職員一人当たり月平均で16.1時間という実績となっている。