2010年3月9日 予算特別委員会
知事に対する総括質疑大要


1.チリ地震津波の漁業被害対策について
 
【斉藤委員】
 3月6日、陸前高田市、大船渡市の各漁協・漁民、自治体から被害状況を聞いてきた。8日現在、17億1675万円余の被害額となっているが、極めて深刻である。
 すでに陸前高田市は、被害施設等の撤去資材等処分費の全額補助と養殖施設の復旧資材等への半額補助を行うことを示し、漁民を励ましている。大船渡市や山田町も行うとなっている。県としてもこうした市町村への助成を行うべきではないか。

【達増知事】
 被害を受けた養殖施設の復旧・復興、また破損した資材などの処理への支援については、必要な経費を今定例会最終日に平成22年度当初予算の補正予算として提案させていただきたいと考えている。このため、引き続き詳細な被害把握に努め、市町村や関係団体と連携しながら早期の復旧・復興に取り組んでいく。

【斉藤委員】
 具体的に支援策は始まっているので、早期にやっていただきたい。
 平成15年の十勝沖地震津波の際には、県が3割助成、市町村が1割助成の県単養殖施設整備事業を実施したが、被害の状況から今回は県5割補助の制度を緊急に実施するべきではないか。

【達増知事】
 過去の津波対策や他の災害時における支援事例などを総合的に勘案して検討していきたい。

【斉藤委員】
 強い水産業づくり交付金(国5割補助、陸前高田市は1割かさ上げ補助)の活用で養殖施設等の整備を進めるべきではないか。

【達増知事】
 復旧・復興に向けては、新たな養殖施設の整備や種苗の確保のみならず、水産物の販売支援や廃棄する施設の処理など広範な課題があるので、どのようなものに対して支援が必要か、また、国の交付金や県の単独補助金などどのような支援方法が適切か、あるいは緊急を要するものはどれかなどについて、現在早急に現状の把握と対応策の検討を行っている。被災した漁業者や地元漁協の要望をよく聞き、市町村と連携しながらきめ細かく対応していく。

【斉藤委員】
 被害を受けた漁民の生活支援策はどう検討されているか。無利子の生活資金貸付などを強く要望されたがいかがか。

【達増知事】
 被害を受けた漁業者が、漁業を継続するための当面の運転資金や養殖施設の再整備のための低利の制度資金として、農林漁業セーフティーネット資金などがあり、それらの活用を促進していく。
 なお、市町村社会福祉協議会が窓口となり、臨時的に必要とする生活費などの貸付を行う生活福祉資金制度については、昨年10月に制度改正が行われ、連帯保証人を立てる場合については無利子での利用が可能となっている。
 災害により被害を受けた農林漁業者の経営再建を支援するために、まずは被害状況を詳細に把握し、被災者の要望等をよく聞き、既存の制度資金での対応が可能か十分検討していく。

【斉藤委員】
 被害の実態把握は鉄則である。私も土曜日に行ってきた。知事は行ってきたか。知事は市長選挙の応援には行ったが災害現場には行っていないではないか。不偏不党どころか優先順位が違うのではないか。

【達増知事】
 土日は、この予算特別委員会総括質疑の答弁検討、また答弁の準備に充てており、その中で平成22年度の補正予算において、漁業者被害支援を決定するといった県庁内の意思決定等も行っていたところである。

【斉藤委員】
 ぜひ災害というときには、真っ先に現場に駆けつけると。その実態を把握して機敏に支援対策をとるということが被災者を励ます最大の課題である。

2.雇用対策について

【斉藤委員】
 一般質問への答弁は答弁漏れやごまかしなどひどかった。
 経済危機以降の事業主都合の離職者の累計は、失業者数と雇用保険受給者はどうなっているか。
 失業の長期化に対応して雇用とともに生活支援を行うワンストップサービスを定期的に実施すべきではないか。

【達増知事】
 岩手労働局によると、本年1月の事業主都合による離職者数は2945人、一昨年10月以降の累計では45014人となっており、同月の雇用保険の受給者数は8841人となっている。
 また、総務省の推計によると、昨年7月から9月までの本県の失業者数は、約38000人とされている。
 なお、ワンストップサービスの定期的な実施については、現在福祉分野と労働分野のサービス窓口の連携の強化を図るため、県全体および地域ごとの生活福祉就労支援協議会を設置する準備を進めている。今後この協議会を中心に、関係機関が連携しながら、地域の実情に合わせた相談支援体制の整備を推進し、失業にともない多くの悩みを抱える方々にきめ細かく対応することとしている。そのような中で、ワンストップサービスについても、実施方法やサービスの内容など、地域の失業者の方々の置かれた状況に応じた形で実施できるよう、県として取り組んでいく。

【斉藤委員】
 失業が長期化し、仕事がない、雇用保険も切れているのが実態なので、ワンストップサービスというのは、それぞれの機関・団体がその気になったらすぐできるので、ぜひ県が音頭をとってやっていただきたい。
 ソニーの工場閉鎖、富士通の再配置による派遣切り、人員削減、退職等の状況はどうなっているか。退職者に対する企業としての再就職支援はどうなっているか。

【達増知事】
 ソニー千厩テックについて、全体で870人の従業員のうち、正社員590人については、定年等による20人の退職等のほか、12月末までに424人が退職、3月末までに18人が退職見込み、残りの128人がグループ内での異動となり、280人の派遣社員についてはすでに全員契約を終了したと聞いている。
 富士通ML岩手工場については、正社員約1130人の再配置対象者のうち、1月末時点での退職者数は約500名、今後約200名が退職予定と聞いている。
 ソニーおよび富士通側に対して、退職者に対する再就職支援を強力に行うよう要請してきており、万全を尽くす旨の回答をいただいている。現在これらの企業においては、就職支援会社を通じて、一人一人の就職支援を行っていると聞いている。

【斉藤委員】
 岩手県の成果として、アルプス電気やアイワの場合に、最後の一人まで企業に再就職の責任を持たせた。だから富士通やソニーは、勝手に工場閉鎖や首切りをやらせるだけではいけない。ソニーは3つの就職支援会社でやっている。富士通は1つだが。しかしハローワークと全然連携していない。やる気があるのかと言われている。本当に状況をつかんでいるか。

【達増知事】
 ソニーと富士通に対しては、退職者に対する再就職支援を強力に行うよう要請している。万全を尽くす旨の回答はいただいているが、現在これらの企業においては就職支援会社を通じて、一人一人の就職支援を行っていると聞いているところである。

【斉藤委員】
 富士通とソニーは県内にどれだけの雇用を確保する見通しか。

【達増知事】
 ソニーおよび富士通側においては、現在就職支援会社を通じて、一人一人の就職支援を行っていると聞いている。

【斉藤委員】
 富士通はケアテックで50人とか、情報関係で100人などと言っているが、把握しているか。

【達増知事】
 ソニーおよび富士通側においては、現在就職支援会社を通じて、一人一人の就職支援を行っていると聞いている。

【斉藤委員】
 こういうのをしっかりリアリズムでしっかりやってほしい。私が今言っているのは新聞報道されている話である。そこをしっかりつかんで、企業に対して、首を切ったままではなく、県内にどれだけの再就職を確保するのか。ぜひ徹底してやっていただきたい。
 誘致企業の巨額の内部留保を、雇用を守る、非正規を正社員化する、中小企業の下請け単価切り下げを回復させる―こういうものに使うべきだと思うが、富士通やソニーや関東自動車の内部留保を把握しているか。

【達増知事】
 企業の内部中留保については、それぞれの企業の経営判断により決定されるべきものと考えている。

【斉藤委員】
 鳩山首相でさえ、「巨額の内部留保の活用を検討する」と言っている。ソニーは、リーマンショックの後内部留保を増やした。3兆5479億円の内部留保を持っている。富士通側は6658億円、関東自動車は1017億円持っている。関東自動車もたった7億円しか減らなかった。300人の労働者を雇用するためには、約10億円あればできる。こういう大企業がボロ儲けして、株主のためにはそれを使うが雇用を守るためには使わないというやり方にメスを入れなかったら大企業の利益は岩手県内に残らない。労働者、中小企業にまわらないのではないか。

【達増知事】
 企業の内部留保の活用については、それぞれの企業の経営判断により決定すべきものと考えているが、県からは、今後とも雇用の維持、確保については、あらゆる機会を通じて要請していく。

【斉藤委員】
 自民党と同じというか、まったく違いがないと指摘したい。
 職業訓練センター・北上コンピューターアカデミーの廃止問題で、知事は直接長妻厚生労働大臣に直訴すべきではないか。

【達増知事】
 職業訓練等に関する国と地方の役割分担のあり方については、私も全国知事会の場、あるいは総務省顧問としての立場、さまざまな形で現内閣側ともやりとりを行っているところだが、政府としても、国が雇用の確保のための教育訓練については、重要と考えているところであるので、県としても国・県・市町村が今までも役割分担のもとで取り組んできたわけだが、今後さらに効果的な役割分担・連携・協力を実現できるよう国や市町村と進めていきたい。

【斉藤委員】
 役割分担という話ではない。国が廃止をするということを撤回させると。いわば雇用対策の拡充が必要なのである。私は国がこれから手を引くということ自身が間違いではないかと思うがいかがか。

【達増知事】
 拳を振り上げて強談判していくことが一番良いという考え方もあるかもしれないが、この労働政策に関しては、国も県も市町村も方向は同じ方を向いていると思っているので、良い結果が得られるような話の持っていき方を工夫していきたい。

【斉藤委員】
 方向が違うから皆困っている。こういう問題こそ県民は切実に感じている。96000人が6施設で活用している。これだけの施設は国が責任をもって拡充するという方向こそ必要である。

3.中小企業対策について

【斉藤委員】
 県内中小企業の事業者数と比率、従業員数と比率はどうなっているか。
 来年度中小企業対策予算はどうなっているか。融資を除くとどれだけか。

【副知事】
 平成18年の事業所・企業統計調査によると、中小企業の事業者数は、46501社で全体に占める割合は99.8%である。従業員数は28万6944人で全体に占める割合は89.0%となっている。
 来年度の中小企業対策予算は、698億5000万円余であり、内容は、中小企業経営安定資金貸付金が423億2000万円余、商工観光振興資金貸付金が114億3000万円余などである。融資を除く予算額は39億円余となっている。

【斉藤委員】
 中小企業が岩手経済、雇用に果たす役割は決定的である。
 698億円の予算というのは増えていると思うが、ほとんどが融資である。それを除くとたった39億円である。ここの抜本的な拡充が中小企業の果たしている役割から見ると必要だと思うがいかがか。

【副知事】
 融資以外の主な予算の内容は、商工会や商工会議所等に補助を行う商工業小規模事業経営支援事業費補助が15億9000万円余、岩手デジタルエンジニア育成センターの体制を強化する三次元設計開発人材育成事業費が7000万円余などとなっており、こうした新たな分野にも支援をしていく。

【斉藤委員】
 全然かみ合わなかった。事業者数の99.8%、従業員数の89%を占める中小企業対策が、融資を除けばたった39億円というところが根本的に解決されなければいけないと指摘した。
 中小企業対策を抜本的に強化し、中小企業振興条例の制定を検討すべきではないかと思うがいかがか。

【達増知事】
 これまで本県ではものづくり産業、食産業、観光産業など個別の分野ごとの課題に応じて指針や計画を策定するなど、それぞれの方向性を定めた上で、中小企業に対する個別の施策をきめ細かに実行してきた。こうした取組は、関連する企業や商工団体からも一定の評価をいただいており、今後においても中小企業の多様なニーズに対応した具体的な施策の展開に際しては、必ずしも条例制定という形にはとらわれずに岩手県民計画に盛り込んだ各分野の政策項目別にしっかり取り組んでいきたい。

【斉藤委員】
 下請け単価の切り下げ、仕事の減少など深刻な事態に今中小企業はなっているが、現状と要求をどう把握しているか。

【副知事】
 中小企業の現状については、商工会議所や商工会における相談状況のほか、昨年度岩手産業振興センターに設置した「下請け駆け込み寺」等における相談業務を通じ、把握しているが、下請け駆け込み寺に寄せられた相談件数は昨年度82件、今年度はこれまで113件となっており、現時点で昨年度の件数を上回っている。
 また、中小企業の取引支援として、北東北3県合同商談会や北上合同商談会等を開催しているが、今年度の発注側企業の参加者数が前年度に比べ約2割減少している。こうしたことから、中小企業の取引環境はきわめて厳しい状況におかれていると認識している。
 中小企業の要求については、下請け駆け込み寺に寄せられた相談の8割は取引中止や取引条件の変更に伴う代金回収の遅れに関するものとなっており、これらの相談の大半については相談員や弁護士により対応しているほか、解決が困難な相談については全国中小企業取引振興協会の調停などにより解決を図っている。

【斉藤委員】
 下請け駆け込み寺の取り組みは大変大事だと思って、実情も聞いてきた。もうすでに113件の相談があるが氷山の一角である。いわばどうしようもなくなってそこに駆け込むと。下請け単価切り下げされた業者は、仕事があるうちは何とかそれで頑張っているというのが実態である。
 中小企業で税金を払っている企業はどのぐらいあるか。

【総務部長】
 県税に占める中小企業の法人二税の税収について、平成20年度の法人県民税については、全体の税収59億円余のうち中小企業の占める割合が19億円余、法人事業税については277億円余のうち85億円余となっている。

【斉藤委員】
 岩手の経済、雇用を支えている中小企業の役割にふさわしい抜本的な予算、対策を強く求めたい。

4.花泉診療センターの民間移管問題について

【斉藤委員】
 常勤医師等がまだ決まらない、報告されない事態をどう受け止めているか。有床診療所開始の期日はどう報告されているか。

【達増知事】
 これまでのところ、法人から医師の体制については、医療局に対して最終的な報告をいただいていないと聞いている。法人においては現在も引き続き医師確保に向けて努力されているものと考えている。
 有床診療所の開始期日については、最終的な報告の中で示さるものと考えており、許認可等の一連のスケジュールを確認の上決定されるものと考えている。

【斉藤委員】
 当初有床診療所の開始日はどう報告されていたか。

【副知事】
 最終的な報告の中で示されるものと承知している。

【斉藤委員】
 最初の申請書の報告の中で書いているではないか。

【副知事】
 当初の段階では1月下旬という報告だった。

【斉藤委員】
 1月下旬開所予定だったと。それができなかった。そのときはどういう報告があったか。

【副知事】
 法人からは、医師確保等最終的な診療体制が決まった上で、開始期日について報告すると聞いている。

【斉藤委員】
 今まで常勤医師2名、非常勤医師3名は大丈夫だと。それが大前提に申請された。全部違っているのではないか。ウソではないのか。

【達増知事】
 法人においては、現在事業開始に向けて最終的な医師の体制を確定する努力をしており、有床診療所の開設に必要な許認可等の手続きについても進められていると聞いている。現時点では、事業者の最終決定には至っていないが、医師確保等に努力しているところであり、有床診療所という地域の意向が実現されるよう期待している。

【斉藤委員】
 8月25日に出された申請書の中で一番肝心だったのは医師確保だったのである。
 応募に関する留意事項で、「提出する書類に虚偽の記載を行った場合、審査の公平性に影響を与える行為があったとき、本募集要項に違反すると認められるとき、応募者による業務履行が困難であると判断される事実が判明したときには、申し込みが失効または無効になる」と。この対象にならないか。

【副知事】
 これまで、診療所の開設や社会福祉法人の設立の場合には、許認可を行ってきているわけだが、事業開始に向けて適切な指導がなされていると考えており、今後事業開始に向けてさらに適切に指導していきたい。

【斉藤委員】
 申請書に間違いがあった、虚偽があったということにならないか。2月13日付で常勤医師の募集までやっているのである。医師確保の見通しはウソだったということではないか。

【達増知事】
 県としては、法人において今医師確保等に努力しているということであるので、有床診療所の運営という地域の意向が実現されるよう期待している。

【斉藤委員】
 1月開所予定が変わってしまっている。それに対し報告もない。医師が大丈夫だと年齢、履歴書まで出した。みんなウソだったと。違うか。

【副知事】
 繰り返しになるが、現在法人の方で医師確保等に努力していただいているので、事業開始に向けてしっかり取り組んでいただきたい。県としてもそれを指導していきたい。

【斉藤委員】
 花泉診療センターの廃止が決まっている。10年できなかったらどうするのか。

【達増知事】
 花泉診療センターの診療の継続という観点から答弁すると、事業開始期日は許認可等の一連のスケジュールの中で示されるものと考えており、その間は県営の診療所として継続していくこととしている。

【斉藤委員】
 今のままだったら無理してスタートしてももたない。当然10年などもたない。今の患者を紹介すらできない。こういう事態を知事はどう受け止めているか。

【達増知事】
 事業開始期日までは県営の診療所として継続していき、花泉における地域医療の機能を確保していくよう県としても努めていきたい。

【斉藤委員】
 医療局の人事はいつまでに決めるのか。

【達増知事】
 別途医療局長にお尋ねいただきたい。

【斉藤委員】
 本当に深刻な事態になったということである。いつ決断するのか。

【達増知事】
 事業開始期日は許認可等の一連のスケジュールの中で示されるものであるので、その間は県営の診療所として継続ということである。