2010年3月11日 予算特別委員会
警察本部に対する質疑大要


・不正支出問題―私的流用の問題について

【斉藤委員】
 127点、327万円の不正な私的流用が明らかになったが、なぜ36万円の詐欺容疑なのか。327万円横領で、これは追送検するべきではなかったのか。

【警務部長】
 今回の不適切な会計事務処理問題において、調査の過程で私的流用が明らかとなり、当該職員もそのことを認め、私的流用物品全額を返還している。また、捜査を行い、平成21年10月15日に盛岡地方検察庁に詐欺罪で事件送致している。
 なぜ36万円か、追送致の有無については、法と証拠に基づき捜査を行い、立件できるものは立件したということである。

【斉藤委員】
 127点、327万円の不正な私的流用は、逮捕された本人が認めている。なぜこれが立件できないのか。詐欺罪というのは、私的流用した物品を問わない。横領だったら問われるが、あなた方は巧妙にこの事件が明らかにならないように、ごまかしの詐欺罪でやったのではないか。しかも36万円で。改めて聞くが、127点、327万円の私的流用は逮捕された本人が認めていることですね。

【警務部長】
 法と証拠に基づき捜査を行い、立件できるものを立件したものである。なお、検察庁において、最終的な処分がなされていないことから、処分に影響を与えるようなことはコメントを差し控えさせていただきたい。

【斉藤委員】
 11月4日に逮捕された職員は処分保留で釈放された。記事によると、「県警によると、この元事務職員は容疑を認め、私的流用をした物品について全額弁済する手続きを進めている」と。全額である。私的流用したものは全て認めているということではないか。

【警務部長】
 今回の調査の過程で私的流用が明らかとなり、当該職員はそのことを認め、現在すでに全額を返還し歳入として県のほうに入っている。検察庁の処分保留についてだが、検察庁の処分については、警察においてコメントできる立場にはない。

【斉藤委員】
 処分保留について聞いていない。「全額弁済した」と言った。だから327万円の私的流用は全て認めたということである。だから弁済した。それなのになぜわずか36万円だけが詐欺容疑なのか。認めていたら、327万円の横領で追送検すべきである。そうすれば処分保留にはならない。この問題は徹底的に明らかにされるべきである。どういう方法で、どういう形で裏金が作られ、私的流用がされたのか。2億1500万円におよぶ不正支出だった。
 あなた方は、この1人の事務職員だけに全て罪をなすりつけてそれでごまかそうとした。全額認めて弁済しているのなら、なぜ追送検の対象にならないのか。

【警務部長】
 法と証拠に基づき捜査を行い、警察としては立件できるものを立件している。検察庁において最終的な処分が行われていないので、処分に影響を与えるようなことはコメントを差し控えさせていただく。

【斉藤委員】
 最終報告書の中で、127点、327万円余の物品が明らかになっている。ソニー、松下のテレビが4台、DVDレコーダーが4台以上、これは幹部職員に配られたのではないか。あなた方はこれを確認したと思う。写真を撮っていると思う。裁判になったらこれが出るのである。実際にどこにあったのか。こうやって初めて幹部職員のところにいっていなかったと証明できる。公判にならなかったら何も明らかにならない。改めて聞くが、1台は78万5400円のテレビである。4台も自分で使っているわけがないのだから。どこで確認したのか。

【警務部長】
 テレビは5台だが、テレビ等の全ての私的流用した物品については、元職員の自宅や親族宅で見つかっており、他の警察職員に配られた事実はない。

【斉藤委員】
 今のことはどうやって証明するのか。あなた方が勝手に確認して、そうだと言ってしまえばそれまでである。新しい県警本部長が来るたびに、昔は公安課長が、そしてその当時は交通課が新しい製品を買って置いていた。そういう仕組みでやっていたのである。これはきわめて構造的な問題である。
 まだ処分保留なのだが、釈放された11月4日に懲戒免職処分したのはなぜか。起訴されないかもしれないのである。罪が認められない可能性もある。ところがあなた方はきっぱり懲戒処分にした。検察の判断が下されないうちに懲戒処分したのはなぜか。

【参事官兼首席監察官】
 私的流用の疑いのあることが発覚した後、県警察では、調査や捜査を行った結果、被疑者を逮捕するに至ったものであり、所要の調査の結果、職員の信用失墜行為が明らかとなったことから、当該職員の処分を行った。

【斉藤委員】
 あなた方は127点、327万円私的流用を確認したが、たった36万円のごまかしの詐欺罪でしか訴えなかった。詐欺罪が不起訴になったらどうするのか。327万円の私的流用を本人も確認しているというのなら、きちんとこれを訴えなければいけない。なぜ36万円にとどまったのか。少額だから起訴猶予や不起訴になる可能性がある。327万円だったらそうはならない。あなた方が盛岡地検と組んでこの問題を逮捕・送検で終わらせるというシナリオしか見えないがいかがか。

【警務部長】
 法と証拠に基づき捜査を行い、立件できるものを立件した。現在検察庁において最終的な処分がなされていないことから、処分に影響を与えるようなことはコメントを差し控えさせていただく。

【斉藤委員】
 全額327万円返した、認めた。なぜ法と証拠に基づいてこれが訴えられないのか。あなた方は証拠物品を全て写真で撮っているのに。

【警務部長】
 検察庁においてまだ最終的な処分がなされていないことから、処分に影響を与えるようなことはコメントを差し控えさせていただく。

【斉藤委員】
 この問題は最終報告では終わらない。そして今回の詐欺容疑というのはごまかしである。この不正支出問題を覆い隠すごまかしである。
 改めていくつか指摘したい。例えば、これは新たにあなた方が調査をしたものだが、釜石署の「エアコンデンサー取り換え、マフラー溶接修理」となっているが、実際にやったのは「板金、ラジエーターコアサポート板金、部品フロントバンパー、ヘンダー板金塗装一式、ヘッドライト、オイル」。どういうことかというと、事故を起こしたということである。これは事故隠しではないか。金額が8万440円とぴったり一致している。
 もう1つは、水沢警察署が、平成20年9月5日に11550円で印鑑をつくっている。ゴム印ではなく印鑑である。これは警察署長の私印ではないか。預けで買ったのではないか。

【警務部長】
 突然の質問であるので同じ案件かどうか分からないが、平成15年12月13日に差し替えによる車両の修理が行われているが、これは本件について調査した結果、釜石署の鵜住駐在所のミニパトが管内を警ら中に、箱崎漁港において電柱に衝突した単独物損事故であることを確認している。この事故については、署長に速報の上、正規の手続きにより事故処理をした。なお、差し替えにより修理した理由については、当該業者から請求書が2〜3ヶ月遅れてきたことから、円滑に事務処理を行うため安易な方法をとってしまった。
 印鑑についてだが、公務で使用する印鑑については公費で購入可能であり、過去において誤りはないものと認識しているが、今回の不適切な事務処理の調査結果を踏まえ、今後はより厳格に対応する必要があると考えており、平成21年11月18日付で本部長通達を発出し、公務に使用する印鑑についても今後は自己負担とするようその徹底を期している。

【斉藤委員】
 我々の資料は、あなた方が出したものしかないので、これ以上は指摘できないが、よく見ると不思議な金の使い方が多々ある。預け、差し替え、一括払いというのは裏金である。このように処理すると表に出ない。

・不正経理問題―裏金工作を苦にした会計係長の失踪について

【斉藤委員】
 こうした裏金工作を苦にして、「沿岸の警察署の会計係長が2月15日に、自殺をほのめかす置手紙を残し失踪した」という情報が寄せられたが本当か。

【参事官兼首席監察官】
 お尋ねの警察署の職員が、所在不明となっていることから、捜索を行っていることは事実である。いまだ本人の発見に至っていないことから、所在不明の背景事情についてはコメントすることは差し控えさせていただきたい。
 また、本人の職場におけるこれまでの勤務態度は良好であり、委員ご指摘の裏金の存在その他の事案は確認されていない。

【斉藤委員】
 置手紙を残したとなっているが、その手紙の中身を確認しているか。私に寄せられた情報では、「この職員は、本部会計課施設企画係長当時から、上司のもとで裏金工作の犠牲を強いられた。平成19年沿岸の警察署に異動し、署長・副署長のもとでさらに平成20年にも3年連続の裏金工作を強いられた。それを苦にして失踪した」という情報提供だった。きわめて深刻な事件であり、手紙の中身も含めて徹底した調査が必要だと思うがいかがか。

【参事官兼首席監察官】
 いまだ本人の発見に至っていないことから、背景事情についてはコメントすることは差し控えさせていただきたい。
 委員ご指摘の手紙等については、関知していない。

【斉藤委員】
 都合の悪いのは見ていないということになると思う。失踪したのだから、その経過を真剣に調査するのは当たり前ではないか。あまりにも冷淡である。
 私に寄せられた情報はきわめて深刻なので、全力を挙げて安全確保に取り組んでいただきたい。そして真相解明もしていただきたい。

・捜査報償費について

【斉藤委員】
 今年度の捜査報償費の見込みはどうなっているか。
 捜査報償費の内容、捜査協力者への金銭・物品の提供は何件でいくらになっているか。

【会計課長】
 捜査報償費の見込みだが、捜査報償費の執行については、事件の発生状況等により変動するものである。平成21年度においては、当初予算は2417万4千円だったが4月以降の執行状況および今後予想される事案等を総合的に勘案し、2月補正予算で212万4千円を減額補正し今年度見込みは2205万円と見込んでいる。
 捜査報償費の内容についてだが、捜査協力者・情報提供者に対する謝礼のほか、捜査協力者・情報提供者等の接触に際して必要となる交通費などや、聞き込み・張り込み・尾行等に際して必要となる交通費・通信費等さまざまな用途があり、事件によりその内容はまちまちである。
 捜査費の具体的な執行状況だが、個別に事柄ごとに集計はしていない。また集計したとしても、これらを明らかにすることは捜査手法等が明らかになり、今後の捜査活動に支障を及ぼす恐れがあることから、お答えは差し控えさせていただきたい。

【斉藤委員】
 捜査報償費の問題は一貫して取り上げているが、裏金の発端なのである。捜査報償費というのは、出納から県警に渡される、各警察署に渡される、その途端に裏金になってしまう。そしてまともに使われないものがある。この問題が騒がれたときに、半分近くに減って、1380万円に平成16年は減った。ところがほとぼりが冷めてくるとだんだん平成20年は2024万円、21年は2205万円と増えてきている。
 この問題であなた方が潔白だと言うのなら、監査委員の監査に対して捜査協力者が本当にもらっているかどうか確認させれば証明できる。それで北海道も愛媛も高知も発覚している。もらった人を調べないから、この問題がずっと闇のまま来ている。そういう裏金に支配されているから不正支出の問題でも感覚が麻痺したのではないかと思う。受けとった人も含めてなぜ監査させないのか。

【警務部長】
 捜査協力者の中には、生命・身体に危険がおよぶリスクを負いながら警察に情報提供をしている者もおり、そのような者に関する情報は慎重に管理し、警察内部でも直接折衝するのは特定の捜査員に限るなど、きわめて限定した取り扱いを行っている。また、捜査協力者に事情聴取を行うことが知られることとなっただけでも、自分の存在が公になるのではないかといった疑念や不安を抱かせ、これまでの協力関係が損なわれる、あるいは今後情報提供することについて畏縮する恐れがあるものと認識している。このため、支払い事実の確認は、証拠書類や捜査員からの事情聴取により行っていくべきものと考えており、捜査協力者に対する監査委員の方による事情聴取については実施すべきものではないと考えている。

【斉藤委員】
 北海道では内部告発があり明らかになった。しかし何の不都合も起きていない。それよりも、警察が隠しているから、やはり隠しているのではないかという疑惑のほうが大きな問題である。監査委員は守秘義務をもっている。監査すべき監査委員になぜそれを確認させないのか。やはり不都合があるからではないかと疑わざるを得ない。

・警察本部の超過勤務手当の支給について

【斉藤委員】
 今年度、一人当たり平均339時間も超過勤務をしている。月平均28.3時間である。ところが超過勤務手当の支給は16.1時間である。給与・人件費が大幅に削減されている中で、末端の警察官は地を這う活動をしていると思う。賃金は下げる、超過勤務をしても半分しか手当を出さないというのでは締まりがつかない。これは直ちに是正すべきではないか。

【警務部長】
 職員の勤務環境には十分配慮していかなければならないと考えている。第一線の警察業務においては、突発的に発生する事件や事故に直ちに対処し、早期解決を図らなければならず、超過勤務が必要となる場合もある。そうした中において、職員の勤務環境を改善するため、リフレッシュデーを平成20年1月から実施しており、また警察署長会議等の幹部の会議において、繰り返し職員の超過勤務手当をしっかり行うよう指示するなど超過勤務の縮減に取り組んでいる。
 また、本会議で本部長が答弁したが、所要額が不足する場合には補正予算として超過勤務手当を要求しているところである。今後とも超過勤務の縮減に向けた取り組みを行うなど職員の処遇改善に努めていきたい。

【斉藤委員】
 あなた方は2月補正で十分な額を要求しなかった。月16.1時間しか支給していない。もう2月補正は終わっている。こういう事態がずっと続いている。だから人事委員会は警察本部長宛に「是正せよ」と言っている。総務部長にも「総務部として予算措置しなさい」と警察については言っている。なぜあなた方は要求しないのか。要求できない理由があるのか。予算の枠があってそれ以上支給できないのか。働いた分の6割も出ていない。これはサービス残業、社会的犯罪行為である。出せない理由、打開する決意を示していただきたい。

【本部長】
 平成21年度における超過勤務手当については、昨年8月の衆議院議員総選挙違反取締活動による増額要因が生じたことから、2月補正においてそれを補うための所要の措置を講じたところである。