2010年3月15日 予算特別委員会
保健福祉部に対する質疑大要
・新型インフルエンザ対策について
【斉藤委員】
ワクチン接種の状況は、18万5665人、この間の受診が2万4766人と。全国では推計で2063万人が罹患したと。岩手県の罹患率を推計すればどうなるか。死者は1名だったが、重症者数はどうだったのか。
弱毒性ということで、大きなことにはならなかったと思うが、今後強毒性の鳥インフルエンザの可能性も強いわけで、この間の医療体制、保健所の対応など今後に生かすべき課題と教訓はどうか。
【保健衛生課総括課長】
本県の推計患者数だが、国立感染研の調査では都道府県ごとには算定していないため、本県での推計患者数の把握は困難である。医療関係者の中には、「これまでの本県の患者の発生動向は、おおむね全国と同様の推移を示しているので、全国の累積推計患者数が約2千万人ということからすると、本県においても累積で20万人を超える患者が発生している可能性がある」と話している方もいるが、県としては正確な数字は把握できないところである。
重症者についてだが、人工呼吸器を装着した方、脳炎・脳症を発症した方、ICUに入室した方については、重症者に該当するということで、厚労省に報告することになっており、本県ではこれまで10名の方が該当している。
今後の課題について。例えば医療体制について申し上げると、外来部門については、発生当初は発熱外来での対応、その後原則として全ての医療機関において診療という形で対応してきた。秋口からは、感染の拡大状況に応じてこの外来診療体制の拡充を行い、今般発生した新型インフルエンザへの医療提供体制については、医師会の協力のもとにおおむね適切に対応できたものとは考えているが、今後新たに強毒性の新型インフルエンザが発生した場合などを想定すると、発熱外来の数を増やす必要があると思われる。ただ、この発熱外来の法的な位置づけが明確でないために、医療機関としても引き受けづらいといった課題も指摘されており、国にたいしてこれまで全国知事会等を通じて発熱外来の法的位置づけの明確化や、設置・運営にかかる財政支援の拡充について要望してきたところだが、引き続きこういった対応をとっていきたい。
・高すぎる国保税の問題について
【斉藤委員】
所得300万円の場合の国保税は県内の市町村でどうなっているか。高いところベスト5ぐらい示していただきたい。払いたくても払えない水準になっているのではないか。それが15.5%の高い滞納世帯率になっているのではないかと思うがいかがか。
【医療国保課総括課長】
4人家族で世帯の所得を300万円と想定し、県内13市における国保税の状況を試算したところ、高い順に一関市:42万4595円、花巻市:40万7800円、宮古市:40万2400円、盛岡市:40万800円、釜石市:39万6630円となっている。収入が伸びない経済状況の中において、300万円所得にたいして国保税が40万円というのは国保税の負担感が増しているのではないかと考えている。
【斉藤委員】
所得が300万円で国保税が40万円を超えると。これは全国の調査だが、政令指定都市で、さいたま市が37万円、札幌市が41万3000円、大阪市が42万8000円となっており、県民所得が低い岩手県でも40万円を超えるという実態に国保税の最大の問題がある。高すぎて払えない。
そして1年間滞納すると保険証を取り上げられてしまう。保険証を取り上げられた世帯が1267世帯、一方で短期保険証を発行したが取りに来ず滞留している「留め置き」が1484世帯と資格証明書の世帯より多い。こんなに冷たい行政でいいのか。3月4日の参議院予算委員会で長妻厚労相がこう答弁している。「資格証明書の発行にあたって、国保税を払えるのに払わないということが本当に証明できた場合以外は慎重に対処するよう自治体にお願いする」と。この精神を徹底すべきではないか。短期保険証の留め置きは直ちに是正すべきと国からも通知されたと思うがその後の状況はどうなっているか。
【医療国保課総括課長】
資格証明書の交付について。これまでも市町村においては、滞納者個々の事情を聞くなどきめ細かな対応を行った上で、保険税を納付することができない特別な事情が認められない方、いわゆる払えるのに払わない方に資格証明書を交付しているものと認識している。国においては、こうした取り扱いの徹底を図る観点から、特別の事情が認められない場合に資格証明書を交付するとともに、悪質な滞納者については滞納処分を含めた収納対策を行うよう通知している。県としても国の通知を踏まえた形で市町村にたいし通知したところである。今後とも県としても適正な取り扱いが行われるよう市町村にたいして助言していきたい。
留め置きの状況について。短期保険証の交付については、連絡しても受け取りに来ない等の理由で1カ月以上交付されていない「留め置き」の状況については、3月12日現在で18市町村581世帯856人となっている。2月1日現在に比べて981世帯1666人の未交付が解消されている。今後も市町村において未交付者にたいして電話連絡や家庭訪問を実施する等により未交付状態を早期に解消するよう助言していきたい。
【斉藤委員】
国会での長妻厚労相の一番新しい答弁を紹介したので、その精神でやっていただきたい。現場はそうなっていないのである。そして留め置きというのがなぜ起きるかというと、短期保険証を取りに来ない、相談に来ないからである。渡さなかったら保険証がないのである。病院にかかれないのである。まさに命に関わる問題なので、機会的にやっては絶対にいけない。短期保険証の留め置きというのは、行政的な、機械的なあり方が如実に表れた問題である。かなり改善されているようだが、未だ581世帯1666人が留め置かれているのは重大な事態である。改めてこの改善を徹底していただきたい。
そして3月に県が資格証明書発行世帯について調査したが、保険証がないために亡くなっているような事態はなかったということだった。どんな調査をしたのか。そんなに甘いものではないと思う。どういう調査をした結果なのか。
【医療国保課総括課長】
調査に関係だが、市町村を対象に電話により、平成20年度・21年度に資格証明書および短期保険証交付世帯で受診を控えて病状が悪化した者、または死亡した者について照会をした。こうした結果、事例の照会はないという形で確認させていただいた。
【斉藤委員】
こういう調査をするときには、医療機関に調査しなければならない。市町村にやっても分からない。留め置きをするような市町村では分からない。
3月5日付の岩手県保健新聞でこういう調査があった。「受診実態調査アンケート」で、これは開業医の方々で110名程度が回答している。「最近経済的理由と思われる治療の中断はあるか」という問いにたいして、医科で中断あり:45%、歯科で中断あり:66%である。「患者から経済的な理由で必要な診療内容を減らすような要望をされたことはあるか」については、医科で要望あり:59%、歯科で要望あり:62%となっている。3割負担が大きいから、保険証があってもこういう受診抑制の実態がある。ましてや10割負担など行けない。それにより死亡した事実が確認されていないだけで、深刻な受診抑制が起きている。金の切れ目が命の切れ目になってはならない。新型インフルエンザのときには、資格証明書の人も、医療機関に行ったら短期保険証と同じ扱いにするということを行った。これは新型インフルエンザだけでなく、どんな病気でもそういう対応が必要ではないか。3割負担自身が世界で最も負担が重いのだが、保険証を取り上げるということは直ちに是正すべきだと思うがいかがか。
【医療国保課総括課長】
資格証明書については、やはり特別の事情が認められないのにも関わらず滞納している方について、より一層納付相談等の機会を確保し、適切な収納に結び付ける必要があるということから、制度の持続性の観点、負担の公平性の観点から設けられている制度だとは認識している。ただ、県としても、資格証明書の交付について、機械的な交付を行うことなく、特別な事情の有無の把握をきちんと行った上で適切な対応を行うよう市町村にたいして引き続き助言していきたい。
【斉藤委員】
機械的な答弁である。特別の事情というが、払えずに払っていない人が圧倒的なのである。悪質な場合だけに限定すべきだというのが厚労相の最近の答弁なので、本当に徹底していただきたい。
岩手県は、滞納者にたいして、払っていなければ資産を差し押さえしている。この資産の差し押さえ、処分件数はどうなっているか。
【医療国保課総括課長】
平成20年度における滞納処分については、延べ差し押さえ件数5009件・14億8千万円となっている。
【斉藤委員】
その中には理由があるのも一部あるだろうが、本当に冷たいやり方だということを指摘しておきたい。
・介護保険―特養ホームの待機者解消について
【斉藤委員】
介護保険導入後の特養ホームの整備について。低所得者が入れる多床室の整備がこの間減っているのではないか。多床室とユニット型の整備はどうなっているか。
第4期計画で早期に入所が必要な待機者の解消に満たない計画の市町村はどうなっているか。
【長寿社会課総括課長】
介護保険制度が導入・施行された平成10年4月から昨年度までに、1778床の増床整備が行われている。本年度整備している118床を加えると1896床が今年度末までに増床整備されていることになる。このうち、多床室の整備は173床となっている。また本年度末における特養ホーム109カ所全体で6500床のうち、多床室を設けている従来型の施設は約7割で77カ所4431床となっている。今後の特養ホームの整備にあたっては、現在の経済動向や待機者の状況、入所希望者の意向などを踏まえ、地域においてそのニーズに応じた施設整備を選択・実施することが重要であると考えている。したがい、本県においては、多床室を設けている従来型施設の整備についても、補助対象とし支援することとしている。
待機者解消に向けた計画の状況について。本年度設置した介護サービス施設等整備臨時特例基金により、第4期計画に上乗せして、約370床分の上乗せ整備が可能となるよう基金を積み増ししているところだが、現在市町村から約250床分の整備計画が出されているところである。これらの上積み分を含めても、早期入所が必要と判断される待機者数に整備計画数が満たない市町村等が介護保険事業者である一部事務組合等を含め、13となっている。このうち、小規模特養ホームの1カ所あたりの最低入所定員数に相当する20人以上の待機者が存する市町村等は、花巻市・北上市・一関地区広域行政組合・宮古市・久慈広域連合・二戸地区広域行政事務組合の6市町村等となっている。今後、約120床分相当の整備が可能であることから、これらの市町村等にたいしては重点的に上乗せ整備の働きかけを行っていくこととし、待機者の解消にさらに努めていきたい。
【斉藤委員】
少し答弁が不正確なのは、多床室は減っているのではないかと指摘したが、実は平成15年に多床室は4806床あった。それが第4期・平成21年には4431床に減っている。大変驚いた。改築などの場合にユニットに変わってしまっている。低所得者ほど介護度が高いのである。そして需要が高いのに低所得者が入れる多床室が減っているのは重大である。これは国の施策でユニットに誘導されたということがあるのかもしれないが、ぜひ現状をよく見て待機者の解消、特に低所得者の方々が入所できる施設の整備に取り組んでいただきたい。
・子どもの医療費助成の拡充と子ども手当について
【斉藤委員】
市町村独自に医療費助成拡充の動きが広がっている。小学校卒業まで、中学校卒業まで、それ以上について、来年度の見込みも含めどうなっているか。
【医療国保課総括課長】
現在独自に助成対象を拡充している市町村は、紫波町が小学校1年生まで、遠野市・岩手町・平泉町が小学校卒業まで、住田町・田野畑村・軽米町・野田村・九戸村・一戸町が中学校卒業までの合計10市町村となっている。
来年度新たに、宮古市・八幡平市が小学校卒業まで、雫石町・普代村が中学校卒業まで対象を拡充し、合計14市町村となる予定である。なお、現在小学校卒業まで対象を拡充している岩手町が中学校卒業まで、中学校卒業まで拡充している一戸町が高校卒業までさらに対象を拡充する予定とうかがっている。
【斉藤委員】
少子化の中で、子どもを大切しようという流れが急速に広がっているのは大事である。岩手県も就学前までこれを拡充してきたが、私たちが視察した群馬県なども含めて、今小学校卒業・中学校卒業まで拡充している都県がでている。せめて小学校卒業まで岩手県が拡充に踏み切るべきではないか。その際必要な財源はいくらか。全国の実施状況も含めて示していただきたい。
また、現物給付にたいするペナルティがある。政権が変わった中では、このペナルティというのは止めるべきではないか。そのことを強く新政権に求めるべきではないか。
【医療国保課総括課長】
子どもの医療費助成について全国の状況を申し上げると、小学校卒業まで対象を拡充している都道府県は、21年4月1日現在で7都道府県となっている。小学校卒業まで拡充した場合の県費の負担額だが、平成20年度乳幼児医療費助成事業の実績等を基に粗々に推計すると、現時点では約4億2千万円の増と見込まれる。これまでも、県として厳しい財政状況の中で平成16年度に乳幼児医療費助成の対象を就学前まで拡充するなど、拡充を図ってきた。医療費助成制度については、県と市町村が足並みをそろえて取り組むことが重要であることから、引き続き市町村の意見をうかがいながら制度のあり方や適切な運営などについて検討を続けていきたい。
現物給付にあたるペナルティについても、国にたいして要望を申し上げたところであるので、引き続き要望していきたい。
【斉藤委員】
子ども手当法案が衆議院を通過した。我々も拡充という点では賛成なのだが、問題もある。来年度は半分の13000円、児童手当1万円もらっている方は3000円しか増えない。そしてそういう方々にたいして、所得税・住民税の扶養控除が廃止され、大方増税になってしまう。これはきわめて問題なのではないか。こうした実態をどう把握しているか。
【児童家庭課総括課長】
子ども手当法案については現在国会で審議中だが、その審議の過程で子ども手当の財源として、所得税の扶養控除に13年1月からの所得に対する課税が廃止となるということで、扶養控除は33万円が基本であるのでそれと比較すると逆に増税になるのではないかという議論があることは承知している。ただ、国の方から、経過措置とか、それに対する手立てをどうするだとか詳細な内容がまだ示されていない。県として、本県の子育て世代への影響を試算することは困難であると考えており、引き続き国における議論の推移を見ながら、関係部と連携しながら可能な限り把握に努めていきたい。
【斉藤委員】
これは1年限りの法案で、次の年度がどうなるか分からない、財源も見通しがないという難しい問題で、我々は総合的な対策こそ必要だと思っている。
・児童虐待防止対策について
【斉藤委員】
昨年度、今年度の児童虐待の相談件数とその内容、解決・対処はどうなっているか。
児童福祉司の配置状況はどうなっているか。
児童養護施設の児童虐待を受けた比率と入所状況はどうなっているか。
【児童家庭課総括課長】
平成20年度の児童相談者の処理件数は273件となっている。21年度は2月末現在で272件となっているので増加の傾向にある。市町村の平成20年度の相談処理件数は483件となっている。相談種別にみると、身体的虐待がもっとも多く、心的虐待、性的虐待などがある。解決・対処方法についてだが、虐待通告から48時間以内に家庭訪問等により児童の安全確認を目視で行い、児童の安全を最優先とする初期対応を行っている。その後、児童の生活状況や家族関係、就学状況などの事実確認、あるいは心理判定等を行った上で判定会議等によりその後の措置を決定している。平成20年度の措置内容は、面接指導が208件、児童福祉施設入所が43件、里親委託が1件、その他が21件となっている。なお、この面接指導については、1回限りで終わることはほとんどなく、ケースによっては3ヶ月や6ヶ月、1年以上かかる場合もあるが、児童福祉司が計画的に面接等を行い指導する件数のことを面接指導と言っている。
児童福祉司の配置についてだが、現在23名配置している。相談内容はそれぞれ複雑で深刻な事例が多くなっているということから、平成22年度については、児童福祉司1名を増員する予定である。これにより市町村への相談支援にも適切に対応しつつ、困難事例に対してより専門的な対応を図ることとしている。
児童養護施設の入所状況だが、3月1日現在で定員364人にたいし328人の入所、入所率90.1%、昨年度は94.8%で若干減少している。また、入所児童のうち、児童虐待を理由としている児童は46%、昨年度は45.8%でほぼ横ばいである。
・受動喫煙防止対策について
【斉藤委員】
厚労省通知を受けて、県として抜本的な対策を直ちに講ずるべきだと、少なくとも県庁は全面禁煙に踏み切るべきだと思うが、県としてどう取り組むか。
これまで受動喫煙防止対策にどう取り組んできたか。
【保健衛生課総括課長】
これまでの取り組みだが、県立施設については、県立の施設・建物における分煙指針に基づき、平成18年4月に全ての施設において分煙対策が完了したところである。県立学校についても、平成19年4月に全ての県立学校において敷地内禁煙が達成されている。一方、民間の飲食店・喫茶店については、平成17年度から、禁煙・分煙の飲食店・喫茶店登録事業を実施し、施設管理者の協力のもと、本年3月1日現在で登録店数は219店まで広がっている。ホームページ等により県民への情報提供を行っている。この他にも、受動喫煙防止の普及啓発や市町村立学校および私立学校における敷地内禁煙の働きかけを保健所を通じて取り組んできた。
今般の厚労省通知を受けての県の取り組みだが、健康増進法第25条の規定となる今回の通知の対象となる施設の管理者や関係団体に対しては、すでに国の考え方を通知している。特に県庁など公共施設の全面禁煙については、県立の施設については、先ほど述べた指針の改定について今後関係部局と協議し具体的な対応を検討していく。また市町村に対しては、改定後の指針について情報提供するなど、その取り組みを促していきたい。
・難病対策―難病センターの相談員の待遇改善について
【斉藤委員】
難病センターの相談員の待遇がきわめて悪いと繰り返し指摘された。特別委員会で石川県に調査に行ったときには、県職員、直接雇用の専門職員が対応していた。この相談員の待遇改善というのは抜本的に改善されるべきではないか。
【保健衛生課総括課長】
難病相談支援センターは、難病患者やその家族からのさまざまな相談に応えるため、平成15年に設置し、岩手県難病疾病団体連絡協議会に運営を委託しているが、2名の相談員が毎年延べ2千件を超す相談に対応し、患者や家族の方々の大きな支えになっているところであり、その取り組みは全国的にも高い評価を得ているとうかがっている。
こうした相談員の業務量の増加に対応するため、平成22年度の難病相談支援センター運営委託費については、人件費相当額を増額し、前年度より48万5千円増の434万5千円を当初予算案に計上した。