2010年3月16日 予算特別委員会
教育委員会に対する質疑大要


・検証可能な目標達成型の学校運営について

【斉藤委員】
 せっかく教育委員長が出席されているので質問したい。
 岩手型コミュニティスクールの検証可能な目標達成型の学校運営について、具体的にどのような目標が設定されているのか。目標が設定されるプロセス、そしてどう検証されているのか。

【義務教育課長】
 目標設定だが、目標の設定にあたっては、知徳体のバランスのとれた児童・生徒の育成という観点から、あるいはそれぞれの学校の実態、子どもたち一人一人の実態に応じて各学校で設定されている。具体的に、例えば、基礎基本の定着という視点では、ある学校では担当学年の漢字の読み書きを何割できるようにするとか、豊かな人間性という視点からいくと、あいさつが響き合う学校にしようとか、体力的な面で年間を通してマラソンをやっていく、50m走を何秒で走れるようにするなどといった形で、それぞれの実態に合わせながら目標設定していると認識している。
 プロセスについてだが、目標設定については、各学校ごとにさまざまな状況がまだまだある。例えば、この構想のスタートの段階では、校長先生が作成し先生方に示すという場面が多くあったが、現在では管理職だけではなく全教職員が参画し議論しながら作成していくと。中にはPTAの方々も参加し子どもたちを育てる動きをつくっていくということをしている学校もある。いずれ、学校と保護者・地域が一緒になって子どもたちを育てるという視点に立った場合に、大事なことは、子どもたちと関わっていく、子どもたちに寄せる思いも合わせて共通認識に立っていくという意味で目標をつくっていくことは重要ではないかと思う。
 検証については、各学校では自分の学校の取り組み等について、職員や保護者からアンケートをとったりしている。そのような報告も受けたりしている。さらに、ちょうど2年目だったが、20年度に管理職、保護者のアンケート調査を実施している。その結果、学校経営の改革とか地域・家庭が連携していく状況がよく分かるなどという回答も数多く寄せられている。来年度は構想の最終年度になるので、来年度また検証のためにアンケート調査等も実施する予定である。

【斉藤委員】
 改めて聞くが、岩手型コミュニティスクールというのと目標達成型の学校経営というのは概念として一体なのか。
 県教委からもらった資料を見ると、「学校長のリーダーシップによる目標達成型の学校経営への転換」ということが特別に強調されている。「校長がリーダーシップを発揮して検証可能な目標達成型の学校経営計画を策定し、その目標を実現させる」と。例えば、教職員が知恵を出して、中には子どもも参加させてというところもあるので、全てを否定するものではない。しかし県教委がやっているのは、校長のリーダーシップで目標を作って検証しなさいということではないのか。本当に教職員や子どもやPTAも参加させて目標を掲げることを重視しているのか。
 事例集を見せていただいたが、結局これを見ると、目標を決めるので手間がかかる。例えば奥州市の中学校の例だが、学校の教育目標、学年の経営計画、各部の経営計画、学級の経営計画を立てるとなっている。そしてそれを評価システムと確認シートを一元化してやる。確認シートというのは人事考課である。こんなことになったら、まさに学校の管理強化を強めるだけのことにしかならないのではないか。計画をつくっては年に何度も検証する。それが人事考課と結びついている。何の足しにもならないと思う。田野畑村の中学校の場合だが、学校評価システムの評価時期というのがあり、5月に生徒評価・職員評価、7月に生徒保護者評価・職員評価、8月に役員評価・学校評議員評価、10月に生徒評価・職員評価、12月に生徒保護者評価、職員評価、1月に役員評価・学校評議員評価、3月に生徒評価・職員評価と。これだったら評価ばかりやっていることになる。こんなことをやったら、学校の主役である子どもたち一人一人の行き届いた教育というのができないのではないかと思うがいかがか。

【義務教育課長】
 岩手型コミュニティスクール構想と目標達成型の学校経営が一体なのかということだが、岩手型コミュニティスクール構想というのは、目標達成型の中には2つの視点がある。1つは学校がしっかりした経営目標を定める、もう1つは地域・保護者と共同して子どもたちを育てるというのが目標達成型の学校経営である。これらを総称して岩手型コミュニティスクール構想という呼び方をしている。ですので一体のものととらえていただいて結構である。
 校長のリーダーシップが前面に出ているということについてだが、校長のリーダーシップをどのようにとらえるかというところの部分になろうかと思うが、これは校長が自分で勝手に独善的に目標を設定して押し付けるという意味のリーダーシップではなく、学校全体、先生方が一緒に学校経営に参画するような雰囲気とかシステムといったものも含めて、あるいは学校経営そのものを地域に開くというような手立て・方法等を、考え方も含めて校長としてのリーダーシップを発揮していただきたいという意味のリーダーシップということである。
 事例についてだが、これは学校なりに学校としての評価、これから次に進んでいく評価というものをきめ細かくステップを踏んでいる学校という事例もあるし、これは千差万別でその中の一例だと考えている。管理強化につながるのではないかということだが、我々としてはそういう管理強化を強めるために構想を進めているのではなく、あくまで子どもたちを学校・家庭・地域が一緒になり育てるという視点を大事にしたいというのが構想だととらえている。

【斉藤委員】
 教育委員長にお聞きしたい。教育委員長演述で、「一人一人の子どもに寄り添い、その成長発達を保障するのが大事」だという演述をした。こうした目標達成型の学校経営で計画を立てて検証ばかりやっていたら、そうでなくても先生方は多忙で、子どもたち一人一人に寄り添った本当の教育ができないのではないか。そして先ほどの議論の中でも、自己肯定感が岩手の子どもは全国と比べても低いという話もあった。国際的に言うと、「孤独感を感じる」というのが29%で世界でダントツに日本は高い。子どもは本当にそういう形で自己肯定感がなく、孤立化している。そういうときに本当に一人一人に寄り添った教育こそ進めることが必要だし、そういう点でもっと学校は自由で、先生方にもっと自由度を与えてやるべきではないか。

【教育委員会委員長】
 目標達成型の学校経営については、私も校長をやったが、必ずしも全分野、全ての学年についてきめ細かにはできなかった。それをつくるのにエネルギーを注ぎ、点検することにだけ窮極しているということもある。ものによっては数値化できるものもあるができないものもある。しかし、学校はどんな子どもを育てるのかと言われたときに、ある目標がなければそれも学校経営としては片手落ちになるということであるので、例えば、遅刻をしない生徒になろうとか、読書をたくさんしようとか、そして「たくさん」とは何かと聞かれると、また300人いれば300通りになりこれまた大変だということになる。ときには抽象的なものになっても仕方がないと、ただある目標に向かって学校が進んでいく、そして1年経ったときにこういう子どもが育ったと、それをどのようにして点検するのかというときには、子どもたちの反応や親の感想を聞けばそれでも済むことがあると思う。学校によっては、細かに決めて、ステップを踏んで一人一人に全部やれるところはやってもいいと思う。それは学校の自由度を県教委は認めているはずであるので、そのようにやればいいと思う。
 校長のリーダーシップについては、校長が独善的にやっているところはどこもしていないはずであるし、校長がリーダーシップを発揮して目標をつくってやろうと言って職員と相談しながらつくる、そこに校長のリーダーシップという言葉を県教委は使っているのではないかと私は解釈してやった。
 それから、誇りを持てるかどうかという問題もあったが、個人の主観的感想・反応であるので、とやかくは言えないが、他と比べて岩手が低い、劣っているかどうかは個人の主観・判断であるので、その数字で岩手の子ども、日本の子どもたちを全部評価することはできないのではないかと私は個人的には思っている。例えば不況であったり社会的な背景もあるのではないか。例えば岩手の子どもたちは、奥ゆかしさとか、謙遜するとか、消極的だということもあるのではないかと私は思っている。人をかき分けてでも自分の幸せを求める人間よりはむしろいいのではないかと個人的には思っている。しかし、できるとか、できるようになりたいとか、可能性がある、夢を持たせるということが人間の成長を促すきっかけになるのではないかという意味で、我々教員、大人、県民全体が岩手はいいところだと、頑張れば評価されると、お前のおかげで助かっているということを子どもたちに常日頃から呼びかけていくということが大事ではないか。そういう結果が出たときに、岩手が低いのではないかというところだけ見るのではなく、そうでない子どもたちもたくさんいるという風に目を付けていくことにより子どもたちは伸びていくし、必ずしも自分はこうできると言わなくても力を持っている子はたくさんいるのではないかと私は信じている。

【斉藤委員】
 かなりズレているのではないか。私が聞いたのは、自己肯定感というのは、「自分には良いところがあると思いますか」と。自分を自慢するという話ではない。そういう意味で、この評価については少しズレているのではないか。
 目標達成型の取り組み事例は、県教委がつくって先進事例で紹介している。その中に、こういう人事考課、確認シートと一体となった検証を何度もやるようなやり方でいいのかと。県教委がこれを紹介するということはこれを推進するということではないか。そういうことをやったら、まさに学校現場で一人一人に寄り添った教育が進まないのではないか。こういうことで私は具体的に教育委員長にお聞きしたので、その点について改めて答えていただきたい。

【教育長】
 岩手県の生徒のみならず、全国的に中学校にいくと、小学校でものすごく自分が素晴らしいと思う子どもが、中学校になると大きく下がる。そういうことで、本県では中学校に少し焦点を当てて、もう少しきめ細やかな教育をしていくべきだということで、来年度の予算編成で中学校に少し厚く教員を配置しようという形で予算措置している。
 目標達成型のことで指摘があったが、目標を達成して検証して、あとは数値目標だけ立てるということは本末転倒になるので、子ども一人一人が良くなるような学校経営を進めるという趣旨でこれからも取り組んでいきたい。