2010年3月17日 予算特別委員会
農林水産部(農業・競馬部分)に対する質疑大要
・来年度の農林水産予算の削減について
【斉藤委員】
県の予算総額が6.1%と増額となっているときに、なぜ農林水産部予算は41億8680万円、6%減少となったのか。減少した具体的な理由を示していただきたい。
農業農村整備事業の国の予算が63%も削減されたが、その影響と県の対応はどうなっているか。
【農林水産企画室企画課長】
予算減少の具体的な理由だが、国の公共事業費の削減により、経営体育成基盤整備事業あるいは溜め池等整備事業費などの土地改良事業をはじめとした農林水産関係の公共事業費が減少したこと、および漁業指導調査船「いわて丸」の建造事業が完了したために、これが10億円ほどあったがそれが減少したものである。
【農村建設課総括課長】
国の農業農村整備事業予算が削減されたわけだが、一方新たな農山村漁村地域整備交付金という制度が創設されたところである。しかしながら、現時点では国からの具体的な配分額が示されておらず、本県への影響額については明らかになっていない。
県の対応としては、先般可決いただいた平成21年度2月補正予算および現在審議いただいている来年度当初予算において、必要な事業が継続されるよう事業費の確保を図ったところである。今後においては、生産基盤の整備が遅れている本県の実情を訴えながら、必要な財源の確保に努めていきたいと思っており、とりわけ水田の整備、老朽化が著しい農業水利施設の改修に重点を置き、本県農業の振興に向けた生産基盤の計画的な推進に努めていきたい。
【斉藤委員】
農業農村整備事業が63%も削減された。その経過について新聞報道では、「土地改良政治連盟の政治的態度が悪い。そんなところに予算をつけるわけにはいかない」と。これは民主党幹事長の一声でばっさり削られたという報道があるわけで、公共事業の見直しはあったとしても、こういう形でばっさり削られるというのはいかがなものか。
【農林水産部長】
国の予算の減額の背景等については、私の方から申し上げるのは適切ではないとは思うが、農業農村整備事業については、担い手の育成あるいは食料の安定供給を支える重要な事業と認識している。県としては、これからも受益農家からの要望に応えられるよう予算の確保に努めていきたい。
【斉藤委員】
先ほど農山村漁村整備交付金というのが全国で1500億円、岩手県はたくさん確保したいということだったが、今回土地改良事業費が31億円の減になっている。そこを補てんする見通しはあるのか。また、総額651億円の農林水産予算の中で、公共事業費が占める比率、価格保障費が占める比率はいくらか。
担い手アクションサポート事業が、事業仕分けで県の協議会分、市町村の協議会分2億6411万円も廃止された。この事業のこれまでの役割と県の対応はどうなっているか。
【農村建設課総括課長】
当初予算に比べると30億円ほどの減となっているが、当初予算比で申し上げると84%になっているわけだが、先ほど述べた通り21年度の補正予算で19億円ほど前倒しという観点で計上させていただいている。それも含め約93%ということで、とりあえず必要なところには当面の事業費は計上できたのではないかと考えている。
【農林水産企画室企画課長】
予算額に対する公共事業費の割合だが、公共事業費は358億円余であり55%である。
【担い手対策課長】
担い手アクションサポート事業のこれまでの役割と今後の県の対応について。本県においては、岩手県農業会議や岩手県農業協同組合中央会などで構成する「岩手県担い手育成総合支援協議会」と、各地域協議会があり、平成19年度から本事業を導入している。認定農業者や集落営農組織に相談・助言活動を行うコーディネーターの配置や、税理士等の専門家を派遣した経営能力向上支援などを実施してきたところであり、経営の高度化や多角化などに大きな役割を果たしてきた。
平成22年度からは、この事業が廃止されるということになった。県としては、平成22年度当初予算で「岩手型集落営農緊急強化事業」を新たに措置させていただき、県協議会にコーディネーターを設置することとした。今後においても、県協議会や地域協議会と連携しながら、認定農業者や集落営農組織の経営のレベルアップを引き続き支援していきたい。
【斉藤委員】
国レベルでも、戸別所得補償というのは5千数百億円予算化されたが、国の農業予算は初めて2兆5000億円を割ったと。10年間連続でマイナスになり軍事費の半分になった。そういう意味では、本当に農業を振興する国の予算でもなかったと。そして県に対しては、農業農村整備事業を63%も削減すると。そして、担い手アクションサポート事業は、2億6411万円の事業がやられていたのだが、事業仕分けで廃止となった。農業政策がきわめてチグハグで一体性がない。
・コメの戸別所得補償制度について
【斉藤委員】
3つの問題点があると思う。1つは、戸別所得補償の水準が1俵13703円と基準が低すぎる。そして米価暴落への対策がない。これで再生産可能な保障となるのか。米価暴落の状況と対策、県産米の生産費と生産者の時給はどうなるか。
【農産園芸課水田農業課長】
平成22年度に実施される米戸別所得補償モデル事業では、10aあたり15000円の定額分のほか、米価下落に対応する変動部分が交付されることとなっており、米価下落時にあっても再生産は可能な補償となっている。
21年産米の最近の米価についてだが、直近の米価格センターにおける入札価格では、本県産の主力品種である「ひとめぼれ」の価格は60キロあたり14405円と平成20年産米に比べ445円約3%の低下となっている。現行の米価下落対策としては、水田経営所得安定対策と稲作構造改革促進交付金が措置されている。
県産米の生産費についてだが、国の生産費調査によると、平成20年産では60キロあたり14613円となっている。時給換算の労賃については、平成19年産以降、粗収益や所得が公表されていないことから、時給労賃の基礎となる家族労働報酬を示すことができないという状況である。
【斉藤委員】
入札価格で14405円、生産者の仮渡金はひとめぼれで12300円である。これに15000円を足しても13800円にしかならない。いま生産費は14613円と低い価格で出したがそれでも生産費を下回る。
そしていま流通でどういうことが起きているかというと、15000円出るので買いたたきが起きている。だからますます米価が暴落する。いま農家が一番心配していることである。この13000円の上限価格では生産費を守れないというのと、どんどん下がってしまう。下がることへの対策がない。そういう意味では、この欠陥について、生産県として問題を提起していく必要があるのではないか。
転作作物への補助の大幅な減額があった。激変緩和措置もあり、さまざまな調整で「例年並み」ということで、これはみなさんの努力を評価したい。問題は、激変緩和措置は1年限りである。そうすると来年の見通しはどうなるのか。今年の作付もそうだったが、秋の段階で決めてしまう。今頃価格の助成単価が示されても、これから作付を変えるわけにはいかない。だから激変緩和措置も早く来年の見通しを出さないと、今年の秋の作付もできないということになるのではないか。
【農産園芸課水田農業課長】
戸別所得補償については、22年度においてモデル実施し、それを国として検証するということになっている。県としても、今年の現地の置かれた実情を検証し、必要な施策を国に対して提案していきたい。
今回の激変緩和措置については、国としては22年度において安定的な生産体制が維持できるようにということで措置されたものである。現段階においては23年度以降の国の対応が示されていないところである。助成水準についても、そういう状況であり、今回の作物間での単価調整、さらには地域の実情に応じて減額となる作物への加算を可能とする激変緩和調整枠の活用という対応により、おおむね現行水準ということが確保できると考えている。いずれ今回行われた対応について、1年の動きを見て、本県の実情を踏まえた提案を国にしていくという考え方に立って進めているところである。
【斉藤委員】
政府が出した成長戦略の中で、「輸入自由化推進と一体で進める」と表現している。「農業の戸別所得補償制度と農産物の関税引き下げを一体化して、自由貿易協定を促進する」と。結局自由化交渉を進めるために戸別所得補償制度をやるということになっている。これでは本当に米価や農業を守れないことになってしまうのではないか。
【農林水産企画室企画課長】
国においては、正確には参議院本会議の席上と認識しているが、FTAとの締結等を前提として、戸別所得補償を実施するものではない旨の見解が示されているものと認識している。
新成長戦略について、戸別所得補償制度の農林水産分野の部分を確認したところ、「食料自給率の低下や就業者の高齢化、収益の低下等の課題が山積している中で農業経営の安定化を図り、農山漁村の潜在力が十分発揮されるよう創設する」と記されているものと認識している。
【斉藤委員】
日米FTA、EPAは太平洋FTAという形で促進協定になっている。戸別所得補償をやるから、自由化を進めると。これが一体でやられているところに大きな危険性があるので、もっと正確に見ていうべきことはしっかり国に言っていただきたい。
・いわて型集落営農の状況について
【斉藤委員】
集落営農組織の実際の熟度はどうなっているのか。岩手型集落営農の状況・実態はどうなのか。
当初集落営農の5要件というのがあった。結局これは農家を選別するという形で集落営農が導入された経過があったが、政権が代わってこの5要件はなくなったのか。
戸別所得補償制度の影響について、実際に集落営農をやっている農家は、結局は戸別所得補償制度に農家個々に入るわけであり、集落営農としては大変な危機感を持っている。そのあたりで、集落営農こそメリットになるというふうに、あなた方が説明しているのか。根拠を示しているのか。
【担い手対策課長】
集落営農組織の状況についてだが、現在県内の集落営農組織は425組織あり、組織数は着実に増加してきているが、その内容については、発展段階はさまざまであり、構成員が個別に農作業を行っている任意組織が55%、機械を所有し担い手への農地集積が進んでいる任意組織が30%、すでに法人化された組織が15%という状況である。また、いわて型集落営農は、担い手農家を中心に、小規模・兼業農家も参加する地域ぐるみの営農組織だが、県内各地域において地域の人材を生かし、園芸作物の新規導入や農作物の加工・販売のアグリビジネスへ進出するなど、経営の高度化や多角化に取り組む集落が増えてきている。
集落営農の条件だが、平成22年度の国の事業において、事業実施基準として集落営農の要件が定められているのは、水田経営所得安定対策と戸別所得補償モデル対策の2つである。水田経営所得安定対策については、組織の規約、対象作物の共同販売・経理、農用地の利用集積等従来通りのいわゆる5要件を満たすことが必要とされている。一方、22年度から新たに実施される戸別所得補償モデル対策では、水田経営所得安定対策の5要件を緩和し、組織の規約があり、対象の作物の共同販売・経理を行っていることの2要件のみとすると聞いている。
戸別所得補償制度の影響については、戸別所得補償モデル事業と水田利活用自給力向上事業の2事業からなっているということで、稲作では米戸別所得補償モデル事業に参加することにより、米の生産数量目標にしたがって生産する集落営農等の販売農家に対して、水稲作付10aあたり15000円が交付される。県全体では新たに74億円の交付が見込まれるということになる。また水田での麦・大豆等の生産については、水田利活用自給力向上事業の激変緩和措置が講じられたことから、現行制度の助成水準がおおむね維持されると見込んでいる。これにより、本県がこれまで取り組んできた、いわて型集落営農に直接の影響はないものと考えている。また、集落営農の交付については、共同販売・経理ということで、集落の代表者等の名前で販売し交付されるというようなことであるので、交付額の配分等については、各集落でそれぞれその集落の経営が持続的なものとなるように指導している。
・畜産酪農経営の危機的な状況と対策について
【斉藤委員】
飼料価格の高騰と生乳需要の低迷ということで畜産農家の現状、畜産農家が減少しているのかどうか。離農状況はあるか。
加工原料乳生産者補給金の引き上げと限度数量の引き上げはどうなったか。
酪農ヘルパー事業とそれへの支援はどうなっているか。
肉用子牛補給金の補償基準価格、丸金事業の状況はどうなっているか。引き上げが必要ではないか。
飼料の生産や飼料用米の生産拡大と支援策はどうなっているか。飼料自給率の実態と向上策について示していただきたい。
【畜産課総括課長】
畜産農家の現状だが、ご案内の通り近年の畜産をめぐる情勢は、配合飼料価格の高止まりや景気が長期にわたって低迷していることなどにより、畜産物価格が低迷している。経営状況はきわめて厳しい状況となっている。県内畜産農家の収益性を積算すると、これは生産費調査をもとに直近の畜産物価格および配合飼料価格で修正したものであるが、飼料価格が高騰する前の平成18年度と本年の推計値を比較すると、まず酪農経営では乳牛1頭あたり65000円の所得のマイナス、肉用牛繁殖経営では子牛1頭あたり188000円の減少、肉用牛の飼育経営では1頭あたり28万円の減少となっている。また畜産統計によると、平成20年から平成21年までの状況を見ると、肉用牛の主要戸数では260戸の減少、酪農家の戸数では80戸の減少となっている。この水準については、ここ数年の傾向と大きな変化はなく、主要戸数の減少については従来からの課題である高齢化や後継者不足等の複合的な要因が背景にあるものと認識している。
水田利活用自給力向上事業では、飼料用米等に対する交付単価が10aあたり8万円とされている。農業者の関心は高くなっているが、これらの生産拡大にあたっては、安定的な需要の確保や所得確保のための生産性の向上、公畜連携の仕組みづくり等が不可欠である。県としては、畜産農家や飼料メーカー等の需要把握とマッチング、低コスト生産のための団地化等の促進、既存施設の活用による飼料用米の貯蔵等を通じて生産の拡大を促進している。
飼料自給率の実態と向上策についてだが、飼料自給率は畜師により異なるが、全国ベースの畜産全体では26%となっている。県としては、畜産経営の安定のためには、飼料自給率の向上が重要であることから、国の補助事業の導入などにより公共牧場の計画的な整備を促進するとともに、水田・耕作放棄地等を活用した主要作物の生産拡大など、自給飼料の増産を支援していくことにしている。
【畜産課振興衛生課長】
加工原料による生産者補給金について。平成22年度の補給金単価は、本年度と同額の1キロあたり11円85銭で据え置き、限度数量は全国ベースで本年度より10万トン少ない185万トンとなっている。
酪農ヘルパーについて。酪農ヘルパー事業は、酪農従事者の作業労力を軽減し、酪農経営の安定を図る上できわめて重要な事業であり、県では平成4年度に酪農ヘルパー基金造成に助成を行い、これまでこの基金を活用してヘルパー利用組合の運営を支援してきたところである。今後とも、安定したヘルパー活動を支援するため、平成22年度から拡充される国の酪農経営安定化支援ヘルパー事業の積極的な導入を促進するとともに、広域振興局、市町村、農協などと組織している岩手酪農の里サポートチームにより、ヘルパーに対する技術向上のアドバイスなどを行うなど、その活動を支援していく。
肉用子牛補給金の補償基準価格と丸金事業について。肉用牛生産者補給金制度の平成22年度補償基準価格は据え置きとなっているが、国ではこの制度を補完する事業として新たに肉用牛繁殖経営支援事業を創設したところであり、これらを合わせて補償基準価格は実質的に引き上げられている。また、肉用牛飼育経営安定対策事業、いわゆる丸金事業についてだが、国では、丸金事業と肉用牛生産者収益性低下緊急対策事業(補完丸金事業)とを統合し、3カ年の対策として、家族労働費と物財費の8割を補償する肉用牛飼育経営安定特別対策事業、いわゆる新丸金事業を創設することとしている。県としては、肉用牛経営の安定を図るため、これらの対策の積極的な活用を支援していく。
・競馬組合事業について
【斉藤委員】
来年度の競馬事業について先ほど来議論があった。1つは、コスト削減・収支均衡というのは限界にきているのではないか。削るところがなくなったのではないか。
馬資源の確保策について、いい馬を確保していいレースをつくるところが問題になっているのではないか。
知事が、「経営改善等のための新たな投資が必要だとして財源確保の方策を検討する考えを示した」とあるが、これは実際どのように検討されているのか。競馬存続の条件にかかわる重大な問題なので。
【競馬改革推進室特命参事】
コスト削減と収支均衡について。岩手競馬は、新計画のもとで競馬事業で得られる収入ですべての支出をまかない、単年度ごとに収支均衡を達成することが事業存続の条件とされているので、これまで競馬関係者や取引先企業等と話し合い、協力をいただきながら売り上げの確保やコストの調整に取りくんできたところであり、21年度も3年連続となる収支均衡を達成する見込みとなっている。今後においても、現実的な売り上げ見通しに対応したコスト管理を徹底し、毎年収支均衡を達成していくことが基本と考えており、引き続き低コスト構造への転換に向けた取り組みを進めるとともに、さまざまな工夫により売り上げの確保を図りながら、収支均衡の達成のために全力で取り組んでいく。
【理事心得】
馬資源の確保策について。委員ご指摘の通り、馬資源の確保は重要なことだと考えている。20年度において前年度に比べ馬が減少傾向になり、21年度については、早期出走手当だとか2歳馬など若齢馬を中心にした入居促進を図るために賞金を上げるというような対策を講じた結果、21年度については、年度後半に若干下がったが年度を通じて前年度よりも入居頭数が多かったという状況になってきた。しかしながら21年度末には、馬資源の減少傾向が見られたことから、コスト削減を2期3期4期と行ったが、3期以降については賞金や出走手当も引き下げないという措置をとり、22年度の当初予算にあたっても下げないという措置をした。その他22年度当初予算にあたっては、早期出走手当の継続、あるいは牝馬の受賞競争ということで一部賞金を拡大するという取り組みも行っている。魅力のあるレースというのは、良い馬をどうやって集めるか、あるいはきちんと少頭数にならないような馬を確保できるかといったことにかかっていると思っているので、22年度に向けてもそういった手当を行い、今後についても配慮していきたい。
【競馬改革推進室長】
岩手競馬を継続していくためには、まず現在の施設・設備の更新、経営改善、売り上げを拡大していくための新規投資はぜひ必要だと考えている。基本的にそういう財源については、毎年度利益を生み出し、それを積み立ててそれを充てるということが原則だと考えている。ただ、残念ながら基金はなかなか積み立てることができないということで、どうやって財源を生み出していくか、どういう方策がありうるかということを構成団体で考えている。岩手競馬は、県民の皆様の負担をこれ以上増やさないという原則のもとでのさまざまなルールを決めていただいて、その下でやっているので、そのあたりの整合性を図りながら検討していきたい。