2010年3月17日 予算特別委員会
農林水産部(津波被害対策部分)に対する質疑大要


・チリ大地震津波による漁業被害対策について

【斉藤委員】
 先ほど来の議論の中で、各漁協の要望の内容と対応について、今検討中ということで対応策は具体的には示されなかった。
 養殖施設・水産物等の廃棄処分への助成は、ほぼ6市町村が全額負担すると。これは緊急を要することで、地元自治体の決断は漁民を励ましている。県もこの間、さまざまな災害のときに、こうした処分費用については助成しているので、当然これは補正予算に組み込まれるものと思う。また、養殖施設の復旧、施設の整備に対しても、先ほど菅原委員から具体的に指摘された。
 それで、知事の政府に対する要望を見たら、「強い水産業づくり交付金」にしぼった要望になっている。これ自身は重要なのだが、それだけでよかったのか。国に対する要望はもっとあったのではないか。

【漁業調整課長】
 廃棄物処分への助成だが、現在補正予算の編成に取り組んでいるところであり、被災した資材等の処分費への支援などについて庁内で調整している。
 施設整備等について、交付金の要望を3月11日に知事からさせていただいた。その他にも要望すべきことがあったのではないかということだが、例えば宮城県などだと、共済金の早期支払いだとかそういったことを要望していたが、本県としてはすでに共済金の早期支払いについては共済組合のほうに申し入れ、共済金の早期支払いは行うという回答をいただいていたので、これらを勘案して交付金一本にしぼって知事に要望していただいた。

【斉藤委員】
 改めて岩手・宮城両県で要望するということなので、こういうときには必要なことは何でも要望すると。最初からしぼったりする必要はないと思う。強い水産業づくり交付金の問題については、具体的な要望はしているので、これはこれで評価したい。しかし養殖施設の復旧整備だけでは済まないので、ぜひ激甚災害の指定も含めて国に対する要望はできるだけ地元の声も反映したものにしていただきたい。
 共済の問題だが、漁業共済の加入率の現状と今後の対応について示していただきたい。市町村が漁業共済の加入に助成しているところがあると思うが、その状況はどうか。漁業共済は施設と水産物があるが、それぞれにより加入条件も違う。災害はこの10年間で数回にわたる規模で起きているので、漁業共済への加入を引き上げる県独自の対策が必要だと思うがいかがか。

【漁業調整課長】
 市町村の助成の状況だが、カキについては、養殖を行っている6つの市町うち、5つの市町が助成している。ホタテについては、8市町村のうち6市町などで特定養殖業共済への掛け金助成が行われている。
 共済加入率の現状だが、カキ・ホタテなどの生産額が減少した場合に支払われる特定養殖業共済への加入率は、県全体では96%となっている。ところが、養殖施設の被害に対して支払われる漁業施設の共済は、県下平均で56%となっている。これについては、今後とも施設共済には共済組合と連携し加入の促進を働きかけたい。さらに昨年度末に、新たに津波についての災害を限定とした、掛け金がこれまでよりもずっと安い共済制度が出ている。これらを普及し皆さんが入っていただけるようにしたいと考えている。

【斉藤委員】
 陸前高田市を視察したときに、市が助成をしていて加入が進んだと。ただ、水産物の共済は、限度額が8割で補償額も8割、結局最大64%しか補償されない。そしてこれは何%で加入するかというのも個々で違う。最大限で6割程度の補償ということなので、全滅の被害を受けた場合には、これだけでは復旧はできないというのも実態だと思うので、ぜひ施設の共済も含めて県も助成に加わる対策をお願いしたい。
 先ほど養殖施設の水面より上の部分と下の部分という話が出たが、広田湾漁協に行ったときに、水面から下の被害が1億円で、水面下から上の被害が7千万円から1億円だと。結局対象にならない被害がそれだけある。そして一方で新たな種や稚貝も購入しなくてはならない。その収穫は2〜4年後になってしまう。この点で、今後の経営と生活への不安というのが大変強かった。生産・経営資金、生活資金を「出来るだけ無利子で」という強い要望をいただいてきたが、災害対策ではここの点もぜひ特別の手立てを講じてほしいし、補正予算にも組んでほしいと思うが検討されているか。

【団体指導課総括課長】
 被災漁業者の経営再建支援のためには、制度資金の活用等が欠かせないものと考えており、そのため需要の把握が重要である。現在系統団体においてその把握に努めている。県としては、その結果を踏まえ、系統団体や関係市町村と協議し、既存の制度資金での対応が難しく、これを超えた支援が必要と認められた場合には、新たな支援も含めて検討していきたい。

【斉藤委員】
 漁業のセーフティーネット資金、これは生活資金なのだが、限度額が300万円である。利率は低いのだが0.8〜1.05となっているが、この程度では2年3年頑張れないということである。1000万円2000万円必要という話だった。ぜひ考えていただきたいのは、広田湾漁協の漁民はそうだったが、漁民により2〜3人、多いところは10人ぐらい雇用してやっている。収入の道が断たされたにもかかわらず、これから養殖の手立てをとるためには首を切れないと。この方々を引き続き雇って稼がなければいけないと。これは緊急雇用対策の対象にならないのか。そういうことなども検討していただきたい。いわば収入がない中で、人を雇って復旧作業にあたらなければならない。また、復旧の中でもいろいろな作業があるので、緊急雇用対策等が可能なら活用していただきたい。
 それから、大船渡湾の養殖施設の被害を見たときに、湾港防波堤の両側に被害が集中している。結局、湾港防波堤で入口が狭くなっている。そこで津波が来て、引き返して被害が集中した。その湾港防波堤の両側に特別の渦ができたのではないか。この湾港防波堤との関わりも検討すべきではないか。
 そして末崎の漁民らは、流れた養殖施設の撤去に3月1日に行っている。津波注意報の最中である。これは海上保安庁からの指示である。まず先に航路を確保せよである。そういう指示が本当に適切だったのかと思ったが、こういった湾港防波堤は津波に効果があったとは思うが、漁魚に対してはどうなのかということも必要なところで調査・分析し、湾港防波堤に何らかの要因があるとすれば、それにふさわしい助成なり対策があってもいいのではないか。

【漁業調整課長】
 湾港防波堤の内側の両側に被害が集中したのはその通りである。ほぼ壊滅的な状態と聞いている。これは、湾港防波堤に津波が経過した後に、防波堤の内側に渦状の海水の流れが生じてしまったということで、施設に被害を与えたことが大きな要因ではないかと漁業者の方から我々も聞いている。湾港防波堤等の関連については、今後県土整備部と連携しながら実態調査などを行っていきたい。

【斉藤委員】
 緊急雇用対策事業の検討も求めたので、ぜひ研究課題にしていただきたい。