2010年3月18日 予算特別委員会
県土整備部(ダム事業の見直し、談合問題部分)に対する質疑大要


・津付ダム・簗川ダムの検証・見直しについて

【斉藤委員】
 本会議での知事答弁では、「できるだけダムに頼らない治水へ」の政策転換について、「基本的に国民の利益に資するもの」と答え、「新たな基準が示された場合には、その段階で適切に対応していく」と答弁した。「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」の開催状況と検討内容をどう把握しているか。

【河川開発課長】
 平成21年12月3日に設置された有識者会議は、平成22年3月10日までに6回開催されている。検討内容は、「できるだけダムに頼らない治水へ」の政策転換を進めるため、幅広い治水対策案の立案手法、新たな評価軸の検討、総合的な評価の考え方等についてであり、各委員からの発表、委員以外の有識者からの発表とヒアリングを行っている状況と把握している。

【斉藤委員】
 国の検証対象ダムに津付ダムも簗川ダムも該当している。この検証ダムについては、前原国交相からの資料提供で、「現段階を継続する必要最小限の予算案とする」よう求められていたが、来年度の両ダム事業の内容はどうなっているか。

【河川開発課長】
 両ダムとも平成22年度当初予算における事業内容は、付け替え道路工事や猛禽類のモニタリング等の環境調査等を主に行うものとしている。

【斉藤委員】
 それにしてはかなり高額の予算が盛り込まれているのではないか。
 簗川ダムについては、来年度再評価、再再評価と言ってもいいかと思うが、それが行われる。津付ダムについては、検証基準が示された場合に、大規模事業評価専門委員会に改めて再評価を行うかどうか諮問を行うとなっていると思うが、当初だと4月早々から簗川ダムの再評価は行われるわけだが、今回の場合、8月末に国の見直し方針が定まるとなっている。簗川ダムの問題はどのように進めるのか。

【河川開発課長】
 簗川ダムについては、前回評価から5年が経過していることから、来年度の大規模事業評価専門委員会に再評価を諮問する予定である。これについては、2月10日に開催された、第8回大規模事業評価専門委員会において、今までの国の動向について説明した結果、新たな基準が今年夏頃に有識者会議で取りまとめられる予定とされていることから、その基準が示された段階で大規模事業評価専門委員会に報告し、意見を聞き適切に対応したい。

【斉藤委員】
 そうすると、簗川ダムの再評価は、国の新しい検証基準が示されてからだと。そうするとかなり短期間の審査で次年度の予算にかかってくる。だいたい9月10月ぐらいに方向性を出さないと、来年度予算の予算編成ということになり、いつも十分な議論をせずに結論を急ぐということがこれまでもあった。いずれにしても、国の方針が180度変わろうとしているときなので、新基準が示されてからでの再評価はやむを得ないと思うが、ただその際、期間がないからという理由で徹底した検証が行われないようなことがないようにしていただきたい。
 それから、再評価にあたり提起しておきたい問題は、ダム事業が環境に与える影響を正しく評価すべきだということである。NHKが昨年から、「岩手自然遺産」という特集を組み、この中で簗川にサクラマスが戻ってきていると。北上川を200キロ遡ってきており、全国でも珍しいと。いわば、サクラマスが戻る清流なのである。もちろんサクラマスだけではなく、クマタカなどさまざまな貴重な動植物がたくさんある地域なのだが、こうした環境に与えるリスクについて、これはただ移植などすればいいということではない問題である。一度破壊したものは戻らないので。そういうこともきちんと評価すべきである。気仙川についても、ここはサクラマスが大量に産卵している。そういう点でも全国有数の川だと専門家が指摘している。だから評価委員会をつくってやっている。そうした環境破壊という問題をダム事業の必要性の中で、評価の項目に入れるべきだと思うがいかがか。

【県土整備部長】
 簗川ダムについては、ご指摘のような良好な河川環境・周辺環境ではある。しかし一方では、100年確率の洪水が発生した場合には、ダム下流では床上浸水被害が想定される家屋が約680戸あり、想定被害額は約1280億円と見込んでいるところである。
 津付ダムについては、やはり気仙川も非常に良好な河川環境ではある。しかし一方では、30年確率の洪水が発生した場合には、ダム下流では床上浸水被害の家屋が約1600戸、想定被害額は約760億円と見込まれている。
 したがい、今ご指摘の良好な環境と治水の必要性をいかに共生させていくかが課題になっているのではないかと考えている。有識者会議でも、その環境に関する論点も主な論点として取り上げられているので、今後の有識者会議の動向を見ながら、また簗川ダム・津付ダムの治水の必要性も勘案しながら適切に県としても対応していきたい。

【斉藤委員】
 今被害想定を言われたが、これは全然反論にならない。本来ダム事業というのは、ダムでなければならないというときに初めてダム建設事業に着手すべきなのである。簗川ダム・津付ダムの場合も、河川改修で対応可能なのである。そうすれば環境破壊に手をかけなくてもよい。代替案があるのである。しかし簗川ダム・津付ダムの場合は、先にダムありきで計画されてきた。ここに根本的な問題がある。
 簗川ダムの場合は、根田茂川と簗川上流の合流地点にダムをつくるために、根田茂川上流の方がなだらかな川で約2倍の収水面積がある。いわば自然の川で洪水を調節している素晴らしい川である。だから河口付近は100年に1回の洪水にも対応できる川幅がある。越水しない堤防を強化すれば簗川の洪水は対応できる。津付ダムにいたっては、30年に1回の洪水は河川改修の方が70億円も安く済む。ダムの必要論というのはあくまで代替案がない場合である。無理してダムをつくるところに二重の無理がある。
 そして津付のサクラマスについては、発電用の古いダムがあり、魚道があるのだが階段式の魚道でよほどのことがない限りサクラマスはそこを乗り越えられない。こういう古い発電所が今も本当に必要なのかという重大な指摘を専門家はしているが、理解しているか。

【河川課総括課長】
 大股川の下流に発電所の取水堰がある。そこに魚道は設置されているが、下流の河床が潜掘されると、よりその機能が十分発揮されないということも承知している。これは河川の占用許可、我々河川管理者として占用者である東北電力に申し入れをしている。具体的な時期については確認できていないが、魚道を改良していただくという方向で調整を進めている。

・胆沢ダムの談合問題について

【斉藤委員】
 国の直轄ダム事業負担金で、来年度が約30億円の負担をしている。実は一番新しい赤旗日曜版に、胆沢ダムの談合問題が証拠を含めて指摘されている。
 ダム事業の下請け工事会社である山崎建設、そして大坂の砕石工業所がどの時期にどのダムをどの企業が受注するかという一覧表を作っていたと。例えば胆沢ダムでいえば、大成建設、これは最初一括発注の予定だったが3つに分かれて、鹿島・大成・西松になった。岩手にかかっていうと、鷹生ダムは清水建設、北本内ダムは大成建設となっている。鷹生ダムはこの通りになった。北本内ダムは中止したのでなくなった。
 そして国会の中でも、堤体盛立工事を2004年に鹿島が193億円でとったのだが、談合情報がありその通り落札になった。原石山材料採取工事は大成建設が2005年に落札し、下請けは水谷建設だったが談合情報通りの落札だった。3つ目は、洪水吐き打設工事を西松建設が95億5000万円で落札して談合情報通りだった。これは政府も認めて徹底調査を約束した。談合が認められれば、予定価格の16.5%は不当利益になる。これは岩手県も30億円来年度負担金を出すというものである。こういう点からいくと、徹底した談合疑惑の調査を国に求めるべきではないか。今までの胆沢ダムの負担金の総額はいくらになるか。

【河川開発課長】
 県の負担金だが、これまで投資した事業費は1850億円程度あるので、その14〜15%が県の負担だと考えている。
【県土整備部長】
 委員ご指摘の情報について我々としては承知していない。

【斉藤委員】
 これは国会で政府は認めて、徹底調査をすると言っている。これは岩手県もお金を出してかかわっている問題なので、徹底調査を求めていただきたい。