2010年3月19日 商工文教委員会
商工労働観光部に対する質疑大要


・労働者派遣法の改正について

【斉藤委員】
 国会でこれから本格的な議論が始まるわけだが、雇用破壊の1つの大きな問題が派遣切りであった。そして、今の労働者の約3割が非正規雇用だと。非正規の労働者が経済危機の中で真っ先に派遣切りされ世界にない状況だった。
 今労働者派遣法の改正が行われようとしているが、残念ながら大きな抜け穴残された改正案になっている。このままでは、本当に無権利の、使い捨ての派遣労働はなくらないのではないかという感じがする。1つは、製造業の派遣だが、常用雇用は原則禁止の例外にすると。この状況雇用は、短期雇用であっても、それを繰り返し1年以上雇用する見込みがあれば常用雇用なのである。いま実際に使われている製造業の雇用の7割近くが常用雇用である。だから、こんなことをやったら短期雇用は残ってしまうし、製造業における派遣労働の禁止がまったく中身のないものになってしまうのではないか。
 登録型派遣労働は、専門26業務が例外となっている。この専門26業務というのは、1985年に派遣法が制定されてから基本的には変わらないのだが、事務用機器操作、今で言うパソコンだが、当時はワープロなどというものだった。しかし今はパソコンを使わない事務作業というのはないわけであり、こういうものが専門26業務であれば、どんな仕事も例外になってしまう。ファイリングというものもある。そういう意味でいくと、この専門26業務を抜本的に見直さないと、これまた大きな抜け穴を残したものになるのではないか。
 それから、派遣先における事前面接の解禁というのは、規制緩和の中身で盛り込まれたが、さすがにこれは止めるという方向が出された。
 均等待遇の原則もない。ヨーロッパの派遣労働は、あってもせいぜい1割程度。基本的には均等待遇である。だから、派遣であっても同一労働・同一賃金というのが原則である。派遣を使えばかえって高くつくというのがヨーロッパである。日本の場合はそうでない。派遣の場合には、だいたい正社員の半分程度である。
 そういう意味でいくと、せっかく労働者派遣法を改正しなければならないと、深刻な雇用破壊の中で社会的な要請として改正の動きになってきたにも関わらず、残念ながら肝心な中身に大きな抜け穴があったら、使い捨て労働はなくならないのではないか。働くなら正社員が当たり前という方向への改正こそ必要ではないか。この労働者派遣法の改正案の内容・問題点をどう受け止めているか。

【雇用対策・労働室雇用対策課長】
 労働者派遣法の改正については、近く国会に提出されるということだが、これについてはさまざまな立場から議論がされていると聞いているが、これは政労使の代表で構成されている国の労働政策審議会での答申を受けて提出されるということで、大筋では三者の合意がされているものと聞いている。
 県としては、今後十分に国会で議論が尽くされて、改正が行われるよう推移を見守っていきたい。

【斉藤委員】
 わたしは具体的な問題点を指摘した。政労使の合意で作られた案だが、だからそれでいいということにならない。日弁連も、労働者派遣法に対して意見書を2月19日に出しているが、把握しているか。

【雇用対策・労働室雇用対策課長】
 詳細は把握していない。

【斉藤委員】
 私が指摘した問題点について部長はどう認識しているか。

【商工労働観光部長】
 派遣法については、種々の問題があるということで、去年一昨年あたりからいろいろ議論されているというのは認識している。1つ1つの事柄については、複雑な背景もあるようであり、我々としてはなかなかコメントできる立場にはないが、先ほど課長が述べた通り、労働政策審議会でそれぞれの立場を代表する方が十分に議論を尽くして、国会で議論されると聞いているので、その推移を見守っていきたい。

【斉藤委員】
 抜け穴がある法案としてこれは問題にされている。そして少なくとも、派遣先の面接というのは、派遣先は何の責任もないのに面接だけするというものであり、さすがにこれは止めようということになっている。
 政労使合意に問題がある。日弁連の意見書では、例えば、「派遣対象業務は専門的なものに限定すべきであり、現行の専門26業務については厳格な見直しをすべき」だと言っている。実は、国会でこの問題を取り上げたときに長妻厚労相は、その日のうちに専門26業務についてもっと厳格に実施すべきと通知を出した。しかし通知は出したが、専門26業務は変えていない。この程度ではいけない。例えば400万人の専門26業務のうち、事務的作業に従事している人は100万人いる。おそらく県内もそうだと思う。それから、「製造業派遣については本来全面禁止させるべきである」「常用雇用に限定して認める場合であっても、その定義規定を置き、期間の定めのない雇用契約に限定すべき」だと。いわば常用雇用という定義がない。短期契約でも1年超えて雇用される見込みがあれば常用雇用、それは例外だと。これは驚くべき定義である。常用雇用というのは雇用対策のときに何度も使われるが、きわめてあいまいな定義である。岩手県の場合は、4ヶ月以上の雇用を常用雇用と言っている。普通の感覚だと、常用雇用といえば、期限に定めのない雇用という受け止めの方が強い。しかし現実には、4ヶ月だと。ましてや労働者派遣法の改正で法律改正に関わる問題で、短期契約で繰り返しても1年を超えれば常用雇用で例外になると。こんなでたらめな定義はない。今の派遣というのはだいたい3ヶ月である。それを繰り返して雇用して1年を超える雇用というのが当たり前になっている。そういう意味でいけば抜け穴だらけ。
 均等待遇についても日弁連はこう言っている。「均等待遇にあたっては、単に均衡を考慮する旨の配慮規定を置くだけでは不十分であり、均等待遇を義務付ける具体的な立法をすべき」だと。努力義務だったら効力はないのである。これはある意味でいけばグローバルスタンダードである。同一労働・同一賃金というのは。日本の労働者が本当に無権利状態に、とりわけ構造改革路線により派遣労働が製造業にまで拡大され、労働者の3分の1までに広がった。それがばっさりと経済危機の中で切られてきた。
 この痛みから教訓を引き出して、労働者派遣法は改正されるべきではないか。こんな抜け穴を作っていたら雇用破壊は繰り返されるのではないか。

【雇用対策・労働室雇用対策課長】
 労働者派遣法については種々の問題があるということで、県でも全国知事会を通じて早期の改正を求めてきた経緯がある。そういった中で、今国会において十分な議論が尽くされて、なるべく良い形で改正されるように見守っていきたい。

【斉藤委員】
 こんな抜け穴だらけの改正だったら雇用破壊は繰り返され、使い捨て労働は残る。そして法律が決まれば、それに基づいてやらざるを得ない。法律が決まる前こそ重要なのである。労働者派遣法の改正は圧倒的国民の声であり、その法律の改正がまともでなかったら結局は今までのような深刻な事態が繰り返される。
 現実に、例えば関東自動車では、少し上向いたら6ヶ月雇用の期間工の採用である。結局はそれしかやらない。そういう意味でいけば、働くなら正社員が当たり前という、働くまともなルールを日本でも作るような動きにしなければいけない。私の具体的な指摘について受け止めはあるか。

【雇用対策労働室長】
 おそらく委員からお話のあったようなことも含め、労働政策審議会においていろいろ議論が尽くされ、その上で答申が出たと思っている。その後若干の政府における見直しもあり、先ほどラジオで聞いたのだが、閣議決定されたということで、それをもって国会の方でそれぞれ見識のある先生方の議論をいただき、国民の声を背景にした議論ということで、最終的に法律が定まっていくものと考えている。我々としても、個々の問題点について、我々の立場から申し上げることはできないので、いずれ国会においてこういった点も含めて是非議論していただければと思う。

【斉藤委員】
 労働者派遣法の改正というのは、ある意味でいけば政権交代で多くの国民が新政権に期待したものである。しかし残念ながらその中身は期待を裏切るものとなってしまっている。そういうときには、下から大いに意見をあげることが必要なのだと思う。
 岩手県の派遣労働者の実態について、全国的には派遣労働者は399万人で、うち常用雇用換算の派遣労働者数が198万人と。製造業に従事した派遣労働者が56万人というのが20年度の全国的な報告・結果だが、岩手県の場合はどうなっているか。

【雇用対策・労働室雇用対策課長】
 手元には19年度の就業構造基本調査があるが、それによると派遣社員は9900人ということである。

【斉藤委員】
 毎年派遣事業所の調査報告書というのがある。岩手県は、派遣労働者数は20663人、常勤換算の労働者数は10220人となっている。こういう調査を毎年やっている。20年度というのは秋のリーマンショックがあった後で、ずっとこの間伸びてきた。こういう実態もよく把握しきちんとやっていただきたい。