2010年3月24日 最終本会議
91社の談合審決問題についての緊急質問大要


【斉藤議員】
 日本共産党の斉藤信でございます。昨日23日、公正取引委員会が、県内建設業91社のうち審判を継続していた80社に対して、談合を認定する審決を出しました。
 審決によると、80社は、2001年4月1日以降、県内に本店を置く業者のみ参加資格を持つ県発注工事で受注調整したと認定されています。昨年10月に示された審決案では、91社は01年4月から04年10月にかけて、県発注工事118件、総額168億円について受注調整した。親睦団体「トラストメンバーズ」(これは組織替えを経てその後解散)を構成し、過去の施工実績との「継続性」や「関連性」などを考慮し、受注予定者を決めていたとされています。
 知事に質問します。91社による県発注の工事で談合が認定されたことは極めて重大なことです。このことをどう受け止めているでしょうか。また、知事として今回の談合認定と審決に対して従来の枠を超えた対応を検討しているでしょうか。さらに、これまでに私が県議会でも繰り返し指摘してきた県発注工事に対する「小沢事務所による天の声」による談合疑惑についても徹底して調査すべきではないでしょうか。

【達増知事】
 審決に対する受け止めだが、マスコミにより報道されている通りに80社の談合を認めるものであると関係者からは聞いているところだが、違法行為を認める審決が出たとすればきわめて遺憾なことである。審決に対しては、公正取引委員会の公表資料により、その内容等を十分に確認した上で、適時適切に対応していく。
 ご指摘の談合疑惑については、議員が指摘されている事業については、適正な入札・発注が行われたと承知している。

【斉藤議員】
 宮舘副知事に質問します。一番心配される問題は、これまで91社の下請けや関連会社として働いてきた建設労働者の雇用確保の問題です。県建設労働組合連合会などからの要望も出されていますが、建設労働者の雇用確保と地域経済対策をどう検討しているでしょうか。すでに市町村で効果をあげている住宅リフォーム助成などの具体的で実効性のある対策を講じるべきではないでしょうか。

【副知事】
 本事案は、本県にとって非常に大きな問題であると認識している。審決を受けた企業にたいし、本県としてどのような措置を行うことになるかは、審決の内容をよく把握した上で検討することとしている。現時点でその影響を予測することや、影響があった場合への具体的な対応を示すことは困難だが、近く開催する予定の公正取引委員会、排除勧告に関する対策会議を通じて、関係部局が連携しながら県民生活への影響が生じないように必要な対策を講じていきたい。

【斉藤議員】
 総務部長にお聞きします。第一に、91社の現状をどう把握しているでしょうか。倒産、赤字などの状況を示していただきたい。A級建築業者の状況と最近の発注額はどうでしょうか。第二に、91社の談合への関与をどう把握しているでしょうか。第三に、10%の賠償金の対象業者、1社当たりの賠償金とその総額はどうなるでしょうか。第四に、現状では県の「指名停止等措置基準」を見直す環境にはないと考えられますが、市町村は自主的に判断できる問題ではないでしょうか。県内市町村の動向をどう把握しているでしょうか。

【総務部長】
 91社の現状についてだが、91社のうち、これまで倒産等により実質的に経営破たんした事業者は14社あると把握している。これらの受注実績は、平成20年度について申し上げると、163億円余、全体の29%を占めている。
 91社の談合への関与については、今回の事案については、公正取引委員会が立ち入り調査等により談合の関与を判断しているものである。今後示される具体的な審判事実の中で、どのような事実認定を行い、どのような評価を行ったかというものが明らかになると思うので、その中で適切に県としても対応していきたい。
 1社あたりの賠償金とその総額についてだが、これは契約約款により10%の損害賠償金を県に納付しなければならないこととされている。個別の工事での談合の認定については、公正取引委員会における課徴金納付により明らかになるものであり、現時点で県の賠償金を算定することは困難であるのでご理解いただきたい。
 市町村との関係だが、入札事務はそれぞれの団体別の固有事務であり、各市町村の自治事務とされている。審決の結果への対応も含め、各市町村で判断すべき事項だが、市町村から相談があった場合には、情報提供等適切に対応していきたい。


≪再質問≫

【斉藤議員】
 今回の91社の談合事件での審決というのは、岩手県の公正な入札を阻害したきわめて重大な事件であり、同時に県内の雇用と地域経済に関わる重大な問題である。今問われているのは、危機管理体制・能力である。知事のイニシアチブというのはきわめて重大である。
 5年間この問題は争われてきた。そして昨年の10月には審決案が示された。今回の審決はある意味では遅きに失したというぐらいの内容である。だからこれに対する対応・対策というのはいくらでも検討できた。
 知事にお聞きするが、昨年10月の審決案を知事は把握したか。そして今日の盛岡タイムスによると、今度の審決については、23日午前、県建設業協会に電子メールで、建設業協会は受け取っている。その気になったら手を入れられるではないか。こういうものは機敏に正確につかんで、知事は適宜適切と言っているがそうではないのではないか。知事はどのように把握したのか、しなかったのか。
 そして残念ながら業者が最後まで談合を認めなかった。こういう形で審決に及んだことはきわめて残念な事態である。この排除勧告が出されたときに私は県議会で取り上げ、当時のトラストメンバーズの実態も指摘した。トラストメンバーズは、総会の資料でこう書いていた。「最近一般競争、公募型の発注が多くなったので、混乱を避けるために参加希望者は公告日を決めて、3日以内にトラストメンバーズ事務局か栄久会に申し込んでください」と。これがトラストメンバーズである。まさに談合組織だということを総会資料は示していた。そういう意味では、談合というのは、受注しなくても参加すれば談合である。そういうことが5年間の審理の中でかなり明らかになってきたと思う。そういう談合の実態を県が独自にどう調査してきたのか。そしてそういう建設業界の刷新をどのように指導してきたのか。建設業協会は何も変わっていない。
 私は一度、県議会の議会運営委員会で、「県議会に調査委員会を設けて建設業協会の刷新を求めるべきで、その上で県に対する弾力的な対応も求める必要があるのではないか」という提案をしたことがあるが、残念ながら会派の理解が得られなかった。こういう形で5年前と全く変わらないまま、最後まで入札談合を否定してこういう審決を受けたということは非常に残念な事態で、これから新たに対応する条件をなくしているのではないか。今から徹底抗戦した上で、指名停止期間の短縮とか下請けに入ってもらえるなど、そういう緩和というのは客観的な条件として難しいのではないか。知事はそういう問題をどういう原理・原則に基づいて対応しようとしているか。

【達増知事】
 岩手県として、公共事業の受発注に関し、公正に進めていかなければならないということ、また雇用の確保、地域経済の対策ということの重要性は議員ご指摘の通りだと思っている。県としても、入手できる情報に関しては入手しているが、司法手続きとは違うのだが、一種の罪の確定、罰の確定、刑の確定という作業であるので、これは司法手続きのような慎重な手続きで根拠に基づき県としての意思決定等を進めていかなければならないと思っているので、正式な情報の公表を待って進めていきたい。順を追って段取りを踏まえて対応していきたいと考えている。

【斉藤議員】
 そしてたくさんの業界・団体から要望を受けた。私は談合した業者を助けることにはならないと思うが、しかしその下請けで働いている関連企業・下請け業者・建設労働者に罪はない。こういう方々の仕事と雇用をどう守るか、ここに英知を結集すべきである。そういうものが5年経過したら出なければならない。それが危機管理である。それを審決を見てから対策委員会を開いてなどと言っていたら対策にならない。こういう雇用対策、下請け関連企業対策というのは、従来の枠を越えてやるべきである。そして県内の建設業界の刷新をさせ守っていくという県のメッセージを早く示すべきである。そういうことを全く検討してこないのか、検討途上なのか。私は1つだけ具体的な例として、住宅リフォーム助成、これは県内今14市町村を超えて広がり、上限たった10万円20万円程度の助成で、事業費が30倍になっている。零細・中小の工務店がここで助かっている。こういうところに県が助成をして、これを県内全域に広げていくということも実効性のある対策ではないか。

【副知事】
 現時点ではその審決の内容が詳細に分からないため、対策も具体的にはなかなか申し上げられないわけだが、3000人、臨時等も加えると4000人を超えるという大変な事態であるので、離職者が出た場合には、当然各地域にある雇用対策協議会等を活用し、きめ細かな生活就労支援等をしっかり取り組んでいきたい。

【斉藤議員】
 残念ながら入札談合が行われていた。入札の改善というのもまた問われている。その他にも談合があったとかなり具体的に政治とカネをめぐる裁判でも指摘されている。審決が出てから談合を認めるというのではなく、疑惑があったら徹底して究明し、そして談合を許さない入札制度の改善にさらに取り組んでいくことが必要ではないか。ダンピングも防止する、そういう談合も防止するという対策を一層進めるべきだと思うがいかがか。

【総務部長】
 これまでの入札制度は、たび重なるいろいろな全国的な事件があり、その度に見直されてきたところである。一方で、先般議論いただいているダンピング対策という面もある。したがい、入札制度については、それぞれの問題点をよく把握しながら改善できるものは速やかに対応しつつ、県民の皆さまから信頼され公平・公正な競争が図られ、しかもダンピング対策も十分になしうるよりよい入札制度を目指しながら種々検討を進めていきたい。