2010年3月24日 最終本会議
2010年度補正予算(津波被害支援策)に対する質疑大要
【斉藤議員】
日本共産党の斉藤信でございます。
チリ大地震津波による水産被害の復旧・復興支援策として2億2799万円余の補正予算が提案されました。この提案を評価するものです。
その具体的な内容と今後の対策について質問します。
第一に、養殖施設の復旧支援として、強い水産業づくり交付金が1億2510万円計上されています。これは事業費500万円以上の災害に強い新たな養殖施設の整備、その経費の2分の1を助成しようとするものであります。対象施設数は概算でどう試算されているでしょうか。また、これは共同管理の施設が対象となりますが、共同管理と個人の施設は現状でどうなっているでしょうか。
陸前高田市では、平成15年の災害の時には独自に2割上乗せ助成をした例がありますが、通常でも1割上乗せ助成しています。市町村の状況を把握しているでしょうか。県として上乗せ助成も検討すべきではないでしょうか。
【農林水産部長】
助成対象施設数についてだが、大破や滅失など大きな被害を受け、新規整備が必要となる養殖施設約1500台を助成対象と考えており、国の強い水産業づくり交付金による整備を基本としながら、国の採択移管を勘案し、県単事業により整備することとしている。
共同管理施設と個人施設の現状だが、その数は現在精査中だが、今般の補正予算により、現在個人施設であっても、漁協が共同利用施設として整備するものであれば、補助の対象とする方向で、地元の要望も踏まえ、必要に応じ弾力的に対応していきたい。
市町村の上乗せ補助の状況だが、強い水産業づくり交付金や県単補助金における過去3カ年程度の被災市町のかさ上げ補助は、5%〜10%程度となっている。今般の津波被害における養殖施設整備へのかさ上げ補助については、最終的には明確な形では聞いていないところである。県の上乗せ助成だが、県単事業の補助率は、平成15年の暴風雨波浪被害や十勝沖地震津波など過去の津波対策や、平成20年岩手・宮城内陸地震による農地・農業用施設への被害対策などを総合的に勘案して決定したところである。
【斉藤議員】
第二に、事業費500万円以下の施設の場合は、県単独事業の地域営漁計画推進特別対策事業費補助として5569万円計上されています。この対象施設数はどうなっているでしょうか。この場合も共同管理が対象となるのでしょうか。
【農林水産部長】
県単事業の対象施設だが、県単事業である地域営漁計画推進特別対策事業についても、漁協が行う共同利用施設の整備が対象となる。
【斉藤議員】
第三に、被害資材の廃棄処分に対する支援が3892万円余となっています。補助率が3分の1であります。これは、海上での廃棄物引上げ等の取り組みも対象となっているのでしょうか。
【農林水産部長】
海上での廃棄物引上げ等の取り組みについてだが、被災した養殖資材、水産物の撤去・処分費用の補助対象には、工事用の作業台船による撤去費用も含まれているところである。
【斉藤議員】
第四に、種苗確保に対する支援として837万円余が計上されています。ホタテ、カキ等の種苗の必要な確保量と額はそれぞれどうなっているでしょうか。
【農林水産部長】
ホタテ・カキ等の種苗の必要な量と額についてだが、養殖施設のうちで被害の大きい滅失・大破の施設全体について、カキ・ホタテを対象に必要な種苗数と金額を試算したものでは、カキ・ホタテ合わせて380万個、2500万円余と見込まれている。今後、被災した養殖施設の復旧状況や施設利用を見ながら、必要な種苗数が明らかとなってきた段階で、さらに必要な対応を検討していく。
【斉藤議員】
第五に、激甚災害指定の見通しもあるようです。激甚災害指定の場合、個人の施設被害も対象となると思いますが、激甚被害指定の場合の対象と支援策はどうなるでしょうか。また、その際の被害査定は減価償却される被害額となるのでしょうか。
【農林水産部長】
激甚災害指定についてだが、激甚災害の対象施設は、個人施設と共同利用施設とに区分されるが、今回の激甚災害の指定では、被災規模の大きい宮城県において個人施設が多いことから、指定される場合は個人施設が対象になると見込まれており、施設復旧費の9割が補助される。過去の事例では、対象は市町村ごと、養殖種目ごとに指定され、復旧経費は被災した施設の経過年数を加味して算出されているが、現在国において具体的な取り扱いが検討されているところである。
【斉藤議員】
第六に、ホヤやエゾイシカゲガイなど共済の対象となっていない水産物や種苗への対応はどうなるのでしょうか。今後の問題として共済の対象となるよう国に対しても取り組むべきではないでしょうか。
【農林水産部長】
ホヤやエゾイシカゲガイなどの共済の対象となっていない水産物や種苗への対応についてだが、ホヤについては、水産技術センターが人工的に種苗生産できる技術を確立したことから、この普及指導を通して必要な種苗の確保に努めることとしており、普及の状況等を見ながら必要に応じ対応を検討していきたい。また、エゾイシカゲガイの種苗の確保については、天然の種苗を自前で採取するものなので、補助対象からは除かせていただいた。現在、ホヤやエゾイシカゲガイについては、共済の対象となっていないが、養殖対象種として生産の向上が見られることから、今後漁業共済組合と連携しながら国への働きかけなどについて検討していく。
【斉藤議員】
第七に、経営資金・生活資金の問題ですが、農林漁業セーフティネット資金は金利が0.8%から1.05%となっていますが、貸付限度額が原則300万円となっています。宮城県では、県の融資制度の「水産業災害対策資金」を県と市町村が各1%、県漁協が0.95%補助して無利子にし、限度額1000万円、融資枠10億円の資金を検討していると報道されています。
岩手県としても宮城県に負けない対策を講じるべきではないでしょうか。
【農林水産部長】
経営資金・生活資金についてだが、被災した漁業者が利用できる低利の制度資金として、農林漁業セーフティネット資金、農林漁業施設資金、漁業近代化資金などがあり、系統団体でも津波対策資金を創設しており、緊急に資金が必要な場合は、これらの資金の活用を促進している。また、災害個々に対して、きめ細かな対応を図るため、現在系統団体が資金需要の調査を行っている。この調査は4月までかかるものと見込まれているが、調査結果を踏まえて、既存の制度資金での対応が難しく、これを超えた支援が必要な場合は、新たな対応を含め適切に対応していきたいと考えている。
≪再質問≫
【斉藤議員】
知事にお聞きする。知事も現地の災害調査を行い、漁民をお見舞いするともに激励もしてきたと思うが、知事自身が災害の現場を見て、漁民の訴えも聞いて、この復旧対策にどう取り組もうとしているか。知事の今後の姿勢をお聞きしたい。
【達増知事】
今般の津波に関しては、養殖業という岩手県の水産業の多くを占める部分について、広範に渡り大きな被害がもたらされたこと、岩手県全体、すべての県民にとって今回の災害は大きなダメージだったと考えている。漁業者の方々は高齢化が進んでいる一方、沿岸地方は今の経済社会情勢の中で、暮らしや仕事がかなりきつい中での今回の被害ということで、対応を誤れば漁業者が希望を失い、沿岸全体の希望も大きく失われてしまう状況の中で、県としては養殖に携わる皆さんがそれぞれ希望をもって先に進んでいけるような対策を講じる必要があると感じたところである。
【斉藤議員】
今沿岸市町村で取り組んでいる課題の1つに、養殖施設の復旧に対して5割補助、大船渡市は6割補助すると。これは使える養殖施設を復旧することへの支援である。新しい施設を作るのは、強い水産業づくり交付金が対象になる。しかし一定程度復旧して使える養殖施設がある。地元沿岸市町村は、直ちに復旧させるということで手立てをとったのだが、こういう養殖施設の復旧に対しても県が何らかの対策を講じる必要があるのではないか。
【農林水産部長】
養殖施設の復旧については、市町村や関係団体の要望等を受けながら検討し、災害に強い施設整備、激甚災害指定よりも早期に対応できるのではないかということで、まずはそういったものの交付金の形で国に要望したところであり、またその後激甚災害指定が視野に入ってきたことから、そちらの要望も追って行ったところである。議員ご指摘の養殖施設の復旧的なものの必要性については、市町村や地元の要望を良く聞きながら、どういった形が適当なのか考えていきたい。
【斉藤議員】
ホヤとエゾイシカゲガイの問題だが、これは全滅に近い状態で、かつ共済がない。エゾイシカゲガイの場合には、まさに高級品種で、今年1億円の水揚げを見込んでいた。それが全滅に近い被害を受けた。この被害・打撃は大変大きなものがあるが、せっかく新しい養殖品種として開発してここまできた。これが災害により何の共済の対象にもならないと。これからまた取り組むことにはなっても、こういうところにこそ県が何らかの支援策を講じてもいいのではないか。共済の対象にするという点では、国会でも前向きの答弁がされている。「その他の少量水産物などを組み合わせて共済ができないか、今後検討しなければならない大きな課題だ」と。これは早期に実らせていくよう県として努力していただきたい。
平成15年のときにも十勝沖地震津波の被害を受けた。5年おきぐらいにこういう災害を受けている。今回の被害というのは、まさにその時の痛みがなくなって、いよいよこれから利益が見込まれるときにまた被害を受けた。そういうサイクルというのは今後も変わらないのではないかと思う。それだけに、しっかりしたセーフティネットを確立していくことが必要ではないか。
【農林水産部長】
ホヤやエゾイシカゲガイについては、現状では共済の対象としては制度上難しいということだが、例えば激甚災害指定の中で、指定にならないかとか今議員が示した国の動向も見ながら検討していきたい。
【斉藤議員】
宮城県の融資の例もリアルに紹介した。宮城県の場合には、最初から水産業災害対策資金というのがあり、それについて、実際は2.95%なのだが県と市町村が各1%、県漁協が0.95%補助して無利子にすると。1000万円が上限だというのが使いやすい。水産業の場合、200万円300万円ではそれだけでは何ともならない。せっかく隣の宮城県でこういう制度があるわけなので、今回緊急にでも漁協とも協議しながら、宮城県に負けない対策を講じる必要があるのではないか。
【農林水産部長】
宮城県のような資金を事前に用意する考え方もあろうかと思うが、本県では、従来災害個々に対してきめ細かく対応するということで今回のような形になっているが、あらかじめそうした資金を用意するような方法が適当かどうかということについては、今後の課題として検討させていただたい。