2010年3月24日 最終本会議
2010岩手県予算・県立病院等予算に対する反対討論


 日本共産党の斉藤信でございます。議案第1号、第13号に反対の討論を行います。
 議案第1号は、2010年度岩手県一般会計予算であります。来年度予算は、昨年8月に行われた総選挙による政権交代が行われて編成された初めての県予算であります。多くの県民は雇用と福祉など県民の暮らしを守る県政への転換を強く求めていました。しかし、示された県予算案は、本会議と予算特別委員会での論戦で明らかにしたように、従来型の自民党政治追随の県政を変えるものはほとんどありませんでした。
 反対する第一の理由は、最も切実な課題となっている雇用対策、中小企業対策が極めて不十分なものとなっていることであります。
 昨年1年間の県内の有効求人倍率は、0.34倍で史上最悪となり、一昨年10月以降の事業主都合の離職者は45014人に及んでいます。一方で今年1月の雇用保険受給者は8841人となっています。失業の長期化のもとで生活の危機に直面しています。ところが、県の雇用対策は、産業振興で1022人、基金事業で短期雇用の2497人を含め3120人、合計4142人の雇用創出にとどまっています。
 3兆5000億円余の巨額な内部留保をため込みながら工場閉鎖を強行し870人の首切りを進めたソニー、6600億円の内部留保をため込みながら1130人の再配置という首切りを進めている富士通、1000億円余の内部留保に手をつけず800人余の期間工と派遣を雇止めした関東自動車など、雇用破壊の先陣を切った誘致企業の責任は重大です。自動車産業と半導体産業の誘致を進め、産業の柱として推進してきた県の責任は重大であり、誘致大企業の雇用と地域経済を守る社会的責任を強く求めるべきであります。
 また、鳩山政権による北上コンピューターアカデミーと4つの地域職業訓練センターの理不尽な廃止計画に対して、達増知事がいち早く廃止を容認する譲渡条件の申し入れを行ったことも大問題です。労働者派遣法の改正は雇用破壊の要因となっている「使い捨て」の派遣労働を是正する重大問題ですが、短期の雇用でも1年を超える雇用であれば常用雇用として製造業への派遣禁止の例外とし、登録型派遣についても専門26業務を例外としていることは全く実効性がない欠陥法案となりかねません。こうした課題について全く政府にものが言えない県の姿勢も問題です。
 県内の中小企業は、事業所数の99.8%、従業員数の89%を占めています。ところが赤字の企業が68.1%も占めています。中小企業対策の予算が融資を除けばわずか39億円では地域経済も雇用も守れないことは明らかであります。抜本的な増額と対策の強化を求めるものです。
 反対する第二の理由は、歴代自民党政治の社会保障削減路線からの転換がはかられず、医療・福祉・介護切り捨ての県政が続いていることです。
 県内市町村の国保税は、所得300万円で40万円を超える異常に高いものとなっています。滞納者が15.5%と加入世帯の7世帯に1世帯を超え、33500世帯となっています。滞納者から保険証を取り上げる資格証明書の発行は2月現在25市町村で1267世帯、短期保険証の留め置きは18市町村で1562世帯もありました。その後981世帯に交付されていますが、「金の切れ目が命の切れ目」というべき実態です。特養ホームの待機者も毎年増加し5539人に達し、在宅で早急に入所させるべき高齢者が1022人となっていることも重大です。さらに低所得者向けの従来型の多床室がこの間375床も減少していることも問題です。居宅サービス利用料は全国最低です。「保険あって介護なし」の実態を打開すべきであります。
 反対する第三の理由は、岩手県の基幹産業である農林水産業の対策が極めて弱いことであります。
 それは、県の予算全体が増額となる中で農林水産業の予算は6.1%、41億8600万円余減額となっていることに象徴的に表れています。
 当面、チリ地震津波による漁業被害に対して本日提出された補正予算だけでなく、きめ細かな抜本的な対策をさらに講じるよう求めるものです。
 農業、漁業、林業を基幹産業にふさわしく、粗生産額が確実に拡大され、再生産が保障される対策を講じるべきであります。
 反対する第四の理由は、行き詰まりと破たんが明らかな競争主義と市場原理主義に固執した教育の問題です。
 学力テストが抽出調査になったものの、72.5%の学校が来年度も参加するということは競争主義とテストづけから抜け出せないことを示すものです。目標達成型の学校経営は、学校と教育に市場原理主義を導入するもので、人事考課と一体となった検証は管理主義を一層強め教師の多忙化をさらに深刻にして、教育の自由を奪うものになりかねません。
 国の修学支援金制度で私立高校の授業料が軽減されます。ところが、県はこれまでの授業料減免のための予算を8130万円、84%も削減しました。これは全国ワースト4位であります。削減ではなく授業料のさらなる軽減のために活用すべきです。
 反対する第五の理由は、簗川ダムや津付ダム、花巻空港整備事業など、ムダと浪費の大型公共事業に固執して推進しようとしていることであります。
 民主党中心の鳩山政権が「コンクリートから人へ」のスローガンのもと、不要不急のダムや大型公共事業を見直そうとしているときに、達増県政は本来率先してダム事業の見直しに取り組むべきであります。見直しに取り組めない背景には小沢流の利権政治があるのではないでしょうか。
 議案第13号は、2010年度岩手県立病院等事業会計予算であります。
 地域医療の確保と県民の命と健康を守るために献身的に取り組んでいる医師、看護師など医療関係者の皆さんに心から敬意を表するものです。しかし、県立病院のあり方については、医師不足とともに昨年有床診療所の無床化が強行されるなど重大な問題が少なくありません。
 反対する第一の理由は、県立病院の新しい経営計画に基づく無床化と民間移管の強硬路線が行き詰まっていることです。
 特に、花泉診療センターの無床化強行に続く民間移管の強行は、59年続いた県立の医療機関を廃止するものであり、異常で無謀なものでした。わずか26日間の公募は手を挙げていた民間医療法人に決めるための手法でした。しかし、この民間医療法人は今日に至るまで医師確保の具体的な見通しもなく、県民と県議会、医療局を欺いてきました。本来、この申請を却下すべきであります。もし、このまま開業を強行しても10年間どころか1年も継続が難しいのではないでしょうか。
 県が無床化を強行した地域についても命を脅かす深刻な事態が引き起こされており、関係市町村、地域住民とともに今後の地域医療の確保と、医療・介護・福祉の連携に県医療局も責任を果たすべきであります。
 第二に、無床化を強行しても医師不足と医師の退職に歯止めがかかっていないことです。今必要なことは、高度医療から地域医療までのネットワークを守り、「県下にあまねく医療の均てんを」めざしてきた県立病院の理念を高く掲げて、そこに魂を込めてこそ県立病院の魅力を高めることができるということです。そのために地域医療を守る医師と地域住民との協力協同を本格的に強化すべきです。
 第三に、深刻な看護師不足を解決すべきです。看護師不足の中で7対1の看護体制を進めたために、9日夜勤が広がっています。患者と医療の安全のためにも看護師の大幅な増員に取り組むべきです。
 第四に、県立沼宮内病院については、病院存続を求める岩手町と地域住民の強い願いにこたえ、検診体制への医療支援などを具体化し、地域医療を守る取り組みを支援すべきです。機械的に無床化を強行すべきではありません。
 議案第12号は、2010年度岩手県港湾整備事業特別会計予算であります。貨物取扱量が計画から大きくかい離していても、過大な港湾整備事業だけは計画通り進められており、抜本的に見直しを図るべきであります。
 議案第15号は2010年度岩手県工業用水道事業会計予算であります。巨額の内部留保を持ちながら派遣切り・期間工切りを大規模に進めてきた誘致企業に対しても料金の軽減を行うことは県民の理解が得られないものです。
 議案16号から19号は、県の行う公共事業について、関係市町村に経費の一部を負担させるものであり、負担のあり方を含め見直しが求められているものであります。
 以上申し上げ、反対討論といたします。ご清聴ありがとうございました。