2010年4月14日 商工文教委員会
雇用対策に関する質疑大要
【斉藤委員】
今の雇用情勢をどう見るか。事業主都合の離職者は若干減っているが、失業の長期化の中で、雇用保険受給者は8900人程度である。資料の中で、リーマンショックの一昨年10月以降の離職者数は47000人になるのではないかと思うが正確な数字を示していただきたい。
そうした中で、2つのポイントがある。1つは、安定して働ける雇用の場をどう確保するか。いわゆる輸出型、景気が悪くなったら解雇するということではない、内需中心の循環型の地場産業を本格的にどう振興するかということが本当に問われている。そういう自動車や半導体ではない、内発型の雇用の創成に本気で取り組む必要があるのではないかと思う。
もう1つは、失業の長期化の中で生活苦、生活自身支えられないという状況である。3月議会で私が一番強調した問題は、ワンストップサービスを早く県内各地でやれるようにしてほしいと。これは「そういう方向で努力する」という答弁があったが、3月に雇用就労生活支援の協議会も各地域でやられたようだが、これはいつからやれるのか。やれるところから直ちに、その気になったらやれる話であるので、ワンストップサービスというのはできるだけ早く実施していただきたい。つい最近北上のジョブカフェでもやろうという報道になっている。本当にやれるところから早く実施し、全県に定着させる必要があるのではないか。
【雇用対策課長】
リーマンショック以降の離職者数は、20年10月から事業主都合による離職者を総計すると47301人となる。
雇用の場の確保ということだが、我々としては基金事業を使い、22年度は3120名の雇用を目指してその事業化を進めている。4月1日現在では、そのうち2924名を雇用する事業計画を今各部局・市町村で具体化している。
ワンストップサービスについては、県の雇用部門、福祉部門、市町村の福祉部門、あるいは社会福祉協議会、ハローワークそれぞれの協力が必要である。そういったことから我々としては、早急にワンストップデーを開催していただくように強く要望している。「できるところから」という指摘だったが、例えば奥州市の求職者総合支援センターでは、市の協力を得て11月から1月に1回程度だがそういった福祉部門も入った形での相談支援を始めている。そういう例を活用しながら全県下に広げていきたい。
【斉藤委員】
基金事業の雇用というのは、つなぎなのである。基本的には6ヶ月で、今1回更新できるので去年の秋以降は1年は働けると。私がもらった資料では2808人、先ほどの説明では2924人と増えているが、結局6ヶ月で切れた人がまた数に戻る。そういう意味でいくと、つなぎの雇用という枠を超えないので、だから安定した産業振興による雇用というのを本気でやってほしい。それに近いのがふるさと雇用再生事業である。これは去年の実績に対して100数十人ぐらいしか増えない。去年が585人で今年度の新規雇用の見込みが661人と。これは去年の雇用を継続するわけなので、厳密には80人ぐらいしか増えない。これなんかは倍に増やしてもいいのではないか。こちらの方が継続的な雇用に近いわけで、そこを目指しているので、さまざまな困難な課題はあると思うが、ふるさと雇用を倍にするぐらいの取り組みにする必要があるのではないか。
新規高卒者に対する取り組みは、かなり岩手県は頑張ったと評価したい。昨年末に事業所を訪問し151人の求人を創出したり、未就職者に対して就職支援のプログラムがたくさん出て、2月段階で292人なのでおそらく3月末はもっと減っていると思うが、初めて新卒者向けの職業訓練が実施されると。世帯収入300万円以下の場合には月10万円支給されるという制度も出ている。これが一番効果的なことだと思うが、中小企業団体中央会が行う、新卒者の就職応援プロジェクト、いわゆる職業体験である。これは1日7000円支給され職場実習をやると。うまくいけばその職場に定着できると。これは所得制限はないので、ある意味でいけば契約社員より待遇がいい。定員もあるとは思うが、こういう制度が新規学卒者の未就職者に作られたというのが1つの前進である。これを生かしてやってほしい。これらのメニューの取り組み状況はどうなっているか。
【雇用対策課長】
緊急雇用創出事業について。2808人という数は、緊急雇用だけの雇用創出計画上の人数で、ふるさとも入れると先ほど申し上げた数になる。緊急雇用については、たしかに短期の雇用ではあるが、離職者の方々のとりあえずの働く場を提供するというのが目的であるので、究極的には長期の雇用が望ましいわけである。そういった意味でのステップの1つ、緊急的な措置として行政がやるべき部分ということでやらせていただいている。
ふるさと雇用再生事業については、21年から23年までの継続事業であり、雇った方については3年間基金で雇った後、できれば事業者に直接雇用していただきたいというのが事業の性格であるので、そういった点では初年度500人余雇った中での、さらに事業拡張等にともなったものが今回80名程度ということで増えている。増やすべきだという指摘があったが、県としては例えば、知事会等を通じて緊急雇用とふるさと雇用の基金事業の弾力的な運用もすべきではないかといった要望等も出しており、そういった中で取り組んでいきたい。
新卒者への支援メニューに対する状況について。就業体験については、雇用能力開発機構が実施している基金訓練で行う。これは盛岡商工会議所と奥州市の職業能力開発協会で行う予定で今取り組みを進めている。盛岡商工会議所実施分については、定員20名について20名応募がありいっぱいになった。奥州市の分については、新卒者の方が思いのほか内定が改善され、なかなか人数が集まらないと聞いている。それから、過日、岩手県中小企業団体中央会において、受託者の募集を修了し、県内各地の中央会傘下の組合員の企業が応募しているようだが、例えば盛岡地区であれば川目の工業団地の組合、北上地区であれば金属工業組合、あるいはFALの商業組合等が受託されていると聞いている。事業開始については5月以降と聞いている。そういった形で準備を進めている。
【斉藤委員】
切実なのは、誘致企業による解雇・人減らしである。4月1日付のある新聞で、富士通のことが書いてあった。3月末までに700人が離職したと。離職した、退職した人の話で、毎週1回再就職支援会社の事務所を訪ねていると。そして月18万円の受給はあと3ヶ月しかない。おそらく10月で退職された方だと思う。しかし全く働き口がないと。この方はハローワークにも行っている。おそらく月18万円の雇用保険というのは現役のときにもらっていた6割ぐらいだと思う。これ自身が大変なことだが、あと3ヶ月で切れてしまう。そして毎週通っても全く見つからない。有効求人倍率が全県で0.39、奥州は0.30、この数字も求人が偏っている。資格や経験が必要となってくる。製造業をやってきた方々がとてもすぐ応募できるようなものではない。20件問い合わせたが面接できたのはたった5件で、その5件も実らなかった。大変切実な声が出ている。
3月議会で取り上げたときには、「『最後の1人まで企業は万全を尽くし再就職を支援する』という回答をいただいている」という答弁はあったが、富士通の再就職支援の取り組みはどうなっているか。例えば、3月で700人がすでに退職している。うち再就職に結び付いたのはどこまでいるのか。ソニーは昨年12月で424人、さらに3月で20人ぐらい退職している。ここは再就職支援会社を3つもやっている。こういうところの再就職はどこまできているのか。本気になって支援しているのか。
【企業立地推進課総括課長】
我々は随時企業側と連絡をとる体制をとっている。また、その本格的な数字の把握等に関しては会社側の方も今後本格化するということで、まだ数字は把握していないが、就職支援会社等を通じて頑張っているという状況である。
【斉藤委員】
それではいけない。今紹介したように、10月で退職した人はあと3ヶ月しか雇用保険を受けられない。再就職支援会社というのは、本社から頼まれて何人再就職させたかというのは随時報告事項である。だからきちんと把握すればできないことはないし、そういう点で企業の責任が大きいので、これは必ず把握するようにしていただきたい。700人の失業というのは大変で、金ヶ崎町だけでも100人いるのではないかと。だから町の予算は、それで町民税が減るという予算を組んでいる。
アルプス電気、アイワの撤退のときに、最後の一人まで頑張らせたと。これは釜石の合理化のときの教訓で、岩手県は誘致企業に対してそういう再就職で雇用を守る責任を強く求めてやらせてきた実績があるので、そこをぜひ厳しくやっていただきたい。
私は人減らししたこと自身が合理性がないと思っている。例えばソニーは3兆5000億円の内部留保をあのリーマンショックの中で増やした。富士通は6000億円の内部留保をもっている。いわば体力のある誘致企業が株主の配当は増やしても雇用は守らなかった、地域の工場を守らなかったというのは許されない。だからこそ、再就職に対する責任というのは絶対に果たさなければならない。
今日説明を受けた経済雇用情勢の中で、例えば県南では、「自動車産業は増産体制検討の動き、半導体製造装置関連産業は好調」となっている。自動車産業はリーマンショックのときに数カ月で1800人人減らしした。この1年間は減ったり増やしたりでだいたい現状維持。全体とすれば1800人減ったままではないかと思う。半導体は去年数カ月で1000人減らして、さらに1800人減らしたというのが県の報告である。持ち直しているのであれば、そういうところに雇用の改善を戻す動きがあるのかどうか、下請けの状況も含めてどう把握しているか。
【企業立地推進課総括課長】
富士通、ソニーの関係の再就職については、今後把握に努めていきたい。
最近になり、県南地域を中心に多少生産状況の回復にともない忙しいということについては、企業訪問や市町村からの情報提供などを通じて把握している。我々としても、そういったことにともない、ぜひ人を増やしてほしいということは訪問等の機会に申し上げているが、今の増産の動きが将来どの程度本格的な回復につながるのかということについて、まだまだ企業のマインドとして若干弱含みなところもあるということで、なかなか本格的な雇用の回復までにはつながっていない状況ではないかと把握している。我々としては、製造業の求人に対する期待が高いということもあり、増設に対する支援だとか新たな企業の県内への立地ということについて全力で取り組んでいきたい。
【斉藤委員】
ぜひ増産体制になったとか生産が回復したということであれば、雇用に結び付くようにぜひ強く求めていただきたい。特に自動車産業、半導体産業は岩手県が産業の柱として推進してきたものなので、行政の責任としても重視してやっていただきたい。
職業訓練センターの問題について。廃止するという計画が出され、一回は廃止撤回を求めた。2月にせっかく知事が厚労省に行ったら、無償譲渡で廃止撤回の旗を降ろしてしまったのは大問題だと指摘したが、この職業訓練センター、北上コンピューターアカデミーの廃止の動きはその後どうなっているか。失業が長期化し13ヶ月も0.3倍台が続いているときほど、職業訓練事業というのはもっと拡充されるべきである。職業訓練を受けたうち60%以上が再就職している。そういう職業訓練というのは拡充することはあっても縮小するということは絶対あってはいけないし、本来国が廃止するということをやるべきではない。今でも廃止・撤回で全国の都道府県と一緒に頑張るべきだと思う。この状況はどうなっているか。おそらく関係市町村とは、国がどうあれ今のセンターを基本的に守るということで頑張っていると思うが、県はどのように考えて維持しようとしているのか。国との交渉状況もあれば示していただきたい。
それから、職業訓練の中で、訓練生活支援給付金というのがあり、これは10万円、12万円支給されながら訓練を受けられるという新しい制度なのだが、意外と申請者が少ない。1月の段階では問い合わせが1800件、受給したのは2百数十人そこそこだった。今の段階でどのぐらい利用されているか。
【労働課長】
職業訓練センター等の廃止については、国の訓練を行う施設として地域においては産業の振興上、あるいは労働者の就業支援を行う上できわめて重要な施設であると認識しており、引き続き利用可能となるように施設の存続が必要だと判断している。今回の廃止については、独立行政法人の改革の一環であると認識しているが、職業訓練の重要性については、国・県変わりないものと考えている。したがい、職業訓練体制の充実を引き続き継続するという風な観点で、市・県とも一致し取り組んでいきたい。
緊急人材育成支援事業の生活支援給付金の状況だが、岩手労働局によると、3月31日現在、訓練生活支援給付金については、相談件数が2683件、申請件数は642件となっている。
【雇用対策・労働室長】
職業訓練センターの国による廃止をめぐるその後の動きだが、3月11日に県のほうから施設の譲渡については無償で、譲渡後についてはきちんとした制度をつくり支援していただくという要望をした。これについては、その後何度か直接担当課長のほうにうかがったが、いずれ4月ごろを目途に検討結果を示したいということで、それ以上の内容については現在検討中ということで明らかにできないということだった。
また、関係市とは、要望結果も受けて打ち合わせを行い、いずれにしても訓練施設として重要なものだと認識しており、どのような結果が出ようと存続に向け頑張ろうという意思確認はしている。