2010年7月1日 商工文教委員会
「青年の雇用と生活を守る請願」に関する質疑(大要)


・職業訓練センターについて

【斉藤委員】
 深刻な雇用危機の中で、青年の方からこういう請願が出たということはきわめて重要だと思う。
 職業訓練センターの廃止・撤回と職業訓練の拡充ということだが、平成21年度の職業訓練センター、北上コンピューターアカデミーの実績を示していただきたい。また北上コンピューターアカデミーについては、今年の入学者・応募者はどうなっているか。
 それから、平成22年度までに国が廃止の基本方針を定めたと。ここをもう少し具体的に、国の方針はどういう内容なのか。

【雇用対策・労働室長】
 北上コンピューターアカデミーの入学者は、平成21年度については定員100名に対し96名、平成22年度は定員100名に対し123名となっている。
 職業訓練センターの運営状況だが、盛岡・二戸・両磐・胆江にあるが、合わせて普通職業訓練では、21年度実績として年間で3073人、普通職業訓練の短期課程では46815人、研修等として38130人、技能検定として1097人、市民講座として3404人、会議・展示会等として14586人、その他5238人、計11万2343人の利用実績があった。
 国の基本方針だが、平成22年5月14日付で国から通知がきた。基本的な考え方だが、1つは譲渡条件について、「譲渡後も有効活用されることを担保するため、公用・公共目的として利用することを譲渡の条件の基本とすること」。2つ目は譲渡価格の設定について、「譲渡価格は施設等の地価から施設等の解体費に要する費用を減じた額を譲渡価格とすることができることとする。差し引いた額が負の額となる場合は無償で譲渡することができることとする。施設等の時価については、不動産鑑定評価の手続きに基づくとともに、施設等の解体・撤去に要する費用についても、適正な評価に基づきそれぞれ適正に算出し設定することとする」。なお、地方公共団体に譲り受けの意向がない場合の対応だが、「基本的に平成23年度中に取り壊しを行うこととする」ということである。

【斉藤委員】
 北上コンピューターアカデミーは、今年の入学者が123人と定員を大幅に上回り、深刻な就職難を反映していると思うが、できるだけ手に職をつけたいと、専門的な技術を身につけたいということの反映でもある。地元の企業からも大変評価され、就職率も高い。
 一方で4つの職業訓練センターは、総数で11万人を超える利用者がいる。こういう職業訓練施設を事業仕分けで、自公政権の時でさえ、利用状況が良ければ維持すると言っていたのを、廃止という方針に転換した民主党政権はきわめて重大である。雇用危機が深刻になっている中で。今の雇用情勢が深刻で、職業訓練がこれだけ切実に求められて需要が高いときに、国が責任を放棄するやり方を許していいのか。

【商工労働観光部長】
 我々の要望のスタンスは、地域においても職業訓練が引き続き同じように実施できるようにしてほしいというものである。

【斉藤委員】
 きわめて抑えた答弁だった。
 いずれ民主党政権が国民の期待を裏切り、鳩山政権がわずか8ヶ月で退陣したと。こういうことをやっているから国民の怒りにさらされたと思う。まさに公約に反する、雇用対策に逆行するやり方でなかったのか。
 廃止の基本方針で、基本は譲渡だと。譲渡の条件というのは、現存価値と解体費用の差額だと。例えば、北上コンピューターアカデミーや職業訓練センターの場合は、粗い概算でほとんど無償譲渡の対象になるのか。北上コンピューターアカデミーの場合は、コンピューターの設備のリース、運営経費だけで年間4000万円かかると言われている。そういう負担ができるのか。このことについて国は責任をもって支援するという方向を出しているのか。

【労働課長】
 3月11日の知事の要望以降、何度か担当課長に情報収集をしたところである。そして5月14日に譲渡の基本方針が示されたが、具体的な内容等については未だ明らかにされていない状況なので、無償であるかどうかについてもはっきりしたものではない。
 また、運営経費の負担については、国への要望において、継続的に国の責任で運営できるように、施設・設備の整備に要する経費についても措置をお願いしたところだが、その件についても国からの回答は出ていない。

【斉藤委員】
 廃止の方針も無責任だが、その後の譲渡、施設の運営に対する支援策もまったく示されていない。そうなると来年の募集ができない。もう来年の募集をする時期である。
 例えば、現存価値と解体費用は誰が試算するのか。そして施設・設備の運営経費が大きい。この点については全く無回答なのか。国が責任をもつ方向で検討しているのか。
 それから、今まで県は譲渡になった場合でも、基本的には重要な役割を果たしているので施設は継続・維持すると言っていた。譲渡の方針は出されたので、今の段階で撤回は難しいかもしれないが、継続運営する場合の主体はどこか。県なのか市町村なのか、共同なのか。

【労働課長】
 運営経費については、北上コンピューターアカデミーについては、23年度の予算については国において検討中であるということでうかがっている。22年度に入学した生徒が23年度に卒業する部分の経費については国において検討するとうかがっている。それ以降の経費部分についてはまだ検討中である。
 運営の主体については、国からの譲渡条件が示されてない段階で決めることは難しいこともあり、引き続き国からの情報収集に努めながら、国への必要な働きかけを行いながら条件が提示された時点で関係市と十分話し合いながら望ましい方向を検討していきたい。
 建物の算定評価の額については、機構において選定した業者が不動産鑑定評価を行うとうかがっている。

【斉藤委員】
 北上コンピューターアカデミーも4つの職業訓練センターも、県とすれば継続運営するということを3月の議会でもはっきりさせているので、県が責任をもって対応していく必要がある。
 そして民主党政権に言いたいのだが、こういう問題を全て財源も明らかにしないで地方に丸投げするのが地域主権ということであれば大問題である。きちんと職業訓練センターのが運営できるようにしていただきたい。


・ワンストップサービスの定期実施について

【斉藤委員】
 請願では、「ワンストップサービスを全ての地域で定期的に行う」ということを求めているが、この間、今年度に入ってワンストップサービスが3カ所で実施された。3カ所での成果・実績、そして今後県内全域で実施される見通しはどうなっているのか。

【雇用対策課長】
 宮古地区で5月28日に行い相談者数31名に対し70件の相談、奥州地区で6月15日に行い相談者数16人に対し32件の相談、盛岡地区では6月17日に行い相談者数46名に対し101件の相談件数となっている。今後は、北上地区で7月20日、気仙地区においても8月以降実施すると聞いており、その他の地区についても順次行っていくと聞いている。

【斉藤委員】
 失業が長期化している中で、就職斡旋とあわせて、やはり今の生活の確保・支援というのは大変切実である。
 奥州市や花巻市でアンケートを行ったが、家族に失業者・休業者がいるという割合は奥州市で28%だった。最近花巻市でも行い、旧花巻市なのだが26%だった。4世帯に1世帯が家族に失業者・休業者がいるという実態である。具体的な声も寄せられており、「県外にいる息子が仕事を探している。私も半年前に失業している」(50代)、「仕事がないから休んでいる。会社の業績悪化で退職させられた。年齢45歳で採用に至っていない」、「平成21年3月にリストラされ現在職業訓練中である」、「期限切れで失業、それ以来仕事がない。関東自動車期間従業員だったため失業対策にもっと力を入れてほしい」など。失業して1年も経とうとしており、それでも仕事がないという声が寄せられている。それで今の失業の実態をお聞きしたいのだが、県内の失業者の実態、リーマンショック以降会社都合で退職させられた離職者、これは総計でどうなっているのか。そのうち雇用保険受給者の実人員はどうなっているのか。

【雇用対策課長】
 昨日岩手労働局から発表された統計によると、5月の事業主都合による離職者数は2336人で前月比で若干減っている。リーマンショック以降の累計では57010人となっている。雇用保険の実人員については8873人となっている。

【斉藤委員】
 リーマンショック以降57000人が事業主都合で解雇された。おそらくこの半分ぐらいが再就職ということになっているのではないか。昨日の労働局の発表では、岩手県の失業率は5.8%で完全失業者38000人と。完全失業者というのは一月の最後の1週間のデータで、その時にどれだけ求職しているかというデータなので、最低の数である。あとは20回も面接を受けたがダメだったなどあきらめている方がかなり出てきているのが実態である。これが長期化している。こういうときに、再就職のあっせんはもとより生活支援、必要な場合には生活保護の申請が必要だと思うが、昨日の答弁でもあったが生活資金貸付金が急増していると。生活保護の相談、昨年と今年の数、失業や収入減により生活保護の受給、生活福祉資金を借り入れた人がどのぐらい出ているか。

【雇用対策課長】
 生活保護の受給状況だが、21年度の年間の累計だが、保護開始が2023件、うち収入減によるものが551件である。

【斉藤委員】
 生活福祉資金というのは、無利子や低利で低所得者にとっては緊急的な対応では必要な資金だと思っている。しかし貸付である。再就職して返すということが前提なので、再就職できない場合には借金がそのまま残ってしまう。
 それで、今給付制の職業訓練が全体でどこまで広がっているのか。

【労働課長】
 訓練生活給付金についてだが、21年度末現在で申請者は662名、22年度は6月18日現在で422名が申請している。
 相談件数は、22年度については把握していない。

【斉藤委員】
 662件だが、応募は2000件を超えている。相談はしても条件が厳しいので662件にとどまっている。この条件緩和を求めるべきだと思う。やは給付制の職業訓練は失業が長期化して収入がない場合に、所得制限というのでかかるのだが、ここを改善して給付制の職業訓練を柱にすべきではないか。ヨーロッパはこれが主流である。だから失業しても安心して職業訓練を受けて再就職に臨むと。まさにセーフティーネットである。日本の場合は、特に派遣は雇用保険に入っていない、雇用保険も支給が短い、数ヶ月経ったら全く収入が途絶えてしまう。本当のセーフティーネットとして給付型の職業訓練を主流にすべきではないか。

【労働課長】
 申請者662名のうち、基金訓練の受講者は472名となっている。基金訓練の受講者数に比べ7割ほどになっているので、決して少ない数字ではないのではないかと感じている。相談件数の中には、受給の相談だけではなくいろんな相談を含めてとうかがっている。
【雇用対策・労働室長】
 こういった基金訓練のあり方についてだが、現在の政治においても求職者支援法といったものについて検討すると。いわゆる第二のセーフティーネットのあり方について抜本的に検討しようという動きもあるので、我々もそういった動きについて十分注視しながらやっていきたい。

【斉藤委員】
 政府もそういう法案を準備しているし、そうしないとセーフティーネットにならない。解雇された途端に派遣村のような深刻な事態になってしまう。ぜひそういうことも地域から強力に国に求めていただきたい。
 それから、相談件数は2000件を超えている。そのうちの662名である。だから希望しても受給できないというのが実態なので、しっかり押さえてやっていただきたい。


・誘致企業の内部留保の活用について

【斉藤委員】
 誘致企業の派遣切り・期間工切りの実態、再就職の実態を示していただきたい。

【企業立地推進課総括課長】
 誘致企業、最近は生産状況が回復しており、そういう意味で今回リーマンショック後の不況で影響の大きかったソニー、富士通について申し上げると、ソニーは、離職者数が四百数十人に及ぶということだった。これについては、知事をはじめ再就職対策には万全を期すようにということで再三要請してきたところであり、私自身も5月20日にソニーイーエムシーエスの本部のある愛知県を訪問し、引き続きしっかり取り組むようにお願いしている。富士通についても同様の取り組みをしているが、私も5月28日に岩手工場にうかがい、こちらも同様にしっかりお願いしたいということで申し上げている。

【斉藤委員】
 ソニーは440人退職だが派遣は入っておらず二百数十人の派遣切りがされている。何人再就職しているのか。富士通は700人が退職である。この数はさらに増えているのではないかと思う。私たちが地元のハローワークで聞いた範囲では、富士通の場合は再就職が1割だと。新聞でも紹介されているが、18万円の雇用保険があと3ヶ月しかない、これが2ヶ月ぐらい前の話だった。10月・12月・3月と退職されているので、もう雇用保険が切れてしまう状況になっている中で、再就職がどうなっているのか、そういうことをつかんでやる必要があるのではないか。ソニーも富士通も3つの就職支援会社を使っている。だからハローワークとも連携して県とも連携して、最後の一人まで再就職の責任を企業に持たせるというのが岩手県が今まで頑張ってきた成果である。ここを絶対崩さないように、リアリズムでつかんでいただきたい。
 関東自動車だが、最近景気が良くなったと言っているが、期間従業員が去年の11月から今年の6月30日まで約90人減っている。景気の雇用調整弁になっているのではないか。

【雇用対策課長】
 ソニーについては、一関ハローワークに問い合わせたところ、求職登録者が366名で、概数しか教えていただけなかったが、5月末時点で就職できた方が3割という状況である。富士通は、水沢ハローワークに登録された方が313人、北上ハローワークに登録された方が253人で、うち10%〜20%が再就職と聞いている。
【企業立地推進課総括課長】
 関東自動車岩手工場の従業員数は、6月末時点で2430人、うち正規が1670人、期間工が760人である。

【斉藤委員】
 やっとハローワークと連携もとって状況をつかんだということは評価したい。これは強力に県が関係機関や誘致企業とも連携しやっていただきたい。
 ソニーは3兆5000億円の内部留保をもっている。富士通も6000億円の内部留保を抱えている。体力があるのである。ソニーは会長兼社長が8億1000万円の報酬をもらったというのが明らかになっている。一方で、会社の経営が厳しいと言いながら内部留保は貯め込み、自分たちの報酬は高く労働者を犠牲にするというやり方は絶対ゆるせない。体力のある企業なので。
 関東自動車について、最近の新聞にも出たが、数年前から期間工として働き、1年ごとに契約を更新していると。最近もやっと6ヶ月の更新がされた。月収は額面で25万円ほどだと。これは正社員の半分だと思う。今関東自動車は期間工の場合は6ヶ月更新である。それで4年5年と働いている。ほとんど正社員と同じ仕事をしながら。先日、宮城のセントラル自動車を見てきたが、ほとんどが正社員だと。だから工場が移転したときに、ほとんど宮城に来ると。地元からもっと求人をとりたかったが、ほとんどの労働者が正社員待遇なもので、工場が移転しても多くが来るという話を聞いた。セントラル自動車が正社員がほとんどだというのなら、関東自動車のほうが実績のある会社である。もっと正社員比率を高め、とりわけ期間工を4年5年使っているというのは職業安定法の精神から言っても、それに反することだと思うが、こういう期間工の正社員を強く求めるべきである。景気の雇用調整弁には絶対すべきではないと思うがいかがか。

【企業立地推進課総括課長】
 期間工から正社員への登用については、機会あるごとに雇用の拡大という観点からお願いしているところである。関東自動車においては、平成21年度は厳しい経済状況にはあったが10名を登用したと聞いており、今年度もそういう形で進めると聞いている。引き続き会社でも努力していると思っている。


・労働者派遣法の抜本改正について

【斉藤委員】
 この問題については、日本弁護士連合会もかなり詳細な意見書を出し、会長声明も出している。問題点は、製造業派遣の問題については、2ヶ月更新で1年以上働けば常用雇用ということで規制の例外、いわば2ヶ月単位の雇用も継続されていればいいということである。そうすると8割以上が対象外になると。登録型派遣の問題については、26の専門業務を例外としている。26の専門業務は全国で100万人いるが、うち50万人はパソコンを使った事務的作業で、これが拡大解釈されてやられているので、これが例外になったら登録派遣の規制にはならない。その他に、日雇い派遣も特定の業務は認めると。みなし雇用についても、派遣元の労働条件で派遣先が雇用するというひどいものである。グループ内派遣というのも認めると。均等待遇がないと。均衡というごまかしの中身になっている。これは、民主・社民・国民新の政権合意からも後退した中身である。政労使の審議会で議論したというが、結局財界の圧力で与党3党が合意したところからも後退し、8割の派遣労働者はそのまま使われる。これでは本当の改正にはならない。今国会で継続審議の最中なので、日弁連、派遣ユニオンもこれでは骨抜きだと指摘しており、こうした意見や実態を県としてどう受け止めているのか。国会審議中だからこそ、地域から実態を踏まえて抜本的な改正を求めることが必要ではないかと思うがいかがか。

【雇用対策・労働室長】
 日弁連が提言されたということで、2月19日に出された意見書については読ませていただいた。そういった主張であるということで、内容は理解したところだが、国会においてそれぞれの立場からいろんな意見を出させていただいて、しっかり議論されると思っている。