2010年7月5日 最終本会議
議案および請願不採択に対する反対討論
日本共産党の斉藤信でございます。議案第9号、第17号と請願陳情受理番号第90号の不採択に対する反対討論を行います。
議案第9号は、住民基本台帳法施行条例の一部を改正する条例であります。その中身は、県立病院と県営住宅の徴収事務に住民基本台帳ネットワークシステムを活用しようとするものであります。
そもそも住民基本台帳ネットワークシステムは個人情報の漏えいが心配される不完全なシステムであり、全国でもすでに個人情報が漏えいする事態も生じています。また、実際の活用状況を見れば、岩手県県税条例による県税の賦課または徴収に関する事務が26685件となっており、旅券法に関する利用もあるものの、行政による住民の管理と滞納徴収に使用されているのが実態です。
今回の改正は、さらに県立病院と県営住宅の滞納徴収に活用を広げようとするものであり、住民基本台帳ネットワークシステムがこうした徴税を強化するためのものであることを一層明らかにするものであります。
住民基本台帳ネットワークシステムのカードの発行数は45315枚であり、これはわずか3.37%にしかすぎません。一方で県の維持管理費用は1億3850万円余かかっています。実際には県民にとってはほとんど活用されていないのが実態です。
問題のある住民基本台帳ネットワークシステムは、そのあり方が根本から問われているものであります。
議案第17号は、津付ダム建設橋梁工事の請負契約の締結に関し議決を求めるものであります。
津付ダム建設事業そのものが、洪水対策からみても効果のないダムであり、河川改修より70億円も過大にかかるムダ遣いのダム建設事業であります。本来、国の見直し基準が示されなくても県自身が見直し、中止すべきダム建設事業であります。
また、国の「できるだけダムに頼らない治水」対策をめざすダム事業の見直し基準の中間とりまとめの「たたき台」によれば、検証の検討手順として、ダム事業等の点検を行い、ダム案とダム以外の複数の治水対策の立案を行い、環境への影響などの評価軸ごとに評価し、総合的な評価を行うとしています。ダム以外の方法による治水対策案については、「決壊しない堤防」、「決壊しづらい堤防」の検討など26項目が提起されています。検証に当たっては関係者の意見を聞くとともに、主要な段階でパブリックコメントを行うとしています。時間をかけて徹底して検証し見直しすべきであります。
こうした状況を考えるなら、津付ダム建設事業に関わる工事は当面凍結すべきであります。
請願陳情受理番号第90号は、「沖縄普天間飛行場の早期閉鎖・返還を求め、訓練移転の受け入れに反対する」請願であります。
先ほどの総務常任委員長に対する質疑でも質しましたが、沖縄の米軍普天間基地の早期閉鎖と返還を求めることは沖縄県民の圧倒的な総意であります。琉球新報の世論調査によれば、県民の84%が普天間基地の名護市辺野古への移設に反対しています。仲井間知事は6月県議会において「県内移設は不可能に近い」と明言しています。こうした沖縄県民の総意を踏まえて請願は採択されるべきではなかったでしょうか。
そもそも、米軍の普天間基地は沖縄の地上戦のさなかに占領され、土地と家を無法に奪われてつくられた国際法違反の基地でありました。本来無条件で撤去・返還されるべき基地であります。戦後65年間にわたって米軍基地が居座ってきたことこそ異常なアメリカいいなりの政治だったといわなければなりません。
また、沖縄の海兵隊は、これまでもベトナム侵略戦争をはじめ、いまでもイラクやアフガニスタンに出撃し戦争している侵略部隊であります。日本を守る「抑止力」ではありません。だからこそ、民主党も昨年総選挙の時には「国外移設、最低でも県外移設」を公約したのではないでしょうか。政権が菅政権に交代したとしてもこの公約違反は許されるものではありません。
岩手県民にとって忘れてならないことは、平成5年の大冷害の時に、わずかな種もみを沖縄県の石垣島に運び増殖していただき、翌年の田植えに間に合わせるという前代未聞と言われた協力をいただいたことであります。この協力と交流を記念してこの種もみは「かけはし」と名づけられました。
沖縄県民が戦後65年間、米軍基地の支配のもとで耐えがたい苦しみと痛みを受け、県民が一丸となって普天間基地の閉鎖・撤去、県内への基地の押し付けに反対しているときに、岩手県民こそ、岩手県議会こその沖縄県民の声にこたえるべきではないでしょうか。
この請願に反対することは、沖縄県民の願い、痛みと苦しみに背を向ける行為と言わなければなりません。
日米合意では、危険な沖縄の米軍の訓練の一部を全国分散移転することを求めています。自公政権の時以上の悪質なものです。危険な訓練は分散するのではなく除くもの、やめさせるものであります。実際嘉手納基地では訓練の一部が本土に分散移転されましたが、海外の部隊が来て基地被害は全く軽減されませんでした。
重大なことは、請願審査の際に県側が訓練移転の受け入れを「想定していない」と答えていることであります。県が「想定していない」と言っているのに、なぜこの請願は不採択となったのでしょうか。これは、危険な米軍基地の訓練を岩手県民に押し付けようとするものであり、県民の平和の願いに背を向ける許されない態度であります。
以上申し上げ、私の討論といたします。ご清聴ありがとうございました。