2010年9月1日 議会運営委員会
副知事選任問題についての質疑(大要)
【斉藤議員】
副知事の選任に関して同意を求める議案が本日の臨時県議会に提案されることになっている。昨日の議会運営委員会では、異例の採決で人事案件に対する質疑も討論も行わないことを民主会派の多数決で決められた。本来議案に対する質疑・討論を行うことが県議会の最大の使命だが、議論を封殺したことは議会の自殺行為ともいうべき暴挙だと厳しく抗議したい。
そこで第一に、県議会先例集の解釈についてお聞きしたい。第2章第1節第46項では、「知事が人事案件を提出しようとするときには、あらかじめ議会運営委員会において選任しようとする者の氏名及び略歴を説明し、その意向を聞いた後、提案するのが例となっている」と。「議会運営委員会の意向を聞いた後、提案する」とはどういうことか。
【議事課長】
人事案件の議決にあたっては、議会運営委員会にあらかじめ前日の議会運営委員会でもって、提案前に略歴あるいは氏名等について資料をもって説明しているところで、その内容をご理解いただいているということであり、実際にそのようにこれまでも運営をしてきた。
【斉藤議員】
全然答弁になっていない。「選任しようとする者の氏名及び略歴を説明し、その意向を聞いた後、提案するのが例」だと。意向というのは、大方賛成かどうかということではないか。同意できるかどうかということではないか。真っ二つに割れたら、その前提が崩れると思う。そういう慎重な取り扱いをこの先例集ではしているのではないか。
【議事課長】
これまで、委員長の進行により、執行部からの説明をした後、「これでよろしいでしょうか。ご了承願います」ということで一応お諮りしている。
【斉藤議員】
なぜここまでもめているのか。質疑も討論もできなかったら賛否も決められないという議論をしているのではないか。賛成できるのだったらこんなにもめない。この先例集の土台は崩れていると思う。きちんとこの議会運営委員会で意向を聞くべきである。先例の通りやるべきである。
【議会運営委員長】
総務部長に対する質疑はあった。
意向というのは了承とは違うのではないか。
【斉藤議員】
委員長、だったら意向というのは何か。賛成か反対かではないか。大方賛成されるということを前提に、質疑・討論を省略している。質疑・討論を省略するというのは、それだけ慎重な扱いをして、大方の理解を得てやるというのが前提である。大方の理解を得られないのだから。質疑・討論を省略する前提が崩れていると言わざるを得ない。だからもめているのだと思う。先例集の理解がせっかくそのように慎重な規定をしているのに、それを無視して「決まっているから」ということであれば、中身を取り違えている。その点でいけばこれは振り出しに戻すべきである。
【議事課長】
先ほどの説明だが、「人事案件を提出することについてご説明の通りでよろしいでしょうか」ということで、委員長から「総務部長の説明の通りご了承願います」という風にこれまでも説明している。
【斉藤議員】
何が議会運営委員会に提案されるかというと、氏名および略歴を説明する。だから「こういう人でよろしいでしょうか」という意味である。議会運営委員会で大方賛成したら議案を出すと。賛否がこれほど割れていたら出せない。やはり質疑・討論を省略するというのは、それだけの前提があっての話である。形式的に省いているのではない。中身がともなって初めて質疑・討論というのは省略されると思う。
【議会運営委員長】
氏名・略歴を説明して本会議に提案するということで、賛否まで議運で求めているわけではない。
【斉藤議員】
だとすれば本会議で議論できればいい。しかしここで説明し、意向を聞くということがあるから本会議で省略されるのである。
昨日の議会運営委員会では、先例を大事にすべきだという結論だった。その先例集の精神というのはそうではないのではないか。質疑・討論を省略するにはそれだけの前提条件があって、先例集でもこれだけきちんと書かれていると。先例だからという昨日の議決は、妥当性を欠いたと言わざるをえない。先例に基づくというのであれば、きちんと先例の精神を踏まえてやらないと間違ったことをしてしまう。そこをしっかり委員長が舵をとっていただきたい。
【議会運営委員長】
いずれ今まで、先例でも本会議で質疑・討論はやっていないので、今回に限らず議会運営委員会で質問して、意見表明した経過、そういった先例はずっとある。
この意向については、斉藤議員と私の解釈が若干違うようだが、私はあくまで本会議に提案することについての了承だというのが私の解釈である。いずれ基本的に、質問されたいことがあって、この場でしかやるところがないわけなので、質問を続行していただきたい。
【斉藤議員】
委員長の解釈は間違っていると思う。質疑については、第5章第5節108項で、討論については第11節137項で「あらかじめ議会運営委員会に示してから提出するのが例となっているため、質疑・討論を省略する」となっている。だからその意向が前提なのである。やはり討論を省略するというのは、大方ここで理解を得るからなのである。しかしこの間、24日、31日の議会運営委員会でこれだけ喧々諤々議論されている中で、省略する前提条件が先例集から見てもないではないか。委員長の解釈は、先例集の精神を捻じ曲げている。正確な理解ではない。議案に対して審議するというのは議会の命である。それをやらないというのは、議論しなくても共通の理解が得られているという意味である。得られていないのだから。こういう場合には、質疑・討論をして当たり前だというのが先例集の精神だと思う。改めて委員長の見解をうかがいたい。
【議会運営委員長】
意向というのは、本会議に提案することだと個人的には理解している。ただ、本会議で質疑・討論をやってこないわけであるので、それに変わる場として、市町村議会だと全員協議会といった場があるが、県議会はないので、この議会運営委員会で質疑を交わしてきた歴史があるし、今回も先例に従いやると決めたわけであるので、ここでやっていただければいいと思う。
【斉藤議員】
個人的な見解ではなく、きちんとした回答を求めたい。
【議会事務局長】
先例集の第46号は、「知事が人事案件を提出しようとするときには、あらかじめ議会運営委員会において選任しようとする者の氏名及び略歴を説明し、その意向を聞いた後、提案するのが例となっている」ということが明記されている。いろいろ調べたが、これ以上のものを記載したものはなく、これから考えると、人事案件については、提出に先立ち必ず議会運営委員会にご説明の上、提出に際しての意向を確認する取扱いという風にすることが正しいかと思う。これまでも、事前に議会運営委員会においてご説明しており、ご了承を確認しているものである。今回については、8月24日の議会運営委員会で総務部長から説明し、ご了解を求めているものである。
【斉藤議員】
「意向を確認して」という説明でしたね。委員長、意向を確認してください。そして大方の了解を得られなかったら、これは質疑・討論の省略の対象にはならないと思う。そういう意味できちんと手立てを踏んでやっていただきたい。
(休憩中)
【斉藤議員】
人事案件をなぜ問題にするかというと、本会議で質疑・討論を省略するとなっているからである。例えば、会派共同提案の意見書案がなぜ省略されるかというと、会派共同で圧倒的多数で通ったものだからである。人事案件も大方の同意を得ている議案だからである。ただ全国的には、そういう議案であっても質疑されている。だから、質疑・討論を省略するというのは、大方の同意という前提がなければいけないのである。先例集の精神はそこにあると見なければいけない。事務局長は浅はかな勝手な解釈をしてはいけない。
(再開)
【議会運営委員長】
今問題になっているのは、意向が確認されていたかどうかということ、意向の確認の定義がはっきりしないということである。意向の確認をするということがどういうことなのか、どうすれば確認できるのか、ご意見をいただきたい。
【斉藤議員】
先ほど委員長は一時不再議という原則を言ったが、これは1つの定例議会の中である。いま9月議会はまだ始まっていない。だから一時不再議の対象にはならない。昨日の議決は重いが、それをくつがえしてもこの議会運営委員会は何の問題もない。一時不再議の原則にあたらない。やるべきことをやっていなかったら差し戻しだってありえる。
【斉藤議員】
県議会先例集の解釈についてはかなり整理されて新しい到達点になったと。しかし昨日の議決を覆せないのは論理的には問題だと指摘したい。
第二に、全国の都道府県議会での人事案件に対する質疑・討論の状況について改めて議会事務局長についてお聞きしたい。どれだけの都道府県で人事案件について質疑・討論がされているか。さらに委員会に付議されて議論されているところもある。質疑・討論いずれかを含めて実施しているところは15道府県、先例集で質疑・討論を省略している県は21県、質疑もしくは討論のみを省略しているところが4県あるので拡大すると25県になるが、厳密にどちらもできないというのは21県で少数派である。そして委員会付託まで行い副知事の人事案件について議論しているところが滋賀・沖縄・静岡などある。
岩手県の議会基本条例の全文で何が書かれているかというと、「二元代表制の立場から、行政の執行権を厳しく監視する」となっている。人事案件もその通りである。それについて質疑・討論を行わないとしたら、まさに今まで議論されたような議会基本条例の精神に反するものではないのか。全国の流れというのは時代の流れで、審議することが多数になり、禁止している方が少数である。このことについて議長の見解をお聞きしたい。
【議長】
私も議会基本条例の制定に携わって、地域主権ということが言われている中で、地方議会のあり方というものも変わってきている。いずれ岩手県議会も全国に先駆けて3番目に制定したということもあり、昨日も佐賀県議会も調査に来ていたが、全国議長会に行っても岩手県議会は対策のスピードは早いということで、今の斉藤議員の指摘もその通りだろうという認識も持っているし、議論をして改革を進めていただきたいと思う。
【斉藤議員】
議会基本条例を制定して、全国的には岩手県議会というのは独自の条例制定を含めて改革を進めてきたと思う。しかし人事案件について、議会で真剣な議論がされているときに、多数派が多数決でその議論を封殺すると、改革に逆行するという態度というのは残念で仕方がない。
第三に、副知事選任・選考の経過について。総務部長はいつ、どういう場で副知事の新たな選任の意向について聞いたか。その理由はどう説明されたか。新聞報道では、8月12日に知事が財務省大臣官房参事官の上野善晴氏を副知事に起用する方針を固めたとされているが、それ以前に聞いているか。また、12日までに9月1日に臨時県議会を招集する方針を固めたとされているが、どこでどう検討されたのか。
【総務部長】
8月9日の庁議終了後、知事から「副知事を新たに選任したい」と。理由としては、「知事を一人制にした平成10年以降については、出納長を含めた三役三人で県政運営に携わってきた。そういった中で、地方の改革、地方分権の流れ、いろんな県政の諸課題になかなか県の役割も重くなり、こういった中で、特に対外的なトップセールス等も含め、2人で業務運営をするのはなかなか難しくなってきていると感じていた」と。そういったことで、知事なりに新たな副知事の選任について思いを巡らしてきたが、今般適任者を得ることができたと。新たに上野氏を副知事に選任するとともに、その旨を議会に諮りたいという話があった。具体的には、当然副知事の選任にあたっては、議会の同意が必要とされているので、そういう知事の意向を踏まえて議会と調整を進め、庁内的な手続きとしては8月20日の庁議において臨時県議会の招集を決定した。
【斉藤議員】
8月9日の庁議終了後に副知事選任の意向を聞いたと。そして新聞報道では、その時点で9月1日の臨時県議会の招集を固めたというのはきわめて異常である。9月1日というのはすでに県議会の日程が決まっていた。決まっていたにもかかわらず、9月1日の招集を固めていたと。8月20日の庁議の決定も24日の議運の前である。議会日程が決まっている、その変更もない中での庁議で臨時県議会の招集を決めると。まったく議会の意思を一方的に踏みにじるやり方ではなかったのか。
議会日程が決まっていた、それを議会運営委員会で審議する前に庁議で決めたというのはいかがなものか。そういうことはあってはならない。少なくとも議会日程が決まっていたら、議会の正規の機関で審議した上で進めるべきではないか。
【議長】
盆明けの17日に代表者会議が開かれ、そこで各会派の代表者の方にお集まりいただき、こういう案件があるということで、議会日程をどうするかということで、その後20日の庁議で17日の結果を受けてのことである。
【斉藤議員】
8月17日の代表者会議というのは議会の正規の機関ではない。正式決定でもない。正式に議論したのは8月24日の議運だった。このときは、臨時県議会の進め方については継続審議になり昨日までになった。知事の進め方というのは県議会無視もはなはだしいと。このことは厳しく指摘しておきたい。
第四に、知事の任期をあと7カ月と迫った時期に、任期が4年の副知事を新たに選任することはあまりにも異常なことではないか。知事は、トップマネジメントを遂行していくために必要と定例会見で述べているが、具体的にどういうことか。トップマネジメントを進めるために秘書室を新たに設置したばかりである。これはどのように機能したのか、しなかったのか。トップマネジメントの具体的中身も含めて総務部長はどのように説明を受けているか。
【総務部長】
先ほど申し上げたが、知事からは、地方分権の進展、県政課題の山積の中で、トップマネジメントを展開したいということで、今回適任者を得ることができたと。人事であるので、速やかに選任して万全を期したいという話があった。
秘書広報室の関係だが、秘書広報室については、知事等のトップマネジメントを補佐するための先端組織、きわめてスリムな組織として、秘書課と広報部門を特化させた組織で、今回の副知事の選任については、トップマネジメントそのものをさらに強化するという趣旨で置かれたものと承知している。
【斉藤議員】
第五に、地方分権、地域主権が叫ばれている中で、副知事がなぜ財務省からの天下りになるのか。時代に逆行する選任ではないか。
増田知事のときに、県財政の状況も鑑みて、副知事1人体制でいくという決断をした。地方財政がますます厳しくなっている中で、財務省からわざわざ選任すること自身にきわめて疑義を感じる。
知事は定例会見で、「今回の調整の中で初めて知り合った人」と。初めて知り合った人を副知事にいきなり選任すると。知事はいつから、副知事選任の調整を行ったのか。上野善晴氏は誰から紹介されて会ったのか。
【総務部長】
知事からは、財務省ありき中央官庁ありきということではなくて、あくまで適材適所という観点から進めたものであると説明を受けている。なお、具体的な経緯については、私からは答弁を控えさせていただきたい。
【斉藤議員】
いつ頃から調整が始まったのかと聞いた。なぜかというと、定例会見で「初めて知り合った人」と言っている。旧知の人ではない。そういう人が突然財務省から天下りでくると。きわめて異例である。
出された略歴を見ると、上野氏は、平成3年(1991年)6月に大蔵省主計局集計企画官補佐、翌年7月には主計局主計官補佐となっている。大蔵省の主計局というのは、まさに省庁の中の省庁、財務省の中の財務省である。この時の上司は斉藤次郎氏で、1991年の6月に斉藤氏は主計局長になり、1993年には事務次官になっている。いわば小沢一郎氏の盟友である。民主党が政権をとり、日本郵政の社長に返り咲いた。小沢人脈ではないか。主計局のエリート中のエリートである。それが平成9年7月に突然熊本の企画開発部長である。こんな人事はない。そういう意味でいくと、この人事は小沢グループから紹介されて、小沢グループの覇権人事ではないかと疑惑を持たれても仕方のない人事ではないか。これは知事に聞くしかないのではないか。
【総務部長】
上野氏の略歴はおっしゃる通りである。たしかに大蔵省主計局の補佐を務め、当時公共事業を担当したと承っている。その後、熊本県の企画部長として出向されたのも事実である。ただ、そのポストが具体的に財務省のところでどういう位置づけをもつ人事であったのかについては、それぞれの省庁の必要な人事においてなされたものだと考えている。
【斉藤議員】
知事は適材適所だと言ったが、初めて知り合った人を副知事に選ぶ、そんなことはありえるのか。まさに自らの任期が終わりを告げるこの時期に、臨時県議会を開いて特別に選任すると。その経歴はまさに小沢氏と盟友の斉藤次郎氏の直属の部下だった。そういう人事だとしたら疑義を呈するのは当然である。この点はぜひ知事をここに呼んで答えていただきたい。