2010年9月28日
米価暴落への緊急対策を求める申し入れでのやりとり(大要)


【斉藤議員】
 全農の概算金が発表されて、ひとめぼれで8700円、これは3600円安で、あきたこまちでも8500円ということで約3割下落すると。文字通り暴落である。過去最低の概算金。これではコメで自立ができないとか、来年はコメ作りができないとか悲痛な声が上がっている。
 米価暴落の直接的な要因は、言うまでもなく三十数万トン過剰になっている、そのために売れない、そしてそれに対して今の民主党政権は過剰米を買い入れない、あくまで市場価格に任せると。あとは所得補償でやるんだという政府の対応がまとまって米価の下落に表れている。自民党政権のときでさえ、こういうときは何らかの対策をして需給調整してきた。そういう意味では、年間40万トンの過剰米を買い入れて、国の責任で需給の安定を図るのは緊急の課題である。
 特に、岩手・東北が在庫を抱えて、米価の下落が一番大きい。食料供給基地を標榜する岩手の基幹産業の柱であるコメがこういう状況に陥っている中で、岩手日報も「知事の出番を期待する」という論説も出した。河北新報では、「産地としての危機を直視して」ということで、東北は特別に情勢が厳しいと地方の新聞が一様に危機感を持って、何らかの対応をしないと農業の崩壊になりかねないという状況である。
 そこで今日は4点申し入れたい。
 1つは、政府に対して、緊急に過剰な40万トン以上の買い入れを行って米価の安定対策を講じるように申し入れていただきたい。
 2点目は、5年以上の超古米を飼料用にまわし、必要な備蓄米を確保していくと。政府自身が来年度からやると言っている棚上げ備蓄を1年前倒しでやればつじつまが合う。05年06年産米で約40万トン以上ある。そういう措置をとれば備蓄制度として緊急対策ができるのではないか。
 3点目は、コメの再生産を保障する価格・所得補償の制度を確保してほしい。モデル事業自身が13700円という基準で、労賃の8割。これでは生産費を償えないというのが個別所得補償制度の問題点である。やはり基本的には再生産を保障する水準ということで、コメだけが過剰で、全体が不足して食料自給率が低い。制度を活用して食料自給率を上げていくことが重要で、コメ以外の作物で成り立つような、そういう意味では水田利活用も不十分で、これでは米価が下がってもコメに頼らざるを得ない。やはりコメ以外の作物でも成り立って、食料自給率向上になるような対策をやっていただきたい。
 4点目は、県として、基幹産業にふさわしく農業を位置付けて、大幅な農業予算削減路線を転換して、米価暴落対策と農業再生の具体的な対策を講じてほしい。こないだ18日に、JAの決起集会の資料を見させていただいたが、平成10年の農林水産予算は1390億円、今は658億円で半減している。岩手県の予算そのものは確かに2割程度減っているが、農林水産予算は半減、これでは食料供給基地として、基幹産業という位置づけからして、農業の立て直しにならないのではないか。そういう点では、県として必要な対策をとっていただきたい。それから、経営危機に直面している農家に対して、無利子融資や国保税、住民税の減免など総合的な対策を行ってほしい。年内には基本部分の補てんはする予定になっているが、これがずれる可能性がある。そうすると、私が聞いている4町歩5町歩の複合農家では、100万〜150万円ぐらいの納期払いの借金がある。年末に決算しなければならないが、間に合わないと。そういう意味で、年末にきちんと出すものは出すが、変動分は年度末にずれ込むので、必要な対策が出てくるので、そういうことも含めて農家の経営・生活を守る総合的な対策を県としてやっていただきたい。
【高田一郎両磐地区政策委員長】
 一関で自らコメを作っているが、農家の間では、「年を越せない」という声が早くも出ている。近所の農家の方の話では、「所得補償、補てん分を入れた金額というのは、春の肥料代、5月の苗代ぐらいに匹敵するぐらいの金額で、来年のコメ作りをどうしようか悩んでいる」ということだった。私の近所では、イモチ防除やカメムシ防除をしない農家が増えている。天候もあって何とか防除しなくてもここまで来れたが、生活防衛策として、そこまで切りつめてやっていると。今度の対策がなければ、来年のコメ作りをやる農家が激減し、農村が維持できない状況になってくるのではないか。県としてあらゆる対策を講じていただけないと大打撃を受けることになってしまう。
 基本的には国策を見直してもらうというのが大事だが、コメを基幹産業としている岩手なので、あらゆる対策を講じていただきたい。
【瀬川貞清書記長】
 岩手のコメの生産費が17000円台であるが、8700円だと半分なので、まったく生産費を回収することができない米価なのでとてもやっていけない。
 私は、国政候補として県内を回ったが、どこの商店街もさびれている。こういう米価が続いたのでは、消費に回すお金などない。どうしてもこういう状況は改善していただかなければならない。
 副知事さんは、岩手の産業部分を担当すると聞いているので、岩手の地域経済を振興するために頑張っていただきたい。

【上野副知事】
 まず現状認識から言うと、かなり概算金は厳しい設定となったと認識している。実は私の叔父が熊本で農業をしているが、所得が減ると生産意欲も減退し県として非常に懸念している。もちろん我々も頑張るが、関係団体、関係機関それぞれの役割をしっかり果たして連携していくことが非常に重要だと思う。県としても農業者の経営への影響をできるだけ最小限にとどめるようにいろんなことを考えていきたい。
 戸別所得補償制度について県としては、制度の導入にあたっては22年産のコメの需給均衡へのが懸念される過剰米については、非主食へ仕向けるという緊急措置をとるということを国に提案している。備蓄の手法については、23年度から棚上げ備蓄方式を見直すということを検討されているが、県としては、緊急措置の具体的な対応として、国が棚上げ備蓄方式の買い入れを前倒しに実施することを検討していただくよう要望していきたい。
 転作作物については、23年度の概算要求では、主食用のコメについては所得補償制度、主食用以外の作物については、畑作物の所得補償交付金、それに加え水田活用の所得補償交付金といったものを農林省としては示している。23年度の概算要求がきちんと措置されれば、そういう問題はかなり解決すると思うが、我々としては国に対して、制度を円滑に進めるために、きちんとした安定した財源を確保していただくよう提言している。
 コメの所得補償交付金については、当該予算が不足する事態が生じても、国の責任により確実に補てんができる、少なくとも農家の方々が米価が下がったことによる不測の事態にもきちんと補てんできるようお願いをしようと思っている。国の動向を引き続き注視していくが、必要なことはさらに要望していきたい。
 4点目、県としての対策だが、財政事情は非常に厳しいものがあるが、今後の予算編成の中で、農業・農村の振興が十分図られるように、申し入れの趣旨も念頭に置きながら考えていきたい。
 融資についてだが、営農についての無利子・低利の融資はあるので、それを活用していただくことができればと思うが、それら以外の営農のための無利子制度の仕組みの創設については、今後の状況を踏まえ、必要な場合には関係団体・金融機関とも連携し検討していきたい。
 住民税などの減免については、今の段階では所得補償制度でどれだけ補てんできるか分からないので、現段階で減免と考えるのは慎重な対応が必要である。
 いずれ、本県の農業生産産出額の4分の1を占める基幹的な作物であるので、米価下落の影響を最小限に食い止めるためにも、我々が進めている、いわて純情米生産・販売戦略に基づき、全農県本部と農協との役割分担をしっかり果たし、消費者ニーズに即したコメを低コストで生産していくことを促進していきたい。

【斉藤議員】
 やはり8700円という概算金にかなり衝撃が走っている。農家は今稲刈りの最中なので、百姓一揆をやるわけにはいかないのだが、そして雨の状況で稲刈りの時期がずれ二重に心配なのだが、長期的な暴落なので、こういうときこそ知事が先頭になって、国に求める、県も独自にやるという打開のメッセージが必要である。こないだ1000人のJAの決起集会があったが、「百姓一揆が起きてもおかしくない」という状況に今あるので、それだけに知事が県民・農民に対してメッセージを出すことが必要ではないか。
 そして農林水産予算が10年間で半減していることに驚いた。農業重視ということは基本だが、基本と実際がかなりずれているので、財政に詳しい副知事に見ていただきたい。
 今不況の中では、内需拡大が必要である。輸出型ではなく、地元の農業・水産業・林業・中小企業が元気にならないと持続可能な経済にならず雇用も守れないので、ぜひ対策をお願いしたい。

【上野副知事】
 きちんとご指摘を受け止め、知事以下強い問題意識を持っているので、県の財政が厳しいが考えていきたい。予算以外の部分でもいろいろ工夫していかなければならないと思う。