2010年10月6日 商工文教委員会
雇用対策に関する質疑(大要)


・青年の生活と雇用を守り、将来に希望を持てる岩手県の実現についての請願に対する質疑大要

(当局参考説明)
【雇用対策・労働室長】
 付託された請願項目についてご説明いたします。
1、安定した雇用を確保するための対策を強化すること―「(1)地域職業訓練センターと北上コンピュータ・アカデミーを存続、継続し、職業訓練の拡充を国に求めること」については、当該施設の譲渡に関して、独立行政法人雇用能力開発機構から、「譲渡先は、施設が所在する土地の所有者である地方公共団体とすること。譲渡価格は、無償とする」旨の通知が7月、8月それぞれにあったところである。これを受けて現在関係市では、施設の譲り受けについて検討しているところだが、県としては当該施設の利用が引き続き可能となるよう、国や関係市と十分協議しながら適切に対応していきたいと考えている。
 「(2)県は、県民が求める教育、医療、福祉、防災、環境、農林漁業等の分野で雇用を拡大する取り組みを実施すること」については、岩手県経済雇用対策本部を設置し、雇用対策基金を活用した事業や産業振興施策、さらには、農林水産業および関連産業への就業促進アクションプランの推進などにより、各分野における雇用の創出に努めている。
 「(3)ワンストップサービスを全ての地域で定期的に行うこと」については、ハローワークが中心となって設置している「生活福祉就労支援協議会」が県内10カ所の全ての地域でワンストップサービスを実施すると聞いている。これまでに、盛岡、北上、水沢、宮古、二戸の5地域で実施済みであり、今後他地域でも実施されるよう取り組んでいきたい。
 
2、県は、誘致大企業に対して、雇用と地域経済を守る社会的責任を果たすよう求めること―「(1)企業の都合による解雇、雇い止め、再配置等によって職を失う労働者に対して、再就職のあっせんに責任を持って対応するよう、強く求めること」については、県では、再就職のあっせんなどが必要な社員については、最後まで責任をもって対応するよう要請している。
 「(2)期間従業員や派遣労働者等の非正規労働者を正社員として採用することを強く求めること」については、県内企業や県内に工場をもつ企業の本社への訪問を積極的に行い、機会あるごとに正規雇用の維持・拡大について要請している。

3、国に対し最低賃金を早急に時給800円、さらに1000円以上とするよう求めること―については、本県の平成22年度地域別最低賃金については、岩手労働局長が時間額644円に改正することを決定し、9月30日に公示したところであり、10月30日に発行予定となっている。全国の地域別最低賃金額の答申状況だが、加重平均で730円、最高額は東京都の821円となっている。なお、政府が策定した新成長戦略(平成22年6月18日閣議決定)においては、2020年までの最低賃金引き上げの目標は、全国最低800円、全国平均1000円とされたところである。


<職業訓練施設、花巻ポリテクセンターの問題について>

【斉藤委員】
 今回の請願は、民主党・ゆうあいクラブにもご賛同いただいた。
 職業訓練センター、北上コンピュータ・アカデミーについては、県としても国の責任を求めていくということなので、同じ方向だと。前回も議論したが、北上コンピュータ・アカデミーも、地元の入学者は28%で広域的な役割を果たしている。盛岡の職業訓練センターは地元が5割である。市長は「受ける」と言ったが、「近隣の市町村にも負担をお願いしたい」という話になってくるので、実態とすれば、職業訓練センターというのはどこでもその自治体の仕事というよりは広域的な役割を持っているので、単に施設が自治体にあるから自治体がという機械論は実態に合わないのではないか。いずれにしても国の職業訓練施設なので、あくまで国の責任できちんと譲渡を移譲するならするという原則を貫くようにやっていただきたい。
 追加してお聞きしたいのは、花巻のポリテクセンターは県が譲渡対象である。今の臨時国会に廃止の法案を出すと。県の決断は迫られていると思うので、これをどのように対応するのか。

【労働課長】
 ポリテクセンターについて、独立行政法人 雇用能力開発機構の廃止法案が臨時国会に提出予定とうかがっているが、その中で譲渡条件としては、譲渡額や運営費補助や補助機関等が示されてはいるが、まだ国会で審議がなされていないことから、県としてどのように対応するかについては現段階ではお答えできる状況ではない。


<教育、医療、福祉、防災、環境、農林漁業等の分野での雇用拡大について>

【斉藤委員】
 1の(2)のところの要望で、いわば需要があるところである。ぜひ21年度の実績、22年度の目標についてどういう規模でこの分野での雇用拡大に取り組んでいるのか。

【雇用対策課長】
 各分野での雇用対策の実績について、平成21年度の実績については手元に資料がないので、22年度の4月〜8月までの実績だが、例えば緊急雇用創出事業について、全体の基金による雇用創出数が3460名で、教育分野については476名(13.8%)、医療については56名(1.6%)、農林水産は616名(17.8%)、環境エネルギーは654名(18.9%)、介護福祉については248名(7.2%)となっている。子育てという部門もあり、これは66名(0.9%)となっている。


<誘致大企業の雇い止めによる再就職の状況について>

【斉藤委員】
 誘致企業の問題については9月3日にも聞いたが、再就職の状況について、最新で新たな変化があるかどうか示していただきたい。

【雇用対策課長】
 再就職の状況についてだが、8月末現在で、ソニーは求職登録者が366名のうち、ハローワークから概数で聞いた数だが約200人、富士通については、北上・水沢のハローワークに求職登録されている方が599名で、うち約190名程度が再就職している。


<最低賃金の引き上げについて>

【斉藤委員】
 最低賃金の問題については、この請願の文書は簡潔にしているが、最低賃金を引き上げる場合には、当然中小企業への支援策は必要だというのが請願者の趣旨である。ただ上げればいいとは思っていないので、大企業と中小企業は分けて、こういう引き上げをするときには中小企業対策というのが必要だという趣旨であるので、ぜひ自民党さんにもご理解いただきたい。それから時給800円というのはどういうレベルかというと、20日間働いて12万8千円である。先ほど室長が女性の高卒初任給が13万4800円と述べた。時給800円でもそれ以下なのである。そういう意味でいけば、早急に800円を達成して、さらに民主党も目標にしている1000円を目指すというのは世界の流れ、時代の流れではないか。

【労働課長】
 最低賃金については、これから800円という数字について、生活保護の関係とか雇用労働者の賃金のあり方等も議論されていくものと考えており、国民的議論の中でなされていくと考えている。働く環境という観点から言うと、労働条件であるとか、最低賃金がきちんと遵守されているとか、そういった法律が守られていくように啓発普及していくということで考えている。

【斉藤委員】
 雇用問題は県政の最大の課題で、その打開を国に強く求めると。県の取り組みも一層強化してほしいという切実な請願なので採択していただきたい


・労働者派遣法の抜本改正についての請願に関する質疑大要

(当局参考説明)
【雇用対策課長】
 労働者派遣法の現状だが、労働者派遣法の改正案については、労働政策審議会において、公労使による議論が尽くされたうえで4月16日に国会に提出されている。現在衆議院において継続審査となっている状況である。

【斉藤委員】
 請願の具体的項目は5項目だが、国会に提案された法案は、「製造業への派遣でも、短期雇用を繰り返し1年を超えれば対象外にする」と。専門業務でも、専門業務26業務が大変拡大解釈されており、コンピューターを使う事務事業も専門的26業務の中に入っていると。ほとんどが26業務で対象外になってしまう。
 「均等待遇」という明記もない。均等待遇については、民主党のマニフェストにも均等待遇を求めて、有期雇用を無期の安定した雇用にというのが民主党のマニフェストである。雇用問題の最大の原因は、リーマンショックのときに、大手大企業を中心にして、派遣や契約社員をバッサリ切り捨てた。今の雇用問題の最大の問題はここにあった。その反省から、働くなら正社員が当たり前という労働者派遣法の抜本改正が求められたと思う。富士通総研という財界系の研究機関でも、「今のデフレの最大の要因は、派遣切りなどによる雇用破壊、労働者の賃金低下にある」と。経済危機に直面した国は、アメリカもヨーロッパもあるが、デフレになっているのは日本だけである。なぜかというと、正規が非正規に置き換えられ、賃金が切り下げられると。先日の国税庁の調査では、この1年間で23万円も労働者の賃金が下がり過去最大の下げ幅だったと。こういうところに歯止めをかけて、安定した雇用を守ってこそ、労働者の生活は守られるし、内需としての日本の経済、地域経済が守られるという方向に抜本的に労働者派遣法を改正するのであればすべきという趣旨なので、ぜひご賛同をいただきたい。
 県の製造業派遣の実態や専門業務の実態、日雇い派遣などの実態が分かれば示していただきたい。

【雇用対策課長】
 業種ごとの派遣の状況については把握していない。
 労働局の20年度の労働者派遣事業報告書によると、総数で20663人である。発表においても業種ごとの統計は示されていない。
 26業務については、20年6月の先ほどの報告書によると、例えば事務機操作については1010人、ファイリングについては60人、ソフトウェア開発が234人となっている。全体で2064人である。
 製造業務に従事した派遣労働者数は6952人となっている。

【斉藤委員】
 労働者派遣法は国会で継続審議になっている。ただ、修正してでも通したいと厚労大臣は言明しているようだが、さらに悪く修正するのでは困るので、修正するならば、抜け穴をしっかり塞ぐと。そして本当に無権利の使い捨ての非正規労働をなくしていくという方向に改正すべきだし、ヨーロッパはもう均等待遇は確立している。比率もせいぜい10%である。日本の場合には33%が非正規なので、そういう点でも大変異常な事態で、ぜひ労働者派遣法の抜本改正を求める請願にご賛同いただきたい。