2010年10月14日 決算特別委員会
政策地域部に対する質疑大要
・リーマンショック以後の県内経済の推移について
【斉藤委員】
いわて県民計画の推進にかかわって、県民総生産、雇用者報酬、県民所得はどう推移しているか。
円高の県内経済に対する影響をどう把握しているか。
【調査統計課総括課長】
平成20年9月のいわゆるリーマンショック以後、アメリカ発の金融危機の深刻化による世界的な景気の悪化を背景に、県内経済も大きく落ち込んでいるところである。
岩手県景気動向指数で見ると、平成17年を100とした場合、平成21年4月には67.3ポイントまで落ち込んだところである。
その後、県内経済は、企業の生産状況を示す岩手県鉱工業生産指数や有効求人倍率などの数値も緩やかに改善してきており、また、景気動向指数も7月現在で85.5ポイントまで上昇してきている。最近の県内の景気については、厳しい状況が続いているが、緩やかな持ち直しの動きが見られるものと認識している。
急激な円高の影響については、各種統計データのタイムラグの関係でその影響がまだ明確には現れていないものの、円高傾向が今後も継続する場合、県内経済に影響が及ぶおそれがあり、県内総生産や雇用者報酬に対する影響も懸念されるところであることから、今後の動向を注視していく必要があると認識している。
【斉藤委員】
県民総生産、雇用者報酬はピーク時からどのぐらい落ち込んでいるか。一人当たりの雇用者報酬はどのぐらい落ち込んでいるか。
【調査統計課総括課長】
平成20年度の県民雇用者一人当たりの雇用者報酬は386万9千円で、平成8年以降もっとも高かった平成12年度の427万9千円と比較し41万円の減となっている。
県内総生産については、平成12年度の4兆9921億円から、平成20年度は4兆3536億円となっている。
【斉藤委員】
県民の暮らしに関わって重要なのは、ピーク時から一人当たりで41万円減収になっているということである。ここに景気の落ち込みが端的に表れている。
県民計画では、県民所得260万円と言っていたのに、全国との乖離という訳の分からない目標を出して、例えば平成12年、国との乖離は、261万円のときで89.2%だった。平成20年224万円まで落ち込んで、このときは81.3%である。一番落ち込んだのは、平成18年の80.8%である。リーマンショックの前である。日本経済が景気良いときに、実は乖離が一番広がった。リーマンショックで乖離がどうこう言う問題ではない。そうすると、この乖離という目標はあまり意味をなさないのではないか。やはり、県民の所得、雇用者報酬が実態としてどこまで引きあがったのかということを目標にしないと、県民の暮らしは良くならないということではないか。
【政策地域部長】
どのような目標を県民所得について持つのがいいのか、県民に分かりやすいのか、さらに政策の目安として施策を組み立てやすいのかという観点から、次期アクションプランの中で、その辺りを議論したいと思うので、ご指摘を踏まえ考えていきたい。
【斉藤委員】
せっかく知事が、最大の公約で県民所得の向上を掲げた。それが調子悪くなると、コロッといわて県民計画で指標を変えた、これは無責任であると指摘したい。
・内需拡大策、循環型地域経済をめざす取り組みについて
【斉藤委員】
県内経済を振興する上で、やはり重要なのは内需の拡大、循環型地域経済で県内が潤うことだと思うが、これらの振興策はどうなっているか。
【政策監】
本県の地域経済を持続的に成長させていくためには、国際競争力が高く、成長のけん引役となるものづくり産業の集積を図るとともに、一方では、世界経済の影響を受けにくく、安定的で持続的な循環型の産業の振興を図ることが重要と考えている。このため、本県はこれまで、地場企業の技術力向上や高度技術人材の育成などを図りながら、自動車・半導体関連産業の集積に努めてきた。
産業集積と同時に、地域の特性や資源を最大限に生かした産業を振興していくとの観点から、国内有数の生産力を誇る農林水産業、質の高い農林水産物を活用した食産業、豊かな自然や歴史などを生かした観光産業などの振興にも取り組んでいるところである。具体的には、加工品開発やインターネット販売等の6次産業化による農林水産物の高付加価値化、農林漁業者と中小企業者との連携促進や新商品開発、グリーン・ツーリズムとのマッチング等による新たな観光商品の造成―等の取り組みを支援している。
【斉藤委員】
リーマンショックの最大の教訓は、輸出型産業に依存していては、また大きな打撃を受けてしまうと。輸出企業だけが儲かるという体質を作ったから円高がつくられた。そして内需が冷え込む。それだけに、内需を拡大する地域産業の構築に全力を挙げるべきである。そのわりには、いわて県民計画では、そうした課題や目標・指標が明確でない。唯一評価したいのは、食産業がリーマンショックのもとでも前進しているというところである。いまや製造業を超えるような状況になっている。それを全体的にもっと戦略をもって、個別の小さい課題ではなく、内需拡大、地域産業を全体として前進させるという戦略・目標を持つべきだと思うがいかがか。
【政策監】
いわて県民計画では、食産業の振興をはじめ、農林水産業の振興等も柱にしている。これらの産業振興については、平成18年に策定した「産業成長戦略」から「いわて希望創造プラン」、今の「いわて県民計画」にかけて、継続的に取り組みを行っているところである。
【斉藤委員】
いわて県民計画の政策編の評価で、全体的な地域産業の振興の評価が個別にしかない。そして農林水産業は衰退している。だから、リーマンショックの教訓からいっても、県が掲げた産業成長戦略ではいけないと思う。
・大規模事業評価について
【斉藤委員】
簗川ダム、津付ダムの国による検証基準に基づく検証・評価はどう行われるのか。
【評価課長】
9月28日付で、簗川ダムと津付ダムについて、国交相から知事宛に検証の要請が出され、検証内容については、有識者会議から出された「中間とりまとめ」を基に作成された「ダム事業の検証に係る検討に関する再評価実施要領細目」が同時に示された。
事業を所管する県土整備部では、この細目に基づき、検証作業を始めたとうかがっており、今後対応方針の原案を作成したうえで、政策地域部が所管する大規模事業評価専門委員会の意見を聞き、対応方針を決定し、国交相に報告することになっている。
検証に係る大規模事業評価専門委員会の審議は、県土整備部の検証作業の進捗状況によるが、来月11月中旬から始め、月1回程度専門委員会を開催し、年度内にとりまとめる予定となっている。
・地デジ問題への対応について
【斉藤委員】
難視聴地域・世帯数(485地区、7949世帯)の解消策はどこまでいっているか。受信機普及率(66.7%)は沖縄に次いでワースト2位である。ここが最大のネックになると思う。結局受信機がなかったら地デジを見れない。そういう点では7月24日に、学者・ジャーナリストが「今のまま推移すれば数百万人規模で地デジ難民が発生する。2、3年延期すべきだ」という提言をした。私も、今のままだったら県内地デジ難民が出る可能性が大きいのではないかと思うがいかがか。
【副部長兼地域振興室長】
受信機普及率については、ご指摘の通り最下位から2番目ということだが、これは前回調査から11.5ポイント上がっており、上昇率で見ると東北各県に比べそん色なく進んでいるものである。
各世帯に受信機が普及しない理由は、家庭の事情というよりは、中継局がこれまでなかなか整備されず、地域の電波受信の状況による関心度が低いことが原因と考えている。
地デジ化については、国が世界のすう勢を受けて、電波の有効利用という観点から、事業者と進めてきたものであり、県と市町村との役割が当初から示されておらず、市町村には、どういう立場で住民と接すればいいかといった戸惑いもあり、状況の把握が十分でないまま推移してきた経緯がある。
現在は、市町村単位で地区や集落ごとに、共聴施設を作ったり、アンテナを改修したりといった手法で鋭意進めている。
また、NHK等で受信料免除世帯に対する地デジチューナーの無償取り付けを行っており、対象世帯にはすでに申請書を送付しているため、それぞれの世帯で申請していただければ、かなりの率で急速に普及するのではないかと考えている。
有識者によるアナログ放送停波の延期ということについては、県レベルの問題ではないと認識している。国と事業者とが国策として進めてきたもので、国は相当の予算も使っており、今さら延期はしないと明言しているため、その方向に沿って頑張って進めていきたいと考えている。
【斉藤委員】
受信機というのは最終的に買わなければいけない。今どういう声が出ているかというと、「経済的負担が大きい」「まだ使えるテレビがもったいない」と。この間41万円も雇用者報酬が減少している中で、特に低所得者の場合は大変である。66.7%という数字も、専門家に言わせれば、過大ではないかというものである。あと1年きった段階でこの数字は深刻である。
100%電波が届くようになるかと言えば、ならないと思う。100%届いたとしても、受信機がなければ見れない。そうなったら、国の責任は果たせないと思う。地デジ難民、情報難民が出てしまう。ほぼ100%というところまでいかないと実施できる状況にないのではないか。低所得者の対象者に対してどのぐらい申請しているか。そこの見通しを県はもっているか。
【副部長兼地域振興室長】
地デジチューナーの支援については、対象を市町村民税非課税世帯まで拡充するということで、特別枠で予算を措置しており、先ほど述べたNHKの受信料免除世帯とあわせて、各世帯に地デジチューナーを取り付けるという形で普及を進めていくということである。
また、66.7%という数字だが、県のサンプル数が192と少ない数で算定されたものであるため、国でもプラスマイナス7%の誤差を見込んでいることから、ある意味で67%ではなく74%かもしれないということでもあり、現在ポイントを上げるために市町村と県とで鋭意頑張っているところである。
【斉藤委員】
それだけの誤差になると60%になりかねない。専門家はそう指摘している。1年きった段階で66.7%という数字自身が深刻だが、1割出たって大変である。1割でもテレビを受信できなかったら、大変な情報格差になり災害対応ができなくなる。そういう意味では、そういう見通しをもたない限り、これは強行すべきでない。国は決めたから何が何でもやるというのだと。しかし情報難民が出るようだったら見直すと。諸外国でも延期している。こんな短期間でやった国はない。
そういうところも含めて、大いに努力はしてほしいが、地デジ難民が解消されないようなら、思い切って延期を国に求めるということを検討していただきたい。