2010年10月15日 決算特別委員会
保健福祉部に対する質疑大要


・高すぎる国保税の改善について

【斉藤委員】
 盛岡市の国保税の加入者の1世帯当たりの平均課税所得は90万8000円となっている。4人家族の場合5割軽減でも国保税額は15万9600円となっている。負担率17.6%となる。高すぎて払えない水準と考えるがどう思うか。
 県全体では1世帯平均の課税対象所得と平均国保税額、負担率はどうなるか。

【健康国保課総括課長】
 平成20年度における1世帯当たりの所得額は122万円だが、この中から基礎控除33万円を差し引いた国保の課税対象所得額は89万円、国保税額は14万7000円、したがい負担率は16.56%となっている。収入が伸びない経済状況の中で、家計における国保税の負担感が増していると考えているところであり、県としては、国の公費負担の割合を拡大して負担軽減を図るよう国に継続して要望している。

【斉藤委員】
 課税対象額は平成10年、平成20年でどう推移しているか。負担率はどう推移しているか。

【健康国保課総括課長】
 課税所得額で申し上げると、平成10年度は149万円、負担率は11.2%、平成20年度は89万円で負担率は16.56%となっている。

【斉藤委員】
 10年間で課税所得額は、59.7%、6割に減った。負担率は1.5倍になった。これは本当に耐えがたい国保税になっているのではないか。
 今年3月の国会では、鳩山首相も、「特に所得の低い方々にとって、相当厳しい保険料になっている。実感としてうかがった」と認めるほど、相当厳しい保険料になっている。国保税を議論する場合の出発点は、今の水準が高すぎて払えないということであったら改善なければならないと思うがいかがか。

【保健福祉部長】
 現在の状況だが、被保険者の負担、地方公共団体の負担もあるが、いずれ診療報酬の改定等による医療費や後期高齢者支援金の増加に伴い、地方公共団体の財政負担、あるいは被保険者の国保税負担が増加しており、国保財政や被保険者の家計を圧迫している状況にあると考えており、国に対して、公費負担の割合を拡大し負担軽減を図ることを継続して要望している。

【斉藤委員】
 国保加入者の所得水準について。所得なし、所得100万円以下、200万円以下の構成比はどうなっているか。職業別実態はどうか。

【健康国保課総括課長】
 平成21年度における1世帯当たりの構成比だが、所得なしが24.8%、所得なしを含まない100%未満が29.9%、100万円以上200万円未満が24.0%となっている。これらは、公的年金控除等を控除した後の額である。
 職業別の状況は、無職―これは年金受給者で職業を持たない方等だと思うが、これが36.4%、被用者が30.1%、自営業が14.1%、農林水産業が11.5%となっている。

【斉藤委員】
 所得なしが24.8%、100万円未満が合わせて54.7%、ワーキングプアと言われる200万円未満が実に78.7%と、これが国保加入世帯の実態である。
 そういう中で、国保税の滞納世帯、滞納額はどうなっているか。収納率はどうか。滞納処分の実態はどうなっているか。

【健康国保課総括課長】
 平成21年度における滞納世帯数は30277世帯、累積滞納額は115億3000万円である。
 収納率は90.7%で、収納率が90%を割っている市町村は、盛岡市など4市村となっている。
 滞納処分だが、差し押さえ件数が4824件、差し押さえ金額が16億3000万円余となっている。

【斉藤委員】
 先ほど紹介したように、200万円未満の方々が約8割を占める、そういう中で、払えなければ差し押さえである。それが4824件、16億3000万円を超えると。こんな冷たいやり方はないのではないか。滞納処分の中で半分近くを占める。そういう意味で、国保税というのは、県民にとってもっとも切実で、もっとも重税感の高い酷な税になっているということを指摘しておきたい。
 そうした中で、滞納者から保険証を取り上げる資格証明書の発行について、これはどうなっているか。

【健康国保課総括課長】
 資格証明書の交付について。資格証明書の交付にあたっては、国の通知を受けて、県から市町村に対し、機械的な運用を行うことなく、特別の事情の有無の把握を適切に行った上で行うことという、基本的な運用の考え方を通知しているところである。
 市町村では、県の通知を受け、滞納者個々の事情に十分配慮したきめ細やかな対応をしていると承知しているところであり、我々も会議等の場でも、このような基本的な考え方について重ねて要請している。
 資格証明書の交付状況は、交付世帯数は992世帯、25市町村で交付している。

【斉藤委員】
 実は昨年の4月、花巻市石鳥谷町で、61歳の方が心不全で亡くなった。遺族の方から話を聞いたが、この4月にちょうど資格証明書に切り替えられて、病院にかかれなかったと。持病を持っている方で、医師からは「入院が必要だ」と言われていたが、資格証明書は窓口10割負担しなければならない。結局自宅で亡くなってしまった。
 今年の3月の予算委員会でも紹介したが、3月4日に当時の長妻厚労相はこう言った。「資格証明書の発行にあたって、国保税を払えるのに払わないということが本当に証明できた場合以外は、慎重に取り扱っていただきたい」と。そして09年の1月20日には、「経済的に困窮して、医療の必要を訴える人は、大人でも短期証を交付するように」という事務連絡が来ているはずである。こうした事態が実際に発生していることについて、どう受け止めているか。

【健康国保課総括課長】
 資格証明書だが、これは1年以上滞納している方々に、国保法で保険証を返していただき、その代わりに資格証明書を交付し、それで市町村の窓口で償還払いをしていただくことにより、相談機会を確保するというような目的で運用されているものである。しかしながら、運用にあたっては、特別の事情というものをきちんと把握して、そして交付するというようにしているところである。例えば、事業が休廃止したりなどの特別の事情が認められる場合は、短期証に切り替えてというような実態であり、市町村においては、交付にあたって、国保とか税務とか生活保護等の担当部課長で構成する審査会を設置し、個々の被保険者の状況などをきめ細かく審査した上で、交付していると承知している。本県の市町村によっては、このような基本的な考え方に沿って適切に交付しているものと考えている。

【斉藤委員】
 私は具体的な事実を示して、長妻厚労相の答弁と事務連絡の中身を示して聞いている。それに反する事態が起こっているのである。部長はどう考えているか。

【保健福祉部長】
 基本的な県としての対応については総括課長から申し上げた通りだが、市町村の対応について、一般的には今申し上げた形で適切に行っていただいているものと想定はしているが、個々のケースについて承知していないところがある。いずれ改めて、今回のようなお話があるとすれば、非常に関心を持たなければならないと思っているので、改めて市町村には適切な対応をしていくように、要請・助言等をしていきたい。

【斉藤委員】
 私が紹介した長妻厚労相の答弁と、事務連絡は部長は確認しているか。

【保健福祉部長】
 拝見はしている。

【斉藤委員】
 承知しているということですね。その立場で対応するということでよろしいですね。
 資格証明書、保険証を取り上げるということは、病院にかかれなくなるということであある。命に関わる問題である。992世帯ということで、この間減少はしてきているが、一方で9町村はゼロ発行である。大都市のさいたま市は資格証明書を1つも発行していない。発行しなくても滞納者とよく相談して解決している。
 23市町村で1568世帯の短期保険証が留め置きされている。発行したけれども届いていない。これは無保険である。こういう事態は直ちに是正すべきではないか。

【健康国保課総括課長】
 被保険者証の未交付の問題について。県としては、市町村にたいし、未交付者に対しては、電話連絡や家庭訪問により、接触を可能な限り試み、できるだけ速やかに手元に届けるよう通知しているほか、会議等でも重ねて適切に対応するよう要請している。

【斉藤委員】
 私はこの問題を3月の予算委員会でも取り上げた。しかし改めて調査してみると、いまだに1568世帯が留め置きされている。これは直ちに是正措置をとっていただきたい。
 また、国保の危機の最大の原因は、国の国保会計に対する国庫負担を大幅に削減してきたことにある。全国的には、この間1984年の国保法改悪以来、国保会計全体に50%国庫負担があったが、いまは25%である。岩手県の場合は、どう推移しているか。そしてもし、岩手県の場合、減らされた分は平成21年度会計でみればどういう額になるのか。

【健康国保課総括課長】
 短期給付の未交付の対応については、市町村の担当課長会議等を通じて、重ねて制度の趣旨に沿って適切に対応するよう要請していきたい。
 国庫負担の状況について。平成20年度に後期高齢者医療制度の創設、あるいは前期高齢者の医療費にかかる財政調整制度というようなものが導入されたことなどから、制度の改変が非常に大きかった状況にあるので、単純な比較はできないのだが、市町村国保財政の収入額に占める、国庫支出金の割合を見ると、平成15年度が448億円余で40.6%、平成20年度が354億円余で26.6%となっている。

【斉藤委員】
 私が聞いたのは、国保法改悪のときから、全国が50%のときである。5年前でも40%、その後のわずか5年間だけでも約100億円国庫負担が減らされている。それが国保税の値上げになっている。本当にこれは国庫負担の復元を強く求めていかなければならない。
 政府は、国保の広域化という方針を示しているが、結局国保の広域化というのは、国庫負担を復元しないで都道府県単位でやっても何も解決しないということではないか。それどころか市町村が一般会計から繰入してでも、値上げを抑えているときに、それができなくなったらさらに国保の値上げに結び付くのではないかと思うが、国保の広域化に対してどう受け止めているか。全国知事会はどう対応しているか。

【健康国保課総括課長】
 広域化については、国のほうで検討がなされている状況である。市町村国保財政の影響については、国においては、「将来の医療推計に基づいた具体的な財政負担の考え方等については、今後検討を行う」としており、現時点では、広域化により国保財政が改善されるかどうかというものについては判断できる状況にはないものと考えている。しかしながら、県としては、セーフティーネットについては、基本的に国が責任をもって行うべきものと考えている。したがい、国の財政責任を明確にしながら、被保険者や地方自治体の負担増とならないようにするというのが全国知事会の考え方でもあり、岩手県の考え方でもある。こういったことについて、国に対しては十分な議論を尽くすよう要請している。


・介護保険の改善について

【斉藤委員】
 介護保険が導入されて10年が経った。矛盾の集中点が特養ホームの待機者の問題だが、県の調査によると、待機者は5974人、うち在宅の待機者が2139人、早期に入所が必要な待機者が1235人となっているが、この早期に必要な待機者の判断基準は何か。
 昨年新たに入所できた待機者はどうなっているか。
 低所得者は入所しやすい多床室は、3月の時には375床減少していたが、低所得者の待機者の状況はどうなっているか。多床室の特養ホームの整備・増設の計画はどうなっているか。

【長寿社会課総括課長】
 早期に入所が必要な待機者については、保険者である市町村等が介護者の状況や要介護度などを総合的に勘案し、担当のケアマネージャーと協議し判断しているところである。平成21年3月31日現在の入所待機者実態調査においては、市町村が、早期に入所が必要と判断した在宅の待機者1022人のうち、792人については、今回の調査において何らかの理由により待機状態が解消された旨報告されている。現在の調査においては、解消の理由について調査していないので、詳細は把握していないが、待機状態が解消された方の中には、一部は入院した方、亡くなられた方も含まれているものと存じているが、相当程度の人数の方は、特養ホームに入所されているものと考えている。
 多床室の整備について。特養ホームの入所待機者の所得の状況については、国および県いずれの待機者調査においても、調査はしていないので把握はしていない。多床室の整備については、平成23年度までの第4期介護保険事業計画期間において、特養ホームの整備総数は当初計画の約660床に加え、地域密着型の上乗せ整備が約340床分、広域型の前倒し検討の整備の要望が約200床分ある。このことから、約1200人分の入所待機者に対応した整備を検討しているところであり、このうち約400床程度が従来型の多床室となっている状況である。しかしながら、多床室からユニット型個室への改築も約200床見込まれているところであり、23年度までの第4期計画期間中に多床室は実質的には、約200床ほど増床となる見込みである。

【斉藤委員】
 この実態調査を見ると、平成21年度に特養が整備されたのはたった13床だった。22年、23年で649床+200床などとなるが、今年度どのぐらい整備されるのか。数字は今年の3月末の待機者である。来年になったらもっと増えるのである。

【長寿社会課総括課長】
 特養の整備の内容で出ているものは、オープンベースであるので、年度をまたがったりするものについては、計上されていない場合もある。1つには、待機者等については、新規で増床になる分とあわせて、毎年1300人〜1400人ほど入所者の入れ替えがある。そういったこともあり、3月31日時点の待機者の方が、ずっと施設が新しく増床されるまで入所ができないという状況はないものと考えている。各施設においては、先ほどの待機者の状況調査にもあるように、本人の介護度等の状況、家庭の介護者の状況、利用できるサービスの状況等を勘案し、早期に入所が必要な方については優先的な入所を取り扱っているとうかがっている。
 平成22年度中の新規に増床になる定員数については、22年度は86床の見込みである。なお、23年度には1005床ほどの整備を予定している。

【斉藤委員】
 実は介護サービスの受給量が全国最低レベルとなっているが、その実態と理由は何か。限度額に対する利用実績はどうなっているか。

【長寿社会課総括課長】
 介護給付費の実態については、本年7月29日に厚労省が発表した、平成21年度介護給付費実態調査結果によると、本年3月分における介護サービス受給者一人当たりの費用は、本県は一番低くとどまっている。これは、施設サービスや地域密着型サービスがおおむね全国平均に近い水準であるのに対し、居宅サービスが全国平均と比べ87.1%の水準にとどまっていることがその要因と考えている。居宅サービスの利用が低調な理由としては、本県は山間地が多く、サービス事業者、サービス利用者ともに訪問・通所にかかる移動コスト等にかかる部分による地理的な要因、要介護者の家族自らが頑張っていくというような気持ちがあることから、他人を家に入れたくないというような意識的な問題などもあると考えられる。
 また居宅サービスの支給限度額に対する利用実績については、国の介護給付費実態調査をもとに平成22年3月のサービス分で本県で試算を行ったところ、本県の限度額に対するサービスの利用割合は46.8%と推計している。

【斉藤委員】
 実はこういう事件が起きた。昨日のNHKのクローズアップ現代でも紹介されたが、昨年3月花巻で介護殺人事件があった。92歳の父親を介護するために仕事を辞めて、62歳の方が介護した。父親の年金だけが頼りだった。本当に親孝行息子だったが、介護の苦労でおそらく鬱状態になったのだと思うが最後は悲惨な結果になってしまった。
 花巻市はこれを重く受け止めて、居宅サービスを受けている人、受けていない人、介護者の実態調査をやった。その結果も昨日のテレビで紹介されていたが、花巻市の介護担当者は、「こうした実態は今の介護保険制度の枠の中では対応できない」と。それで花巻市は独自に、包括支援センターに人員を配置して、訪問・相談活動をやるということだったが、花巻市の在宅介護者に対する実態調査を把握しているか。県としてこれを参考にして、県の施策を拡充すべきだと思うがいかがか。

【長寿社会課総括課長】
 花巻市の調査については、新聞報道等で掲載されたもの等に基づき、最初に報道された時点で市に状況をうかがっている。花巻市では、大変悲惨な事件が起きたということもあり、きめ細かな対応をしたいということをうかがっている。県内の他の市町村においても、地域包括支援センター等を通じて、きめ細かな実態の把握だとか、担当のケアマネ等を通じて丁寧な対応を心掛ける方向で検討しているとうかがっている。

【斉藤委員】
 花巻市の実態調査は全国的に注目され、何度かNHKでも紹介されている。ぜひこの中身を県としても手に入れて、生かしていただきたい。
 実態調査では、介護者の負担感について、「大変負担を感じている」「やや負担を感じている」が80%、健康調査で、軽度および中度の抑鬱と見られる方が24%あったと。要望が一番多かったのが、「介護の仕方を指導してほしい」「介護手当を支給してほしい」「介護上の悩みを聞いてほしい」という要望が出された。1430人の方を訪問してやった結果で、先ほど紹介したように、この調査を受けて特別に訪問相談員を市が配置したということである。全国でもっとも介護サービスの利用料が低い岩手でこそ、そういう利用している人の悩み、していない人の実態もつかんで改善に生かしていただきたいと思うがいかがか。

【保健福祉部長】
 我々も市町村の実態把握、実態調査をいかに理解した上で計画をつくっていくということは重要と考えているので、花巻市の取り組み等を参考にさせていただきながら、あるいは他の市町村にもそういう内容を示しながら対応していきたい。