2010年10月15日 決算特別委員会
医療局に対する質疑大要
1、 県立沼宮内病院の問題について
【斉藤委員】
岩手町の民間移管の計画が、医師確保が間に合わず、入院できる医療機関を求める願いは、今の時点では達成できなかった。地域の努力を県医療局はどううけとめているか。医療局の具体的な支援が必要ではないか思うが、医療局はどういう支援を行ってきたか。
県立沼宮内病院でのがん検診の取り組みはどうなっているか。
【経営管理課総括課長】
岩手町では、一般入院ベットの確保に向け、地域医療に理解のある医療法人と協議を重ね、19床の有床診療所と空きスペースを活用した小規模老人保健施設の併設、それから外来診療、岩手町が行う検診体制の維持、常勤医師2名の確保というような、民間移管後の医療提供体制において、町議会、住民に対して説明をするなど、さまざまな努力をこれまでしていただいてきているものと考えている。医療局はこれまでも、いろんな意味で助言や資料提供など支援を行ってきたところだが、先般10月8日に、岩手町から、医師確保について最大限配慮するよう要請があったところであり、局としても要請の趣旨をしっかりと受け止めて支援していきたいと考えている。
岩手町が行う検診体制については、沼宮内病院ではこれまで、大腸検診、胃検診、乳房検診の一部について対応してきた。本年度も岩手町から、協力要請があり、検診事業にできるかぎり協力するよう調整してきたところである。大腸検診、胃検診については、中央病院などから医師の応援も受け、前年度と同数程度の対応を行うこととしたが、乳房検診については、院内の診療体制が整わないということから、町と協議し、他の検診実施機関で実施することで調整を図った。
【斉藤委員】
医療局が出した文章の中には、必要な助言や資料提供を行ってきたと。あなた方が行った必要な助言というのはどういうものか。
ガン検診の問題については、まだ民間移管もしていない。病院の状況である。いま聞いたら、乳がん検診の体制は整わなかったと。大腸検診もやられていると思うが、大腸内視鏡手術もできないような状況になったという話も聞いている。いま県立で病院を維持している状況の中で、こうした後退というのは問題ではないか。
【経営管理課総括課長】
これまで医療局で行ってきた資料提供・助言だが、1つは、岩手町が中心としていろいろ検討される際に、例えば施設の図面、どういった施設がどういった区割りになっていてどれくらいの面積かというような図面の提供、またこれまでの県立の沼宮内病院での病院として運営していたときの各諸収入や経費がどれぐらいかかっているか、といった部分について資料として提供させていただいた。
検診の関係だが、大腸検診、これは一次と精密があり、精密については内視鏡により行うが、これについては昨年と同程度の人数ということでいろいろと中央病院等からの応援も活用しながら対応させていただいたが、乳房検診については、町全体の受診者の2割弱の方が昨年沼宮内で受けていたが、診療体制の関係で町と協議し、他の検診機関で受けていただくということで調整を図った。
【斉藤委員】
県立沼宮内病院の問題については、岩手町はかなり真剣に努力したと思う。また、民間医療機関も努力したと。しかし、目標の常勤医師2名の確保には至らなかった。ある意味でいくと、民間に移管されて、それを有床で維持するというのは、それぐらい困難な課題だということだと思う。
1年無床化は延期されたが、この1年の期間だけではそういう体制を確保できなかったと。それだけ今医師不足の中で、民間に移管すればそれがすぐ解決される問題ではないということを示しているのではないか。
そういう点では、12月に無床化の条例、つまり病院を廃止する条例、これは有床診療所の場合も病院ではなくなるのだが、例えば、有床診療所としては、例えば年度内の見通しがたった場合には可能か。
【経営管理課総括課長】
有床診療所が年度内にできることが可能かというお尋ねだが、医師確保の町の取り組みの状況にもよるかと思うが、問題は、沼宮内病院自体の改装工事ということも出てくると思う。そういった部分も勘案し、今の時点では間に合う、間に合わないということははっきり言えないが、そういった工事も含めて考えて対応していきたい。
2、 花泉診療所の民間移管問題について
【斉藤委員】
岩手町の経過を見ても、民間移管というものが大変困難な課題だということは明らかだと思うが、花泉の場合は、無床化して半年で、そして公募期間がたった26日間でやられてしまった。これ自身やはり無謀だったのではないか。
そして、この4月から民間移管が強行されたが、その民間移管の前提となった医療法人白光の事業計画で、3月の予算委員会で一番議論になったのは医師確保の見通しである。民間移管が決まっても、3月になっても医師確保の見通しは示されなかった。3月25日に事業計画が出されたが、この時点で、2名の医師と3名の非常勤医師を確保したとされたが、これは真っ赤なウソだったのではないか。
【経営管理課総括課長】
民間移管にかかる賃貸者契約を締結するにあたり、最終的な事業計画をずっと待っていたわけだが、最終的な事業計画に示された常勤医師2名、非常勤医師3名の体制については、3月25日に確認し、賃貸者契約を締結した。
【斉藤委員】
その常勤医師2名の実態はなかったのではないかと聞いている。
【経営管理課総括課長】
契約の締結にあたり、法人側のほうに、医師の名簿と医師免許証の提出を求め、常勤医師2名、非常勤医師3名の体制であることを確認している。
【斉藤委員】
常勤医師2名の氏名は明らかになったが、4月以降いなかったのではないかと聞いている。常勤医師が確保されたのは4月中旬である。それまでいなかったのではないか。事業計画に書かれて医療局に明記した2名の医師は実態としてはいなかったということではないか。
【経営管理課総括課長】
花泉診療所開設後、常勤医師が1名、非常勤医師6名の体制で診療が開始されたものだが、その後常勤医師については、体調不良により診療できない状況となっていた。医療局としても、開設以来、運営の状況を随時確認し、常勤医師の確保や入院患者の受け入れ態勢の整備を繰り返し要請し、7月に現在の常勤医師の方1名が着任したということである。
【斉藤委員】
今はっきりしたのは、常勤医師2名はウソだったと。そして診療所長の名前はあったが、しかし患者を一人も診ていない。診れない医師だった。違いますか。
【経営管理課総括課長】
個別に患者を診たかどうかという問題については確認していないが、体調不良により休んでいたと。何回か出ていたようだが、その後体調不良により休んでいたと聞いている。
【斉藤委員】
実態として、4月以降途中で体調不良になったわけではない。4月以降一人の患者も診れなかったのである。事業計画で、2名の常勤医師を確保したと3月25日に示し、4月スタートの時点から実態はなかったと。常勤医師不在で4月中旬まできたのである。だから入院患者を確保できなかったというのが事実ではないか。
岩手町があんなに苦労して、誠実だから受けられなかったのである。しかし医療法人「白光」は違った。医療局を何度もだました。9月の時点で事業計画が出て、民間移管がOKになったときに、実は医師確保の見通しはなかったのである。3月議会のときにも医師確保の見通しは示されなかった。これは事実の問題として、きわめて重大である。県内で最初の民間移管のケースが、こうしたウソとごまかしで行われたということは深刻なことである。
医療局長にお聞きするが、私は事実について確認したい。こういうきわめて不正常な事態で民間移管が進行したのではないか。
【医療局長】
事実については、総括課長が申し上げた通りであるので、現実になかなか委員ご指摘のように、診療できる常勤医師が整わなかったということについては、我々としても当初から非常に残念なことであったので、再三にわたりそういった要請をして、有床診療所として貸与するのですよというこで、何とか早くやってもらわないと困るということで、再三お願いし、何とか途中から常勤医師が来ていただいて、運営が始まっていると考えている。
【斉藤委員】
結局この民間移管のスタートというのは、きわめて不正常で異常だったと。4月中旬に常勤医師1名が配置されて、一部は改善されたが、いまだに事業計画通りにはなっていない。事業計画の収支計画自身が崩れていると思う。
もう1つは、きわめて不安定な状況だということを指摘したい。常勤医師が確保されても、外来患者が減っている。7月に確保されたが、9月は1日31.9人である。常勤医師がいなかったときは、4月が34.1人、5月が44.5人である。離れた外来患者が戻っていない。たしかに入院患者が入るようになったことは改善として認めるが、当直体制をとっているといっても、非常勤医師がきわめて不安定である。先週、予定していた非常勤医師は来なかったという話も聞いている。4月5月で全て入れ替わったという話もある。本当に医師はいつまで来るのか全く示されていない。
そしてこの医療法人は、診療所長が変わったにもかかわらず、理事会も開いていない。地元の方々の声を聞く会を開く方針もあったと思うが、理事会および地元の声を聞く会は開かれているのか。
【経営管理課総括課長】
理事会については、診療所長、つまり管理者の変更にあたり、臨時社員総会を開催したと聞いている。
たしかに事業計画の中で、地元の声を聞くということをやっていくということも明記していただいた。そういった部分については、新しい所長が来たあとに、地元の医友会という医師の団体があるが、そことの懇談会を開くとか、そういった部分の動きはあるようだが、もう少し我々としても、地元の声を聞いていく機会というものを相手方に話していきたい。
【斉藤委員】
理事会は開かれていないと思う。開いたのは社員総会ではないか。理事会を設置しながら、理事会を開かないで社員総会という形で、きわめて運営自身も不正常ではないかと指摘し、きわめて異常な形でスタートし、今でも不安定な状態にいるという立場に立って、医療局が厳しく指導、監視すべきだと指摘したい。
3、無床化の強行による弊害について
【斉藤委員】
今回の21年度決算は、無床化が強行された決算であった。花泉にしても、大迫にしても、住田にしても、九戸にしても、深刻な事態がそれにより引き起こされていると。このことを私は忘れてはならないと思う。
例えば花泉でどういうことが起きているかというと、救急車を呼んでも、30分・1時間動かない。そして藤沢町民病院に運ばれたと。磐井病院のいろんな事情もあると思う。
住田の場合も、特養ホームの入所者は、重度なので管を入れたりして入所している。しかしそういう方々は、結局大船渡病院に運ばれても、よっぽど重症でなければ帰される。肺炎になって今度は高田病院に入院したという事態になっている。
大迫でも、1時間かかる遠野病院に入院する。その度に、特養ホームの場合は看護師が付き添いで行くという事態になっている。土日休日は医師不在なので、そういう深刻な不安もあるし、救急車で運ばれる中で亡くなったという例まである。
無床化の中で、こうした深刻な事態が引き起こされているということをしっかり見なければならない。県立病院は、「県下にあまねく医療の均てんを」というのを創業の精神にしてきた。こういう精神があるのだったら、無床化するときに、地域住民ともっと理解を深めてやるべきではなかったのか。共通理解を高めてやるべきではなかったのか。
【医療局長】
さまざまな議論を県議会でもしていただき、ああいう形で進めたわけだが、議会でもそういった指摘をいただきながら、一方で医師不足の非常に深刻な状況というのがあり、我々としても苦渋の決断としてやったわけだが、ご指摘のように、地域としっかりいろんな面で話し合いをしながらやるというのはその通りで、無床化してからそういうことをするのはある意味大変失礼な話ではあるが、できるだけ連携を図りながら対応させていただいているところである。
4、 県立病院の決算について
【斉藤委員】
21億6191万円の赤字となったのはきわめて残念だが、赤字の主な要因は何か。診療報酬の影響、医師不足、消費税負担額等その他の経費負担増など具体的に示されたい。
その中で、7病院が黒字となったが、その主な要因は何か。
【経営管理課総括課長】
収益については、診療単価のアップにより、入院で33億5千万円、外来で20億2千万円、全体で53億7千万円の増収とはなっているが、患者数が、入院で98000人、外来で18万9千人減少し、その影響額は、入院収益で32億1千万円、外来収益で17億2千万円、合計で49億3千万円の減収と推計され、全体として伸び悩んだと考えている。
患者減の主な要因としては、医師の退職等による恒常的な医師不足から診療体制が弱体化したことによるものと考えている。
費用については、院内保育等の委託料で5億4千万円余の増加、中部病院の介入にともない、整備した医療機械等にかかる減価償却費等が3億2千万円の増加、退職手当の平準化を図るため、繰延勘定償却として5億2千万円の増加等により、給与費や材料費の減があったものの、全体として5億2千万円の減少にとどまったと考えている。
なお、診療報酬については、直近の平成20年度のマイナス改定の21年度への影響という部分については、−0.17%(−1億2千万円余)と試算している。
消費税の影響についてだが、21年度における県立病院等事業の負担額が、18億3千万円となっており、診療報酬において加味されているといわれている補てん額が10億3千万円(推計値)と、一般会計のほうから地方消費税分として繰り入れしていただいている3億1千万円余を差し引いた4億7千万円余が実質の負担額と見込まれている。
7病院が黒字になった要因だが、中央病院、胆沢病院、磐井病院、釜石病院、東和病院、高田病院、軽米病院で黒字となっており、これらについては、いずれも病床利用率が高い水準で維持されており、これがもっとも大きな要因ではないかと考えている。なお高田病院については、病床利用率は県平均と同等程度だが、医師の増により診療体制が前年度よりも充実したことにより、患者数が増加していることが要因となっていると考えている。
5、年次休暇等の取得状況、夜勤体制、看護師の実態調査の内容について
【斉藤委員】
医師、看護職員の年次休暇、生理休暇の取得状況はどうなっているか。
二人夜勤、月9日夜勤の実態と解消の対策はどうか。
日本医労連、岩手医労連が看護師実態調査を行い、これは全国的にも岩手県内でも大きく取り上げられたが、この内容をどう認識しているか。
医師とあわせて、看護師の増員が必要だと考えるがいかがか。
【職員課総括課長】
21年度の年次休暇の平均取得数は、医師が4.8日、看護職員が8.4日である。
生理休暇は、医師の取得については実績がなく、看護職員については、2.1日となっている。
看護師の増員について。看護師は、各病院の業務の実態を勘案しながら配置しているところである。22年度当初、3463人ということで、前年度比36人増員している。
二人夜勤について。現在二人夜勤体制をとっている病院は全部で26病棟ある。21年の32病棟と比較し6病棟少なくなっている。
看護師の勤務状況調査の内容だが、全国規模としては、社団法人・日本看護協会、日本医療労働組合連合会がそれぞれ実施していると聞いている。また、医療局労働組合においても、昨年7月に「時間外労働等に関する実態調査」が行われたと聞いている。対象項目など調査ごとにことなり、個別の分析等は行っていないが、業務分担の軽減を求める回答が多いということは共通していると認識している。
【斉藤委員】
年次休暇の取得状況で、病院ごとに調べたら、九戸がゼロ、東和が0.7、山田が1.0、軽米が1.7と深刻である。医師の過酷な状況がここまでくると、過酷すぎる。何らかの緊急の改善策が必要ではないかと思う。
看護師も平均が8.4だが、中央病院の場合は6.0である。釜石6.2、一戸6.5となっている。今日付の新聞に、全国的な取得状況、48%とあったが、これはそれどころではない。そういう意味では、医師不足の中でも緊急に改善すべきところはする必要があるのではないか。
看護師は思い切って増員しないと、看護師の確保もこれからはできなくなる状況ではないかと思うがいかがか。
【職員課総括課長】
年次休暇については、なかなかとりにくい状況であることはその通りだと思う。その他に関しては、年次休暇というのは、そもそも本人からの申し出に基づき、付与するということになっているわけだが、業務の性格上、調整をさせていただくことはある。基本的には、申し出に沿った形で適正に処理させていただいているものと認識している。
看護師の増員については、先ほど純増分36人と述べた。ただ、22年4月1日以降、閉鎖した病棟が2病棟ほどある。そうしたことにより、純増プラス閉鎖したことによる看護師の増員も含めて、夜間看護の体制の見直し、全体の体制の強化に振り向けているところである。
6、地域病院と総合医のあり方について
【斉藤委員】
これから高齢化社会を迎え、高齢者というのは1つの病気ではない、2つ3つ慢性の病気を持っている。総合医の養成が必要だと。
藤沢町民病院の院長を呼んで、この間講演会をやったようだが、特に急性期ではない地域病院の場合は、思い切って総合医の養成・配置に取り組むべきだと思うがいかがか。
【医師推進監】
地域の入院機能や二次救急機能を担っている地域病院は、医師不足の中で地域の特性に応じた期待される機能に十分応じ切れていないというところだが、こうした地域病院の医師不足対策、あるいは診療体制の確保策として、初期診療の段階で、全身状態を診療し、必要に応じ専門医につなぐことのできる地域病院の担い手医師「総合医」を育成すべく、そのための仕組みや研修プログラム等について昨年度から検討してきた。
今般23年度からの育成開始に向け、県のホームページなどで育成医師の募集を開始したところである。