2010年10月19日 決算特別委員会
警察本部に対する質疑大要
・県警の不正経理問題について
【斉藤委員】
2億1500万円に及ぶ不正経理が昨年度明らかになったが、昨年度分には不正経理はなかったか。昨年度の需用費は減少しているか。
【警務部長】
昨年10月に、不適切な事務処理に関する最終報告において、預け金・差し替えなどの不適切な事務処理7態様について報告し、その再発防止に努めてきた。平成21年度において、このような不適切な事務処理は確認されていない。
平成21年度の需用費については、前年度比約3.7%減少している。
【斉藤委員】
昨年の10月に示された最終報告書では、悪質な預けが33所属で4321万円余確認され、平成14年以前から繰り越されたものが726万円あり、総額5047万円余が悪質な預けだったと。「現在まで預けが解消されていない所属の数は13所属で99万1462円存在していることが確認された」と。だとするなら、昨年の段階で預けが残されていたということではないか。生活安全企画課は15万1820円、盛岡東警察署32万4186円、岩手警察署10万1595円、去年までこの預けはあったのではないか。
【警務部長】
預け金の残余額については、全て解消して県に収納しているところである。
【斉藤委員】
だから去年までは預けがあったということではないか。預けがあったこと自身が不正の表れではないか。あるべきでないお金が預けられているのだから。約100万円余回収したのですね。
この間、2月補正で国庫補助金の返還分1889万円余は、すでに国に返還されているものである。そのうち、23万7千円余が職員負担金による返還となっているが、1889万円は県民の税金で返し、うち23万7千円が職員負担分ということか。
【警務部長】
国庫補助金の返還金については、補助金等にかかる予算の執行の適正化にかかる法律の定めるところにより、本件にかかる互助事業者である県から国に対し返還したものであり、一般財源により返還している。
23万7千円余の国に対する返還だが、これは別物であり、国から県警に対し直接予算配分された国庫経費である。これについては、県費における職員負担の考え方と同様に、預け金、差し替え、一括払いといったものについて、正規の物品調達と比較し割高に納入された実態を踏まえ、公金支出の増数分として23万7千円余を職員負担として国に直接納付したものである。
【斉藤委員】
岩手県に2012万3937円返還されている。この内訳と理由を示していただきたい。
【警務部長】
内訳だが、今年2月時点で職員負担の額を決定しているところだが、こちらにおいて所要の計算をした結果、職員負担をすべき額として、1680万円余という額を計算した。これを上回る金額を集めるということを目標に職員負担をお願いした。1680万円余の計算だが、基本的には、預け金、差し替え、一括払いにおける物品調達にについて、正規の物品調達と比較し、割高に納入された実態を踏まえた増数分の計算だとか、職員が負担すべき所在不明備品だとか親睦会で負担すべき物品等々の金額を足し合わせたものである。なお、この中には、純粋な県費のほかに、国庫補助金で支出されたもののうちの増数分も含めて負担しているところである。
【斉藤委員】
不正支出で処分された職員数、今回返還した職員数はどうなっているか。
【警務部長】
今回の職員の処分というのは、事案の内容、関与の度合、認識の程度、他の処分例等さまざまな要素を総合的に判断して、県警全体の処分者については257名としている。
負担した職員数は、304名にお願いしたものである。
【斉藤委員】
7月27日付のものによると、現役職員・離職者・退職者298名となっている。304名という数字はどういうことか。現役職員の数を聞いている。
【警務部長】
304名というのは対象者の増減であり、実際に負担したものは、現役職員については204名である。
【斉藤委員】
そうすると、257名が処分されたが、うち返還に協力したのが204名だったと。処分したが返還しなかった職員がいるということではないか。
【警務部長】
負担金の負担者については、現職の警視相当職以上の職員から負担を求めることとしている。
処分者については、幹部だけではなく、実際の行為を行った者に対しての処分もあるため、人数等が異なっている。
【斉藤委員】
処分された人たちは、直接の担当者である。それが返還の対象にならなかったとしたら問題である。
2億1500万円余に及ぶ不正支出が、警察の全部署で発生した。悪質な預け、差し替え、一括払い、これが33所属で行われていた。組織的な犯罪と言わなければならない。この教訓をどう受け止め、改善に取り組んでいるか。
【警察本部長】
公金意識に欠けた大変遺憾な事案であったと考えている。
原因、背景ということについては、最終調査報告書にも出ているように、職員の意識改革の問題というのは一番大きかったと考えている。
調査報告書で取りまとめた再発防止策については、1つには職員教育および意識改革であろうと思っている。特にこの点については、9月に開催された会議においても、私から直接全ての署長、所属長にたいし指示をしたところである。2点目は、物品の調達システムの見直しについてである。特に、発注業務と検証業務とが一人の者により行われているということであれば、楽をしようなどという思いが出てくる可能性が高いのではないかということで、そういったシステムの見直しを徹底していくことが重要であろうと思っている。3点目は、内部統制の強化ということで、会計事務についてきちんと自主点検をするということに加え、厳しい内部監査を続けていく必要があると思っている。4点目は、節減、加算システムの運用への適切な対応ということで、「年度末に予算を余らせることはもったいない」と思わないように、節減・加算システムを適切に運用していきたいと考えている。
いずれにしても県警としては、これらの再発防止策を着実に実行していくことによってこそ、県民の信頼を得ることができると考えているので、こういった点にさらに取り組んでいきたい。
・宮古署の会計係長の失踪事件について
【斉藤委員】
2月15日に、3年余におよぶ裏金工作を強いられたことを苦にして、置手紙を残し、宮古署の会計係長が失踪した。残念ながら4月15日に、宮古沖の海上で遺体が発見されたと報道があった。
この事案についてどのように調査されているか。
【参事官兼主席監察官】
3月の予算特別委員会における斉藤委員の質疑に対し、警察署に勤務する事務職員が所在不明になり、捜索を実施している旨をお答えしているが、以降、本年4月15日に沿岸部沖合にて遺体を発見・収容し、ご遺族にお引き渡ししている。
死因および背景等について、いまだ捜査中であり、また当該職員のプライバシーに関することでもあるので、答弁は差し控えさせていただきたい。ただし、委員が指摘するような裏金工作を強いられた事実は確認されていない。
【斉藤委員】
私のところには、かなり詳細な告発があった。この職員の所属を示してほしいのだが、この職員は、「本部会計課施設企画係長当時から、上司のもとで裏金工作の犠牲を強いられた。平成19年、沿岸の警察署に異動し、署長・副署長のもとでさらに平成20年にも3年連続の裏金工作を強いられた。それを苦にして失踪した」という指摘だった。これに間違いないか。
それから、置手紙を置いていたと。置手紙をきちんと調べたか。
【参事官兼主席監察官】
死亡した職員の職歴についてだが、現在も継続捜査中であり、本人を推認し得る情報については、個人のプライバシーに関することでもあり、答弁は差し控えさせていただきたい。
なお、置手紙の存在については把握していない。
【斉藤委員】
把握していないというのは深刻な問題である。3月のときには「関知していない」という答弁だった。「把握していない」と。あったかないか分からないのか。あったけど明らかにできないという答弁ではないか。
この職員は、処分された257名の中に入っているのではないか。
【参事官兼主席監察官】
個人のプライバシーに関することなので、答弁は差し控えさせていただきたい。
【斉藤委員】
この方は亡くなっている。この事件は調査のしようがない。置手紙があったかどうかも明らかにしない。処分されたかどうかも明らかにしない。まさに、処分をされて、苦にして失踪し遺体で発見されたという事案ではないか。
裏金工作、不正経理の犠牲だったのではないか。本当に徹底した調査をして必ず明らかにしていただきたい。
・捜査報償費について
【斉藤委員】
昨年度の捜査報償費の支出項目、件数、額はどうなっているか。
少年課の捜査報償費が18年度と比べると4.3倍にも増加しているが、増加の理由は何か。
盛岡東署、花巻署、大船渡署の捜査報償費が毎年増加しているのは何か。二戸署の場合は、前年比1.8倍に急増しているが特別な理由があったのか。
【警務部長】
捜査報償費の使途について。捜査用報償費は、犯罪の捜査等に従事する警察職員の活動のための諸経費および捜査協力者等に対する諸経費であり、緊急を要し秘密を要するため、通常の支出手続きを経ていては警察活動上支障をきたす場合に使用できる経費として現金経理が認められている経費である。具体的な使途例としては、捜査協力者・情報提供者に対する現金・菓子折り等の謝礼、捜査協力者・情報提供者との接触に伴う飲食店での飲食費やホテルの部屋代等、聞き込み・張り込み・尾行等に際して必要となる電車・バス・タクシーの交通費やレンタカーの借り上げ費等である。
支出件数については集計していない。
支出額は、21年度が1097万円余であり、前年度の2024万円余に比較し117万円余減少している。
少年課の捜査報償費について。増加の理由だが、1つの例として、体制を強化したことというのも要因の1つと認識しているが、そもそも捜査活動に要する経費の増減と申しますと、その年度で取り扱う事件の規模や形態、捜査の期間などにより増減するものであり、一概に申し上げることはできない。具体的な事項については、その所属の捜査活動の内容の詳細にかかる事項であること、公表されていない事件の捜査も含まれることから、答弁は差し控えさせていただきたい。
盛岡東署、花巻署、大船渡署、二戸署について。今申し上げた通り、捜査活動に要する経費の増減理由については、それぞれの所属で取り扱う事件の規模や形態、捜査の期間などにより増減するものであり、一概に申し上げることはできない。こちらについても、具体的な事項については、その所属の捜査活動の内容の詳細にかかる事項であること、公表されていない事件の捜査も含まれることから、答弁は差し控えさせていただきたい。
【斉藤委員】
捜査報償費は、社会的に大問題になったときに半分に減った。それでほとんど支障はなかったと思う。ほとぼりが冷めてくると、増え続けてくる。昨年度は若干減ったということだが、毎年増え続けている署がある。
少年課の問題を聞いたのは、18年度に比べ4.3倍となっているからである。少年の犯罪がそんなに増えているわけではない。少年を情報提供者・スパイ扱いにするのだとしたら、これは大問題だと指摘したい。
・県警職員の超過勤務とサービス残業の根絶について
【斉藤委員】
昨年度、警察本部一人当たりの年間平均の超過勤務時間は335時間だったが、どれだけ超過勤務手当が支給されたか。時間数で示していただきたい。
超過勤務手当の総額、超過勤務の一人当たりの時間、超過勤務手当の支給時間、この間の推移を含めて示していただきたい。
【警務部長】
昨年の超過勤務手当の支給時間については、職員一人当たり月平均で16.2時間となっている。
超過勤務手当の決算額については、推移ということで、17年度:12億6481万円余、18年度:12億2678万円余、19年度:12億1379万円余、20年度:11億9491万円余、21年度:11億6970万円余となっている。
一人当たりの超過勤務時間だが、17年度:363.5時間、18年度:343.5時間、19年度:365.0時間、20年度:339.8時間、21年度:335.0時間となっている。
超過勤務手当の支給時間は、17年度:198.0時間、18年度:200.4時間、19年度:195.6時間、20年度:198.0時間、21年度:194.4時間となっている。
【斉藤委員】
平成21年度の超過勤務手当は58%しか出ていない。今聞いたら、超過勤務手当は毎年ずっと減っている。サービス残業をさせて、4割も不払い労働をさせて、改善するどころか毎年超過勤務手当を減らしている。これは確信犯ではないか。毎年350時間も働いている。これをきちんと予算化して払うのは当たり前ではないか。
私は何度もこの問題を取り上げてきているが、こんな異常な事態を許していいのか。不払い労働というのは社会的犯罪行為である。こういう末端の警察官は命がけで仕事しているのではないか。働いた分超過勤務手当を支給するのは当然ではないか。
【警察本部長】
今後とも事務の合理化・効率化による縮減に努めていくとともに、突発的な事件や事故が発生した際には、所要の措置を講ずるなどして対応していきたい。
【斉藤委員】
あなたは着任したばかりだが、毎回そのような答弁で払っていなかった。今聞いたように、突発的事件は毎年起きている。330時間〜360時間毎年超過勤務している。しかし6割も出ていない。これは是正すべきだと。昨年度がたまたま超過勤務時間が多くて払えなかったというのならまだかわいいところがあるが、毎年同程度超過勤務している。警察官の士気に関わる問題である。出すべきものはしっかり出すべきだと、本部長は真正面から答えていただきたい。
【警察本部長】
予算管理上、勤務管理上も、予算の範囲内で超過勤務を命じるということを原則としているが、突発的に発生する事件・事故への対応というものもある。さまざまな調整をしなければならない場合もあると認識している。
しかしながら警察としても、答弁した通りの時間の差があるということについてしっかりと受け止めていく必要があるものと認識している。今後とも、事務の合理化・効率化をさらに進めていく必要があると考えているが、必要に応じ所要の措置を講ずるなど適切に対応していきたい。
【斉藤委員】
所要の措置を講じると。ぜひそうやっていただきたい。
・川井村で発生した殺人事件について
【斉藤委員】
若い女性の遺体が発見され、田野畑出身の青年が指名手配されたが、指名手配された根拠は何か。同時にこの青年は、別人から恐喝されていたと。この恐喝事件の捜査はされたのか。また、父親・地域住民からこの指名手配について異議申し立てがされている。署名も添えられているが、これはどういう内容のものか。
【刑事部長】
川井村地内における、女性殺人死体遺棄事件について。平成20年7月1日に、旧川井村地内で死体が発見されたことについて県内で捜査を重ねた結果、7月29日に殺人罪で逮捕状の発行を得るとともに全国に指名手配したところである。
恐喝事件の関係については、事件の個別具体的な捜査状況になるので、お答えは差し控えさせていただきたい。
異議申し立てについて。被疑者として指名手配している小原勝幸の家族から、県警本部長に対し指名手配の差し止めおよび損害賠償を求め提訴したという事実があるが、訴訟の詳細については現在係争中であることから答弁は差し控えさせていただきたい。
【斉藤委員】
この事件は、テレビでも何度も繰り返し報道され、週刊誌でも詳しくこの事件が「不審」だと指摘されている。
社会的にも問題になっているし、家族や地域住民の署名も届いている。こういう問題について慎重な、的確な対応をしていただきたい。