2010年10月20日 決算特別委員会
農林水産部(農業部門)に対する質疑大要
1、農林水産部の決算額について
【斉藤委員】
平成21年度の農林水産部の決算額と公共事業費額はどうなっているか。前年度比はどうなっているか。
農協中央会の資料を見て驚いたが、10年前の予算と比べて半減していると。5年前、10年前の決算額を示していただきたい。大幅に半減以下に減っている理由は何か。
【企画課長】
21年度の農林水産決算額は、728億6500万円余で、前年度比137億3800万円余(23.2%)の増となっている。うち、公共事業一元化の見直しによる県土整備部からの移管分が69億7千万円余となっていることからこれを差し引くと、67億6700万円余(11.4%)の増となっている。
公共事業費の決算額は、387億3千万円余で、前年度比76億7900万円余(24.7%)の増となっている。うち、県土整備部からの移管分が68億5300千万円余となっていることからこれを差し引くと、8億2500万円余(2.7%)の増となっている。
決算額の推移だが、災害復旧費を除く平成21年度の農林水産決算額は、718億3700万円余であり、5年前の平成16年度決算額768億7千万円余と比較し50億3300万円余(6.5%)の減となっている。10年前の平成11年度決算額1633億7600万円余と比較し、915億3800万円余(56%)の減となっている。
10年間における決算額の減少要因についてだが、第一に、公共事業費の削減によるものが670億8千万円余ともっとも多く、これは平成7年度から5年間程度実施された「ウルグアイラウンド農業貿易関連対策経費」の終了、また県の公共事業費の削減方針によるものだが、このほか農業共済団体等事務費補助など従来県予算を通じて行っていた補助事業が国から関係団体への直接補助となったものや、農業協同組合経営改善特別対策資金貸付金など時限的に創設していた貸付金の終了によるもの、広域農業開発事業償還金など必然的に年々その経費が減少してきたものなどが主な要因となっている。
【斉藤委員】
平成11年度が1633億円で昨年度は718億円で56%の減。10年前はウルグアイラウンド対策で公共事業が増やされたということがあるが、私は今農林水産業が危機的状況にある中で、こんなに予算を減らしていいのか。国でさえ減り方は3兆5千億円から2兆5千億円である。1兆円減ったのはきわめて重大だが、岩手の減り方はそれ以上である。農林水産業を基幹産業として重視するのであれば、この減少から拡大へということが必要なのではないか。
【農林水産部長】
決算額の減は、公共事業費の減少が非常に大きな割合を占めている。農業農村整備の予算が厳しいというご指摘もいただいており、こういう基盤整備がギリギリのところまできているという認識をもっている。したがい、車の両輪、いわゆる戸別所得補償制度をうまく稼働させるためにも、そういう公共事業の最低限のきちんとした手当が必要だと考えており、この予算について厳しい状況にはあるが、何とかその確保に努めていきたい。
2、コメ暴落対策について
【斉藤委員】
総括質疑で知事に「今こそ知事の出番だ」と、緊急対策を政府に求めるべきだと述べ、めずらしく知事が機敏に行動して一昨日行ってきたようである。その中身は3項目だったということは繰り返し答弁があったが、政府の対応、民主党の対応はどうだったか。
【副部長兼農林水産企画室長】
18日に知事が国および民主党筆頭副幹事長に対し、コメの下落対策にかかる要請を行った。これに対し、農水省としては、「現下の岩手県における状況について、きちんと状況を踏まえた上で適切に対応していきたい。特にも、コメの戸別所得補償制度に向けてはしっかり対応していく」ということだった。
また、長妻筆頭副幹事長においては、今回の提言の関係について「各地方や農業関係団体から要望が出ていることも承知している。特に戸別所得補償制度の財源については、足りなくなることがないよう政府にしっかり伝えたい」という回答をいただいた。
【斉藤委員】
同じ日に参議院の決算審議が行われ、そこで農水大臣は「戸別所得補償制度をやるから買い取りはしない」と答弁した。本当に農家の痛みが政府に伝わっていないのではないかと思う。
コメ暴落の実態と原因をどのように把握しているか。
【流通課総括課長】
10年産米の価格の状況についてだが、22年産主食うるち米の相対取引状況によると、岩手県産ひとめぼれの基準価格は、60キロあたり税込で13287円でスタートしていたが、10月4日以降は12762円となり、これを21年産米の平均価格と比較すると1824円の下落となっている。
原因については、消費者の低価格米志向という根強いものがあるということ、21年産米の在庫状況と22年産米の作柄の状況も含めて過剰感があるということが価格に影響しているものと考えている。
【斉藤委員】
今のコメの暴落というのは、農家の経営・くらしだけではなく、意欲を無くしている。こんな低い価格だったら来年コメを作っていられないと。そこに深刻な問題があると思う。新聞にも「もうコメは作っていられない」「こんなコメ安は異常だ」「市場が無法地帯のようだ」と。そして「ここまで米価が落ちたのは、戸別所得補償制度も原因だ」と。いわば、10アールあたり15000円出るのだから、その分安く買うと。買いたたかれているのである。買いたたかれて、米価が下がったらそれを税金で補償するということは愚の骨頂だと思う。これは制度の欠陥ではないか。
【流通課総括課長】
買いたたきのような件について。国で今の戸別所得補償制度の開始にあたり、そういうことがないようにと通知を出しており、そういうことがあった場合は報告するようにということを受けて相談窓口を設けている。我々は国に対して、そういった相談の状況について確認しているが、今のところ買いたたきを受けているという相談はないと聞いている。ただし、コメの売買はいわゆる取引であるので、取引を行う買い手と売り手の意思の中に、過剰米の状況や消費者の低価格志向があるというものがどのように作用しているかは判読しかねるが、一定の影響はあるものと考えている。
【斉藤委員】
リアリズムで述べると、約40万トンコメが余っていて、余っているから買いたたかれている。在庫があるから安売り競争しなくてはいけない。いわば、在庫を残したら来年の減反に跳ね返るという異常なシステムである。まさに異常な安売り競争が展開されている。
40万トンを緊急に買い入れて、価格・需給を安定されるというのは政府の最低限の仕事だと思う。今40万トンを買い入れると、その費用は970億円である。米価が1000円下がればその補償に1166億円、2000円下がったら2332億円もかかる。だとしたら今買い上げて価格を安定させた方が絶対に良いということではないか。
【農林水産部長】
数字の件については、ただちに答弁できるものではないが、考え方として、いずれ過剰米が米価の下落に影響しているということは強く認識している。そして知事がそのことについて政府に働きかけを行ってきたところである。
今後ともコメの価格の動向、作柄の状況を我々としても注視し、必要なことについては国に働きかけをしていきたい。
【斉藤委員】
戸別所得補償制度をしっかりやってほしいと県は要求している。これは一理あるのだが、指摘したように、過剰米が出た段階ではこの制度に欠陥が出てくる。買いたたかれた分を補償しようとすればさらにそれ以上のお金がかかる。このこともしっかり検証して国にものを言うべきではないか。
概算金が3600円も下がったが、この概算金というのは、農家の立場から見て生産費を償えないのではないか。どういう計算になるか。
【水田農業課長】
概算金とその差額について。本県のコメ生産費、直近の公表されている平成20年産で60キロあたり14613円となっている。生産費と概算金の差額については、概算金がひとめぼれA地区で8700円、これを生産費等を差し引くと5913円と見込まれる。ただしこの概算金については、コメ代金の仮渡金ということであり、今後の販売実績に基づき生産が伴うものであることから、そのままこの概算金が手取りそのものになるということではないと考えている。
国の戸別所得補償制度により生産費の不足分としての定額部分15000円について、60キロあたりに今年の予想収量で試算すると1625円の交付になるが、これに加え販売価格が過去3年間の平均価格を下回った場合の変動部分が交付されることから、県内の農業者の方々への影響は緩和されるものと考えている。
【斉藤委員】
麦、大豆、飼料用米、雑穀などの今までの転作奨励金、水田利活用対策について。今年は8億円の激変緩和があったが、今年、来年はどうなるか。
【水田農業課長】
水田利活用対策について。本年度の水田利活用自給率向上事業については、現在地域水田協議会において、東北農政局や岩手農政事務所との連携のもとに年内の交付に向けた事務手続きを取り進めている。
23年度に向けては、国は概算要求において、水田利活用自給率向上事業は、今年度の事業ベースにして水田活用の所得補償交付金という形で、2233億円の要求をしている。この中で、麦・大豆・飼料用米などの戦略作物については、主食用米並の所得を確保し得る水準の単価を面積払いで支払うとしており、その単価については本年度と同額の設定をしている。
雑穀や野菜などといったような地域の振興作物については、今年度のモデル対策における激変緩和調整枠とその他作物への助成を一本化し、対象作物や交付単価については、都道府県あるいは地域単位で設定する産地資金というものを新たに創設すると聞いている。現段階でまだ制度の詳細が明らかになっていないので、国の検討状況を注視しながら効果的な活用を図っていきたい。
【斉藤委員】
需要拡大、消費拡大について。学校の米飯給食、これは子どものときに日本型食生活になじむというのが、その後のコメの消費拡大に決定的に役割を果たすと思う。
先ほど部長は、米飯給食は週3.5回から3.6回に増えたと述べていたが、富山県あたりは週4回以上にしている。そして学校給食を見ると、小学校の場合だと週3回というのが一番多い。週4回以上に拡大し、子どもたちにおいしい米飯給食を提供するということを農政部の仕事としてやるべきではないかと思うがいかがか。
【農林水産部長】
関係部局とも連携しながら、できるだけ米飯給食を普及するように努めていきたい。
3、農業の担い手対策について
【斉藤委員】
農業センサスでは農業就業者が5年間で75万人も減少とある。年間15万人で、減少幅は過去最大だったと。これは岩手県の場合だとどうか。
岩手県は年間200人の新規就農者の育成というのを目標に掲げていたが、200人程度では全然間に合わないのではないか。本格的に新規就農者の養成・確保対策に取り組むべきではないか。すでに九戸村や八幡平市では、かなりレベルの高い補助や育成・養成をしている。この市町村の取り組み、県としても抜本的に新規就農者対策を拡充すべきではないか。
【担い手対策課長】
農業就業者の動向について。2010年世界農林業センサスにおける全国の農業就業人口は、ご指摘の通り75万人減少しているが、9月に公表した数字である。ただし、都道府県レベルの数値については、まだ発表されておらず、国によると11月下旬ごろに公表すると聞いている。
【農業普及技術課総括課長】
新規就農者数の目標の拡大について。農業従事者の減少は、高齢化が進む中にあって、何よりも基幹となる担い手の育成確保が重要であると認識しており、新規就農者200名については、本県における将来の担い手として活躍を期待し、その生産の6割相当を担っていただこうと期待している。
一方で、農業・農村においては、多くの農業者が共存し、維持・発展しているということでもあり、小規模農家や兼業農家もそれぞれの志向や地域での役割分担に応じ、集落営農組織の構成員となるなど、地域の営農への参加を期待している。
県としては、来年度から本格実施される戸別所得補償制度や、六次産業化などを通じ、こうした担い手や多様な農業者を支援することにより、本県の農業・農村の維持・発展が図られるものと考えている。
市町村における取り組みについて。21年度の例を見ると、県内16市町村、その他農協や産業公社等において地域の産業構造や営農条件などの実情に応じ、就農奨励金や家賃の助成、研修や経営初期に要する経費の助成など、独自の就農支援策を講じている。県では、こうした地域おける独自の就農情報を就農相談会において就農希望者に対し提供し、就農地の選定に役立てていただくとともに、地域ごとの就農情報を関係者が共有することにより、他地域への波及や支援策の充実を図っている。今後においても、県や農業公社が実施している就農相談や岩手農業入門塾、先進農家での実践研修と市町村における就農支援策を一体的に行うことにより、より効果的な支援に努めていく考えである。
4、競馬事業について
【斉藤委員】
この4年間の発売額の推移はどうなっているか。全国・地方競馬の発売額はどう推移しているか。
コスト削減の総額はどうか。どういう影響が出ているか。
老朽施設の改修にどれだけの費用が予想されるか。その財源はねん出可能か。
【競馬改革推進室特命参事】
岩手競馬の発売額だが、19年度は対前年比82.2%の233億800万円、20年度は対前年比94.7%の220億6600万円、21年度は対前年比93.9%の207億2300万円となっている。地方競馬全体の発売額については、対前年比で19年度が101.2%、20年度98.8%、21年度96.7%となっている。中央競馬においては、19年度が97.7%、20年度99.7%、21年度94.2%と、全国・地方とも発売が伸び悩んでいる状況にある。今年度の状況は、4月から9月までは対前年比で岩手競馬が92.3%、地方が92.1%、中央が93.2%と岩手のみならず地方・中央とも厳しい状況となっている。
新計画策定後の19年度以降のコスト調整の総額は、22年度の2期までの実施分を含め4カ年で計18億500万円となっている。18年度決算額と21年度決算見込み額を比較すると、ファンサービスに関する事業運営費については14億7900万円、賞典費などの競争関係費は14億4100万円の削減となっているが、極力売り上げやファンサービスに影響が及ばないように、また馬資源や競争水準を確保できるよう、競馬関係者や取引先企業の理解と協力をいただきながら、工夫を重ねて実施してきた。
今後の施設設備の改修については、競馬の円滑な施行やファンサービスの影響などを考慮しながら、優先度を付して実施することとしている。早急に改修が必要な施設としては、各発売所の発売機や払い戻し機、場外発売所の大型映像装置などが見込まれるところであり、仮に現在と同規模で更新しようとした場合には、概算で5億円を超える費用が必要と見込んでいる。実際の改修については、対象となる設備等の状況を踏まえ、その更新時期を検討するとともに、必要最小限度の規模への見直しを行いながら整備を進めていくこととしている。改修費用の財源については、毎年度の利益を施設等整備基金に積み立てて確保していくことを基本と考えているが、可能な限り地方競馬全国協会からの補助金を導入するなどにより必要な財源を確保していきたい。
【斉藤委員】
発売額の推移は平成18年度が284億円で77億円がこの4年間で減少した。確実に発売額は落ち込んでいる。
コスト削減の総額は18億500万円で、限界まで来ているのではないか。
実は今年の競馬の予算は、そうした状況から賞典費には手をつけないという予算だった。しかし結局賞典費にも今度のコスト削減では手を付けざるを得なかった。大変な事態に今きて、このまま存続できるのかというところまできているのではないか。
一方で、岩手競馬の将来方向の検討を11月から行い、来年の5月ぐらいまでに報告を受けるという話も聞いた。その際に、今までの収支均衡、新たな県民負担は作らない、この原則は貫かれるものだと思うがいかがか。
【競馬改革推進室長】
今後の将来方向の岩手競馬というものを、さまざまな外部の方々のご意見・提言などもいただきながら取りまとめていきたいと考えている。
それにあたっては、現在新計画のもとで事業運営しているので、これ以上の県民の皆様への負担を増やさないという基本原則のもとで今後の岩手競馬をどうしていくかというものを前向きに検討していきたい。