2010年10月20日 決算特別委員会
農林水産部(林業、漁業部門)に対する質疑大要
1、林業振興について
【斉藤委員】
県土の77%を占める117万9931ヘクタールの森林、森林蓄積では2億1963万立方メートルの活用は、林業の振興にとっても山村の活性化にとっても重要な課題となっている。林業を一大産業に振興するうえでの課題と現状はどうなっているか。
【林務担当技監】
本県民有林の人工林資源は、木材として利用可能な41年以上の森林部分が5割以上を占めている。今後順次本格的な伐採時期を迎えつつあるという状況にある。これを活用し、委員おっしゃる通り、産業として飛躍させる重要な時期に差し掛かっていると認識している。
課題としては、1つは、川上において現状の木材科学で、いかに山元に還元するか。コストを削減してできるだけ山に金を残すこと。2つ目は、川下において、今後ますます国内・外国との競争が激化する状況の中で、いかに県産の木材製品の販路を拡大していくかということであると考えている。
課題に対する取り組みの現状だが、川上においては、中小規模の森林所有者を取りまとめて作業の団地化を図り、効率的なことをやっていく事業体を育成している。2つ目として、高性能林業機械の導入や路網の整備に力を入れている。3つ目としては、素材生産業者が組織した団体により、合板工場等の大口需要者に安定的に供給するといった木材低コスト・安定供給の取り組みを実施している。
川下においては、木材加工施設の整備を進め、生産性の向上や工事・加工製品の生産拡大、相談会の開催などにより建築業界と木材業界のマッチングを進めている。さらには、長期優良住宅に適応した生産技術や製品の開発に取り組み、ニーズに対応した県産木材製品の供給を促進していきたいということで取り組んでいる。
【斉藤委員】
政府が森林・林業再生プランを昨年12月に打ち出して、10年間で木材の自給率を50%まで高めると。路網整備は10年間でドイツ並みに整備すると。この目標は立派である。しかし、プランに基づく事業化・予算化は、県にはどのように示されているのか。
県産材を活用する上で、特に県が先頭に立ちやるべきことは、公共施設・公共工事への県産材の利用拡大だと思うが、目標が小さくて平成19年から21年は106%と目標達成になっている。目標が小さすぎるのではないか。例えば、いま小中学校の老朽校舎の改築時期を迎えている。さまざまな公共施設に本格的に県産木材を使ったら、かなりの規模になるのではないかと思うがいかがか。
【林務担当技監】
森林・林業再生プランについて。23年度の概算要求の中で、550億円という直接支払い制度という新しい制度を創設しようとしている。そういった形で国もプランの実現に向けていろいろ施策を考えていただけると期待している。
【林業振興課総括課長】
県産材の率先利用について。委員ご指摘の通り、財政状況が非常に厳しい中での木材利用ということであるので、思ったほど各部局の利用計画が伸びない状況ではある。その中でも、各部局に働きかけ、できるだけ多くの木材を使っていただくようにお願いしている。
国の新しい法律もできたところだが、来年度の国の予算で公共施設の木造化についてどれだけ新しい施策が出るかはこれからなので、そういった動向を見極めながら関係部局には、そういった支援策も示しながらできるだけ使っていただくような形で働きかけていきたい。
【斉藤委員】
林業の振興は、雇用の拡大という点でも、山村の活性化でも決定的な課題だと思う。林業が振興すれば、限界集落は解消できるといっても過言ではないぐらいの課題である。そしてそういう条件・可能性もあるということで真剣に取り組んでいただきたい。
林業の担い手確保の取り組みだが、おそらく農業以上に林業就業者の確保というのは大変な課題になっているのではないか。陸前高田市などでは、市町村独自に取り組みもしている。また、国の緑の雇用の取り組みもあるが、国、市町村、県の担い手確保の取り組みと現状はどうなっているか。
【森林整備課総括課長】
国の補助事業である「緑の雇用担い手低策事業」により、新規就業希望者に対して、約10ヶ月に及ぶ現場実践研修を行っている。平成15年から21年までの7年間で320名を養成した。さらに、財団法人・岩手県林業労働対策基金が、基金の運用により、高性能林業機械オペレーター資格など8つの資格を習得できるグリーンマイスター研修を実施しており、中核的な担い手を育成しているほか、新規参入者の説明会の開催、新規就労者を雇用した事業体への奨励金の交付などを行っている。
市町村の取り組みだが、先ほど委員からお話のあった陸前高田市においては、新規就業者を雇用した事業主に対して就業奨励一時金(約10万円)を支給している。住田町においては、林業退職金共済掛け金の助成などを行っている。あわせて4市町で独自の取り組みを行っている。
県の取り組みとしては、林業労働力の減少と高齢化が進む中にあって、本県の林業担い手の確保・育成を図るため、平成3年度に県・市町村・林業団体により財団法人・岩手県労働対策基金を設立した。県は、基金の総額36億円のうち、33億5千万円を出現しているところであり、この基金の各課の取り組みが、いわば岩手県独自の林業労働力確保対策と考えている。今後ともこれらの対策を通じ、林業の担い手確保に努めていきたい。
【斉藤委員】
ぜひ林業は岩手県の成長産業に位置付けて本格的やっていただきたい。
2、漁業振興について
【斉藤委員】
第1期地域営漁計画に基づいた漁場の効率的な利用、担い手の育成確保、水産物の販売などの取り組みの実績はどうなっているか。どう総括して第2期地域営漁計画策定の取り組みを進めるか。
【水産振興課総括課長】
18漁協で計画を策定し実行しているところであるが、早獲りワカメの養殖施設の効率的な整備、省力化機器の導入による養殖作業の負担軽減、漁業者による直接販売など、各地で意欲的な取り組みが始まっている。
計画は、実績と課題を踏まえて3年ごとに見直すこととし、平成21年度から順次計画の更新を行っている。その際、漁家経営の向上に向けて、新規種目の生産拡大や意欲ある経営体規模の拡大、同じく漁業者による直接販売などについて指導している。
今後も引き続き市町村や漁協と連携して、地域営漁計画の実行支援に努めていきたい。
【斉藤委員】
漁業の担い手育成支援の取り組みが陸前高田市、宮古市で独自に取り組まれている。昨日今日の新聞には、陸前高田市で4名が制度に応募したと。宮古市でも5名が新規の就業者に応募しているということで成果が上がっているようだが、この取り組みをどう評価して、また県独自にも支援しながら広げる必要があるのではないかと思うがいかがか。
【水産振興課総括課長】
陸前高田市・宮古市において、養殖業の新規就業者を支援する事業をそれぞれ独自に開始し、どちらも今年度からということで新しい試みだと思っている。計9人の方々が着業されているが、今までこういう取り組みは市町村の中ではあまりなかった。この辺は、県の地域営漁計画、これは市町村もメンバーになっているが、そういう中で養殖業が非常に厳しい状況だと。平均年齢60歳で、将来どうなるのかということを一緒になって考えてきて、それを危機感に抱いた市町村がこのような取り組みをしたものと思っている。
県においても、養殖ではなく、沿岸漁業の就業を促進するため、今年度から漁業への就業を希望する方を対象に、漁業就業人材育成事業を創設し、現在12名が漁協自営定置の乗組員となり、漁協の正組合員の資格の取得に必要な漁業実績の確保や小型船舶操縦士等の資格取得に取り組んでいる。それぞれ漁業・養殖業連携しながらどちらも担い手を確保していきたい。
【斉藤委員】
漁業共催への助成の取り組みは市町村でどうなっているか。県の助成も上乗せして行うべきではないか。
ホヤやイシカゲガイなどの共済制度の確立の問題だが、チリ大地震津波の時に、共済制度がなくて大変な被害になったわけだが、やはり単品ではなく、いくつかかみ合わせた形の共済制度を検討すべきではないか。
秋サケ・サンマの漁獲量が今年度は大幅に減少しているが、今年の見通しはどうか。
ヒラメの種苗放流事業の実績、投資効果、今後の見通しはどうなっているか。
【漁業調整課長】
共済制度について。市町村による助成の状況だが、カキ養殖については、養殖を行っている6つの市町のうち5つの市町が助成している。ホタテについては8市町村のうち6市町、ワカメについては11市町村のうち8市町村、コンブは8市町村のうち4市町でそれぞれ特定養殖共済の掛け金助成が行われている。
県の助成について。県としては、漁業共済は災害から生産物や漁業施設を守り、漁業経営の安定を図るために重要な制度であるということから、これまで漁業共済組合と連携しながら、加入促進のための説明会などを行い働きかけてきた。一方で、掛け金の支援については、すでに国において3分の1または2分の1程度の高率な補助が行われているということなども考慮すると、県としてはなかなか助成は難しいのではないかと考えている。
ホヤ・イシカゲガイなどの共済制度について。現在それらについては共済制度の対象になっていない。一方で、ホヤ・イシカゲガイについては、養殖対象種としても生産の向上が見られ、特にエゾイシカゲガイについては、近年急速に生産量が伸びているというものであるので、今後漁業共済組合と連携しながら共済制度の対象となるように国に働きかけることなどについてさまざま検討させていただきたい。
【水産振興課総括課長】
県では、秋サケの沿岸漁獲目標を「いわて希望創造プラン」においては、平成22年度の目標を4万トンに設定していたが、過去10年の平均沿岸漁獲量が2万6千トンと低迷していることから、昨年12月に策定した「いわて県民計画」において、22年度の沿岸漁獲目標を3万トンに下方修正した。今年度の沿岸漁獲量については、水産技術センターによれば、2万4千トン程度と予測していることから、予測通りであれば目標達成についても難しいものと考えている。これから秋サケ量の盛漁期を迎えることから、今後の漁獲の状況を注視していきたい。
ヒラメの種苗放流事業は、平成13年度から毎年110万尾の種苗放流が継続され、県内の各浜に放流されている。事業の効果については、放流したヒラメの回収率の低迷やヒラメの水揚げ単価の下落により、投資効果が低迷しているところだが、ヒラメの漁獲量は放流前に比べ増加している。一定の効果が発現しているものと認識している。しかしながら、漁協や市町村から投資効果等を改善するための事業の見直しを求められていることから、現在見直し案について関係者と協議を進めている。協議はおおむね順調に進んでおり、今年度には、新たな放流事業計画を策定し、来年度から実施できるものと考えている。
【斉藤委員】
カキの品質に関する調査(平成18〜20年・山田町)結果と今後の課題と取り組みはどうか。
カキ、ホタテ、ウニの貝殻等漁業系廃棄物の活用策はどうなっているか。
【水産振興課総括課長】
18年度から20年度にかけて、県と山田町で実施したカキの品質に関する調査から、9月から1月の出荷盛期は、カキ殻の大きさ・重量ともほぼ一定だが、ミールについてはばらつきがあること、グリコーゲンの量は成熟率が低下する春に増加する傾向にあること等の結果を得たところである。この得られた結果から、自主的な出荷基準の設定や出荷時期等について養殖業者等で検討がなされ、出荷盛期のカキよりも、ミールや味ともに優れている春の時期に焼きガキを提供するカキ小屋の出店につながるなど成果が出ている。県としては、県内において春の時期のおいしいカキの販売促進について支援していきたい。
漁業系廃棄物のうち、発生量の多いカキ殻については、年間発生する6000〜7000トンのうち半数の3000〜4000トンが果樹園・牧場等の土壌改良材などに利用されており、ワカメ・コンブ等の残渣については、年間に発生する6000〜7000トンのうち約4000トンをアワビやウニの漁場に投入し、餌として利用されている。県としては、今後ともこれらの漁業系廃棄物の活用を促進するため、引き続き県漁連等関係機関と密接に連携しながら、漁業系廃棄物再資源化研修会を開催し、漁業関係者に対して再資源化に関する啓発・普及を図るとともに、漁業系廃棄物の堆肥化など農畜産分野での有効利用を一層促進するほか、壁材など新規リサイクル製品の開発などの取り組みも支援していく。