2010年10月21日 決算特別委員会
県土整備部に対する質疑大要
1、住宅リフォーム助成の取り組みについて
【斉藤委員】
県内市町村の住宅リフォーム助成事業の取り組みが広がっているが、昨年度、今年度どういう実績になっているか。
経済波及効果はどうか。
【建築住宅課総括課長】
昨年度は、9市町村において補助が実施されている。今年度は、本年10月からの一戸町を含め18市町村がリフォーム全般に対して10~50万円の幅で補助する制度を設けている。
事業費は、21年度の事業で、9月末現在で18市町村の申請戸数の合計が2818戸、補助額は2億9020万円、工事額は22億3600万円となっており、経済効果は約35億円と試算される。
【斉藤委員】
いま公共事業が減って仕事が大幅に減少しているときに、9月末の段階で22億3600万円、経済波及効果だと35億円の仕事が市町村を中心に作られた。これは大変重要なことだと思う。
9月県議会でも、岩手県に対して「住宅リフォーム助成をすべき」という請願が全会一致で採択された。
すでに県としてやっているのは秋田県であるが、その状況はどうなっているか。
【建築住宅課総括課長】
秋田県では、本年3月から緊急経済対策ということで、持家の増改築リフォーム全般に対して20万円を上限に工事費の10%の補助を行っている。8月末までの申請件数が8901戸、補助額が12億5600万円、工事費194億6千万円、経済効果は約300億円と試算される。
【斉藤委員】
秋田県の取り組みは参考になると思う。県レベルでやれば194億円、経済効果は300億円だと。これはぜひ請願の全会一致の採択を受けて、できれば補正でも組んで今年度から具体化してほしい。県民が切実に要望しているが、この請願を受けた検討状況はどうなっているか。
【建築住宅課総括課長】
請願が全会一致で採択されたことについては重く受け止め、対策を検討していきたい。岩手県においては、現在、県産材を活用した住宅の新築および増改築について、「住みたい岩手の家づくり促進事業」という事業で、利子の助成制度を設けているが、新築が25件に対して増改築が1件にとどまっているという状況なので、増改築における制度の活用が課題だと考えている。
リフォームも含め、住宅に対する経済波及効果ということも踏まえて、制度のあり方、どのような形で普及を図っていけるかということを検討していきたい。
【斉藤委員】
岩手の家づくり事業もいいのだが、やはり使いやすい実績になっていない。
県内では、宮古市で9億円の事業になっている。県レベルでは秋田県が大変参考になると思う。
岩手県における住宅リフォームの市場規模はどのぐらいあるか。そして部長の決意をお聞きしたい。
【県土整備部長】
市場規模については、本県では2008年度の推計だが、年間453億円というデータがある。
これまで「住みたい岩手の家づくり促進事業」を実現し、その運用を図っているところである。それよりも、一般的な住宅リフォームの事業に関する助成事業については、その効果について幅広く検討を重ねた上で、総合的な見地から判断していきたい。
【斉藤委員】
市場規模でも、要望でも、実績でも住宅リフォーム助成は求められている事業であるので、秋田県に負けないような具体化をできるだけ早く進めていただきたい。
2、簗川ダム・津付ダム事業の検証・見直しの取り組みについて
【斉藤委員】
国が、簗川ダムは「見直し対象」だということで、見直しの治水対策のあり方の基本方向も出された。これが中間とりまとめで、治水対策のあり方、検討の内容を示したものだが、一言で言えば、治水対策のあり方というのは、流域と一体となった治水対策、総合的な治水対策というのが提起されていると思うが、その中身はどうなっているか。
【河川開発課長】
検証・再評価の項目については、国から示された評価軸として7項目ある。安全度、コスト、実現性、持続性、柔軟性、地域社会への影響、環境への影響であり、これらの評価軸で各々の治水対策案を評価することとされている。また、複数の治水対策案の検討など、現在の検証の取り組みについては、国から示されたダム事業の検証にかかる検討に関する再評価実施要領細目に基づき、26種類の治水対策手法の中から、簗川と気仙川の各々の河川への適用可能性等を現在整理している段階にある。
今後、国から示された細目にしたがい、さらに検討を進めることとしている。
【斉藤委員】
国から示された今後の治水対策のあり方について、この中の核心的な部分というのは、「流域と一体となった治水対策のあり方」を提起していることだと思う。この中身について聞いている。
【河川開発課長】
中間とりまとめによると、流域と一体となった治水対策に関する議論や提言、さらには部分的な試みについては、過去40年にわたって行われてきており、河川関係者の間では十分認識されているところではあるが、例えば、土地利用規制とかさまざまな方策があるが、法的規制のあり方、関係自治体や住民の意向など、技術的な問題や行政の中での連携の問題等、多くの問題がある。
しかしながら、治水対策としては、流域と一体となった対策というのも、超過洪水対策等を考えれば重要だと考えているので、今後検証の中で検討していきたい。
【斉藤委員】
今の答弁はよく中間とりまとめを読んでいないのだと思う。こうなっている。「今後の治水対策の一つのイメージは、流域全体で治水対策を分担し、河川への流出を極力遅らせることにより、洪水のピーク流量を軽減し、治水安全度の確保を図ることが重要である。その際、それぞれの地域で可能な限り、自己完結的に洪水を処理し河川への負担を軽減させることに重点を置くことが重要」だと。
この立場からいけば、簗川ダムはまったく流域全体の治水対策を考えてこなかったのではないか。
【河川開発課長】
国から示された26の治水対策案の中には、流域対策として、委員ご指摘の通り川道への流出を遅らせる―例えば、学校の校庭などを貯留・浸透させるなどして遅らせるものも確かにある。しかしながら、簗川の流域に関しては、そういった流域の対策として浸透させるとかそういう面積としては大きくないということで、たしかにそういう対策は今後進めていくべきではあるが、河川の対策としては、ダムや河川改修を中心に、補完的に流域対策もやっていくべきではないかと考えている。
【斉藤委員】
そもそも簗川ダムは、ダム先にありきで計画された。昭和53(1978)年4月、県単費による予備調査に着手。建設事業として採択されたのが平成4年4月である。誰も知らないときに、先にダムありきで計画された。治水対策から出発したものではない。
流域一帯の治水対策を考えるうえで、河川・流域の特性に応じた治水対策の立案が求められているが、簗川の特性とは何か。
【河川開発課長】
簗川については、上流部の地形は急峻であり、上流部から中流部にかけて狭あいな地形の中に人家や耕作地が点在している。中流部から下流域にかけては、背後に山が迫っている地形の中にあって、河川沿いに貴重な平地があり、そこに人家等が集中して市街地を形成している。その市街地を貫流して、北上川本川へ合流している状況にある。また、河川沿いには、沿岸と内陸部を結ぶ主要な国道106号が通っているという状況にある。
【斉藤委員】
私たちは、ダムの専門家に二度にわたって精密に簗川を調査していただいた。その報告書によると、簗川の流域面積は148.3平方キロメートルで、簗川と根田茂川が合流するのだが、簗川の流域面積というのは35.1平方キロメートル、根田茂川流域は82.1平方キロメートルである。根田茂川流域が2倍以上ある。そしてなだらかで長い。いわば、集中豪雨が降ったときに、簗川の洪水が先に出る。根田茂川の洪水はゆっくり出てくるというのが簗川の特徴である。簗川の自然の特性で洪水のピークを調節している。しかし、あなた方の計画は、合流したところにダムをつくるというもので、洪水を集めてしまう最も不合理な計画である。
簗川の一番危険で守らなければならない部分というのは、葛西橋から北上川合流点の0.9キロ、ここに人口が集中している。基本的にはここは100年に1回の洪水を流せる幅がある。しかし平成14年の台風で、堤防が決壊しそうになった。一番問われているのは、流せるのに堤防が壊れた。堤防の強化があれば基本的にこの人口密集地帯は守られると思うがいかがか。そしてその堤防の強化は、何年の洪水に対応できるように災害復旧されたか。
【河川開発課長】
簗川には、根田茂川と簗川があり、その流路延長等が違うものであり、各々の川のピークの発生時刻が違うということだが、根田茂川流域については、流路延長が異なるので洪水到達時間が違う。したがい、雨の降り方によっては当然ピークがずれて入ってくる。しかしながら、簗川ダムについては、その合流後の地点に建設しているものであり、前提としてピーク流量がずれるという現象も折り込んでいるという計画である。また、ダムの構造上、ダムに流入する流量を上回ってダムから放流することはなく、ダムによって直ちに危険になるというものではない。
堤防については、平成14年7月の洪水のときに、左岸側の堤防が一部決壊した。ただ破堤に至らなかったということで、住家への被害はなかったが、その後災害復旧等により堤防を盛土で戻して、さらに流水があたっても容易に決壊しないよう護岸等を施工し、さらに複道して植生したということであり、現在では被災当時よりは堤防の強度は高まっていると考えている。
【斉藤委員】
平成14年の台風というのは335ミリである。これは大体10年に1回の洪水である。何年に1回の洪水に対応できるように復旧したのかと聞いている。10年に1回の洪水に対応できる程度では困る。100年に1回に対応できるのか。そういう堤防の強化はやられているのか。
【河川課総括課長】
災害復旧については、合流点から1キロ間については、40分の1の治水安全度である。河道の流下能力は100分の1には足りない状況である。
【斉藤委員】
災害復旧というのは基本的には、その前のレベルに合わせていると思う。100分の1に強化されたのなら評価するが、そこを厳密に答えていただきたい。
それから、簗川の特性で言うと、人口密集地帯は1キロまでで、4キロ以上はみんな農地である。この農地を活用し流域全体の治水対策をとれば、本当にわずかな河川改修で済むということである。そして0.9キロから上流は、基本的には 掘り込み河道、左岸側は山である。そういう意味では、今回の見直し案をきちんと受け止めて、ダムを進めるための対案は絶対つくってはならない。
事業費を530億円に見直したときに、河川改修案も見直して倍以上に増やした。こんなごまかしはしてはならないと思うがいかがか。
【河川開発課長】
ダム事業費を見直して、増額するなり減額するというときには、あわせて同じ年の積算単価等で積算し直すということで、そのようになったのではないかと考えている。
【斉藤委員】
一言言っておきたいが、堤防の面積を2倍にしたのである。ところが事業費は8倍になった。河川改修の試算というのは、あくまでも試算で、ダムの建設事業費は積み上げで正確なものである。そういう途方もない試算をしたということだけ指摘しておきたい。
簗川ダムについて、ダム本体工事を中止するとしたら、どのぐらい節約できるか。
ダム事業による環境破壊の影響、動植物の希少種はどういう状況になっているか。
【河川開発課長】
仮定の話ではあるが、中止するにしても、さまざまな後処理の費用がかかることも想定されるので、これについては今回の検証の中で積み上げできるものは積み上げていきたい。
環境への影響だが、自然環境保全対策の策定を目的として、平成5年度から環境調査を行うともに、平成8年度に設置した周辺環境調査検討委員会からの指導・助言をいただきながら、平成18年3月に環境影響評価報告書として取りまとめた。環境調査はその後も継続的に行ってきたところであり、その結果を毎年委員会に報告し、指導・助言をいただきながら自然環境の保全に努めていくこととしている。
【斉藤委員】
簗川流域は、鳥類で97種のうち重要種はクマタカ・ヤマセミなど31種、昆虫類は1856種のうち重要種はゲンジボタルなど19種と、盛岡の中でももっとも自然環境が豊かと言われるところである。ダム事業でこうした貴重な自然環境を破壊すべきではない。この経済的な評価、社会的な評価もすべきだと思うがいかがか。
ダムの堤体の事業費は現時点でいくらと予想されているか。
【河川開発課長】
環境に関する費用対効果等については、現在の治水経済調査マニュアルというもので試算しており、それは治水の分しかなく、環境に対する費用対効果分析は現在ないことから試算していない。
ダム本体の事業費は、ダム全体事業費530億円のうち、340億円と試算している。うち、これまで約半分程度使っている。
計画変更に伴う縮減額という意味では30億円ということである。
【斉藤委員】
ダムの堤体の事業費を聞いている。しっかり質問を聞いていただきたい。
【斉藤委員】
津付ダムについて。一番の欠陥は、30年に1回の洪水対策なのだが、ダムをやれば164億円、河川改修なら94億円で済むというのがあなた方の試算である。もう津付ダムは止めるべきである。もしダムに固執するのなら、その後さらに170億円かけて、70分の1でやるという根拠はどこにあるか。
【河川開発課長】
気仙川の治水対策については、実現性が高い複数の手法の中から、社会的な影響や経済性を考慮し、ダムと河川改修の組み合わせが最適であると判断し事業を進めている。
9月28日付で国から検証の要請があったことから、示されたダム事業の検証にかかる検討に関する実施要領細目に基づき検証を行うこととした。
【斉藤委員】
なぜ70億円も高いダム事業に固執するのか。あなた方が70分の1というのなら、ダムをつくってから170億円が河川改修でかかる。そんなことはあり得ない。根拠があるなら示していただきたい。
【河川開発課長】
気仙川は度々洪水被害が発生しており、流域住民の生命や財産を守るために事業の必要性や緊急性が高いと判断している。
気仙川の治水対策は、治水安全度70分の1と考えている。河川整備基本方針に基づいて70分の1の安全度としていることから、河川改修単独案とダム+河川改修案と比較した結果、ダムを含む案の方が安価であるという方針のもと、当面20、30年の河川整備計画の中で、ダムを先行することとしたものである。
3、この間中止・見直しとなった事業について
【斉藤委員】
大規模事業について、この間中止・見直しとなった事業はどういうものがあるか。その事業費はいくらか。
【技術企画指導課長】
県土整備部において、平成10年度以降、公共事業評価を実施し、中止・見直しとなった事業は、中止した事業は、北本内ダム建設や村道安が沢線など4事業であり、中止時の事業費は、北本内ダムで420億円、村道安が沢線で67億円などである。見直しした大規模事業は、津付ダム建設や簗川ダム建設など5事業であり、津付ダムは202億円から141億円に、簗川ダムは670億円から530億円に見直した。
4、花巻空港整備事業について
【斉藤委員】
昨年度までの総事業費に対する事業実績はどうなっているか。当初計画と目標、利用客の推移、費用対効果からみて、大変な赤字ではないか。赤字の実態をどう評価するか。
平行誘導路がなければできないケースはどういうケースか。
1県1空港で国際チャーター便の競争を行うことは全国共倒れとなってしまうのではないか。もっと東北各県との連携を考えた花巻空港のあり方を考えるべきではないか。
【空港課総括課長】
昨年度末までの総事業費は297億円で、進捗率は95%となっている。現在の花巻空港の収支は、21年度のキャッシュフローペースで見ると、維持運営にかかる収支は3億6900万円の赤字となっている。これについての評価は、空港については、産業振興や地域間交流においてきわめて重要な役割を担っているところと認識しており、県では例えば、平成19年度の国際チャーター便の経済波及効果の試算だが、96便で約4億3900万円の経済波及効果があると試算しており、それだけでも先ほど述べた赤字を上回る効果があると認識している。この他、定期便についてはそういった試算はしていないが、それらも含めると航空機の運航が経済にもたらす波及効果というのは相当なものがあると考えている。
並行誘導路について。大型機で運航したいという海外の航空会社のニーズに対応できず、チャーター便の受け入れを断念した事例が平成17年以降、香港、台湾、韓国の航空会社のチャーター便であった。今後も、東アジア地域の主要な航空会社においては、大型機の保有が主流という計画であるので、今後同地域からの国際チャーター便の誘致拡大を図る上で、大型機の就航が可能となる並行誘導路の整備は必要と考えている。
東北各県との連携については、すでに複数の空港を組み合わせたチャーター便の運航というものもかなり定着しているところであり、それぞれの空港でこうした国際便の受け入れ環境を整えることが東北域内の多様な観光ルートの設定を可能とするという意味で、東北全体での外客の受け入れ拡大にも資するものと考えている。今後とも、こうした複数の空港を組み合わせた広域観光ルートの開発や、ブロック単位での誘客活動など、他県との間では必要な広域的な連携を強化していきたい。
【斉藤委員】
キャッシュフローの維持運営費だけ述べて3億6900万円の赤字と述べたが、全体の収支では15億6千万円の赤字ではないか。もっと正確に言わなければならない。全然評価が違う。
そして321億円のうち、今年度を含めてどのぐらい事業費がかかったか。もともとこれは国が求めた事業ではなく県が独自にやったもので、そのうち県負担分はいくらか。当初の計画からも、県民負担からいっても、この事業は計画から乖離し、利用客が大幅に減少した中で破たんした。計画は破たんしても事業だけは進められた事業ではなかったか。
【空港課総括課長】
今年度末までの見込みの事業費だが、312億円、進捗率で99%となる計画である。うち、県の負担額は273億円となる。
空港のもたらす地域経済に対する波及効果などに鑑み、また今後アジアからの観光客の誘客というものを強力に進めていくうえで、空港整備事業については、着実にその機能の充実を図っていきたい。