2010年10月22日 最終本会議
決算議案に対する反対討論


 日本共産党の斉藤信でございます。認定第1号、第3号、第4号、第15号に反対の討論を行います。
 認定第4号は、2009年度岩手県一般会計歳入歳出決算であります。
 今回の決算審議は達増県政の4年間を総点検するものでありました。達増県政の4年間は県民の深刻な実態と切実な要求に背を向けた県政だったと言わなければなりません。

 反対する第一の理由は、最も切実な課題となっている雇用対策、中小企業対策が極めて不十分なことです。
 ソニーよる870人の工場閉鎖や富士通による1130人に及ぶ「再配置」と言う名の解雇、関東自動車や東芝の雇止めなど誘致企業による雇用破壊は7800人余に及びました。
 ソニーや富士通、関東自動車、東芝などの誘致企業が、この間労働者と下請け中小企業の犠牲の上に巨額の内部留保をため込みながら、リーマンショックによる経済危機を理由に工場閉鎖や大量の雇止め・解雇を強行したことは許されないことであります。県はソニーや富士通による事業主都合の退職者に対する再就職の責任を果たさせる取り組みを行っていますが、8月末現在でソニーは6割弱、富士通は3割弱にとどまっていることは重大です。労働者の雇用と下請け中小企業、地域経済を守る大企業の社会的責任を果たさせるようさらに取り組むべきであります。
 また、失業の長期化に対応したワンストップサービスや「超氷河期」と言われる新規学卒者の就職対策の取り組みを抜本的に強化するよう求めるものであります。
 事業所数で99.8%。常用雇用で89%を占める中小企業対策では、74%の中小企業が赤字となっています。中小企業対策の決算が融資を除くとわずか38億円余に大幅に削減されてきたことは問題です。中小企業振興条例の制定を含め、県内経済と雇用を守り、地域づくりの主役として中小企業対策の抜本的な強化を求めるものであります。また、請願の採択にも表れた、経済効果の大きい住宅リフォーム助成の実現を強く求めます。

 第二の理由は、地域住民の声に背を向けて県立病院・診療所の無床化を強行したことであります。また、高すぎる国保税の問題では、滞納者から保険証を取り上げる資格証明書の発行が9月現在でも992世帯、短期保険証の留め置きも1520人となっており、昨年4月には病院にかかれず死亡する事態まで引き起こしています。「金の切れ目が命の切れ目」となりかねない冷たい県政が進められていることは許されないことです。
 介護保険事業では、昨年3月に花巻市で介護を苦にした介護殺人事件も起きました。特養ホームの待機者が5974人に及び、早期入所が必要な待機者が1235人となっていますが、昨年度の特養ホームの整備はわずか13床にとどまり、今年度も86床にとどまることは「保険あって介護なし」の実態を示すものであります。1人当たりの介護給付費が17万6700円で全国最低となっていることも重大です。

 第三の理由は、農林水産業の衰退に歯止めがかからないばかりか、予算・決算額がこの間大幅に減少していることであります。
 コメ暴落問題で、知事がこの議会中に政府に対して過剰米の買い取りなどの緊急対策を求めたことは評価します。しかし、岩手県の基幹産業である農林水産業は産出額ではピーク時と比べて大幅に減少しています。ところが農林水産予算はこの10年間で半分以下に減少しました。決算額でも10年前の平成11年度決算額1633億円余に対して昨年度は718億円余なっており44%に激減しています。また、その半分以上を公共事業が占めていることも問題です。

 森のトレー問題で15億円余の補助金返還という事態に至ったことは重大です。昨年度決算には、2億8400万円余の国への償還金が含まれています。森のトレー問題は、国、県が組合と一体となって技術的にも確立していない間伐材を利用したトレーの大量生産に、資金的な保証もなく、販売計画もあいまいなまま拙速に進めて失敗した事業であります。この間の検証も処分も不十分であり、裁判での全面敗訴をふまえて徹底的に検証すべきであります。決して県民に15億円の負担をすべて押し付けるべきではありません。

 第四に、深刻な財政危機のもとで、530億円の簗川ダムや164億円の津付ダム事業、利用客が激減している中での321億円に及ぶ花巻空港整備事業など、ムダと浪費、不要不急の大型開発を進めてきたことであります。
 ダム事業の検証で見直し・中止を強く求めるものであります。1400万円の知事車購入、選定基準に反した577万円の副知事車購入も県民の理解を得られるものではありません。

 第五に、テストづけと競争主義、管理主義を軸にした教育の推進も見直すべきであります。目標達成型の学校経営は、教育に市場原理を導入するものであり、1人1人の子どもに寄り添い、その人格の完成をめざす教育の目標からかけはなれたものであります。
 国連子どもの権利委員会の第3回勧告をしっかりと受け止め、過度に競争的教育から1人1人に行き届いた教育への転換を図るべきであります。35人学級のさらなる拡充を求めます。

 認定第1号は、2009年度岩手県立病院等事業会計決算であります。
 反対する第一の理由は、5つの診療センターの無床化を強行し、花泉診療センターを半年もしないうちに民間移管を強行したことであります。
 今年4月から民間移管となった花泉診療所は、3月末に提出した事業計画に反し、常勤医師が3カ月半に渡って不在という異常な事態でありました。現在も1名の常勤医師にとどまっていることも重大です。無床化された地域では、土日、祝日、夜間は医師不在となり救急患者のたらい回しや受診の抑制など深刻な事態が生じています。
 地域医療の問題は上からの強行ではなく、あくまでも医療関係者と地域住民との共同の力で解決すべきであります。
 また、県立沼宮内病院の無床化計画の強行は見直すべきであります。
 第二に、医師不足と合わせて看護師不足も深刻です。月9日夜勤や毎日の残業で有給休暇も取れない事態となっています。医師とともに看護師の大幅増員を図るべきであります。
 第三に、昨年度21億6千万円余の赤字となりましたが、最大の要因はこの間の診療報酬の引き下げと医師不足による患者数の減少によるものであります。消費税の負担額も4億7千万円に及んでおり、国の悪政による影響は重大であります。

 認定第3号は、2009年度岩手県工業用水道会計決算であります。
 昨年度、初めて累積欠損金を解消したことは評価しますが、雇用破壊の先頭に立ち巨額の内部留保をもっている誘致大企業などに対して1億円の料金の減免を行ったことは県民の理解を得られるものではありません。

 認定第15号は、岩手県港湾整備事業特別会計決算であります。
 過大な貨物取扱量の目標に対して、実績が後退している中、事業だけが進められていることは問題です。

 以上申し上げ、私の討論といたします。ご清聴ありがとうございました。