2010年11月25日 本会議
給与改定議案に対する質疑大要
【斉藤議員】
日本共産党の斉藤信でございます。議案第2号から第5号までの給与改定議案に対して質問いたします。
これらの議案は、県人事委員会の勧告に基づいて、県職員の期末・勤勉手当を2年連続で年間0.2カ月分引き下げようとするものであります。平均で一人当たり7万8千円の減収となるものであります。期末・勤勉手当の支給月数が4月を下回るのは実に47年ぶりであります。
知事に質問いたします。
第一に、今回の期末・勤勉手当の0.2カ月分の引き下げによる賃金削減額の総額はいくらになるでしょうか。平成11年度以来県職員の賃金の引き下げを続いています。引き下げ額の総額と県職員一人当たりの削減額はどうなるでしょうか。
また、それによる今年度の削減額、平成11年度以来の削減額の総額と地域経済に対するマイナスの経済波及効果はどうなるでしょうか。
【達増知事】
今回の給与改定による影響額は、公営企業を除く普通会計では、期末・勤勉手当の改定により、18億5千万円程度、義務教育等教員特別手当等の改定により、1億800万円程度、合わせて19億6千万円程度減と試算している。
平成11年度以来の給与の減額について。公営企業を除く普通会計の平成11年度からの給与改定並びに平成15年度から平成19年度まで、および平成20年度からの給料等の減額措置による各年度の減少額を単純に合算した場合、約247億円余と試算される。
職員一人当たりについては、平成11年度給与改定前と平成22年度給与改定後を比較すると、40歳の主査クラスで試算すると約126万円の減額となる。
地域経済に対する波及効果は、産業連関表を用いて地域経済への波及効果を試算した場合、今年度の給与改定による波及効果については30億円程度、また平成11年度以来の給与の減少額の波及効果については、381億円程度となると見込まれる。
【斉藤議員】
第二に、県職員の給与は、特別減額を含めると月8585円、2.33%、民間よりも低くなります。実態をどう把握されているでしょうか。特別減額を中止するか、減額分を含めた給与で民間と比較すべきだと思いますがいかがでしょうか。
【達増知事】
特例減額を含めた職員給与の実態について。人事委員会の給与勧告は、制度上の改正を行うものであり、制度上の給与水準をもとに比較を行い、その結果を踏まえて検討されるべきものとの考え方の下に行われたものと認識している。
特例減額を含めて比較した場合には、県職員の給与が民間を8585円下回っている状況であると承知しており、職員の負担も重く受け止めているが、給与の特例減額は、人事委員会の勧告制度に基づく給与改定とは別に、本県の危機的な財政状況を踏まえ、平成20年度から22年度までの間において、やむを得ず特例的な措置として実施しているものである。
また、来年度以降の特例減額の取扱いについては、給与の特例減額については、厳しい財政状況を踏まえ、特例的な措置として平成20年度から平成22年度までの間実施しているものである。
現在の県財政を取り巻く環境は非常に厳しいものと認識しているところだが、これまでの職員数の削減などの取り組みにより、総人件費の抑制にも一定の成果があったところである。
さらに、この間人事委員会勧告に基づく給与改定により、職員給与も低下してきているところである。
一方、今後においても歳入歳出ギャップが見込まれることから、その解消策について、さまざまな方策を検討していく必要があるものと考えている。
今後の予算編成にあたっては、こういったさまざまな状況を勘案しながら対応されていくと考えるところである。
【斉藤議員】
第三に、この間の県職員の12年連続の賃金引き下げは、それ自身が異常なことですが、結局は民間の賃金を引き下げるマイナスの悪循環となってきたのではないでしょうか。賃金の引き下げが、消費を後退させ、経済を悪化させてデフレの状況を招いてきたと財界系のエコノミストも指摘していますが、賃金の引き上げこそ必要ではないでしょうか。
【達増知事】
地方公務員の給与だが、人事委員会の勧告を最大限尊重しながら、職務給の原則や均衡の原則、情勢適応の原則といった地方公務員法の給与の諸原則に基づき決定すべきものであると考えている。
なお、県内経済の活性化は、県政の重要課題であり、県内の厳しい経済・雇用情勢を踏まえ、雇用の創出、就業支援など、地域経済の活性化を図るための多くの事業に取り組んでいかねばならず、また取り組んでいるところであり、引き続き県内経済の活性化に重点的に取り組んでいくところである。
【斉藤議員】
総務部長に質問いたします。
第一に、今回の賃金の引き下げの各任命権者ごとの引き下げ額の総額、職員1人当たりの削減額を示していただきたい。教員の場合は調整額の減額もありますがどれだけの減額となるのでしょうか。
【総務部長】
今回の給与改定による任命権者ごとの影響額だが、期末手当および勤勉手当の改定による影響額は、知事部局と教育委員会、および警察本部以外の任命権者については、総額約3億6千万円、職員1人当たり約7万7千円、教育委員会については、総額約12億9千万円、職員1人当たり約8万1千円、警察本部については総額約2億円、職員1人当たり約7万2千円の減額と試算している。
教員関係については、義務教育等教員特別手当は、年間で約3億8千万円、職員1人当たり約2万8千円、給料の調整額は年間で約6千万円、職員1人当たり約4万2千円の減額と試算している。
【斉藤議員】
第二に、今回の人事委員会の勧告では、@月60時間を超える超過勤務に日曜日も加えるとされています。月60時間を超える超過勤務の実態とその解消の対策はどうなっているでしょうか。
【総務部長】
超過勤務の実態と解消策について。知事部局においては、平成21年度、月60時間を超える超過勤務の実態は、延べ441人となっており、前年度比26%の減少となっている。
しかしながら、恒常的、長時間の超過勤務は職員の能力を低下させ、円滑な業務遂行をはじめ、職員の心身の健康や生活にも影響を及ぼすものと考えており、業務プロセスの見直しや資料の簡素化、会議の合理化など、さまざまな改善措置を講じながら、その縮減に努めてきたところである。
今後とも、超過勤務が長時間にわたる職員の状況を分析しながら、超過勤務の縮減に取り組んでいきたい。
【斉藤議員】
A年次有給休暇の取得を進めるとありますが、年次休暇の取得状況とその改善策はどうなっているでしょうか。
【総務部長】
知事部局職員の平成21年度の年次休暇の平均取得日数は、11.6日となっている。これは例年とほぼ同様となっている。
年次休暇の取得の促進については、職員のワーク・ライフ・バランスの推進に資するため年度当初より、夏季休暇取得時期に、年次休暇等の計画的な取得の促進について各所属に対し通知するなど、その取得促進に努めている。
【斉藤議員】
B看護休暇の取得日数の増と短期介護休暇の新設や育児休業等の特別休暇制度が整備されてきていますが、その実績と取り組みはどうなっているでしょうか。
【総務部長】
子の看護休暇については、知事部局の平成21年の取得実績は、延べ9790時間、平成22年の取得実績は11月末までで述べ9698時間となっている。
短期介護休暇の取得実績は、知事部局の平成22年5月から11月までの取得実績で述べると、延べ413時間となっている。
休暇の取得の取り組みについては、次世代育成支援のため非常に重要なものと認識しており、休暇等をまとめたパンフレットを作成し、職員向けの説明会を開催するなど、取得促進に取り組んでいる。
【斉藤議員】
C心身の健康管理・メンタルヘルス対策の強化も指摘されています。心の健康問題による病休、休職の実態はどうなっているでしょうか。早期対応、職場復帰の対策と実態はどうなっているでしょうか。
【総務部長】
精神疾患等への対応については、きわめて重要な課題と考えている。
平成21年度の知事部局および教育委員会および警察本部を除く各委員会事務局における14日以上の病気休暇取得者数は35名、6ヶ月以上の休職者数は10名となっている。
職場におけるメンタルヘルス対策は、未然防止、早期発見・早期治療、復職支援の3つの段階における、それぞれの取り組みが重要だろうと考えている。
早期発見・早期治療については、精神科嘱託医やメンタルヘルス相談室の設置等による専門的相談支援を実施しており、また、復職支援については、職場復帰準備訓練等を実施し、復帰する場合の円滑な対応に努めている。
【斉藤議員】
医療局長に質問します。
第一に、医療局全体の期末・勤勉手当の引き下げの総額はどうなるでしょうか。
【医療局長】
今回の給与改定による医療局職員の期末勤勉手当の22年度支給見込み総額は、32億2400万円余であり、改正前の現行支給率による所要額35億4700万円余と比較して3億2300万円余の減となる見込みとなっている。
【斉藤議員】
第二に、医師不足の中で、医師の場合も0.2カ月の期末・勤勉手当の引き下げを行うのでしょうか。引き下げるとしたら医師1人当たりの減額はどれだけになるのでしょうか。
【医療局長】
医師に対する期末・勤勉手当だが、「一般職の例による」とされており、条例が改正された場合には、県立病院に勤務する医師についても一般職と同様に引き下げることとしている。
医師1人当たりの影響額は、改正案支給率による1人平均支給額が125万円、現行支給率による支給額135万7千円に比べ12万5千円の減となる見込みである。
【斉藤議員】
第三に、医療局の場合、勤務時間短縮が実現されていないと思いますが、なぜでしょうか。昼休み時間がまだ45分になっているのでしょうか。改善の見込みはどうなっているでしょうか。勤務時間短縮を行っていない分の事実上の給与削減額はどうなるでしょうか。
【医療局長】
医療局以外の部局については、平成22年4月から実施しているが、医療局においては、きわめて厳しい経営状況の中で「新しい経営計画」に基づいて経営の立て直しをまずもって行う必要があったということで、その実施を見送ったところである。
医療局職員の昼休みの休憩時間は45分だが、現場の意見等を聞きながら時短の実施とあわせて検討したい。
なお、時短分の給与削減額、時短分の給与相当額については、試算が困難だが、医療局では週40時間の勤務時間をベースに1時間当たりの給与等単価を積算しており、時短を実施している知事部局等とは単価の面で違いがあるものと考えている。その差は3%程度となっている。
【斉藤議員】
人事委員会委員長に質問いたします。
第一に、今回の勧告にあたって、民間との格差の比較がされ月例給についてはほぼ均衡しているとされています。しかし、実態は、県職員は特例減額によってさら平均月額8585円、2.33%も引き下げられています。なぜ、実際の支給されている給与と比較しなのでしょうか。本来なら給与の引き上げが必要ではなかったでしょうか。
【人事委員会委員長】
人事委員会の行う給与勧告は、制度上の改正を行うものであり、その根拠となる公民給与の比較については、制度上の給与水準をもとに比較を行い、その結果算定された公民較差を踏まえて検討を行うことが適当と判断している。
本県の給与の特例減額は、財政的な事情を考慮して、特例的に実施しているものであることから、人事委員会としては、特例減額を考慮しない制度上の給与水準をもとに勧告を行うことが適当と考えている。
【斉藤議員】
第二に、県職員の給与は平成11年度以来12年連続で引き下げられています。賃金引き下げの悪循環に陥っています。こうした実態をどう認識されているでしょうか。
【人事委員会委員長】
職員の給与は、給与決定の諸原則に基づき、適正に決定されるべきものであり、給与決定の諸原則に基づく人事委員会の勧告、また、人事委員会の勧告を踏まえた給与決定が行われた結果として、職員給与が引き上げられたり下げられたりするものと理解している。
【斉藤議員】
第三に、12年連続で県職員の賃金が引き下げられている実態は、人事委員会の労働基本権制約の代償措置としての機能が果たされていないというべきですが、どう認識されているでしょうか。
【人事委員会委員長】
人事委員会の役割は、職員の労働基本権制約の代償措置としての中立・公正な第三者機関としての機能を発揮することであり、そのために給与勧告制度や給与決定の諸原則が設けられるものと理解しており、本委員会においては、社会一般の情勢に適応した給与勧告を行うことにより、その役割を果たしているものと認識している。
【斉藤議員】
第四に、勧告では、超過勤務の縮減と年次休暇の計画的な取得の促進が指摘されています。実態をどう把握され、改善をどう指導・監督しているでしょうか。
【人事委員会委員長】
超過勤務の縮減等については、「各任命権者において、積極的な取り組みが行われた結果、約10年前からみると減少傾向にあるなど、一定の成果を挙げてきている」と認識しており、勧告で報告した通り、今後とも超過勤務の縮減および年次休暇の計画的取得促進の取り組みが一層進められ、職員の仕事と生活の調和に寄与することを期待するものである。
なお、労働基準監督機関の立場としては、人事委員会が職権を有する事業場に対して、必要に応じて適切に指導を行っているところである。
≪再質問≫
【斉藤議員】
私が3つ目に聞いたことに対して知事の答弁がなかった。この12年間の連続的な引き下げは、日本経済を悪化させたのではないか。このことを財界系のエコノミストの指摘を含めて指摘した。これは10月26日付のエコノミストに出た論文だが、「日本経済の最大の問題点は賃金が上がらないことである」「日本経済の失われた10年は賃金が失われた10年だった」「内需を拡大して景気を浮揚させるには賃金を上げる必要がある」と。財界系からもこのように言われている。12年間賃金が下がった国というのは世界にはない。この賃下げ、悪循環というのは、完全に日本経済、地域経済の内需を冷え込ませてしまった。このことを知事に聞いた。ただ一方で、一部の大企業だけは、この10年間で100兆円内部留保を増やした。経済危機の下でも11兆円内部留保を増やした。この利益が労働者に還元されなかった、中小企業に還元されなかった。この歪みを今正すためには、公務員が下げ民間が下げという悪循環を断ち切る必要があるのではないか。
【達増知事】
地方公務員の給与について。人事委員会の勧告を最大限尊重しながら、職務給の原則、均衡の原則、情勢適応の原則といった地方公務員の給与決定の諸原則に基づき決定すべきものだと考えている。
経済全般の活性化という観点からは、県内経済については、県政の重要課題であり、県内の厳しい経済雇用情勢を踏まえ、県として雇用の創出、就業支援、地域経済の活性化を図るためのさまざまな事業に取り組んでいかなければならず、またそうしているところであり、引き続き県内経済の活性化に県としてしっかり取り組んでいきたい。
【斉藤議員】
教育長にお聞きするが、特に教員の場合は、0.2ヶ月の賃下げと合わせて調整額の減額と。義務教育の場合には10万9千円、特別支援の場合には12万3千円の給与減額になると。これはきわめて重大な、大幅な減額だと思う。
ところが教員の場合は、毎日1時間から2時間残業していると。これは文科省の調査である。しかし超過勤務手当は出ていない。一方でこういう月60時間にもなるような残業をしながら調整額は下げるという、こういうやり方だったら理解を得られないのではないか。実態に合わないのではないか。教職員の超過勤務、残業の実態と合わせて、調整額、給与の減額は本当に合理性があるのか。
【教育長】
議員ご指摘のように、教員には勤務の特殊性から4%という調整額が支給されている。ただ、現在教員は、昭和41年度に実態調査したときに比べて、そのときは8時間程度だったが、18年度の文科省の調査では月平均34時間程度の残業をしていると。その4%の調整額の見直しということで、超過勤務の切り替えが国において検討が進められていると認識している。そういう調整額の見直しが進まない中で先行して給与が下がっていくということについて私も内心熟知たる思いもあるが、全国的にそういう状況だと。均衡の原則もあるので、先行してやらざるをえないということで、組合との交渉なども通じて現場の理解を得ながらそういうことを実施していくということになっているのでご理解を賜りたい。
【斉藤議員】
県警本部長にお聞きするが、警察は7万2千円の給与の引き下げとなるのだが、9月の決算議会でも聞いた。県警は年間140時間超過勤務が支給されていない。この140時間の超過勤務手当は金額でいくらになるか。超過勤務手当も出さないで賃下げだけやるということは、職員の理解も県民の理解も得られないのではないか。
【警察本部長】
職員の超過勤務の時間数および単価には個々に差があることから、一概には算出しかねる。ただ、たしかにそういう時間の差というものをしっかりと受け止めていく必要があると考えている。まずは勤務実態をよく掌握し、業務の合理化・効率化を進め、超過勤務の縮減を図ることが第一であると考えている。
あわせて、予算の制約がある中だが、実績に見合った支給について、ご指摘のような状況を踏まえつつ適切に対処していきたい。
【斉藤議員】
人事委員会委員長にお聞きする。県職員の実際の給与は、特例減額により8585円、2.33%も民間より低いというのが実態である。実態で比較すべきである。制度上で比較するというのだったら、給与構造改革4.8%マイナスの給与法で比較すべきではないか。4.8%の給与構造改革は、経過措置で比較すると。特例減額については、まったく無視すると。これはまったく公平感を欠いた比較ではないか。実際支給されている給料で比較することこそ公平な公民較差ではないか。そうではなくて、それを無視するという法律の根拠はあるのか。
あわせて、県職員の場合には12年連続の引き下げという異常な事態である。これは県職員平均で126万円の減収である。年間ベースで247億円という給与総額の減収である。これだったら労働者の生計費を確保する、労働者の基本権を守るという点では役割を果たさなかったのではないかと思うがいかがか。
【人事委員会委員長】
人事委員会の行う給与勧告は、制度上の改正を行うものであり、その根拠となる公民給与の比較については、制度上の給与水準をもとに比較を行い、その結果算定された公民較差を踏まえて検討を行うことが適当と判断している。
本県の給与の特例減額というのは、財政的な事情を考慮して、特例的に実施しているものであることから、人事委員会としては特例減額を考慮しない制度上の給与水準をもとにして勧告を行うのが適当だと考えている。
≪再々質問≫
【斉藤議員】
賃金の悪循環という問題を知事はどう見るかと知事に聞いた。
特例減額は本当に中止すべきである。民間より年間だと10万3020円低い。その中でさらに特例減額をやるという意味はないのではないか。
【達増知事】
岩手県知事としては、岩手県内経済の活性化ということについて、雇用の創出、就業支援など地域経済の活性化を図るため、さまざまな事業を通じて取り組んでいかなければならないという風に考えている。
特例減額については、そうした政策・事業に要する予算を確保するために職員の理解をいただきながら3年間取り組んできたものであるが、今後のあり方については、今後の歳入歳出ギャップの見込みや今後の予算編成での基本的考え方などを踏まえて勘案されていくものと考える。