2010年12月3日
議案に対する質疑(大要)
【斉藤議員】
日本共産党の斉藤信でございます。議案第6号、第9号、第22号について質問いたします。
・米価暴落対策について
議案第6号は、2010年度岩手県一般会計補正予算(第4号)であります。その内容は、米価の暴落に対応して、緊急のつなぎ資金を無利子で短期に貸し付けようとするものであります。
米価暴落に対する県独自の緊急対策を講じることは重要なことです。しかし、その内容は農家の実態と要望からみて極めて不十分だといわなければなりません。
知事に質問します。
第一に、米価の大暴落が今回の補正予算による緊急対策の要因ですが、なぜ米価が大暴落したか。その要因をどのように認識し、その打開に取り組んできたか。また政府の対応はどうなっているか示していただきたい。
【達増知事】
コメの価格が下落した主な要因は、消費の減退と生産数量目標を上回る過剰生産により、コメの需給ギャップが発生したこと、景気の低迷により、消費者の低価格志向が進行してきたことなどによるものと認識している。このため県は、国に対し、過剰米を非主食用へ仕向ける緊急措置を要請してきたところであり、現在国において、過剰米処理においてのさまざまな検討を行っていると聞いている。
【斉藤議員】
第二に、米価の大暴落で、県内農家は約136億円の減収になると試算されています。政府の所得補償、定額部分と変動部分でそれぞれどれだけの補てんが見込まれているでしょうか。岩手県の農家の生産費を保障する再生産が可能な所得補償となるのでしょうか。
【達増知事】
本県への交付見込み額は、加入申請面積や、直近の相対取引価格等から試算すると、定額部分で約65億円、変動部分で約79億円、計144億円の交付が見込まれる。
再生産が可能な所得補償となるのかどうかということだが、モデル事業の定額部分、変動部分がきちんと交付されることにより、生産費の不足分と販売価格の下落分が補てんされることとなっている。
【斉藤議員】
第三に、今回の米価の大暴落の影響を受けているのは大規模農家であります。その実態をどう把握しているでしょうか。私は農業諸団体と米価暴落・TPP問題で懇談してきましたが、「短期資金も大事だが、一番困っているのは年間の運営資金の確保だ」ということでした。農家の経営を守るさらなる対策が必要と考えますがいかがでしょうか。
【達増知事】
米価下落の影響については、先般稲作農家を対象に、農業改良普及センターを通じて実態調査を行ったところであり、この結果を見ると66%が「経営に影響がある」と回答し、その影響としては、「買掛金や未払い金の支払いができない」がもっとも多く、次いで「借入金の支払いができない」などとなっており、特に経営規模の大きい農業者ほどその割合が高く大きな影響を受けているものと認識している。
農家の経営を守る対策については、農業者の円滑な営農や経営改善などを進めるための資金として、無利子または低利子の制度資金が幅広く用意されているので、まずはその活用が図られるよう広く周知を図っていきたい。
【斉藤議員】
第四に、今年の米価暴落で米作りを続けられるかと農家が本当に悩んでいるところに、管民主党政権は突然TPPへの参加を検討し、関税撤廃に踏み出そうとしています。TPPへの参加・関税の撤廃はさらなる米価の大暴落を招くことは明らかではないでしょうか。民主党の参院選挙公約にもなかったTPPへの参加は撤回を求めるべきではないでしょうか。
【達増知事】
国は、国境措置の撤廃による農産物生産等への影響について、「全世界を対象に直ちに関税撤廃を行い、生産量の減少を価格低下に対し何らの対策も講じない」という前提で試算し公表した。この試算の中で、コメについては、有機米といった外国産と差別化が可能なコメのみ残り、価格も低下するとの考え方を示しており、国が試算した前提条件のもとでは米価にも影響があると推測される。
TPPへの参加について、政府においては、現時点では参加を決定したとは認識していない。我が国が地域主導の自立的な成長を実現する上で、関税撤廃がどのような効果を有するか、農林水産業に携わる生産者を含めた現場や地域の立場を十分に踏まえ、協定の内容そのものに関して根本的な検討・議論が行われるべきと考えている。協定への参加については、協定の内容そのものに関する検討を前提とし、さらに農林水産業をはじめとした必要な国内対応策が講じられ、地域の声も反映した国民の合意が得られるまで十分な時間をかけて慎重に検討することが必要と考えている。
・県立沼宮内病院の無床診療所化について
【斉藤議員】
議案第9号は、県立病院等事業の設置等に関する条例の一部を改正する条例であります。その内容は、県立沼宮内病院を廃止して無床診療所にしようとするものであります。
第一に、県立沼宮内病院はどのような歴史と経過をふまえて設立された病院だったのでしょうか。
【医療局長】
昭和28年当時、町内唯一の公的医療機関が休止状態にあった中で、当時の沼宮内町が病院敷地をあっせんするなどの県立病院誘致を行うことにより、昭和29年5月に内科・外科・産婦人科を診療科とする32床の県立沼宮内病院が開設されたところである。その後昭和31年に、結核病棟、一般病棟の増築や伝染病棟の併設、昭和46年に病院の全面改築を行い、昭和57年には一般病床を76床に増床してきた。その後施設の老朽化のため、平成14年10月に現在の岩手町五日市地内に移転新築し一般病床60床の病院として運営してきた。
【斉藤議員】
第二に、県立沼宮内病院の実績、入院、外来、がん検診等この間の経過を含めて示していただきたい。
【医療局長】
沼宮内病院は、盛岡保健医療圏における地域のプライマリーケアの機能を担うとともに、岩手町が推進する集団ガン検診の受診病院として共立するなど、地域の公衆衛生活動にも積極的に寄与してきた。
直近3ケ年度の一日平均入院患者数は、平成20年度は29名、21年度は17名、22年度は10月末現在で6名となっている。
また直近3ケ年度の一日平均外来患者数は、平成20年度は121名、21年度は112名、22年度は10月末現在で98名となっている。
直近3ケ年度のガン検診の受診者数は、大腸ガン検診、胃ガン検診、乳ガン検診の受診者数は、平成20年度は4642名、21年度は4730名、22年度は10月末現在で3396人となっている。
【斉藤議員】
第三に、岩手町のがん検診は保健文化賞を受賞したように全国一ともいわれる取り組みです。その集団検診を支えてきたのが県立沼宮内病院であります。これまでは、検診からガンの発見、手術、治療までを行ってきました。こうした取り組みは県立病院だからこそできたのではないでしょうか。採算が重視される民間に任せてできると考えているのでしょうか。
【医療局長】
今回提案している条例案は、県立の地域診療センターに移行しようとするものであり、岩手町が力を入れている検診事業については、町の要望も踏まえ、必要な職員体制について配慮していきたい。
民間での検診の実施についてだが、民間移管に向けた協議の中で、岩手町と地域医療に理解のある医療法人との間で、検診における体制の確保も含めて大筋で合意がなされたとうかがっている。今後、民間移管が具体化していく際には、医療局としても岩手町方式の検診体制が維持されるよう支援等について町と話し合っていきたい。
【斉藤議員】
第四に、無床診療所化計画の最大の理由は医師不足でありました。この間、岩手医大の入学定員と地域枠が拡大され、奨学生も拡大されています。奨学生の実績と今後の医師確保の見通しはどうなるでしょうか。医師確保の見通しが出るなら入院ベットの復活を行うべきではないでしょうか。
【医療局長】
奨学生の貸付実績は、平成9年度以降に開始した医療局医師就学資金貸付事業制度など、3つの奨学金制度で、前身の制度も含めて現在170名に奨学金を貸与している。大学卒業により貸付が終了した者は、102名となっており、そのうち52名が県立病院等で義務履行中であり、9名がすでに義務履行を終了している。
このような奨学金制度により養成される医師は、地域医療に従事するまでには、10年程度の年数が必要であり、今しばらくは医師不足の状況が続くものと考えている。
地域診療センターの病床については、廃止の手続きは行わず、休止扱いとすることとしているが、岩手町においては、引き続き民間移管により入院ベットを確保しようとする取り組みを進めており、医療局としてもその取り組みに対して町と連携しながら支援していく考えである。
地域診療センター移行後の見通しは、診療部門が民間移管されるまでの間は、他の地域診療センターと同様の形で運営していく考えである。
・岩手県環境基本計画について
【斉藤議員】
議案第22号は、岩手県環境基本計画の策定に関し議決を求めるものであります。
第一に、地球温暖化対策、CO2削減の課題についてでありますが、県はこれまで国の6%削減を上回る8%削減の目標を掲げてきました。その実績は削減どころか90年比では増加しているのが実態です。その要因とこれまでの取り組みをどのように分析・総括しているのでしょうか。
【環境生活部長】
本県のCO2排出量は、直近のデータである平成19年が1299万5千トンであり、基準年である1990年に比べ0.9%の増加となっている。
増加した主な要因は、家庭部門において、世帯数の増加により電力需要や灯油使用料が増えたこと、また小売業などの業務部門において、売り場面積の増加により電力需要が増えたことなどによるものと考えている。
これまでの取り組みの分析は、県ではこれまで家庭部門におけるエコライフの普及啓発や、産業部門等における県民の健康で快適な生活を確保するための環境の保全に関する条例、いわて地球環境にやさしい事業主認定制度による自主的な取り組みを促進してきたところであり、取り組みの必要性についての理解は徐々に広がってきたと考えているが、そのことにより、どの程度のCO2の排出削減につながったかという点については分かりにくい面があったと考えている。
平成21年度以降については、それまでの取り組みに加え、温暖化防止岩手県民会議を中核とした、県民運動の展開のほか、住宅用太陽光発電への補助や、環境対応車導入補助など削減効果の高い取り組みへの具体的支援を行ってきたところであり、こうした取り組みの効果は今後表れてくるものと考えている。
【斉藤議員】
第二に、今後10年間の目標としてCO2削減目標は25%とされています。積極的な目標ですが、その根拠と達成する具体的方針は示されているのでしょうか。25%削減目標について環境審議会、県でどのような審議が行われたのでしょうか。
【環境生活部長】
この削減目標は、2020年までに90年比で25%削減するとした、国の温室効果ガス排出削減目標の達成に向けて、地域から貢献するという考えの下に設定するものである。
目標達成に向けた方策としては、環境基本計画に再生可能エネルギーの導入促進など、二酸化炭素排出削減対策の推進、森林等による二酸化炭素吸収源対策の推進を施策転換への柱としており、1世帯あたり年間CO2排出量や、再生可能エネルギー導入割合などの指標を設定している。さらに分野別の具体的な取り組みについては、平成23年度に策定する新しい地球温暖化対策実行計画に盛り込んでいくこととしている。
岩手県環境審議会における審議の状況については、25%の削減目標については、9月3日に開催された審議会で審議いただき、分野ごとの取り組みを具体化していく必要があるのではないかという意見があったが、目標については特に異論はなかった。庁内の議論においても同様、削減目標については異論はなかった。
【斉藤議員】
第三に、基本計画では、低炭素社会の構築、循環型社会の形成、自然共生社会の形成の3つの社会をめざすとしています。この目標は重要なものですが、低炭素社会を含めた3つの社会をめざす基本方針が従来の取り組みの延長にとどまっているのではないでしょうか。
滋賀県では昨年12月の県の環境総合計画を定め、2030年にはCO2、50%削減の目標を掲げ、具体的な施策の課題を示すとともに、その後、行程表まで明らかにしています。岩手県の計画は内容は国頼みになっているのではないでしょうか。
【環境生活部長】
新しい岩手県環境基本計画は、県の施策のほか、県民やNPO、企業、市町村などに一緒に取り組んでいただきたいことを例示するとともに、参考資料に県と各主体との共同の姿を県民等との共同プログラムとしてパッケージ化して具体的に示し、あらゆる主体との連携・共同をして推進していくこととしている。排出削減についても同様に、県の施策と県民等との共同・連携の取り組みにより達成を目指していくこととしている。
【斉藤議員】
第四に、自然共生型社会をめざすというなら、ダム建設などによる大規模な自然環境の破壊を見直すべきと考えますが、その影響をどのように把握しているでしょうか。県条例による現行の環境アセスは、大規模事業を進めるための方策になっているのが現状です。自然共生社会の形成をめざすというなら、環境アセスのあり方の見直しを行うべきと考えますがいかがでしょうか。
【環境生活部長】
環境アセスについては、大規模開発の際、事業者の環境影響評価方法書準備書に対し、県が専門家による環境影響評価技術審査会の意見を聞いて、環境保全の見地から知事意見を述べ、事業者はこれを考慮して環境保全措置を実施するという制度である。
事業着手後には、事業者に報告書の提出を求めて、希少植物の移植等の環境保全措置の実施状況を確認しているが、これまでの環境影響評価の事例では、いずれも知事意見に沿った環境保全措置が講じられており、制度の趣旨に沿って自然環境への影響の回避・低減が図られているものと考えている。
環境影響評価制度については、現在国において戦略的アセスの導入や、生物多様性の保全、地球温暖化対策の推進等の視点を盛り込んだ環境影響評価法改正の動きがあることから、こうした動向を勘案しながら見直しを検討していきたい。
≪再質問≫
・米価暴落対策について
【斉藤議員】
所得補償について、定額部分、変動部分について知事から回答があった。変動部分で79億円、この試算というのは、価格差、全額補てんされた場合の試算ではないかと。いま政府の予算上では1俵あたり1200円しか予算化されていない。その79億円の根拠をしめしていただきたい。おそらく79億円出すには政府が補正予算を組まないと出てこない額ではないか。
全国の3カ年計画と相対取引との価格差は1959円だが、岩手の場合は2471円の格差がある。この点では本当に岩手にとっては補償にならないのではないか。
【農林水産部長】
議員ご指摘の通り、国全体の当初予算でいくと、戸別所得補償モデル事業は、3371億円とっている。これは定額部分が1980億円であり、変動部分は1391億円である。1391億円というのは60キロ当たりに換算すると1200円ということであり、10月の相対取引から算定すると、平均値で2000円弱ということであるので、800円弱の差がある。これを手当するためには、変動部分について2267億円必要である。これはあくまで我々が試算したものであるので、国から公表されているものではないが、そう試算している。そうすると、当初予算の1391億円との差は876億円になっている。そのぐらいの予算が必要だと試算している。この予算については、どのような形で手当するのかということについては、国でさまざま検討されていると聞いている。
少なくとも10月28日の篠原農水副大臣の記者会見によれば、「こういうものについて手当していきたい」という会見をしている。
今回のモデル事業については、全国平均の単価を使うということにされているが、たしかに岩手県の場合の下落等を考えると、議員ご指摘の通り、その単価は2353円の差になっている。したがい、先ほど2000円弱と言ったのは1959円なので、差額は60キロあたり394円、その分が必要だと積算される。これが足りるのかどうかということについては、先ほど136億円と144億円の比較でご質問されたわけだが、136億円というのは、コメの概算金の下落分を積算したものであり、いわゆる生産がこの通りいくかどうかについては、これからの販売動向によるわけであり、今年の作柄等について、あるいは一等米の品質等から鑑みると、何とか高く売っていきたい、概算金に上乗せしていきたいという風に我々も努力をしており、そういうことで岩手県は全国平均よりもかなり厳しい状況にはあったわけだが、これからはその値を上げていきたい、そういう努力をしていきたいと考えている。
・県立沼宮内病院の無床診療所化について
【斉藤議員】
歴史と経過を聞いた。昭和29年の5月に設立され、その前身もあるわけで、公的病院を昭和9年からつくり、それが戦後誘致という形で設置された。今から56年前に32床で病院がつくられ、56年経ったらこれが無床化だと。歴史の逆流ではないか。
たしかに今医師不足で大変だが、しかし医学部の定員は全国的拡充され、岩手医大も拡充され、奨学生も確保されてきている。おそらく5年、10年後には一定程度の医師を確保する見通しが出てきたと思う。そうした場合に、今無床にした診療所をベットを回復するという見通しを県としてもつべきではないか。未来永劫そこには入院ベットはないという計画であってはならないと思うがいかがか。
今常勤医師が2名である。病院でありながら常勤医師が2名しか配置されていない。そこに外来・入院患者の減少があると思う。その中でもガン検診に対応していることは評価したい。これは結果的に無床診療所化になっても、何としても守り抜いていただきたい。全国一のガン検診体制というのは、県内市町村に広げるべき課題であり、県の都合でこれを縮小することはあってはならない。
【医療局長】
たしかに奨学生は増えてきているが、実際に医療に従事するまでは10年程度必要ということで、いましばらくは医師不足の状況が続くということで、現在は基幹病院でさえも深刻な医師不足の状況にあるということで、現時点でなかなか将来の見通しを言うことは難しいということでご理解いただきたい。
検診の関係については、町のほうからも非常に要望されている案件であるので、そういったことも踏まえて、今回地域診療センターを提案しているわけだが、この分も含めてきちんと対応できるようにという方向で地域診療センターの体制についても現在検討している。
・岩手県環境基本計画について
【斉藤議員】
今度の目標は、CO2の25%削減目標は指標の欄に書かれている。本文にない。25%削減目標自身はきわめて意欲的で大きな目標であると思う。しかし本文にない。指標の一覧表に初めて出てくる。だから環境基本計画は残念ながら25%目標を達成するための計画になっていない。最初のパブコメの対象にもならなかった。そういう意味でいくと、8%目標というのも国の計画を超えた。しかしそれは達成できないどころかプラスになってしまった。その成果と課題というのは1ページの半分ぐらいしか書いていない。ここの真剣な反省と25%目標を本気でやるような計画にすべきだったのではないか。
【環境生活部長】
削減目標も指標の1つということで、指標一覧の中に基本的に整理したということである。かといって真剣な議論がなされなかったというわけではなく、もっとも注目を浴びた指標であり、審議会での議論は報道もされたわけである。結果として異論は出なかったわけだが、この25%削減の指標、それを達成するための関連指標があるわけだが、これらについては審議会の委員の皆様に真剣な議論をいただいた賜物だと考えている。
パブリック・コメントについても2回実施し、2回目にはこの指標を載せてご意見をいただいたところである。
いずれそういった真剣な議論の賜物であるということである。