2010年12月6日 商工文教委員会
雇用対策に対する質疑(大要)
・直近の雇用情勢について
【斉藤委員】
年末を迎えて、雇用問題、就職難打開の問題はまさに県政の緊急重要課題だと。
直近の雇用情勢はどうなっているか。
【雇用対策課長】
11月30日に岩手労働局から発表されたデータによると、有効求人倍率は0.47と前月より0.01ポイント改善している。数値的には改善はしているが、失業の長期化等がみられ厳しいものもある。
【斉藤委員】
全国的には、失業率が5.1%(334万人)に上がったと。少し前の労働力調査では、うち128万人が1年以上の失業だと。大変深刻な事態が推移している。
今度の労働力調査では、15歳〜24歳までの失業率が9.1%と倍近い数値で、青年層の深刻な失業状況がある。岩手県とすれば、年代別の失業状況は分かるか。
【雇用対策課長】
所管の調査統計課に確認したが、この調査は政府のサンプリング調査であり、全国10万人を対象にしているもので、都道府県の人口割で見ると、岩手県は1000人程度ということで非常に誤差が大きいということで、県別のデータについては年齢別のデータは出していない。
【斉藤委員】
いま私たちは、盛岡・一関・洋野町などで住民アンケートを行っており、盛岡では1000通を超えて回答が寄せられた。「家族に失業者がいる」というのが25.5%、一関はもっと高く26〜27%、洋野町は県北の出稼ぎ地帯という特徴もあるが33%だった。少なくとも4世帯に1世帯以上は家族に失業者を抱えている。「春にリストラになったが仕事が見つからない」、「2年前に失業したが仕事が見つからない」など切実な声が寄せられている。
・雇用対策の実績について
【斉藤委員】
今の雇用問題というのは、0.47自身がそもそも2人に1人以下しか求人がない。そして正規は0.20程度で正社員の求人がもっと少ない。そして正社員というのは、ほとんど資格や実績・経験がないと対象にならないということで数字以上の深刻さがある。この打開にいまあらゆる施策を動員して取り組むべきだと思うが、県のこの間の雇用対策の実績を示していただきたい。
【雇用対策課長】
県では雇用創出計画をつくっており、21年度においては、産業振興施策や基金事業により総計4142人の常用雇用の創出を図っている。今年の実績は9月までで、産業振興については1184名、雇用対策基金事業では3131名の計4315人ということで、目標に対する達成率は104%で、県としてもそういった形でのいろんな施策を通じた雇用創出を図ってきている。
【斉藤委員】
本会議の答弁で、産業振興のところでは、自動車産業で生産拡大もあって産業振興での雇用が増えたと。自動車や半導体関係でどれだけ雇用が増えたか。
【雇用対策課長】
雇用実績については、産業別に整理しているので、自動車・半導体という区分けでは把握していない。
【斉藤委員】
本会議の柳村議員の質問に対して、「産業振興施策については、自動車関連産業の受注拡大などにより1022人の目標に対して1184人の雇用創出」だと具体的に答弁している。だったら分かるのではないか。
【雇用対策課長】
今申し上げたのは産業別ということではなくて事業別ということで、例えば自動車関連創出事業については常用で上半期で326名、その他にもいろんな事業があるので、産業別という把握は難しいということである。
【斉藤委員】
実は決算でも取り上げたが、誘致企業における雇い止めはリーマンショック以降約7800人、うち自動車関連で1900人、半導体は2600人だったと。ある意味でいくと雇い止めの大半は誘致企業だった。そして今生産拡大の基調で利益も上げてきているという、どこまでこれが回復するかというのは誘致企業の雇用を守る責任だと思う。そもそもソニーにしても富士通にしても関東自動車にしても、県内の中小企業と違い、巨額の内部留保を持っている。本来雇い止めしなくても耐えられる体力を持ちながら真っ先に首切りしたと。そこに一番の問題がある。いま自動車で326名という数字が出たが、1900人雇い止めしているということから見たら本当に回復にはならないのではないか。おそらく326名全て正社員ではなくて、期間工だとかそういう形の雇用拡大になっているのではないか。
【雇用対策課長】
雇用形態については把握しておらず、先ほど述べたのは常用ということで、一応4ヶ月以上の雇用期間ということで把握している。
【斉藤委員】
常用というのは、一般で聞くと正社員かと思うが、4ヶ月以上の雇用が常用なので非正規であっても4ヶ月採用すれば常用になるので、統計のマジックというのは注意しなければならない。
・再就職の取り組みについて
【斉藤委員】
ソニーで工場閉鎖による退職者が出たが、再就職の状況、富士通の退職者の再就職の状況は直近でどうなっているか。
【雇用対策課長】
ソニーは10月末時点で約7割強の方が再就職されていると聞いており、富士通は約5割が再就職されていると聞いている。8月末ではソニーが5割程度、富士通が3割程度だったので改善の傾向にはある。
【斉藤委員】
改善されつつあるというのは評価したい。首切ってからの再就職なので、本当に最後の一人までできるだけ早く再就職への取り組みについて企業雇用を守る責任を果たさせるように県としても引き続き取り組みを強めていただきたい。
関東自動車は、新型車種の生産にも入って、月産1万台という報道もあったが、関東自動車の3年4年5年と期間工で働いているこういう方々は、率先して正社員に採用すべきだと思うが、期間工の状況、昨年度まで4年間で233人正社員に登用したというのは聞いたが、今年の状況が分かれば教えていただきたい。
【企業立地推進課総括課長】
10月末現在の数字だが、正規が約1680名、期間社員が約750名、計2430名という状況である。関東自動車自身は、期間工から正社員への登用という形をこれまでも進めており、今もその姿勢でいることには変わりないということだが、今年度についてはこれからということである。
【斉藤委員】
新型車種の生産で回復の基調にあるので、昨年は厳しい中でも10名登用した。今年度はぜひ頑張っていただきたい。一昨年は100名までいった。そういう努力をしてきたことは認めるので、生産が回復しつつある中で今年もきちんと期間工の正社員化が進められるように取り組んでいただきたい。
・就職対策について
【斉藤委員】
失業問題で私は事業主都合の離職者を聞いてきた。リーマンショック以降8月末の段階で63000人だと。新しいデータはどうなっているか。
もう1つは、高卒・大卒の就職問題である。今は超就職氷河期と。10月末の大卒の就職率が57.6%ということで、統計開始以来初めて60%をわったと。この高卒・大卒の就職内定未定者はどうなっているか。
【雇用対策課長】
リーマンショック以降の事業主都合の離職者数は、10月末で66864名である。
高卒・大卒の就職状況だが、高卒は内定率が10月末で64.4%、未内定者が1223名で昨年同期比で16.3%減となっている。大卒は、労働局の10月末の数字で48.1%、昨年同期比で1.8%プラスとなっている。
【斉藤委員】
高卒は、岩手県が頑張って前年よりは16.3%改善している。ただ、未定者が1223名いる。高校関係者から聞いたが、今回は去年より厳しいと。一次試験で落とされると二次の募集がないと。募集の数も採用していないという話だった。今の段階で64.4%ということは県が関係機関と協力してやってきて、地元の企業も早めに求人を出したという効果はあると思う。ただ、全体としては県内の求人が大幅に減っているので、県内求人も去年よりは増えているといっても、例年比では大幅減である。だからこの厳しさはリアルに見て、高卒の場合も昨年以上の対策を講じないと、これからの厳しさはやはり去年以上になると思う。
大卒は48.1%ということで、労働局の資料を見ると、短大が15.6%、公共職業能力開発施設が66.1%、高専は100%、専修学校が38.5%とかなりの厳しさである。そういう点では、高専を除けば高卒以上に大卒・短大・専門学校というのは大変な厳しさの中にある。この就職難打開の取り組みはどうなっているか。
【雇用対策課長】
高卒については、セミナーを追加開催するなどの取り組みを行っている。
大卒・短大等については、ジョブカフェを中心として、岩手大、県立大それぞれ来春卒の方に対する特別のセミナーをすでに開催しており、その他の大学に対するものでも、ジョブカフェで11月以降3月まで就職セミナーを追加開催している。
その他国においても、高卒・大卒ジョブサポーターを17人から29人に増員し支援体制を強化して、県の体制も39人ということで県と国で一緒に支援している。
【斉藤委員】
商工文教委員会で京都のジョブパークも視察してきた。全国で一番進んでいる対策を京都はやっているのではないか。体制から施設から感心して聞いてきた。一番感心したのは、地元の中小企業とのマッチングに努力しているということである。大卒・高卒の未就職者は一度府が採用して、4ヶ月〜6ヶ月座学と研修をしながら、地元の中小企業に就職して93%の就職率だった。大卒関係で定員が80名とか数は限られていると思うが、京都は1400の中小企業の応援団というのを組織している。そこと連携してマッチングしている。
岩手の場合も、厳しい中小企業の状況ではあるが、そういう地元の企業の応援団をきちんと組織して、最大限県内への就職の道を開いていくと、特別の対策が必要である。一部やっているようだが、その辺りの本格的な取り組みが必要ではないか。
【雇用対策課長】
県においては、雇用の要請を岩手県経営者協会等の経済団体に積極的にやっており、そういった面での連携はあり、この度10月に国の労働局のほうで、新卒者の応援本部というのを立ち上げ、これには経済界、行政、教育と関係する団体は全て入っており、そういった面での連携体制を組んでおり、一致団結して支援していきたい。
【斉藤委員】
今年の3月末に高校で約200人の未就職者が出て、県、特に市町村が独自に未就職者に対して、地元の中小企業が雇用した場合には特別に助成するという取り組みが県内18市町村で行われ、かなり今までにない取り組みだったと思っている。この取り組みをどう把握しているか。先進的な経験をどうつかんでいるか。
【雇用対策課長】
私たちの把握しているところでは、現在18市町村が新卒者等を地元企業が雇った場合、事業者に対して奨励金を出すという制度を立ち上げていると聞いている。例えば八幡平市では、月10万円を1年間にわたって支出するということも聞いている。そういった取り組みを県でも支援していきたい。
【斉藤委員】
議会事務局にお願いした聴き取り調査によると、18市町村で143社、197人申請をして取り組まれていると。厳しい中で地元の中小企業が取り組んだことはきわめて重要な取り組みだったと。
今紹介のあった八幡平市は、月額10万円を1年間ということで17社23名が申請して取り組まれている。支援が厚いところほど利用実績が多い。今回のこの取り組みをよく把握して、今年度さらに就職の状況が厳しい中で、成果のあった取り組みを全県に普及し、県も大いに応援すべきではないか。
【雇用対策課長】
昨年度については、県と市が一緒になって応援しようということで、市の取り組みを応援しようということで県のほうでも助成制度をつくったりしている。今年度については、国のほうでも新卒3名の方のトライアル雇用について、3ヶ月トライアル雇用をして、その後正社員として採用すると総額80万円のお金が出るということも聞いており、そういった制度も普及しながら対応していきたい。
【斉藤委員】
国もそういう取り組みを始めた。ぜひ超就職氷河期に対応するあらゆる手立て・対策を講じて一人たりとも初めて社会に出るときに路頭に迷わせないと、そういうメッセージを早く打ち出してほしい。
京都は、12月議会で予算計上して取り組むというニュースも聞いてきた。早め早めに高校生大学生を励まして、そしてこの機会に逆に優秀な人材を県内に残していく攻勢的な取り組みをしていただきたい。中小企業は厳しいけれども、逆にいけば人材確保するチャンスだと、そういう取り組みにぜひしていただきたい。
・ワンストップサービスの周知について
【斉藤委員】
県内初めて全ての地域で開催されようとしており、画期的なことだと思う。せっかくいい取り組みなのだが残念ながら宣伝されていない。大いに宣伝して年末の深刻な課題に取り組んでいただきたい。
【雇用対策課長】
労働局とともに、今後そういった取り組みを強化していきたい。
・中小企業対策について
【斉藤委員】
県内の事業所数で99.8%、常用雇用で89%を支えているのが中小企業である。中小企業に対する支援策を抜本的に今地域経済の柱にふさわしく強化する必要があるのではないか。仕事を増やす、予算を増やす、具体的な経営・技術支援を拡大するという方向で取り組むべきだと思うがいかがか。
【経営支援課総括課長】
中小企業の役割は、おっしゃる通り岩手県の産業を支える重要な役割をもっていると認識している。大変厳しい財政状況の中で、中小企業の力を発揮・育成させていくために、個々の企業に対する支援の強化、ハンズオンでの支援の強化を図りながら、現地での対応等を図りながら進めている。
【斉藤委員】
具体的に聞くが、いま中小企業に仕事を増やすことが重要である。県としてすぐやらねばいけないのが、官公需の中小企業向け発注額を拡大することである。この5年間の推移はどうなっているか、減っているのではないか。官公需をもっと思い切って中小企業に発注する、仕事を増やすと。
もう1つは、住宅リフォーム助成は管轄は県土整備部だが、宮古市ではわずか1年弱の間に10億円以上の仕事、経済波及効果だと24億円だと言われる仕事を地元の中小企業に増やした。隣の秋田県では、県が助成をしたら252億円の事業費、経済効果は500億円を超えると。やはり今できる中小企業に仕事を増やす対策をやるべきだと思うが実態はどうなっているか。
【経営支援課総括課長】
官公需の5年間の実績だが、17年度は契約実績1162億5400万円に対して中小企業向けの比率は80.4%、18年度は1149億円余で比率は72.5%、19年度が1067億円余で比率が74.5%、20年度は1091億円余で比率は79.8%、21年度は1082億円余で比率は79.2%となっている。この数字を見ると、年により高低があるがほぼ横ばいで推移している状況である。
中小企業への仕事を増やす対策だが、もちろん中小企業の独自の努力が必要だが、我々としては、中小企業の取り組みに対する商工団体等との支援、技術開発や経営相談の支援をきめ細かく実施していくと。資金繰りが必要な企業に対しては、県単融資制度等をはじめとした金融支援を行っていく。その他新たな取り組みをする企業に対しては、さまざまな情報を提供して専門家を派遣するなど、企業の成長に向けての発展を支援していくということである。個々具体的な事業については、それぞれの企業の工夫により新たな事業展開がされるわけだが、それについてもきめ細かい対応をして中小企業の支援をしていきたい。
【斉藤委員】
平成14年は、官公需の実績が1926億円で中小企業向けが1464億円だった。直近の21年度は1082億円の実績で中小企業向けは857億円だったと。これは8年間の推移だが、官公需そのものが半分近くに減っている。そして中小企業向けも1464億円から857億円に激減している。予算はそれほど減っていないが、中小企業向けの官公需がそれ以上に減っていると思う。
各県の状況を調べてみたが、例えば中小企業向けの発注比率は、北海道が90.4%、青森が90.4%、秋田92.6%、山形88.9%、福島87.6%ということで、岩手と10%ぐらい違う。官公需の総額が減っているというのと、あと10%ぐらい北海道・青森並に中小企業向けの発注比率を増やす努力をすべきではないか。それだけでも100億円200億円の仕事拡大になる。そういうことを真剣に考えるべきではないか。
【経営支援課総括課長】
平成14年との対比の数字だが、これは予算の品目で分析したものだが、大きく減っているのが土木費で半減していると。普通建設事業費のくくりで見ても半減以下に下がっている。物件費について比較すると、平成14年では226億円に対して21年は232億円ということで大きな変化はなかった。
他県との比較だが、非常に細かい数字で1つ1つ比較するのは大変困難でトータルで見てみなければ分からないが、たしかに他県と比べれば本県の数字は低くなっている。これは予算の構成に原因があるのかと思っているが、細かい原因までは他県のデータが細かく入らないので詳細には分析しかねている。やはりおっしゃる通りできるだけ地場の中小企業に仕事が下りるようにしたいと思うのは我々も共通であり、特に公共事業費では地元の中小企業に仕事ができるだけ多く落ちるような対策をとっていただいており、我々も市町村・県を通じて、機会あるごとに官公需の地元の中小企業への発注について工夫していただくように働きかけをしている。今後ともそういう方向で働きかけていきたい。
【斉藤委員】
ぜひ打開して、官公需というのは地元の中小企業への仕事を増やすもっとも即効性のある取り組みである。その点でぜひ改善していただきたい。
そのためにも、この間減らされた中小企業対策予算、岩手の中小企業の位置づけを明確にして取り組む必要があると思う。その点で、決算でも強調したが、千葉県が中小企業振興条例で中小企業の位置づけを明確にして、そして中小企業元気戦略を打ち立てて、総合的な施策を予算をつけて展開している。これに岩手県も学んで、中小企業対県に岩手もすべきではないか。
【商工労働観光部長】
平成13年14年の県予算というのはだいたい1兆円近かったが、それが今は6000億円に減った。実際回すお金がないというのが直接的なところだが、我々も与えられた予算をいかに効率的に使うかということで、県産品推奨の立場であるので、中小企業特に県内の企業にお金がめぐるような仕組みをつくっていくのは非常に大事なことであるので、これについては一生懸命やらせていただく。
いずれ中小企業対策は、個別に、企業の課題ごとに丁寧に応えることが大事だと思うので、1つ1つ緻密に着実に解決していきたい。