2011年3月7日 予算特別委員会
保健福祉部に対する質疑(大要)
・看護師の増員について
【斉藤委員】
いま看護崩壊というのが指摘されている。全国的には、看護師が確保できずに病棟閉鎖した、病床を削減した、すでにこういう事態が引き起こされている。そういう点での危機意識を県としてしっかり持つべきではないか。
岩手県の場合には、看護師の養成数は必要以上に養成している。しかし県内定着率は5割を割るという残念な事態。その点では、都会志向というのもあるが、岩手県の看護師の労働条件に見劣りする問題があるのではないか。そこを改善しないと、せっかく養成しても看護師確保競争に負けてしまうのではないか。
3点目、看護師の資格を持っても途中でリタイアする、潜在的な看護師がかなりいると思うが、この実態をどう把握しているか。あまりに過酷で子育てもできず、定年まで勤められない。せっかく夢を持って県内で看護師になった方々が、途中でバーンアウトしてしまう。この解決策を打ち出さないと看護師不足の解消にならないのではないか。
【保健福祉部長】
本県の看護職員の需給状況は、引き続き厳しい状況にあるとは考えている。今回も予算の中で、貸付額の拡大をお願いしているが、2年前の21年度当初予算でも、拡充で予算を認めていただいた。いずれ需給見通しについては、全国の状況を見ているが、正直本県はかなり厳しい視点で見ているのではないかと思っている。これについては、需給見通しを策定する際に、いろんな外部の識者や実務経験者からも意見をいただいている。医療関係者からもやはりそういう声は聞いており、福祉サービスの充実にかんがみても、看護師の採用は非常に重要だと思っている。したがい、あらゆる手段を考えながら対応していく必要があると考えており、現在あるアクションプランも見直し、できる限りの対応をしていきたい。
【医療推進課総括課長】
一昨年来から、第7次岩手県看護職員需給見通しを策定するにあたり、看護関係者の方々による県内の検討会議を開催し需給見通しを発表した。その会議の中でも、岩手県の看護環境は非常に厳しいと。これは医療の高度化・専門化に伴い、看護業務も高度化・専門化している。また、7対1の導入を提起し、勤務環境がタイトになってきているという声は承知している。
そうしたことも踏まえ、県内医療機関のほうから、今後の看護職員の勤務環境の向上を視野に入れながら、必要な需要数を調査させていただき、調査結果として出した。この状況が続くというのは非常に深刻に考えており、これに関しては看護職員の勤務環境の支援、このための看護職員確保対策アクションプランでの勤務環境の改善のためのさまざまなノウハウを持つ他の医療機関の方も招いての講習会の開催などを行っているところであり、こういった取り組みを引き続き行っていきたい。
リタイアした方については、看護職員については、勤務して当初30代ぐらいまでの間の離職が1つのピークと。また50代ぐらいのところでの離職のピークがあるという状況である。これに関しては、入って最初のきめ細かな研修体制といったものが重要ではないかと考えており、来年度当初予算に新人看護職員の研修に関する事業について新規に盛り込まれた。また、リタイアした方、潜在看護職員は55万人と言われているが、相当程度、免許を持って勤務されていない方がいるので、こういった方々への復職の支援も事業として始めているが、そういった視点での取り組みも引き続き進めていきたい。
・県立病院等事業の経営形態等のあり方に関する報告書について
【斉藤委員】
これは県議会にも報告があった。県立病院等事業の評価というのは、かなり積極的に評価されたのではないか。経営形態については、メリット・デメリットを提起して、最終的には県が判断するものという提起だった。いずれ経営形態に関わらず、具体的な経営の改善課題というのが提起された。
私は今の体制で改革・改善に取り組むべきだと考えるが、部長はこの報告書をどう受け止めているか。そして県として、この報告書をどういうスケジュールで県自身の対応方針を決めるのか。
【保健福祉部長】
この報告書については、非常に多面的な論点でさまざまなご意見をいただいた。特に、議会からの導入を踏まえて議論いただいたが、経営形態のあり方については、次の新しい県民計画のアクションプランの中で、また改革編という形でさまざまな課題を4年間のスケジュールの中で検討していくことになると思うので、その中の検討課題として位置付けて検討していくこととなるものと考えている。
特に、官民の役割分担、県と市町村の役割分担等についても議論いただき、25年に策定する県の保健医療計画について、来年度から策定作業をするので、その中での議論を進めていきたい。いずれ、大きいところではアクションプラン、専門的なところでは、県の保健医療圏の中で行政が主体となって議論していくということになろうかと思っている。
・国保税の改善の課題について
【斉藤委員】
私たちが盛岡市民アンケートを行い、1030人の方から回答をいただいた。その中には、「国保税が大変高くて困っている」という声と合わせて、「国保に加入していない、加入できない」、「失業のために国保に加入していない青年が周りにたくさんいる」という切実な声が寄せられた。
無保険という実態が県内でもたくさんあるのではないか。全国では100万人という推計もあるが、県内の実態を調査し把握すべきと思うがいかがか。
また、未加入者が国保に加入する場合に、未加入期間が滞納分ということで支払いが前提にされると。ますます入れなくなると。こうした問題も改善すべきではないか。
【健康国保課総括課長】
国保法に基づき、こうした実態については、市町村が被保険者の資格管理を行っていることから、市町村において把握することが適当と考えている。したがい県としては、市町村に対して、いわゆる無届者の把握に努めるとともに、退職や失業等により他の医療保険の資格を失った方々が無保険状態にならないよう、住民にさまざまな機会を通じて国保への加入手続きについて積極的にPRを行うよう会議等の場で要請しているところである。
また、県においても、新聞広告等により県民の方々に、忘れずに、早めに手続きを行うよう周知を図っているところである。
滞納分の関係だが、国保の被保険者の資格時期は、他の社会保険と同様に、事実発生主義をとっている。したがい、市町村に届け出をした日ではなく、国保の資格が発生した日から資格を取得したと認定になる。国保税についても、地方税の規定により、資格が発生した日までさかのぼって課税されることとなる。しかし遡及は最大3年までとなっている。
県としては、まず失業等により被保険者の資格を失った方々が、こうした理由により滞納が発生しないように、早期に市町村に届け出を行うよう、市町村に対して住民への通知を積極的に行うように助言しているところである。また、納税が困難な方に対しては、その実情を十分に把握しながら、担税能力に応じて、分割納付を認めたり、あるいは徴収猶予、減免を行うように通知するよう要請している。
【斉藤委員】
深刻な無保険の実態について、市町村が把握すべきものという機械的な答弁があった。
3月2日の総括質疑でも紹介したが、全日本民医連の調査で、1年間で受診が遅れて71人が亡くなったと。岩手県でも67歳の男性1人が亡くなっている。主な理由は、無保険、資格証など窓口全額負担しなければ病院にかかれなかったという事例が多い。ぜひ、無保険の実態を市町村と協力して把握していただきたい。
それから、資格証の発行世帯が873世帯、短期証の留め置きが2473世帯だと。留め置きは実質無保険である。許されない事態である。この中には、中学生や高校生も含まれているのではないか。直ちに改善すべきものだと思うがいかがか。
【健康国保課総括課長】
短期証の状況だが、2473世帯に交付しているが、うち未交付者が4000人いる。資格証は874世帯、交付対象者が1110人である。
短期証の未交付については、市町村に対して、機械的に行うのではなく、できるだけ訪問等を行い、届け出るように通知をしているところであり、また会議の場でもそういった取り扱いをするように助言をしている。
資格証だが、国保法に基づき、滞納者については、市町村において慎重に取り扱うように助言している。
【斉藤委員】
いずれ資格証というのは、窓口全額負担なので。滞納している人が全額負担しなければ病院にかかれないというのは、事実上病院にほとんどかかれないということである。そして留め置きは無保険であるので。これは本当に改善していただきたい。
それから、高すぎる国保税を滞納すると、納期を過ぎるとすぐ延滞金がかかる。1ヶ月を過ぎると14.6%の利息がかかる。まさにサラ金国保である。私は、やむを得ない自由があれば、減免できるという規定があるし、不納欠損処理というのもあると思うが、本当に払えない方々については、きちんとそうした対応をすることが必要だと思うがいかがか。
【健康国保課総括課長】
地方税法の規定により、延滞金の納入が困難なやむを得ない理由がある方々に対しては、市町村長の判断により減免できることとされている。県としては、市町村に対して、延滞金も含めて国保税の支払いが困難な被保険者に対しては、きめ細かに相談に応じて、分割納付や徴収猶予、減免を適切に行うよう助言しているところである。
延滞金の減免状況は、21年4月以降で、4市町で36件、225万8千円余が減免になっている。こういった生活困難者の状況については、きめ細かに対応するよう引き続き助言していく。
【斉藤委員】
医療費の一部負担減免制度、これは厚労省から通知もあって、いま各市町村が医療費の一部負担減免の規則・要項を作成していると思うが、この減免の基準と要項・規則の作成状況はどうなっているか。
高すぎる国保税は、払える国保に引き下げるということが一番の解決方法だと思う。2010年度で、12道府県が計84億1800万円を一般会計から法定外の繰り入れをしている。秋田県は2億8930万円、群馬県は4億6806万円、岩手県もこの程度のことをやるべきではないか。
【健康国保課総括課長】
現在、基準制定市町村は11市町村ある。23年度中に制定を予定している市町村は12市町村である。
ご指摘のように、国から基準が示されて、また減免した額の2分の1を交付金で補てんするという通知があるので、県としてはこの通知を受けて、市町村が基準制定に積極的に取り組むよう要請してきたところであり、今後も予定のない市町村については、基準を制定するように要請していく。
国保税の引き下げについては、県としては、市町村による低所得者の国保税の軽減に要する経費の4分の3を補助しているが、こういう補助や市町村間の医療給付金の不均衡を調整するための調整交付金などを県の財政負担を着実に行い、市町村を支援していきたい。
委員から11都府県の話があったが、我々が調査したところ、乳幼児の関係の現物給付をする場合、この減額分の補てんに対する補助ということであるので、保険料の引き下げに関する補てんではないと承知している。
【斉藤委員】
一部負担減免の12市町村というのは、平成23年度中ではなく22年度中ではないか。
【健康国保課総括課長】
23年度中の実施に向けて基準を制定する予定の市町村だが、1つ増えて現在12市町村ということであるので、確認いただきたい。
・介護保険の改善の問題について
【斉藤委員】
23年度は1007床整備されるということは評価したい。問題は、09年、10年、11年度の特養ホームの開設分はどうなるのか。5900人の待機者という数字は去年の3月末なので、第4期中にどこまで解消できる見通しかを示していただきたい。
【長寿社会課総括課長】
特養ホームの開設についてだが、現時点において21年度から23年度までの第4期計画期間中に、計画対応分として658床、地域密着型特養ホームの上乗せ整備分として397床、広域型の特養ホーム前倒し整備分として189床、計1244床の整備を見込んでいるところである。
うち、13床については21年度中に開設されている。残る1231床のうち、22年度に142床、23年度に1089床の開設が見込まれている。
23年度当初予算においては、介護サービス施設等整備臨時特例事業費において、地域密着型特養ホーム19カ所・540床、広域型特養ホーム(30床以上)は老人福祉施設整備費において313床の整備に対応する予算額を計上しているほか、中核市である盛岡市が支援する施設整備等もあるので、現時点では23年度に県全体で、委員ご指摘があった1007床の整備が見込まれている。
【斉藤委員】
そうすると、第4期中に入所可能と受け止めてよろしいですね。
・介護職員の離職と待遇改善について
【斉藤委員】
本会議の答弁で、「10%の介護従事者が離職している」と。実数ではどうなるか。
離職の主な理由、処遇改善はどこまで進んでいるか。
【長寿社会課総括課長】
財団法人・介護労働安定センターが実施した実態調査によると、20年10月から21年9月までの1年間で、離職率が10%という状況である。当該調査は抽出調査であり、離職者の実数は把握できていないが、厚労省で調査している21年10月現在の県内の介護職員数は、常勤換算で約11300人となっているので、単純試算で1100人程度となると見込まれる。
離職の主な理由は、同調査においては、仕事の負担についての悩み、不安、不満等を調査している。県内で回答の多かった項目は、「仕事内容のわりに賃金が低い」「有給休暇が取りにくい」「人手が足りない」などとなっており、このようなことが離職につながっているのではないかと推測される。
待遇改善については、県内の9割近い事業所が、介護職員処遇改善交付金事業を活用しており、平成21年度では介護職員1人あたり月額約13000円の交付金の交付に加え、事業者の上乗せ分も含め、1人あたり月額約16000円程度の賃金改善が行われていると報告を受けている。
・子どもの医療費助成について
【斉藤委員】
県内の市町村で、小学校卒業まで、中学校卒業まで、高校卒業まで、かなりの規模で医療費の助成に取り組む市町村が広がっている。来年度も新たに広げようとしている自治体もあるが、その実態を示していただきたい。
県としても、ここまで広がったら、小学校卒業までは医療費の助成を拡充すべきではないか。そのための費用は4億円というが、決して大きい額ではないと思うがいかがか。
【健康国保課総括課長】
県内独自に対象を拡大している市町村は、小学校1年生までが1町、小学校卒業までが6市町、中学校卒業までが8町村、高校卒業までが1町、計16市町村となっている。
また、23年度中に新たに拡大を予定している市町村は、2月1日現在で、就学前から小学校卒業まで拡大するのが3市町、就学前までから中学校卒業まで拡大するのが1町、小学校卒業まで拡大しており中学校卒業まで拡大するのが1町、計5市町となっている。さらに拡大する市町村を除けば合計で20市町村ということになる。
いろいろ拡充する場合、多額の県費負担が見込まれるところであり、したがい近年の社会保障関係経費や県立病院等の事業会計負担金等の動向により、現在の県予算における状況をみると、大変厳しい状況になるものと認識しており、直ちに実施することは困難であると考えている。
・子ども子育て新システムについて
【斉藤委員】
これは保育を市場化して、保育所探しを家庭の自己責任にして保育の質を低下させるものだと思うが、いま示されている新システムの主な内容はどういうものか。県はどのように受け止めて対応しているか。
【児童家庭課総括課長】
現在国では、子ども子育て新システムの検討会議を設置し、幼保一体化を含む新たな次世代育成支援のための包括的・一元的なシステムの構築について検討している。主なものとして、「基礎自治体である市町村の重視」「幼稚園・保育所の一体化」「多様な保育サービスの内容」などがある。新システムが実現した場合、市町村においては、子ども手当や一時預かり等の地域子育て支援サービスについて、現金給付と現物給付の組み合わせの決定だとか給付メニューの設定など、自由度をもって市町村の裁量で地域の実情に応じた給付を提供することが可能となるとされている。同時に、市町村が住民に新システムのサービス給付を提供・確保する責務を有することとなり、これまで以上に市町村は主体的な取り組みが求められることとなる。一方県は、社会的養護など県が主体となって行う事業を実施するほか、広域自治体として市町村の業務に関する広域調整や市町村における制度の円滑な運営のための必要な支援を行うこととされている。このため県としては、新システムが実施されることになった場合に備え、国の動向の情報収集に努めているところであり、昨年12月に開催された、第2回県・市町村連絡推進会議において、出席した各副市町村長にたいし新システムの内容等を説明し、市町村にその対応について十分検討を進めるよう促している。今後も各市町村の実施体制の整備に向けた支援を行っていきたい。
・待機児童の把握について
【斉藤委員】
保育所待機児童を無認可に預けている方も含めて、待機児童をどう把握しているか。休職中の方も、子ども預けられれば働けるという人たちは待機児童に入っていない。こういう方も含めた全体像をどう把握しているか。その解消にどう取り組んでいるか。
【児童家庭課総括課長】
待機児童の関係だが、保育所の入所相談や申請窓口となる市町村が把握しているところであり、県では市町村を通じて調査を行いその把握に努めている。その際、県では国が定めた保育所待機児童に関する定義に基づき、待機児童数の報告を受けているが、当該報告に基づき22年4月1日時点における保育所待機児童53名の保護者の状況を見ると、休職中の世帯は13世帯となっている。しかし、待機児童の定義に該当しない児童の保護者の状況については、当該調査の対象とならないことから県全体の状況は把握していない。このため、県として認可外保育施設等を利用している児童の保護者に対して、保育サービスに関する利用者調査を今年1月に実施したところであり、詳細については現在集計し分析中である。この調査結果によれば、認可保育所の利用が可能であれば、認可保育所の利用を希望する者の割合が、回答者約1700人のうち約600人で、34%程度となっている。利用希望者がもっとも多いのは、認可外保育施設利用者の約250人となっている。また、認可保育所の利用を希望する対象者全体に利用しない理由を聞いたところ、「利用したい認可保育所に空きがない」「認可保育所の利用が高い」の順となっている。このうち、利用希望者がもっとも多い認可保育施設利用者について見ると、「利用したい認可保育所に空きがない」が全体と同様にもっとも多くなっているものの、2番目は「認可保育所の保育時間が希望と合わない」となっているところである。県として、今後この調査結果がまとまり次第、関係市町村に情報提供することとしており、各市町村が本調査結果も含めた潜在的なニーズ等も勘案しながら、計画的な保育サービスの提供に努めるよう支援していきたい。
・県立療育センターのあり方について
【斉藤委員】
今後のあり方について、いま検討がされているようだが、今後のあり方、新しい整備計画、いま検討されている内容を示していただきたい。
【障がい保健福祉課総括課長】
療育センターについては、近年利用者やその家族、また医療関係者等から、常時医療的ケアが必要な超重症児等への対応など、機能の充実や施設の老朽化等への対応について要望があるところであり、施設の改築整備の必要性が高まっている。
このことから、県としては利用者やその家族等のニーズに対応し、県内の障害児療育および障害者支援の拠点としてふさわしい機能をもつ新たな療育センターの整備を進めるため、平成21年3月に「岩手県立療育センター整備基本構想」を策定し、基本方向を取りまとめた。この基本構想を踏まえ、施設整備に向けたさらなる取り組みを進めるため、平成22年6月、学識経験者や医療関係者を委員とする「岩手県立療育センター整備検討委員会」を設置し、超重症児等に対応するための病床の再編や、診療科(耳鼻咽喉科・眼科等)の新設など強化が必要な施設機能を中心に検討いただき、さまざまな意見をいただいた。
今後、委員会の検討内容を踏まえ、整備スケジュールや職員体制、施設規模や整備場所等を具体化するための「整備基本計画」の策定を行いたいと考えており、現在その策定に向けた検討作業を進めている。