2011年3月7日 予算特別委員会
医療局に対する質疑(大要)
・県立病院等事業の経営形態のあり方に関する報告書について
【斉藤委員】
医療局長はどう受け止め、提起された具体的な改善の課題にどう取り組もうとしているか。
経営形態の変更というのは、現実的ではないのではないか。今の体制での改善・改革に取り組むべきだと思うがいかがか。
県立病院間のネットワーク、市町村立病院との連携を強化すべきと考えるがいかがか。
【医療局長】
医療局では現在、経営計画に基づき、7対1看護体制への移行や、基幹病院での診断群別分類別包括支払いDPCの導入などの収益確保や、経費節減等の収支改善の取り組み、県立病院相互の役割分担と市町村や民間の医療機関との連携、医師の定着支援などの取り組みを進めている。
今回の報告書の中では、現在の県立病院等事業の運営について、迅速かつ柔軟な判断が可能となるように、病院長の権限を強化すべき、あるいは病床規模の適正化等により、上位の診療報酬施設基準の取得を目指すなどの取り組みを進めるべきといったような意見をいただいている。これらの意見を踏まえ、今後一層の改善に向けて検討を進めていきたい。
経営形態の変更についてだが、報告書では経営形態に関する意見として、「多大な時間と労力を必要とする経営形態の変更は行わず、現在の地方公営企業法の全部適用を維持しながら経営改善を進めるべき」という意見と、「少しでも経営の自由度が高い地方独立行政法人に移行すべき」という意見の両論が記載されたところである。県においては、地域医療における県立病院の役割や経営形態のあり方など、長期的な議論が必要なものについて、いわて県民計画の次期アクションプランに位置付けながら継続して検討していくこととしているので、今後さらに議論を深めていただきたいと考えている。医療局としても、地方独立行政法人に移行する場合には、多額の財産の承継、約4700人の職員の身分の移管などの一定の制度が必要である。解決すべきさまざまな課題があると認識しており、これらの課題についてもこうした議論の中で示していきたいと考えている。
【経営管理課総括課長】
ネットワークの関係だが、二次保健医療圏を基本とした格好で、県立病院相互の役割分担、市町村や民間の医療機関との一層の連携を進めつつ、適切な施設規模を設定して、特色ある病院づくりを行っていくということを念頭に置いて業務を進めているが、具体的には、地域における医師不足や診療機能の不足に対応するため、基幹病院を中心に県立の地域病院や市町村立等の医療機関に対して診療応援を行っており、昨年12月末現在の数字で申し上げると、5053件ほどとなっている。
また、急性期から維持期までの一連の診療計画である地域連携パスの作成を推進しており、昨年12月末現在の実績は、大腿骨頸部骨折については4病院120件、脳卒中については6病院309件となっている。その他、基幹病院における紹介、逆紹介による病病連携の推進ということで、昨年12月末現在の数字で、紹介率については43.6%、逆紹介率は31.9%となっている。
その他に、地域医療福祉連携室が各病院にあるが、ここが診療予約の受付だとか、福祉・介護関係機関との連携による退院支援、調整を行っているところであり、地域の医療機関や介護福祉との連携には努めているところだが、市町村との連携については、例えば保健福祉部が行う圏域連携会議、医療局が行っている市町村の連絡協議会、各県立病院が行っている地域懇談会などを通じてさらに連携強化に向けて取り組んでいきたい。
【斉藤委員】
来年度は1億1600万円の黒字になると。昨年度は約20億円の赤字、今年は約10億円弱の赤字だと。非常に驚いているが、今までの経営改善の努力が足らなかったのではないか。
もう1つは、来年度黒字になることは悪いことではないが、その理由について。なぜ10億20億の赤字が一気に黒字に転換されるのか。
【経営管理課総括課長】
入院収益について、患者数について若干下げ止まりの傾向も見えるので、これに診療単価の増を勘案し、この分で22年度の最終予算に比べ14億8000万円ほどの増を見込んでいる。
外来については、下がる傾向ではあるが、こういった傾向は今年度に入り、7対1看護やDPCの実施ということに伴い、今年度も当初計画をしていた収益については、12月の時点でだいたい当初計画通りに推移しているところもあり、こういったような形で予算措置した。
【斉藤委員】
診療報酬の改定は今年度からされているので、そこを見越してやったらもっと改善されたのではないか。
・医師確保対策について
【斉藤委員】
県立大船渡病院の麻酔科医師3名が来年度から不在になるという話を聞いた。救命救急の3次救急を担う病院としてはきわめて重大だと思うが、対策はどうなっているか。
千厩病院は、新聞でも報道されているように、2001年には16人いた医師が現在6人で、来年また1人減ると。宮古病院も4年前に比べ15人減っている。医師偏在といいながら、あまりにもアンバランスすぎるのではないか。そういったところの現状と対策について示していただきたい。
【医師支援推進監】
大船渡病院の麻酔科の医師についてだが、医大から見直しの申し入れがあるところであるが、現在調整中というところである。その他の県立病院における他の診療科の配置についても、関係大学と調整しているところである。
【斉藤委員】
今度の4月というのは、微妙な時期ではあると思うが、特に沿岸・県北、千厩は特別に重視してやっていただきたい。
来年度の医師確保、採用、研修医の確保状況はどうなっているか。
奨学生の今後の配置の見通しについて、5年経てば一定の見通しがたつのではないかと思うが、報告書の中でも、明るい兆しがあるのではないかという指摘もあるので、見通しを示していただきたい。
【医師支援推進監】
後期研修医を含めた来年度の医師の体制については、関係大学と調整を行っているところであり、個々具体な体制を申し上げられる段階にないのでご了承いただきたい。初期研修医については、来年度の新規採用予定は今のところ51名を予定しており、2年次研修医と合わせると110名になる見込みである。
奨学生の見通しについてだが、来年度の医療局医師奨学資金貸付事業については、新たに岩手医大に入学する学生を対象とした、岩手医大生新入枠と、他の大学に入学する学生および在学生・大学院生を対象とした一般枠をそれぞれ設置しており、それぞれ10名、15名の計25名を現在募集しているところである。卒業配置の見通しだが、現在の医学生の貸付数は73名となっており、これらの学生の卒業の見通しは、本年度は8名、来年度は9名、24年度は10名、25年度は20名、26年度14名、27年度12名となっている。今年度卒業する8名のうち7名は県立病院で臨床研修を行い、残り1名は県外で行う予定となっている。その後の具体的な配置については、病院の意向や大学医局との調整などを踏まえて検討することとしている。
・地域診療センター、沼宮内病院の今後の体制について
【斉藤委員】
大迫、九戸診療センターの空き病床の活用について、地元では19床を確保して小規模な特養などに活用する検討と協議が行われていると聞いているが、どういう状況になっているか。
県立沼宮内病院は4月から無床化されるが、検診体制の後退があってはならないと思うが、準備状況はどうか。また、先日新聞報道で、岩手町は日進堂と協議して平成24年度までに有床診療所体制、老健との併設という方向が地元では報告されたようだが、これは医療局にも報告・説明があったのか。
【経営管理課総括課長】
大迫、九戸の関係だが、大迫については、花巻市が地域懇談会をずっと開催しており、その活用について検討を行ってきたところである。地元の有志の皆さんが社会福祉法人を設立して、特養ホームを運営するという方向が昨年の8月に出され、現在地元の有志の皆さんが準備会を立ち上げて、29床の特養ホームの開設に向けて準備を進めているものと承知している。
九戸については、九戸村が29床の特養ホームを開設して、村内の社会福祉法人に運営をしていただくという方向が示されており、現在村が開設に向けての準備を進めている。
医療局としては、引き続き病床は休止した上で、空きスペースを有効に活用していただきたいと考えており、施設の具体的な活用方法や賃貸料等について実務的に協議を行っている。今後も施設の活用に向けてできる限り支援をしていきたい。
沼宮内病院の関係だが、地域診療センターに移行するにあたり、岩手町からは、検診の推進体制の維持のため、欠くことのできない臨床検査技師や心療放射線技師についても確保して、いわゆる岩手町方式の検診にかかる連携体制を維持してほしいという要望をいただいているところであり、必要な医療技術者を排出するなどの所要の準備を進めている。
【斉藤委員】
大迫、九戸については、地元では19床のベットを将来的には戻したいと。そういうことを踏まえて小規模特養を整備する動きがあって、医療局とそういう協議をしているのではないかと聞いた。
沼宮内病院については、地元の説明会で医療局自身が「検診体制を後退させない」とはっきり言っているので、責任をもって約束を果たしてもらわなければならないと思うがいかがか。
【経営管理課総括課長】
大迫と九戸については、県として引き続き病床については廃止ではなく休床という扱いで進めていきたいと考えている。
沼宮内病院の検診体制については、特に大腸がんの一次検診などは100%の方々が沼宮内病院で受けているということで、これには検査技師の配置というのが必要ではないかということで、これらの技術職員について配置するということでの準備を進めている。
【斉藤委員】
しっかり最小限の約束は守るようにやっていただきたい。
・花泉診療センターの運営について
【斉藤委員】
昨年3月25日に提出された事業計画から見て、運営状況は具体的にどうなっているか。
医師や看護師の確保、収支計画から見てかなり深刻な事態ではないかと思うがいかがか。
【経営管理課総括課長】
患者数については、事業計画で1日平均の入院患者数を13人と見込んでいる。1日平均の外来患者数を50人としていたところである。直近の2月の状況は、入院患者数は1日平均12.7人、外来の1日平均患者数は30.1人となっており、外来は若干少ないと考えている。
医師の体制については、事業計画では常勤2名、非常勤3名としていたが、現在は常勤1名、非常勤5名という診療になっている。
看護師・その他の体制については、事業計画では、臨時職員を含め看護師を10名、それから臨時職員等補助者も含め看護関係の職員が10名、事務職員等6名としていたが、1月末時点で看護師等の看護職員は11名、医療技術者を2名、事務職員を7名配置している。
法人において、常勤医師の確保については取り組んでいると聞いているので、医療局においても引き続き常勤医師の確保を要請していきたい。
【斉藤委員】
この医療法人は、関連する老健から無理やり入院患者を入れるというので、いま大問題になっている。そして入院患者を診るために外来が診れないと。非常勤医師が毎週毎日来ていない。だから外来の患者数がどんどん減っている。こういうところもしっかり見てやっていかないと、10年もたないのではないか。
それから、理事会がこの1年間1回も開かれていない。運営的にも苦労しているのだから、本来なら理事会を開いて議論して打開の方向を示していくというのが必要ではないか。これも定款に抵触するのではないか。そういうところまで見ているか。
【経営管理課総括課長】
医療法上、医療法の中では理事会に関する規定はなく、社員総会については少なくとも毎年1回開催しなければならないとされている。
その中で、法人の重要事項については、社員総会の議決を経るということで、医療局においては花泉診療所の開設に伴う定款変更、診療所管理者の変更に伴う理事の選出、こういった部分については提出された書類の中で社員総会の開催を確認している。
理事会の開催については、来年度の予算、事業計画をうかがう際に、その中で理事会や社員総会等の法人の意思決定の過程についても確認していきたい。
【斉藤委員】
初めての民間移管、私から言わせれば強行されたというケースなので、そして事業計画通りにいっていないと。これは1年経ったらきちんと結果を報告して来年度の事業計画を出すということに契約上なっているので、ここを厳しく監視して事業計画が守られるような指導を強めていただきたい。
・県立病院の看護師不足への対応について
【斉藤委員】
看護師の確保状況はどうなっているか。看護職員の休暇取得状況はどうなっているか。
7対1看護体制のところで特に、有給休暇・年次休暇がとれないという声が切実に出されているが、それへの対応はどうなっているか。
【職員課総括課長】
現時点において、約120名の退職者に対して、約190名の新規採用職員を確保している。したがい来年度に向けて70人ほどの増員になる見込みである。
7対1看護体制についてだが、中央病院、胆沢病院、中部病院と7対1看護体制を導入している病院が3病院あるが、7対1の強化を含めて増員数としては52名ほど増員する予定にしている。
看護師の労働条件だが、労働条件に基づく勤務の状況についての休暇の取得状況を見ると、平成22年の年次休暇の平均取得日数は8.6日、生理休暇は2.3日となっており、昨年と比べ0.2ほどの増となっている。
看護師の超過勤務の時間数は、昨年4月から1月までの実績だが、月平均が13.3時間で、昨年同期比で0.5時間ほどの増となっている。
【斉藤委員】
今年120人の退職者、この内訳を示していただきたい。途中で耐えきれずに辞めた方、定年で辞めた方、新規採用されたがあまりにも労働がきつくて辞めた方などあると思う。
実は、これは医療局長にも届いているものだが、看護師の切実な声「イエローカード」というもので、切実な声が医療局長に届いているということで、私も聞いた。中央病院の例だが、「7対1がとれないから臨時休暇があげられない」「20時間を超えないように超過勤務は書くな(師長)」「現在子育て中の人が育児時間を申請しているのに毎日21過ぎまで超過勤務をしている」など、切実な声が寄せられている。「人員が少なくて年次休暇もとれない」「7対1になってから以前にも増して年次がとれなくなった。今年は3日しかとっていない」と。先ほど8.6日と言われたが、全体の平均である。病棟によってかなりの差がある。本当に年に2、3日しかとれないという声がたくさんある。
この看護師が置かれている現状と切実な声を医療局長自身がどう受け止めているか。そして今、看護師確保競争である。看護師の十分な確保をするためには、看護師の環境を抜本的に改善して、県立病院なら働き甲斐があるということにならないと、本当に大変だと思う。
【医療局長】
私も読ませていただいたが、いずれ7対1の関係等で、かえって職場的には厳しくなっているというような話は、組合のみならず総看護師長等からも寄せられているので、我々としても看護師への募集等にあたって、目いっぱい採っていると、そういう対応をして増員をかけながら職場の勤務環境の改善に取り組んでいるということで、今後ともなかなか看護師の確保は当分厳しい部分はあると思うが、そういったことを継続しながら対応していく。
一方では、職場の方でも、もう少し改善できるものはないのかということで、いろいろと職場レベルでの検討をしていただきながら、少しでもいい職場環境の整備ということで取り組んでいる。
【職員課総括課長】
21年度の退職者の退職理由の内訳だが、全体としては151名でうち定年が31名、勧奨退職が53名、普通退職が67名という状況である。勧奨、普通退職については、ここ数年こういう形で推移しているが、退職の理由は、いわゆる一身上の都合ということで退職届が出てくるので、内容については把握していない。
【斉藤委員】
先ほど70名の看護師が増えると。これは純増と確認していいのか。そしてそのうち7対1のところには52人増やすという風に受け止めていいのか。
それから、超過勤務のところで、例えば研修や会議というのは時間外になっても書かせないと。そしてたくさん残業をすると、なぜこんなにたくさん残業しているのかと言って書かせないという状況があるので、こういうところも抜本的に改善すべきである。
いま看護師の声を聞くと、ぎりぎりのところで、燃え尽きる直前のところで頑張っているという状況なので、医師不足と合わせて看護師不足の解消に全力をあげて取り組んでいただきたい。
【職員課総括課長】
約70名の増員ということでご理解いただきたい。
研修や会議等の時間の関係だが、現場ではいろいろな研修がある。中でも、業務に直接関係するものについては、所属長が職務命令ということで参加させるわけであり、これは当然超過勤務の対象になるので、支給の対象となる。