2011年3月8日 予算特別委員会
企業局に対する質疑(大要)


・工業用水道事業について

【斉藤委員】
 平成21年、22年、これは前倒しで県庁の政策判断だったと思うが、1億円の値下げをした。この効果はどうはかっているか。
 岩手県の工業用水の使用量、料金は全国と比べて高いのか、安いのか。

【業務課総括課長】
 21年度、22年度は10%の減免ということで、一般会計の負担で実施したが、工業用水の使用状況で見ると、リーマンショックを背景とした世界的な経済不況を受けて、20年11月以降大きく減少し、21年2月を底に対前年比で10%以上の減少が21年5月まで続いている。その後、21年11月以降回復基調に転じたものの、22年度は一部ユーザーの減産による対前年度比12.9%の減となっているが、これはこの一部ユーザー対前年度比で0.9%の増となっているので、一定の効果はあったものと考えている。
 全国との料金比較だが、水源や水質、規模等が異なるので一概に比較はできないが、本県の場合、事業開始時期が全国の中で後発であるということと、水源をダムに求めているため全国水準と比べ料金は高くなっている。工業用水を含む都道府県の125事業で、全部で145の料金を設定しているが、本県の料金は高い方の4分の1のグループに入っている。

【斉藤委員】
 生産が落ち込めば工業用水は減る。経営状態が厳しいというが、何を根拠にそう言っているのか。例えば関東自動車は、今年3月末で純利益15億円である。こんな企業は県内にはない。大手企業は、県内中小企業と比べれば、もう回復して利益を上げている。こういうところになぜ今年度1億円とか来年度は7200万円の減額・値下げをしなければいけないのか。

【業務課総括課長】
 工業用水道の使用水量の状況だが、責任水量制ということで、契約した水量に応じて料金をいただくということで、使用水量が仮に6割7割であっても同じ料金だったわけだが、これがリーマンショック以降、低いときで6割台、その後7割台といった状況になっている。
 企業によって違いもあるが、同じような種類の企業であっても各地に生産拠点を持っており、同じメーカーの内部でも価格の競争があるということで、いくらかでもコストを下げた料金、製造の価格にしなければ国内・国外とも競争できないということを聞いており、そういった意味で経営の状況が厳しいと認識している。

【斉藤委員】
 私は具体的な根拠を聞いた。東芝も今フル操業している。企業的には安ければ安いほどいい。しかし実際にそういう状況の中でも多くは黒字転換して利益を上げている。これだけ業績が回復し利益を上げているところにまで、なぜ県費を使って値下げしなければならないのか。
 この間、県出資金が出されている。累積欠損金がなくなったので今年度からなくなった。今までの県出資金の累積はいくらか。これは黒字になったら戻すべきではないか。

【業務課総括課長】
 出資金については、全部で26億円ほどの出資をしている。
 一般会計の出資は、大きく分けて2つあり、平成3年度から10年度までは、国の経営健全化対策の期間で受けた出資で16億円ほどで、これについては公営企業が能率的な経営を行っても、その経営に伴う収入のみでまかなえないことが客観的に認められる経費については、一般会計から負担するという商工企業法に基づいたものであり、出資の元になる2分の1については、県に特別交付税が措置されている。
 21年度から22年度については、県単の経営健全化対策だが、地方公営企業法の18条に基づく出資ということで、これについては、当年度の未処分利益剰余金の状況に応じて納付金を一般会計に納付することが必要となる。
 納付金として使用しうる剰余金の金額は、繰越欠損を見た上で、さらに法定積立金を控除した差額の範囲とされており、本県の場合24年度に欠損金が生じる見込みであることと、利益剰余金は企業債残高の額に達するまでは減債積立金として積み立てなければならないということで、事実上の納付は不可能である。
 繰り入れについてだが、企業局としては、この資金は工業用水道事業の資産売却により得られるものであるので、工業用水道事業法で定める、低廉な工業用水の供給という本来の事業目的のために活用すべきと考えている。

【斉藤委員】
 やっと平成21年に累積欠損金を解消したと。それまで県民の税金で支えていたわけである。そういう意味で、総額26億円の出資金がある。それはそれで間違ったとは思わない。しかし累積欠損金も解消して、入畑ダムの転用で26億円入ってくると。こういう状況のもとで、17社だけに利益を還元するというのは公平だとは思わない。県民の税金を投入してまで支えてきたのだから、余力が出てきたらいくらでも一般会計に繰り入れて、中小企業は74%が赤字で大変な思いをしているので、利益が出たらそういうところにこそ繰り入れると。もちろん減債にまわして早く借金を解消するということもあるが、先ほどの説明を聞くと、すべて値下げではないか。17社の中には、先ほど紹介したように、内部留保も貯め込み、体力もあり利益も上げているところがある。そういう意味でいけば、公平性を欠いた対策ではないか。
 例えば、値下げ分を圧縮して、その他の企業にも還元するというような発想もあっていいのではないか。17社だけが利益を受けるということでは、県民の税金を投入して今まで維持してきたということからいけば、産業振興という名目だけでは説得力がないのではないか。

【企業局長】
 これまでの出資26億円のほかに、売却を得るまでには、ユーザーからも料金として徴収している分がある。それは、これまで返済してきた中で、だいたい30年近く事業が経過しているので、その間10億円の収入とすると、累計で300億円近く料金収入として入っている。そういったものを合わせて、これまでの売却益を得るに至ったという経緯もあるので、そういった面でユーザーにも還元する、このことにより一般会計にも貢献するというか、この代金が得られなければ今後これまでも出資いただいていたルールの見込みで、なおかつ出資をいただかないとやりくりができないと言われる額が6億円ほどある。それが今後出資をいただかなくともやっていける見込み額と。一般会計へのこれからの分の負担軽減、それからユーザーへの減、それから土地改良事業者へということで、欠損が生じるという話をしているが、その欠損の分というのは土地改良事業者への利益といえるような形になるので、いわゆる関係者全体、土地改良事業者・ユーザー・県にも貢献するというような活用方法ということで今回の案を出させていただいている。

【斉藤委員】
 使用料金を払うのは当たり前である。そして工業用水を使っているのはわずか17社である。産業振興といっても何百社何千社とある。誘致企業もたくさんある。だからこの恩恵を受けているのは17社だけである。そして利益を上げたらその17社だけに還元すると。これが産業振興から見て公平なのかと指摘している。利益を上げたら全部ユーザーに還元するということではないのではないか。そしてそのユーザーの中には、財力も体力もあるところがある。これでは県内の中小企業との格差はますます拡大する。
 それから、工業用水道徴収条例の一部改正の中身で確認したいのだが、値下げするのは、ろ過料金の額ですね。このろ過料金というのは17社全部使っているのか。

【業務課総括課長】
 全社が使っているのは一般水というもので、それに加え、きれいな水が必要なところについてはろ過を使用する料金ということでいただいているので、ろ過水を使うところは両方足した料金になる。

【斉藤委員】
 ろ過水を使う企業は17社のうち何社か。

【業務課総括課長】
 2社である。

【斉藤委員】
 この料金体系だったら2社しか値下げにならないのではないか。工業用水は42円+3円で45円、そうすると一般水は前と同じではないか。

【業務課総括課長】
 基本料金は42円で3円下がっており、あとは使用に応じてもらうということで、その分が3円ということなので、実態的に今使っている状況は契約水量の7割程度なので、その分については値下げになるということである。

【斉藤委員】
 そうすると、ろ過料金が大幅に下がる。しかし大幅に下がるメリットを受けるのはたった2社ということか。アンバランスではないか。こういう料金の値下げというのはないのではないか。2社だけ莫大に値下げされるということではないか。

【業務課総括課長】
 今回の値下げについては、先ほどから申し上げている値下げの原資7200万円余について、工業用水と、ろ過料金で検討したわけだが、一般水の方は第一硬水の料金が従来から基準になっており、この上限が45円ということで、国から補助金をもらっているのでこれで定められると思う。それで45円を二部料金制にして計算したトータルが1500万円ほどになる。それから先ほどの7200万円からその分を引いた額ととは、ろ過の原価計算をして残額と照らし合わせながら設定した料金がろ過料金である。
 したがい、一般水についてもろ過料金についても、国の算定基準に沿ったものになっているので、そういった意味ではアンバランスではないと思っている。

【斉藤委員】
 一般水の値下げ分、ろ過料金の値下げ分はいくらか。

【業務課総括課長】
 一般水については1900万円ほど、ろ過料金については5300万円ほどとなっている。

【斉藤委員】
 そうすると5300万円の値下げはたったの2社である。どこの企業か。関東自動車と東芝ではないのか。これだと一部の企業優遇の値下げということにしかならないのではないか。

【業務課総括課長】
 具体的な企業名は差し控えさせていただくが、使用量の多いところについては、当然ながらそういった金額が大きくなるものと思っている。

【斉藤委員】
 企業の大手の中には、内部留保をたくさん貯めて、すでに純利益を上げている。そういうところがろ過水を使っている。なぜこういうところに莫大な値下げをしなければいけないのか。まったくアンバランスな値下げだと思う。大企業優遇の値下げにしかならないのではないか。

【企業局長】
 工業用水道料金の料金設定というのは、国の承認を得なければならないということになっている。料金を積算するにあたっては、総括原価という考え方をとっており、かかる費用に基づいて収入で賄うというのが基本的原則である。それに基づき、一般水・ろ過水それぞれ別の予算を立てて積算しているが、それに基づき計算して国に申請を出しているところであり、そういった国の算定基準に基づいて適正な料金ということで算定している。

【斉藤委員】
 みなさんに還元するというのなら一般水を下げるべきである。たった2社しか使っていないろ過水で、5300万円の値下げ、2社のための値下げにしかならないではないか。この2社も一般水を使っているのだから。2社だけの値下げ分は分かるか。

【業務課総括課長】
 個別の企業については答弁しかねる。

【斉藤委員】
 一般水だけ下げるということにはならなかったのか。全体に行き渡るようにはならなかったのか。

【企業局長】
 繰り返しになるが、総括原価という考え方から申し上げると、一般水・ろ過水それぞれ別の積算をしているので、それでもって、それ以上下げるということは、制度や国の考え方に基づくとできない。

【斉藤委員】
 とんでもない話である。工業用水の料金は今まで45円、それを今回基本料金42円で使用料金は3円である。まともに使ったら値下げにならない。ろ過水だけ44円が38円になる。2社のための値下げではないか。そんな算定はない。

【業務課総括課長】
 契約料金は100%まで使っているわけではないので、そういった意味からは工業用水も値下げになっている。

【斉藤委員】
 ろ過料金だけを特別に下げている。一般水はほとんど下げている。私が言っているのはこれがアンバランスだと。そしてろ過料金はたった2社。全然恩恵がないということである。そういう意味でこれは欠陥の値下げ条例だと思う。


・電気事業会計について

【斉藤委員】
 新エネルギー開発の取り組みはどうなっているのか。
 胆沢第三、第四発電所の建設事業費とダム負担金、電力料金で元が取れる見通しはいつごろになるのか。

【電気課長】
 新エネルギーの開発だが、企業局では現在、胆沢第三、第四の開発を中心に進めているところであり、その後の開発の可能性を考えながら、これまで雫石町内の地点などの調査を行ってきたが、経済性の面から開発の目途が立っていないところである。そのため、今年度は新たな地点で調査を行いながら、発電量や工事費などの検討を行っている。
 風力発電についても、国の全量買い取り制度や電力会社の新規風力の募集動向に注意しながら、県内で新規風力の開発調査を行っている民間事業者と情報交換するなどして、県内での開発が進むように努めていきたい。
 胆沢第三、第四発電所の建設事業費だが、胆沢第三発電所は、建設事業費は22億3200万円余であり、うちダム負担金として8億2700万円余を見込んでいる。19年度に、東北電力と締結した基本協定では、年間の利益は1500万円程度を見込んでいる。
 第四発電所については、建設事業費は2億7300万円余で、胆沢ダムの負担金は求められていない。東北電力からは、同意は得ているが、売電単価については現在国で導入を進めている再生可能エネルギーの全量買い取り制度の動向を見定める必要もあるので、今後協議することとしている。