2011年3月9日 予算特別委員会
警察本部に対する質疑(大要)


・岩手県暴力団排除条例案について

【斉藤委員】
 県内の暴力団の実態と活動、資金源はどうなっているか。
 今回の排除条例で、具体的にどういう取り組みで暴力団を排除することができるのか。
 第20条では、事業所等に対して「文書もしくは口頭による説明を求め、または資料を求めることができる」とされているが、文書、資料の範囲はどうなっているか。乱用される恐れはないのか。

【刑事部長】
 平成22年12月末現在、15団体・約400名の暴力団構成員等を把握しており、その勢力は依然として衰えを見せず、暴力団の潜在化、資金獲得活動の巧妙化が顕著となっている。
 暴力団の検挙実態から、その活動状況について説明すると、暴力団幹部による風俗営業等適正化法違反事件、児童扶養手当の不正受給事件が摘発され、さらに傷害・暴行等の粗暴犯罪や、覚せい剤等の薬物犯罪での検挙が高水準で推移しているなど、県民にとって大きな脅威となっている。県警としては、このような厳しい暴力団情勢に対処するため、取り締まり体制を強化し、事件検挙に全力を挙げている。
 また、暴力団の資金源については、恐喝、ヤミ金融、薬物の密売などのほか、飲食店等からのみかじめ料の徴収、無届けの無店舗型性風俗特殊営業(デリバリーヘルス)などを資金源としている。このように、暴力団は資金獲得のため、その手口を巧妙化させている現状にあることから、資金源に着目した取り締まりを強化している。
 具体的取り組みだが、本条例において、暴力団による不当な影響や脅威に対して、県および県民等が一体となって、暴力団排除活動を展開するため、県および県民等の責務を明らかにするとともに、暴力団排除の具体的な取り組みについても、@公共工事の発注・物品の購入・その他の県の事務全般から暴力団をはじめ、暴力団員等と密接な関係を有するものを排除すること、A債権取り立てのために暴力団に金品を供与することを禁止すること、B暴力団事務所として利用されることを知って不動産譲渡契約をすることを禁止することなどにより暴力団排除を推進していくものである。
 文書・資料の範囲だが、本条例案では、捜査と同じような調査の対象となる違反行為として、@債権取り立てのため暴力団に現金を供与するなど事業者による暴力団の威力利用を目的とした暴力団への利益供与ということで、第14条第1項に定めている。A用心棒料の提供等、暴力団に協力する目的で、暴力団に金品を供与すること、これは14条第2項に定めている。B暴力団の事務所利用を知っての不動産譲渡契約等、これは第18条第2項ということで定めているが、これらを禁止し、違反する行為をした疑いを認めるときには、公安委員会規則で定めるところにより、調査の手段として説明や資料の提供を求めることができるということにしている。説明・提出を求める文書・資料の範囲については、条例において、その違反事実を明らかにするため、必要な限度においてということで規定している。

【斉藤委員】
 暴力団排除は大いに進めていただきたい。
 ただ、20条の問題を言ったのは、調査にあたって権力の乱用にならないように、そのことだけを指摘しておきたい。


・雫石町で発生した立てこもり事件について

【斉藤委員】
 昨年11月29日に、雫石町で立てこもり事件があった。この容疑者は暴力団と関係はなかったのか。
 報道等によると、盛岡西署に20件程度の相談が2006年からあったと。そして昨年9月の雫石町議会でもこの問題が取り上げられ、「警察などと連携し毅然たる態度で対応する」と町長は答弁している。雫石町からも西署に要請があったと思う。結果論として対応がまずかったのではないか。

【刑事部長】
 被疑者と暴力団の関係については、個人情報保護法の関係から現段階ではお答えできない。
【警務部長】
 相談の関係については、ただ今手元に資料がないので件数等は答えられないが、継続してこの者にかかる警察安全相談があったことについては事実である。その都度、適切に対応してきているということだが、継続しての住民トラブルということがあったようであり、結果としてこういう事件になったということであり、警察としては引き続き長期にわたるトラブルがあったときには、組織的な対応だとか引き継ぎの徹底といったことにより、適切な対応を今後も努めていきたい。

【斉藤委員】
 1月6日には、殺人未遂容疑で再逮捕している。これは殺人未遂で起訴する予定か。
 町議会での町長の答弁も紹介したが、これは町長から西署や県警に要請がなかったのか。

【刑事部長】
 殺人未遂で再逮捕で起訴したかどうかということだが、これはすでに起訴している。
【警務部長】
 継続した相談の中で、町からの連絡というのもあり、町とも連携しながら対応していたということである。

【斉藤委員】
 今度の暴力団排除条例がまだ制定・実施されていないので、制定されたら暴力団は個人情報で隠されるのか。そういうことをしたら排除できないのではないか。

【刑事部長】
 応援のお言葉をいただきありがとうございます。我々もそうしたいが、個人情報保護法の関係があり、警察の立場ではそのような行為をすることはできないという状況にある。
 ただし、民間では、例えば暴力団追放推進センターということで、民間団体が設立されているが、そういうところでは日常から全国の暴力団員の新聞の切り抜きを集めている。これは公の資料であるので、その資料をコンピューター等に蓄積し、一般の方から商会があった場合は、その公のものを提示するということで、互助的というか、民間にも努力してやっていただいている。我々としては、個人情報保護法に抵触することは実施できない。

【斉藤委員】
 暴力団排除といって誰が暴力団か分からないというのでは、片手落ちではないか。その辺りの法律もあるので、法律を超えることはできないと思うが、合理的にやっていただきたい。


・失踪して遺体で発見された会計係長の問題について

【斉藤委員】
 昨年2月15日に、裏金を苦にして自殺をほのめかす置手紙を残して失踪した会計係長が、4月15日に遺体で発見された。私が指摘した置手紙について、県警の答弁は、昨年3月の予算特別委員会では「手紙等については感知しておりません」、昨年10月の決算特別委員会では「置手紙については把握していない」、2月24日の一般質問に対する公安委員長の答弁では「置手紙は発見されていないという報告を受けている」と。みんな違っている。1つの事件で、置手紙というのは、自殺だったら自殺の動機、私が指摘している裏金の疑惑はあるのではないかと、それを証明する重大なものである。答弁がこれだけ違っていて、どういう捜査をしているのか。
 そして決算のときには、「死因や背景については捜査中」だということだったが、捜査の結果は出たのか。

【参事官兼主席監察監】
 答弁の違いについてだが、置手紙については当初から発見されていないという趣旨で答弁しているものである。
 死因・背景については、そのときも答弁したが、捜査に関すること、詳細については答弁を差し控えさせていただきたい。

【斉藤委員】
 これは私に寄せられた情報で、「3年間上司から裏金工作を求められ、それを苦にして置手紙を残して失踪した」と。それに対して、最初は「関知していない」、「把握していない」「発見されていない」と、初めて一般質問で「発見されていない」という答えが出てきた。こんな歯切れの悪い答弁はない。
 これは捜査中なのか、捜査は終わったのか。この処理は自殺だったのか。この事件についてどう考えているのか。

【参事官兼主席監察監】
 警察としては、自殺と断定したものではない。事故・自殺などあらゆる面から捜査しており、現在も捜査中であるので、詳細は捜査中につきお答えできない。

【斉藤委員】
 捜査中ということなので、ぜひ徹底して捜査していただきたい。1人の県警職員が亡くなっているので。


・県警職員のサービス残業について

【斉藤委員】
 県警職員の超過勤務時間は、平均335時間(平成21年度)だが、超過勤務手当の支給は194.4時間、140.6時間(42%)がサービス残業になっている。これは県警職員の平均でどれだけの額となるのか。県警全体でどのぐらいの額になるか。

【警務部長】
 職員の超過勤務の時間数および時間単価には個々に差があることから、1人あたりの額および全体での総額については一概には算出をしかねる。

【斉藤委員】
 県警職員の平均単価で計算すると、1人あたり年間37万5千円である。
 平成21年の超過勤務手当の支給額は11億6970万円だった。この42%というのは4億8000万円である。1人あたり37万5千円が不払いで、総額5億円近いサービス残業である。本部長は昨年の決算で「答弁した通りの時間の差があるということについて、しっかり受け止めていく必要があるものと認識している。必要に応じて所要の措置を講ずるなど適切に対応していきたい」と。どう適切に対応したのか。来年度予算で超過勤務手当は増えているか。

【警察本部長】
 長時間にわたる勤務自体が、職員の勤務環境を考えると大きな課題であるので、まずは不要不急の事務を削減するとともに、事務の効率化を図るなどできる限り超過勤務を縮減していくことが重要だと考えている。各種会議での指示等を通じて、今後とも引き続き超過勤務の縮減に取り組んでいく。
 23年度における超過勤務手当の額だが、やはり予算にも限りがあるので、青天井で要求するということは難しいと思っている。来年度については、統一地方選挙があるということもあり、若干の増額をお願いしている。

【斉藤委員】
 毎年超過勤務手当の支給総額は減っている。突発的にサービス残業がその年だけ増えているのではない。サービス残業がずっと40%を超えて推移している。これは社会的な犯罪行為である。やはりこの問題について、一気に全額とは言わないが、来年度も2割3割改善したということがなかったら、まったく姿勢が変わらないということにならないか。
 県警本部費の超過勤務手当は11億5290万円である。これは増えているのか。

【警務部長】
 23年度の当初予算においては、統一地方選挙が行われることから、同選挙違反の取り締まり活動により、超過勤務手当予算の不足が見込まれることがあるので、それを補うための予算を計上している。
 23年度の超過勤務手当の総額は、22年度と比べて219万円余増えている。

【斉藤委員】
 いっせい地方選挙があるのにたった219万円しか増えていない。警察職員も増えている。
 総額5億円近いサービス残業の根絶に向けて、改善に努力すると言えるか。

【警察本部長】
 予算にも限りがあるが、超過勤務については、これに相当する手当を支給すべく、不要不急な超過勤務を抑制するとともに、業務の効率化・合理化などによりその縮減に最大限取り組んできたところだが、今後とも引き続きその縮減に取り組んでいく。