2011年3月9日 予算特別委員会
教育委員会に対する質疑(大要)


・子どもの権利条約と国連子どもの権利委員会の勧告について

【斉藤委員】
 子ども、生徒が置かれている深刻な状況をどう認識して、子どもの権利条約と国連子どもの権利委員会の勧告を岩手の教育にどう生かしていくか。

【教育委員会委員長】
 私が今定例会の委員長演述で申し上げた通り、本県が進める学校教育の目的は、知識や技能を習得させるためだけの学力形成にとどまらず、自立した社会人になっていくと。そのための総合力を見につけることであり、知徳体の調和のとれた人間形成と考えている。
 そのために、社会を生きていくために求められる基礎・基本を児童・生徒一人一人に確実に定着させ、社会人になるということの意義を発達段階において教えることであり、どんな困難に直面しても強くたくましく生きていく力を育てることにあると考えている。
 したがい、全国的な学力テストの順位などが毎年のように発表になり、その度に岩手が下位という批判もあるが、そのテストの順位や結果に着目するのではなく、本県の学校教育が進めているのはそういうものではないという意味で、過度な競争主義の環境にはないと答弁したところである。
 今後においても、勧告の趣旨を尊重しながら、学校のみならず家庭・地域・行政が一体となって児童・生徒の個性と能力に応じた学校づくり、一人一人を大切にした教育に引き続き取り組みながら岩手の教育の充実を図っていきたい。

【斉藤委員】
 子どもの置かれている実態と率直に述べると、いじめが151校438件、不登校は小中高で1491人、高校中退386人と。この歪みはきわめて深刻だと思う。例えば、高校中退だったら毎年中規模校1校分である。これが子どもの権利委員会が指摘している競争主義的な教育などで発生していると。勧告の中には、「驚くべき数の子どもが情緒的幸福度の低さを訴えている」と。これはユニセフの調査で、日本は30%の子どもが孤独感を感じていると。他の国は全部10%以下である。そういう今の子どもが置かれている実態をリアルに見て、本当に子どもに最善の利益、歪められている教育を是正していくという基本方向が必要ではないか。

【教育委員会委員長】
 いじめや不登校、中退の問題については、私はその問題が過度な競争主義的な環境の結果なったと認識はしていないというのが一貫した考えであり、ただそれぞれの問題の背景・原因によってはないとは言えないかもしれない。委員ご指摘の通りいろんな理由があるわけなので、深刻な問題だとは思っている。いずれこれらについては、すべて生徒指導上の本県の重大な課題だと我々もとらえている。現場の先生方には精力的に取り組んでいただいているが、なお一層先生方に頑張っていただき、我々もいろんな策を講じながら子どもたちが不幸にならないような状況をつくっていくように努力したい。

【斉藤委員】
 本会議の答弁がきわめて不十分だったので改めて聞いている。勧告を読まれたのか。勧告の70項には、「高度に競争主義的な学校環境が、就学年齢による子どもの間のいじめ、精神的障害、不登校、登校拒否、中退および自殺に寄与することを懸念する」とある。これは日本政府の報告、NGOの報告、日本の高校生が直接訴えて出された勧告である。同じ勧告が3回出されている。それをどう受け止めているか。間違っているという受け止めか。

【教育委員会委員長】
 日本全体でそういう実態はあると思う。その度に我々も岩手であってはならないということで通知をしたり、それぞれ指導したりしているし、先ほども述べたが、岩手にもまったく皆無とは言えないが、この勧告については日本国全体に対する勧告として言われたのであり、岩手だけ特定として言われたものではないと認識している。
 ただ、委員ご指摘の通り、そういう実態が岩手でも皆無ではないと思っているので、そういうことが今後起こらないように努力していくと。それしかないわけであるので、よろしくお願いしたい。


・高校再編問題について

【斉藤委員】
 三回にわたる地域検討会議の内容を読ませていただいた。多様な意見があったと思うが、共通した意見といえば、地域と結びついた小規模校の維持・存続、高校にも35人学級など少人数学級の導入を求める、地域のセンタースクールのあり方、地域の産業と結び付いた専門高校のあり方、特別に支援が必要な生徒への支援というのが共通して出された。
 今後、再編案を考える上で、地域と結びついた小規模校をどう維持するのか。どういう視点で検討するのか。そして35人学級は青森で26校、秋田で30校、福島で4校実施されている。これは具体的な課題として検討すべきではないか。
 そして長野県では、県立高校再編は県議会の議決事項になっている。これは議会の意向を確認して進めるということが必要だと思うがいかがか。

【高校改革課長】
 地域検討会議では、委員ご指摘の通りの意見が寄せられた。さまざまな観点からの議論があったが、そういった中での地域検討会議でのまとめの1つとして、小規模校については、地域の実情等を踏まえてギリギリまで維持してほしいというのがほぼ共通した意見だったと受け止めている。
 これから計画の策定に向けた検討を進めていくが、やはり小規模校をどのように扱うかと、具体的には各ブロックの中で高校・学科をどのように配置していくかと。その中で非常に大きな要素ではないかと考えている。その中で、委員ご指摘のあった点も踏まえこれから検討を進めさせていただきたい。


・35人学級の拡充について

【斉藤委員】
 2月21日に、73741人の署名が知事に寄せられた。小学校3、4年生、中学校2年生、高校にも拡充してほしいと。この署名の重みをどう受け止めているのか。
 この席上で知事は、「教員が子どもと向き合い、一人一人にきめ細やかな指導ができるよう国に引き続き求めていき、県においても適切に対応していきたい」と述べている。ぜひ適切に対応していただきたいと思うがいかがか。

【教育長】
 多数の署名をいただいた。35人学級については、国が順次改定して続けていくということなので、できれば前倒しが可能であればやるのだが、加配教員を減らしながらの学級編成基準となっているので、財政負担の状況が非常に曖昧なままに進められている状況もあるのでご理解いただきたい。