2011年3月15日 2月定例県議会・最終本会議
2011年度岩手県一般会計予算等に対する反対討論


 日本共産党の斉藤信でございます。2011年度岩手県一般会計予算等に対する反対討論を行います。
 討論に先立ち、3月11日に発生したマグニチュード9.0の「東北地方太平洋沖地震」による大津波により、本県沿岸が壊滅的な被害を受けました。痛ましい犠牲となった方々に対し、謹んで哀悼の意を表します。被災された皆さんに心からお見舞いを申し上げます。今日朝8時現在で675人を超える死者が確認され、安否不明者も多数に及んでいます。沿岸12市町村での避難者は48386人となっています。知事を先頭に県職員、沿岸の市町村と地域住民が不眠不休で救援と復旧の活動に取り組まれていることに心から敬意を表します。全国から派遣されている緊急援助隊や消防、自衛隊、DMATなどの皆さんの支援活動に心から感謝申し上げます。アメリカ、中国、イギリスからも国際緊急援助隊が活動しています。
 歴史的にも私たちが体験したことのない大震災となっています。まだ見つかってない人たちの救出、孤立している被災者の救出・救援にあらゆる手立てを尽くすとともに、避難されている方々の安全と生活を守る対策を徹底されるよう強く求めます。
 日本共産党は大地震直後に震災対策本部を設置するとともに、各地域で現地対策本部を設置し、地方議員を先頭に被災者救援と地域住民の安否確認、避難所での支援活動に全力で取り組んでいます。食料、燃料、衣類や粉ミルク、薬の確保、公衆電話の増設など情報伝達の確保など切実な要望が寄せられています。切実な要望に迅速にこたえられるよう強く要望いたします。私たちも行政の取り組みと連携して全力で取り組む決意であります。
 議案第2号は、2011年度岩手県一般会計予算であります。
 反対する第一の理由は、県民のいのちとくらしに背を向けた予算となっていることであります。
 岩手県の県債残高、いわゆる借金は決算ベースでは1兆5千億を超え、決算総額に占める借金の比率は219.6%で全国第2位の借金県政となっています。一方で福祉の予算である民生費は9.77%で全国39位と福祉に冷たい県政となっています。
 とくに切実な課題は、高すぎる国保税の問題です。県内の国保加入世帯の平均課税所得は89万円でありますが、その世帯の国保税は14万7千円、負担率16.56%となっています。滞納すれば保険証が取り上げられ、資格証明書の発行は2月1日現在、874世帯、短期保険証の留め置きで無保険状態となっているのが2473世帯となっています。合計3347世帯が窓口全額負担の無保険状態となっています。ところが、岩手県は昨年12月、国保の広域化等支援方針を策定し、収納率を高めるために、夜間の催告やコールセンターでの督促を強めること。保険証の取り上げの徹底、財産差し押さえの徹底を指示しています。昨年度、県内では4824件、16億3千万円が差し押さえられています。こうした中で県内でも無保険のため受診が遅れ死亡する事態が起きています。県民のいのちと健康を守るべき国民健康保険制度が、いのちを脅かす制度に変質しつつあることは極めて重大です。県も支援して高すぎる国保税は引き下げることこそ必要です。
 介護保険も、高すぎる保険料と利用料のもとで岩手県の1人当たりの介護サービス利用料は全国最低となっています。来年度特養ホームは計画を見直し1007床が整備されることになりましたが、5974人の待機者からみればさらに緊急に整備すべきであります。
 反対する第二の理由は、深刻な雇用・就職難打開と雇用の約9割を占める中小企業対策が極めて弱いことであります。
 この4年間で誘致企業の上位10社だけで2600人余の従業員が減少しました。ソニー千厩テックの工場閉鎖870人を含めると3500人の減少となります。一方で来年度の新規採用者数はわずか74人にとどまっています。巨額の内部留保をため込み、業績を回復している誘致大企業が雇用を守る責任を果たし、期間工などの非正規雇用を正社員に登用するとともに新規採用者を大幅に増やすべきであります。
 また、深刻な不況のもとで中小企業に仕事を増やす起爆剤となっているのが住宅リフォーム助成事業であります。県内では19市町村が実施し、3億8500万円余の補助で工事高が30億円を超えています。その経済効果は47億円となっています。来年度は27市町村に広がる予定です。秋田県では県が実施し19億3400万円の補助で294億円の工事高、経済波及効果は500億円を超える大きな効果が発揮されています。県議会での全会一致の請願採択をふまえ直ちに実施すべきであります。
 また、中小企業対策予算がわずか38億円にとどまっており、抜本的に増額すべきであります。
 反対する第三の理由は、日本と岩手の農業に壊滅的な影響を与えるTPP問題について反対といえない知事の姿勢であります。10年間で半分以下に削減され続けている農林水産予算も見直すべきであります。
 TPP参加による本県農林水産業に与える影響は、県の試算でも農業生産の約6割、1469億円も減少する、水産業では約4割の191億円の減少と県自ら明らかにしながら、なぜ知事は反対し、農林水産業を守ろうとしないのでしょうか。農林水産業予算はこの10年間余で半分以下に削減されました。これでどうして農林水産業を振興できるのでしょうか。
 反対する第四の理由は、子どもと教育に冷たい県政となっていることであります。
 子どもの医療費無料化を小学校卒業まで拡充することは切実な課題です。すでに10都県が小学校卒業以上に拡充しています。また国が30年ぶりに小学校1年生に35人学級を実施します。県として小学校3・4年生に拡充することも切実な要求です。こうした子どもの願いに背を向けているのが達増県政の実態です。
 反対する第五の理由は、深刻な借金財政のもとで、530億円の簗川ダムや164億円の津付ダムなどムダと浪費、自然環境破壊の大型開発を推進しようとしていることであります。  大震災の被害を受けた今こそ、ムダと浪費、不要不急のダム建設など大型開発は中止し、大震災からの復旧と復興に全力で取り組むべきではないでしょうか。
 議案第14号は、2011年度岩手県立病院等事業会計予算であります。
 来年度70人余の看護師の増員は評価しますが、県立沼宮内病院が一気に無床化されることは、地域医療の切り捨てであり、全国に誇る岩手町のがん検診体制にも大きな障害と困難をもたらすものであり反対するものです。
 今回の大震災では県立高田病院、大槌病院、山田病院が壊滅的な被害を受けました。患者と職員の生命を守る取り組みに心から敬意を表すとともに、必要な医療の確保に取り組まれるよう求めるものです。
 議案第16号と42号は、2011年度岩手県工業用水事業会計予算であり、料金引き下げを行なおうとするものであります。
 巨額の内部留保を持ち、利益をあげている一部の企業にこれまでの1億円の料金引き下げに続き、来年度7200万円の料金引き下げを行う理由はありません。
 議案第22号は、岩手県職員定数条例であります。
 警察官の職員を3名増やす一方で知事部局は520人、県立学校で279人、市町村立学校で510人削減しようとするものです。今、削減ではなく増員で35人学級の拡充こそ行うべきであります。
 最後に、かつてない大震災の被害を受けました。県議会も被災現地の状況や被災者の実態と要望を把握し、行政と一体となって大震災の対策に取り組むべき時です。災害対策のための必要な補正予算も組み、県議会としてもその責任と役割を果たすべきであります。
 以上申し上げ、私の討論といたします。ご清聴ありがとうございました。