2011年4月27日 商工文教委員会
雇用対策、中小企業対策に関する質疑(大要)


・雇用対策について

【斉藤委員】
 被災地では、住宅と雇用というのが最も切実で緊急な課題である。これはセットで提供されて、初めて地域の再建に結び付く。
 ハローワークの失業・休業届けは、報道では、大船渡・釜石・宮古管内合わせて7500人。他の報道では釜石だけで4000人という報道もある。これは雇用保険加入者だけであるので、漁業関係は入らない。今の失業・休業状態、雇用情勢をどう把握しているか。
 そしてその下で、今回の補正では5000人規模の緊急雇用事業が提案をされている。これはそれなりに積極的な対策だと思う。その中身を示していただきたい。

【雇用対策課長】
 労働局の正式なデータが出ていないところだが、労働局等で各地で行っている雇用の特別相談の状況から申し上げると、3月14日から4月21日までの状況では、労働者が延べ11510人の方がハローワーク等に相談に来ている。うち約5割強6250人の方が求職の申し込みをされた。そういった意味では、非常に雇用状況は厳しいのではないかと認識している。
 今回審議していただいている雇用対策関係の事業の中身だが、大きく3点ある。1点は、緊急雇用創出事業費補助で、これは市町村に補助を出して、市町村で被災者の雇用を創出するというものであり、雇用予定数3500名を想定している。2点目は、臨時職員緊急雇用事業費があり、これは県が臨時職員を直接雇用するもので、沿岸局を中心に今どれぐらいの見込みで雇用ができるか照会中であり、150名の雇用予定数を想定している。3点目は、災害緊急雇用事業推進費ということで、これは県が民間の企業あるいはNPO等に委託をして被災者等を雇っていただいて事業をするというものであり、雇用予定数は1050人である。3つの事業を合わせて5000人の雇用創出を見込んでいる。

【斉藤委員】
 5000人打ち出したことは評価するが、失業・休業の状況からいくと、この2倍3倍の取り組みが求められていると思う。
 民間NPOへの委託についてだが、これはどういったものを想定しているのか。これは地元企業が育つものなのか。

【雇用対策課長】
 この事業想定については、例えばNPOだと、実際いま避難所等でいろんなボランティア活動等をやっていただいているのだが、そういったものについて、雇用になじむものについてこの事業を使うとか、あるいは企業だと今少し話がある中身だと、沿岸の三鉄のほうで、信号機器が壊れて、通常であればCTCとか自動でなるようなものの信号要員が必要だということで、そういった要員を雇うとか、あるいは大きなものとして、がれき撤去等の掃除など、そういったものが含まれると思う。
 今後、各部局あるいは市町村等からいろんなニーズを聞きながら、事業化に努めていきたい。

【斉藤委員】
 すでに市町村では、例えば釜石では1000人、大船渡500人、最近では山田でも730人ということで、おそらく国や県の施策を先取りして具体化していると思う。
 民間NPOの関係で、避難所のボランティアなどとなると、県が直接発注するのが適切なのかと思うし、がれきの撤去も、市町村がすでに緊急事業でやっている。だから、民間やNPOへの委託というのが、スピーディーで地元の雇用に本当に結びつくという意味で、もう少し知恵を出してやらないと、だぶっていくのではないかと思う。ここをよく整理してやっていただきたい。
 私が少し心配しているのは、これだけの大災害でかなり全国からボランティアの希望が強い。それは適切に受けなければならないが、同時にボランティアに仕事を奪われてはいけない。地元でやれることは地元で仕事にして、事業にして、最大限地元の人たちに仕事が確保されるようにするという知恵も出さなければならないと思う。
 市町村が具体化するものは既に具体化されつつあるし、県の臨時職員のものは県が発注すればいいので、3番目の1050人というのは一定の数なので、これが本当に効果的なのか、即戦力になるのか、よく見極めて具体化していただきたい。


・中小企業対策について

【斉藤委員】
 今回融資制度がいくつか打ち出された。それなりに災害対応で前向きな融資制度だと思うが、沿岸中小企業の被害状況を従業員も含めて示していただきたい。

【雇用対策課長】
 公式的なものはまだ発表されていないが、例えば民間の調査機関の結果を報道したものによると、被災企業が1857社、これに勤めている従業員数が18000人余という報道があった。
【企画課長】
 4月11日現在だが、県のほうで商工業関係の被害額について発表させていただいている。その中では、工業が890億円、商業が445億円、観光業・宿泊施設が326億円ということで、あくまで推計値だが1661億円の被害額になっている。
 なお企業数等については、被災している企業等があまりにも多いため、工業統計、商業統計の方からあくまで推計として積算させていただいた。

【斉藤委員】
 1857社、18000人余、被害額は工業・商業・観光あわせて1661億円という数字が出た。水産の関係が3400億円で膨大な数字だが、沿岸の中小企業でこれだけの被害というのは本当に大変な状況である。
 今回の融資・補助対策というのは、今までから見れば前向きだが、深刻な災害状況から見るとまだまだ不十分ではないのか。
 例えば、中小企業被災資産修繕費補助で、これは補助ということで融資ではなく大変いい制度なのだが、補助率が2分の1以内、限度額が100万円以内と。旅館業によっては1000万円と。市町村が実施主体で、市町村が50%の2分の1、つまり4分の1負担なのだが、被災市町村が4分の1負担するのはかなり切ないことではないか。ここをもっとよく見てやらないと、市町村が事業主体になるときには、4分の1も負担するということになると大変である。これは融資ではなく「補助」なのでかなり使われる補助制度だと思う。もっと市町村の負担を圧縮するべきではないか。高くても1割、できれば5%という風にしないと、被災を受けた自治体の負担能力を超えるのではないか。
 融資制度も、市町村が、被災工場に対する再建支援策、これは5000万円以内で、企業が90%、県が10%の3分の2、市町村が10%の3分の1と。10%の3分の1といっても、これは補助額が大きいので、この辺りも5分の4と5分の1などという風にやらないと、非常時の制度としては、なかなか被災自治体は大変なのではないか。その点の改善を求めたい。

【経営支援課総括課長】
 修繕費補助だが、地域経済の復旧・復興ということは、当然当該市町村においても求められる。そういったことで、市町村が補助するものに県が補助するということで、我々もそういう意味では初めてこうした制度を立ち上げたということであるのでご理解いただきたい。
【企業立地推進課総括課長】
 企業立地対策費で計上をお願いしている被災工場再建支援事業費の補助だが、これは従来から企業の立地に対して県と市町村が支援をするという考え方を発展させて、今回の被災の企業に対して支援しようということで、これまでは企業に対する補助金については、県と市町村が半々で行っていたが、今回の事態を踏まえて、県の負担率を上げて県が3分の2、市町村が3分の1ということで、一定の配慮をした。今後、どうしても問題があるということが起こってきた場合には、また再検討していきたい。

【斉藤委員】
 やはり県庁の被災地から離れた発想だと思う。被災自治体はそんな状況ではない。全国から人が派遣されて、庁舎を建て直して仮庁舎でやっている。職員も亡くなっている。だから、2分の1を3分の1にしたという話ではないと思う。制度としては前向きの制度だが、やはり戦後最大の被害を受けて立ち直ろうとしているときに、抜本的に被災自治体の負担を軽減すべきである。これは是非見直しをしていただきたい。
 部長さんにお聞きするが、被災地の実情を踏まえて、現実的な、今回の災害にふさわしい制度に見直しを検討していただきたい。

【商工労働観光部長】
 県も被災者であり、特定の県も決して豊かということではく、いろいろな事業を見直して、スクラップして、生み出した財源である。したがい、制度としては初めてで、県としても直接制度として初めて出すもので、さぐりの部分は多くある。
 基本的な考えは、市町村と県が一緒になって、企業を支援していくということでの補助率であるので、これは初めての制度であるので、まず運用してみたい。その中でどうしても不都合な点が出てきた場合には、柔軟に対応していくということで、これで提案させていただきたい。

【斉藤委員】
 先ほどの本会議でも災害弔慰金の話をした。陸前高田市は4分の1負担だと23億円になる。ただ、それは特別交付税で全額措置される。だから成り立つ。
 今度の災害資金も4分の1負担だと大変である。あとでそういう交付税措置があるのならあり得るが。制度の創設は評価するが、今度の災害の規模にふさわしいものに、事業主体の被災自治体が喜んでできるように見直しも進めていただきたい。
 それから、金融機関の役割が決定的に重要だと思う。国が公的資金を投入すると言っている。そして七十七銀行や仙台銀行はそれを受けると。いわば、今の財務状況は良好なのだが、しかし今度の被災状況にかみ合って思い切って支援するという姿勢ではないか。こういう姿勢は大事だと思う。それで、今の被災企業の一番切実な要望は、既往債務の凍結である。できれば免除してほしいと。そうしないとこれからさらに新たな借金を抱えて再建するというものは出てこない。是非、例えば既往債務の5年の凍結など、これは国ということになるが、そういうことを何としても実現しないと再建のスタートラインに立てないのではないか。皆さんが、岩手県中小企業雇用者等復興支援会議を4月25日に立ちあげた。立ち上げたことはそれなりに評価するものだが、中身については厳しい指摘があった。新聞報道では、「被災地の実態に合っていないのではないか」「夢物語のビジョンを出すよりも困っている中小企業をどう助けるのか」と。これは関東自動車など内陸で頑張っている企業こそ言っている。今こそ、被災した企業の実態と要望に応えて、そういう金融対策を国にも金融機関にも求めるべきではないか。

【経営支援課総括課長】
 国に対しては過日、手厚い金融対策を要望しており、これからも実情に合わせて状況を見ながら要望していきたい。

【斉藤委員】
 私は具体的に聞いた。結局いま被災企業はマイナスからのスタートである。例えば、新しい工場を何億円もかけてつくった途端に被災したと。回収するどころかマイナスの負債しか残っていない。こういう企業が多い。せめてゼロからのスタートにしてほしいというのが被災地の要望である。再建の意欲もある。しかし、今まで投資したものが回収できずにそのまま残り、さらに新たな債務を抱えるところに見通しを持てないでいる。だから、皆さんがこれを出したものがストレートに受け取れないのはその点である。ゼロからのスタートだったら大いに頑張ろうとなれる。これは国に対してもきちんと求めていただきたい。最低限債務の凍結が必要である。そこで再建の目途を立てていくと。そういうことを国に求めるし、岩手県の金融機関にもこういう時期に思い切って必要な融資をやるんだと。
 報道では、気仙沼信金は気仙管内でも4支店中3支店やられたが、それでもそういう負債を抱えたところに何とか融資しようというような特集があった。信金なので財政基盤は決して強くはないかもしれないが、それでも地場産業が生きなかったら地元の金融機関だって生き延びれないと。そういう意味でいけば、まずこれは国に対して既往債務の凍結を岩手県としても求めるべきではないのか。その上で、地元金融機関にも特段の金融支援をできるようにお願いすべきではないか。

【経営支援課総括課長】
 個々の事業者の被災の状況なり、あるいは債務の状況というのは、まさに個別の問題であるので、そういうものに具体的に対応していくためにも商工団体などでの丁寧な対応が必要と思っている。そういったことでも、相談機能が十分に発揮されるようにということで考えており、あるいは専門家を派遣してそういったものを支援していくということが必要だと考えている。
 国に対する支援の要望については、いずれ実情を踏まえて要望をしていきたい。

【斉藤委員】
 水産業、地場産業の振興・復興というのが、産業振興でいけば二大柱だと。先ほど佐々木議長からも、宮城県は国営でと。岩手県は国家プロジェクトでと。実態的には同じことを求めているのだと思う。今の水産業は、そういう超法規的な対策をとらなかったら再建できないと思う。船も施設も港も加工施設もやられた。一体で国が支援してそこで漁業者が一緒になって取り組むという仕組みをつくらないといけない。
 地元中小企業も同じだと思う。1661億円も被害を受けているときに、今までよりも若干目だしをしたような補助や融資では立ち上がれない。そういう意味で、既往債務の凍結という問題を提起した。これは国会でも議論になっているので。そういうことも検討するというところまで大臣も答えている。やるとはまだ言っていないが。是非そういう超法規的な対策を知恵を出して強く求めていただきたい。

【商工労働観光部長】
 県でも、例えば、県単融資の償還については3カ年の延長をしている。非常に大変な事態、前代未聞の状況に陥っていることは我々も十分承知しており、それから既存の枠組みで対応できないことは我々も分かっているつもりでいる。ですので、要望活動も当然行い、何よりも現場の声が大事だと思っている。我々も震災以来、現場を一生懸命歩き、何が一番いいのかということを追い求めており、また災害復旧の状況によって現場の声が刻一刻変わっているのも実感している。ですので、それをできるだけ先取りする形で進めていきたいと思うし、委員ご提案のものというのは、まさに国家的な課題として取り組まなければならない。ただ、これは一方の借り手である方は都合がいいが、貸し手にとっては大変厳しい状況になり、金融自体がまわらなくなってしまうと、また別の厳しい部分を心配しなければならないわけであるので、バランスのとれた解決策を国に求めていきたいし、我々は現場の声を強くあげていきたい。

【斉藤委員】
 水産業も中小企業も、超法規的な支援策が必要と強調したが、国の一次補正が明日国会に提案されるわけだが、この予算を見ると、かなり先取りして組まれているものもあるのではないかと。しかしここに組まれていない、今分かる範囲で、国の一次補正で示されている雇用対策や中小企業対策で、今回盛り込まれていないものはどういうものなのか。

【雇用対策課長】
 雇用対策については、一次補正では、基金の積み増しが全国枠で500億円で、その中で今般は厚労省等に情報収集した結果、ご堤案申し上げている程度であれば、差し支えないという話もあったことから、計上したものであり、おそらくこれ以上くるものであれば、随時対応していきたい。
【経営支援課総括課長】
 中小企業者の施設の復旧・整備の支援に関する事業が盛り込まれている。