岩手県知事 達増拓也 様

2011517

日本共産党岩手県委員会

委員長  菅原則勝

県議会議員 斉藤信

 

東日本大震災・巨大津波の救援・復興対策についての第三次申し入れ

 

東日本大震災・巨大津波から2カ月余が経過しました。515日現在、死者4432人、行方不明者3012人、全壊・半壊の建物被害は19749(大槌町除き)となっています。避難者は10日現在36494人、うち避難所15180人、在宅避難者が21314人となっています。いまだに行方不明者の捜索が続けられ、「2カ月が限度」といわれる劣悪な避難生活が続いています。NHKが実施した東北3県の241病院の聞き取り調査(513)では、524人が災害関連死と報道されています。大震災と津波から助かった命を絶対犠牲にしてはなりません。二次被害を出さない緊急の取り組みが必要です。

被災地域の被害状況も、農林水産業で4166億円、商工業で1661億円、公共土木事業で2567億円、計8394億円と推計されています。政策投資銀行の推計では43千億円の被害とされるなど戦後最悪の大災害の状況も明らかになりつつあります。沿岸地域の就業者約12万人の半数が失業・休業状況となっています。

また、仮設住宅が建設されつつあり、避難所から仮設住宅への移行で避難生活も、避難者の要望も大きく変化しています。被災者・避難者の実態と要望に寄り添った対応が求められています。

567日の日本共産党の志位委員長、市田書記局長らによる県、陸前高田市、釜石市、宮古市、県漁連等の被害状況調査では、「せめてマイナスではなく、ゼロからの出発にしてほしい」という二重債務問題の解決、漁業、農業、中小企業・商工業が再出発できる基盤の回復、復興への意欲が持てる当座の生活補償と仕事の確保などの共通の要望が出されました。復興の問題では、地域ごとに被害の状況も復興のあり方も違うことから、地域住民が主体の復興の進め方と国による財政支援が強く要望されました。

これまでの調査と地域の要望を踏まえ、以下の通り救援・復興の取り組みを抜本的に強化されるよう申し入れます。

1、被災者・避難者の二次被害を絶対出さない取り組みを徹底すること。

1)    避難者の実態を調査・把握し、人並みの温かい食事、入浴と洗濯、布団とプライバシーの確保ができるよう直ちに具体的な手立てを講じること。在宅避難者への支援体制を構築すること。

2)    希望する地域の仮設住宅にできるだけ早く入居できるように、入居希望者の要望を聞いて仮設住宅の建設に丁寧にとり組むこと。仮設住宅には集会室、ケア付き住宅を整備すること。県内業者による木造仮設住宅の建設をさらに進めること。

3)    災害関連死の実態を県として調査するとともに、訪問診療や通院バスの運行など医療支援体制、保健師チームの体制を継続強化すること。民間医療機関の仮設診療所等への補助とともに被災した県立病院の機能回復を図ること。障害者、要介護高齢者に対する必要な福祉・介護のサービスが行われるよう手立てを講じること。

4)    一時避難者、公営住宅、民間借り上げ住宅等への避難者、親類等に避難している方、他市町村に転出した被災者を含め被災者カルテで状況を把握し、地元自治体の情報提供、地元への一時帰還バスの運行、支援物資の配布など必要な情報と支援が届くようにすること。

5)    被災者・被災児童に対する国保税などの各種税金、保険料の減免、授業料・学費の減免を徹底すること。

2、被災者の生活再建を土台に、住民合意で市町村が主体の町づくりと復興の取り組みを

1)    復興を進める上での二つの原則を貫くこと―@被災者の生活基盤の回復を最大の目的に、必要なあらゆる支援を行うこと。A「計画を作るのは住民合意で、実施は市町村と県・国が連携して、財政の大半は国の責任で」すすめること。

2)    二重債務の解消のために、「地域経済復興機構(仮称)」を立ち上げ、@借金返済を凍結する、一部債務の減額や返済免除も検討する、A機構が金融機関の債務を買い取る、B金融機関は債権売却資金で新規融資を行う。必要な資金は政府が支援するスキームを含め2重債務解消を国に強く求めること。

3)    漁業、農業、中小企業・商工業が再出発できる基盤の回復を国の責任で行うこと。

@    漁業の再建では、漁協の取り組みを軸に、船の確保・養殖施設整備・漁港・水産加工一体の再建を国の財政支援で行うこと。船の確保と養殖施設の整備は基本的に国の全面支援で行えるよう求めること。海のがれきの調査と撤去を早急に行うこと。秋サケ漁、ワカメ養殖等の再開に間に合うように取り組むこと。

A    農業の再建では、被災した農地の塩分除去、農業機械の確保、水路の確保など特別の支援を強化すること。

B    商工業の再建では、債務の凍結に加え、返済不要の立ち上がり資金の提供、長期無利子の融資の提供の二つを打ち出すこと。

4)    被災者の生活補償と雇用確保の取り組みを強化すること

@    被災者生活再建支援法による支援金を大幅に引き上げるよう国に求めるとともに、能登半島地震の際の石川県のように県独自に200万円以上かさ上げすること。災害弔慰金、災害障害見舞金、義援金の支給を急ぐこと。

A    漁業、農業、商工業の再建に寄与する雇用事業を思い切って広げ、被災者の生活支援と再建に関わる雇用事業にも取り組むこと。

5)    震災孤児対策では親族里親制度など里親制度の徹底を基本に対応すること。仮設校舎の建設・教員の増員で行きとどいた教育と子どものケアに取り組むこと。

6)    住民と地域主体の町づくりと復興を進めること。住民参加の復興委員会と住民懇談会の開催を貫くこと。

7)    国道45号線とJRの復旧は安全性と防災の立場を両立させ、早期の復旧を図ること。三陸鉄道の復旧に国の支援を求めること。三陸縦貫道の整備は優先順位を検討して進めること。

3、福島原発事故への対応について

1)    牧草からの基準値を超える放射性セシウムの検出を受け、すべての市町村で露地野菜や海洋等を含め放射線の測定を定期的に行い公表すること。出荷自粛を指導した場合は全面的な賠償を速やかに行うこと。

2)    福島原発事故を踏まえ、原発の安全対策とその新基準に基づく総点検と放射線の検査体制の強化を国に求めること。地震・津波が予想される地域の原発、老朽化した原発の即時廃止を求めること。原発の廃止を決断し、原発をゼロする期限を決めたプログラムを策定するよう国に求めること。

4、国の第一次補正予算に対応した県事業の予算化に当たっては、6月県議会を待たず、臨時会を開催して早急に対応すること。

5、緊急対応にとどまらず、これまでにない復興の取り組みを進めるために、国の第二次補正予算の早急な実現を求めること。復興の財源については、増税に反対し、大企業への2兆円の減税や米軍への3千億円の思いやり予算などを見直し、244兆円に及ぶ大企業の内部留保の活用を求めること。

以上