2011年6月2日 
三陸沿岸漁業の復旧・復興を求める申し入れでのやりとり(大要)


【斉藤議員】
 この間、県漁連と24の各漁協を回って、党が全国で集めた義援金の一部を届けながら被災状況や国・県への要望を聞いてきた。
 今回の東日本大震災の被害の中でも、もっとも深刻なのが漁業・水産業の被害だと。皆さんの推計でも3100億円を超える被害額である。これは、漁業生産額、水産加工出荷額を含めても1200億円という産業なので、地域経済にとっても雇用にとっても地域社会のあり方にとっても、今後の復興の要をなす問題だと。こういうことから、岩手の漁業の復興のための緊急な課題を県にお願いするということで申し入れたい。
 今日は、陸前高田市、大船渡市、久慈市、大槌町の沿岸各地から党の議員団が来ているので、それぞれの地元の要望などもお話させていただきたい。
 1番目の項目は、ワカメ、アワビ、秋サケなどのつくり育てる漁業の再建が復興の第一歩だと。特に、生産適期に合わせた生産基盤の整備に全面的な支援をする必要がある。秋サケのためには、8月までに船の確保や漁具の確保が必要で、国の支援だと3分の1負担である。これは被害の状況からみると、まだまだ重すぎるので、さらなる漁協・漁民の負担軽減を図る必要がある。あわせて、船の確保というのは数年かかるので、単年度だけでなく通年継続的な支援が必要である。船の登録に1〜2ヶ月かかるようではいけないので、そのことも対応いただきたい。
 共通して出されたのは、養殖施設である。共同の養殖施設への支援策が見えないと。ワカメの養殖施設の整備にとりかかるわけで、養殖施設に対する全面的な助成、養殖用種苗の確保にも助成を直ちにすると。そしてサケのふ化場、アワビ・ウニの種苗生産施設の復旧・整備に早く取り組んでいただきたいし、国の栽培漁業センターも早期に復旧させていただきたい。
 漁協の共同利用施設の新設経費に対する支援について。あまりにも国の一次補正は、部分的なので、これでは魚市場の再建にならないと。
 大きな2番目は、漁業・流通・加工業の一体的な復旧である。こないだ宮古の魚市場でスケソウダラが水揚げされたが、価格が例年の3分の1と。結局、買い取る水産加工会社がやられているので、そういう状況になっている。漁業・加工・流通というのは、一体的な復旧が必要である。その点でいけば、カツオの水揚げ、サンマ、秋サケと続く。できるだけ魚市場の復旧を早くやっていただきたいし、魚市場の必要な機器整備にも支援が必要である。
 特に民間水産加工会社への全面的な支援である。これは、漁協でないと補助の対象にならないと。水産加工会社の再建というのは特別に重要だと思っているので、融資だけではない助成・補助の支援策が必要である。
 あわせて、県も提案しているが、二重債務の解消策について早く打ち出す必要がある。
 大きな3つ目の問題は、漁業収入が得られるまでの雇用確保対策を継続していただきたいと。共同で漁業を進めるとしても、収入は4分の1から5分の1である。それを補う漁民に対する雇用対策に知恵を出していただきたい。
 大きな4番目は、今のような取り組みをする上でも、漁場の調査、がれきの撤去は大前提である。本当に漁場がどうなっているのか、がれきがどうなっているのか。がれきの撤去は今始まっているが、まだまだ全体像が分からない。船もつけられないということがあるので、早く全面的な調査をしていただきたい。
 漁港の復旧にあたっては、漁港の集約化ではなく、各漁港と漁村は一体であるので、集約化されたらその漁村がなくなってしまうということなので、優先順位などはあるかもしれないが、基本的には全ての漁港・漁村の復旧を図るというふうにしていただきたい。
 それから、この間のしけでも、船がつけられなかったとか、土のうが流されたなどの被害が出ているようなので、本当に緊急・応急対策もしっかりやっていただきたいし、地盤沈下もしているので、その対策もお願いしたい。
 5番目は、福島原発との関係で、放射能検査とその公表というのも切実な課題である。安全な食料というのが問われてからではなく、積極的にそういうことを打ち出していく必要があるのではないか。そしてもし風評被害が起きた場合には、全面的な賠償を求めていくと。
 最後に、こうした課題は、基本的には国が第二次補正でやるべきである。しかし、菅さんは第二次補正を出したら辞めると言明したようだが、いつ出るか分からない。そういう意味では、県が先行して必要な施策は打ち出すと。その後の事前着工を国に認めさせるという対策で、漁民に復興のメッセージを県が強く打ち出すということを県がやっていただきたい。

【農林水産部長】
 大きく6項目にわたりお話いただいた。
 1つ目の項目だが、作り育てる漁業というのは、まさにこれまで本県が基本にしてきた考え方の1つである。本県の現状として、沿岸漁業あるいは養殖漁業などの柱の中で本県の漁業が営まれているわけなので、そういう中で作り育てる漁業というのが基本になると考えている。
 そういう中で、4項目個別の話があったが、それぞれの漁がいつから始まるとかいつまでにといったことは我々も重々承知しており、できる限りそれに合わせたようなタイミングで施策を講じていきたいという思いである。そういった意味で、ワカメ、サケ定置の関係は、漁船も含めて漁船漁業の関係にできる限り間に合うようなタイミングで、準備できるようなスピードで事を進めていきたい。
 共同養殖施設は、ご指摘の通り、漁協の共同利用施設については、一次補正では中身があまり示されず、旧来の施策しか示されなかったので、それについては、二次補正に是非しかるべく措置してほしいということで国に事前から要望はしていたが、引き続き要望していきたい。
 種苗の確保についても、まさに作り育てる漁業というのが基本であるので、それを対応できるように進めていきたい。
 サケふ化場についても、やはり応急については一次補正で国も事業を起こしている。それに対応すべく取り組みを進めていき、種苗生産施設などについても同様に、どのように復旧・復興をしていったらいいかというのは関係者の方々とよく話し合いながら進めていきたい。
 国の栽培漁業センターの関係も、センター関係の方が実際にこちらに来ていただき、意見交換もしているので、しかるべく国に要望していきたい。
 新たな共同利用施設の新設の関係だが、支援制度がどのようになるかということもあるが、各漁協と意見交換しながら、いつ・どのようにということを詰めていきたいし、いずれにせよ、そういった設備や施設の整備については、基本的には漁協それぞれで考えていただくのが基本であり、その上で県としてもどのように対応できるか、対応していくかということになってくる。地元の意見を踏まえながら対応していくということを基本にしたい。
 2番目の漁業・流通・加工業の一体的な復旧について。
 魚市場の復旧については、4月の臨時補正の中でも、緊急的な機器整備については、特に早い時期から市場を再開しているところもあったので、整備できるように支援するということで、実際に機器整備が整った市場もあるが、いずれ再開に向けた支援はこちらとしても続けていきたい。
 民間水産加工会社への支援だが、議員のおっしゃるとおり、中小企業施策は融資が基本であり、農林水産関係の一次産業部門とは少し支援の仕方が異なる。今回の被災の関係もあって、中小企業庁もそれなりの施策は講じていると聞いているので、一次補正の中に助成というような、今までなかったようなものも含まれていると聞いている。ただ、我々が直接的に、商法法人の分野に足を踏み入れるのはなかなか難しく、意識としては、漁協なり加工協同組合などが経営している加工会社も商法法人の会社も、加工しているという意味では、広い意味での水産業の中に含まれていて、それが一体として復旧していくことが大事だと考えているので、商工労働観光部と連携しながら物事を考えていきたいし、今までも連携をとりながら考えていたところである。
 二重債務の解消について。国の一次補正では、将来に向かっての融資の優遇のような措置が講じられたのはご存知のとおりと思うが、既往債務についてまだ十分な措置がとられていないということは認識しているので、国に対し二重債務の解消については、さまざまな機会を通じて対策を講じるように提案をしている。
 3番目の漁業者の方の生活支援の関係だが、我々として、漁業者の方が船を失い、養殖施設を失って収入の道が断たれている、さらに再開してもすぐ収入が得られないということは重々承知しており、したがい4月の臨時補正の中にもすでに盛り込んだが、漁業者の方に漁場などのがれき撤去をしていただくというようなことで、決して十分だとは申し上げないが収入を得ていただくという方策を講じている。国の一次補正を結局先取りした形になった。農林水産部なので、なかなか雇用確保のための雇用確保策というのは、商工労働観光部と違いやりにくいのだが、そういう形をとって、漁業再生のために漁業者の方に従事していただくと。それに対して対価を支払うというような工夫はしていきたい。
 4番目の漁場の調査とがれき撤去、漁港・漁村の整備について。
 今まとめている県の復興ビジョンの中でも、集約化という言葉は使っていない。これから漁港や漁村をどう再生していくかということは、それぞれの地域の中で10年20年後にどんな姿で地域があるべきかということを考えていただいた中で、必要な整備といったことが出てくるものだと思う。決して県からビジョンを押し付けるつもりはなく、地域ごと、漁協ごと、市町村ごとにどうするのかということを踏まえながら、我々として具体的な整備をどうしていくかということを考えていきたい。
 漁港の早期復旧、さしあたっての応急復旧のような類は、がれきの撤去、航路の確保、泊地の確保、防波堤の部分もできるものは順次進めていく。地盤沈下の関係も、全体を防ぐというのは正直無理であるので、港ごとの状況を見ながら、必要な部分を段階的に進めていきたい。
 漁場の関係も、順次調査やがれきの撤去に手をつけている。ただ、すぐ全部という形にはならない。町のがれき撤去が進んでいるところは漁港まで手が回っていくという状況であるし、遅れている地域はどうしても漁港のがれき撤去が遅れている。そういう意味で、進み方には違いがあると思うが、どの漁港についても、泊地・航路の確保については順次進めていくし漁場も順次進めていきたい。
 津波対策を考えた漁村のあり方については、市町村がまず地域づくりをどうしていくかというのが盛んに検討されているところであり、住民の方々と我が町、我が集落はどういう風な形がいいのだということを意見交換されている段階だと思う。漁港の整備に限らず、農村関係も含めて、地域としてどういう考えというのを踏まえながら整備を進めていくことで、今回津波による災害ということで、それを次にどうしていくのかということを住民の方々が理解されるものでなければなれないのだろうと思う。そこは地元とよく相談しながら進めていくのが適切だと思う。
 福島原発の風評被害対策について。我々としても非常に頭の痛い問題であり、正直、県が県として勝手に測定調査を進めるというのもいかがかと思っている。あくまでも我々は生産振興のための部署であるので、生産者団体の方々とよく話し合い、合意形成を図りながら、手法・時期を決めて、必要な測定をしていきたい。
 風評被害の損失補償の関係については、国でルールを定めてそれに従い、農産物等は動き始めている。もしそういったものが生じた場合には、ルールに従って進めるということで認識していたが、県としては、どちらかといえばサポートする、手続きを踏むのを支援するという立場になると思うので、そういった立場で支援していきたい。今の形も、福島でいうと、農協が取りまとめて、東電なりに請求という形をとっているので、後ろ側からサポートするという形になると思う。
 二次補正予算の早期成立についてだが、二次補正がいつになるのか正直不透明な状態だが、我々としては、一次補正で何がされ、それにより施策による過不足がどこにあるのかというのを当然分析しながら、二次補正に向けて必要なことの検討作業はすでに始めているので、そういった不足するものを国に対して要望して、二次補正に反映されるべく努力していきたい。

【藤倉市議】
 漁業分野でも街でも全面的な被害を受け大変な事態になっている。これまで市では、担い手問題について、独自の奨励金を新規参入の方に補助して、養殖漁業の活性化を図って、その成果が見えてきた中での津波被害だったので、改めて漁業に対する支援をお願いしたい。
 特に岸壁の問題で、地盤沈下もして見通しがどうなるのかというのが全く見えない部分もあり、市長も漁協も、国の動きがなかなか見えないという中で、県にいろいろご尽力をお願いしたいとのが1つ大きな問題としてある。

【滝田市議】
 漁業者の生活支援の強化について。今の支援、義援金にしても何にしても、住宅が全壊したとか半壊したとか、そういったことが基準になっている。たまたま自宅が高台にあって、船を流された、漁業資材を失った、全て生活の糧、収入のための道具を全て流された方には、住宅があるために一切の支援がない。そういった方にも是非支援を広げていただきたい。

【田中市議】
 5月30日に低気圧が襲来し大きなしけが来た。漁師の皆さんが必死で使える船を修理して、手に入る船は手に入れてということで、一日も早く再開したいということで頑張っている。しかし低気圧が襲来し、防波堤がやられ、地盤沈下もしているので、外の波がもろに入ってくる。そういう状況で、1トンの土のうを積んだが、ほとんど役に立たず流されてしまった。そうすると船が手に入っても、停留しておくところがない。いずれ何度もしけが来るので、まともな漁ができなくなるのではないかと心配している。そうすると、やはり早めに防波堤を復旧していただくこと、もちろん頑張っていただけると思うが、1年2年でできるようなものではない。例えば2年3年かかっていくと、まともな漁ができない状況がそれだけ続く。漁業者の皆さんは何で食べていくのかということが今後の大きな問題になる。食べていけないと若い人たちは家族を連れて東京に行ってしまう。そうすると岩手県の基幹産業である沿岸漁業が衰退していってしまう。本当に何らかの形で食いつないでいく、雇用を創出していくなどの先の見える、希望が見える雇用対策を、今後は単年度だけでなく長いスパンで是非お願いしたい。