2011年6月8日 臨時県議会
議案に対する質疑(大要)
・避難者の生活環境の改善について
【斉藤議員】
日本共産党の斉藤信でございます。議案第1号、第4号、第5号について質問します。
議案第1号は、2011年度岩手県一般会計補正予算(第3号)であります。東日本大震災津波による救援・復興の第二次補正予算というべきものであります。
達増知事に質問します。第一に、救助費が188億円余の増額補正となっています。これは災害救助法に基づく避難所の経費・食料支援、災害弔慰金負担金等であります。避難所の生活環境は、3カ月が経過しようとしているにもかかわらず、国・県の調査でも「入浴が週1回程度」が25%に及ぶなど劣悪な状況となっています。災害救助費の単価も食料費で1人1日当たり1010円から1500円に、避難所経費は300円から1000円に引き上げられましたが、食事、入浴、洗濯、布団、プライバシーの確保等実態はどうなっているでしょうか。どう改善されているでしょうか。
また、陸前高田市の全市民の「健康・生活調査」によると、市内の親類や友人宅などに避難している被災者が3175人で15.2%、市外の個人宅944人を含めると19.7%に及んでいます。市内避難所2708人、12.6%、市外避難所112人、0.5%を超えています。個人宅に避難している避難者の全県的な実態とそれへの支援についてどう把握されているでしょうか。
津波で助かった命を対応の弱さから絶対に犠牲にしてはなりません。NHKの報道では、東北3県の241医療機関の調査で震災関連死が524人と報道されました。震災関連死については厚労省からも事務連絡が出されていますが、速やかに調査・対応すべきと思いますが、岩手県内の実態をどう把握されているでしょうか。
【達増知事】
5月中旬に実施した実態把握の結果では、食事・洗濯・入浴の各調査項目において、もっとも状況が良くない選択肢を回答した避難所はすべて解消され、また本県独自の栄養士による栄養摂取状況調査によると、調査した全ての避難所で、「一日3食提供され、主食・主菜・副菜がそろった食事が1日に2回以上提供されている」のは84%となっている。
議員ご指摘の入浴については、調査以降、仮設風呂の増設、太陽熱温水器を活用したシャワー設備の設置などの支援を行なっている。
布団については、「十分な寝具が確保されていない」と回答した避難所に対し、調査後、県等から約1200組の布団を提供し、ニーズを充足している。
プライバシーの確保については、「いまだ間仕切りなどが全くない」と回答した避難所が11.8%あったが、避難所によっては、間仕切りすることにより避難者の状況把握が困難になるなどの理由により、導入していないところもあることから、今後避難所の実態に応じて、管理者等の理解もいただきながらきめ細かく対応していく必要があると考えている。
今後は、梅雨から夏季にかけての衛生環境の維持が重要と考えており、市町村における避難所経営に関する意向も確認しながら、必要な支援を早急に行なっていく。
【保健福祉部長】
個人宅に避難している避難者の全県的な実態について。避難所において支援物資等の提供を受けている在宅避難者については、ライフラインの復旧等にともない、避難所から自宅等へ戻る方の増加等により、4月上旬ごろから避難所の避難者数を上回り、4月中は24000人前後で推移した後、5月の連休後に減少に転じ、6月6日現在で11000人余となっている。
また、支援物資等の提供を受けず、個人宅等で生活している方も含めた在宅者に対し、これまで沿岸部の市町村では、保健師等の訪問調査等による健康状態等の把握結果に基づいて、何らかの必要な支援が行われるものとうかがっているが、その結果について、集計・分析が進んでおらず、全県的な把握に至っていない。
今後、避難所から応急仮設住宅等への移行が完了する時点を目処に、仮設住宅または在宅等の別に、全住民の所在と必要とされる保健医療福祉サービスを把握できるよう、これまでの調査結果についてデータベース化が図られていくことが必要と考えており、その進め方等について保健所および市町村等と検討を進めていくこととしている。
震災関連死については、災害に直接起因する死ではないが、災害による避難所生活など環境の変化により死亡する場合の総称とされているが、これまで災害と死因の因果関係について統一した判断基準はなく、個々の事例について医師等の専門家の検証に基づき認定が行われていることから、即時の実態把握は困難であるとされている。しかしながら、阪神大震災などにおいては、震災にともなう過労や環境悪化などにともなう病死などの二次的・内科的原因による死亡例などが報告されていることから、被災者の命と健康を守るため、県としてもこの予防の取り組みが重要と考えている。このため、地域に派遣している医療救護班においても、定期的に情報交換を行い、個々の患者に応じた詳細なケアに努めていただくとともに、保健師や心のケアのチームも相当数派遣し、被災者のストレスの軽減や食生活などの改善を図ることにより、いわゆる災害に起因した健康被害が起きないよう務めている。なお、今般厚労省から、災害関連死の基準が示されたことから、今後認定を行う市町村と連携しながら、災害との関連の実態把握を進め、健康被害の兆候を早期に把握し、一層有効な対処が行われるよう努めていきたい。
・義援金、災害弔慰金などの支給について
【斉藤議員】
第二に、災害弔慰金負担金として15億3000万円が増額補正されています。累計で対象人数はどうなっているでしょうか。義援金、災害弔慰金、被災者生活再建支援金の支給状況はどうなっているでしょうか。支給が遅れている問題は何でしょうか。今後の見通しを含めて答弁を求めます。義援金の受給対象に、宮城県や福島県のように兄弟姉妹を加えるべきではないでしょうか。
【保健福祉部長】
災害弔慰金負担金については、今回の災害による5月7日時点の死亡者数4377人を算定の基礎としている。
義援金等の支給については、6月3日現在で義援金については、第一次配分の全体件数31731件の48%の15231件を交付しているが、災害弔慰金については39件の支給となっている。
被災者生活再建支援金については、市町村から県に送付された15444件のうち、県が審査を行い、国の指定委託法人である財団法人都道府県会館に14154件、国から被災者に支給された件数が625件となっている。このような支給状況になっている共通の要因としては、未曾有の大災害により多くの市町村においては膨大な事務が生じる一方、役場庁舎や市町村職員も被災するなど、行政機能が著しく低下してきたことによるものであり、このため県では、市町村からの要望を受け、義援金等の事務処理を行うために、4月27日に職員を派遣するなどの支援を行う中で、市町村の事務処理体制が整備されたことから、義援金の支給率が向上してきたところである。
また、災害弔慰金については、各市町村が条例に基づき調査の上支給するものだが、実務上は被災者から死亡・行方不明の方に対する義援金の申請を受ける中で、弔慰金の受給者を確定させているものであり、義援金の交付事務を優先していることから義援金の支給が進むにつれて弔慰金の支給が進むように県としても支援していきたい。
一方、被災者生活再建支援金については、財団法人都道府県会館における審査に時間を要しているところであり、財団法人都道府県会館においては、審査体制の強化を行うこととしているとのことであるが、県としても引き続き早急な支給を働きかけていきたい。
今後、義援金等が一日でも早く被災者の皆さんの手元に届くよう県としても市町村の支援に積極的にあたっていきたい。
兄弟姉妹への義援金支給については、これまで県では、死亡・行方不明者に対する義援金交付にあたっては、県義援金配分委員会で災害弔慰金支給法による遺族の対象範囲を、配偶者・子・父母・孫および祖父母としてきたところである。しかしながら、5月18日付の厚労省の事務連絡において、生計同一の兄弟姉妹を、義援金配布対象としている自治体がある旨を明示された。また、岩手県弁護士会や被災市町村長からも同様の要請があることから、現在支給対象の見直しについて検討を進めている。
・医療の確保について
【斉藤議員】
第三に、医療の確保について質問します。被災地医療確保対策事業費として8億3100万円余が増額補正されています。仮設診療所、修繕等対象となる医療機関はどうなるでしょうか。4月補正分を含めて示されたい。また、沿岸地域における医療機関の被災状況と、再開・休止の状況はどうなっているでしょうか。
県立病院は、高田病院、大槌病院、山田病院がほぼ全壊の被害を受けました。当面、仮設診療施設の整備が行われるようですが、臨時診療所体制の実績と仮設診療所の体制でどう改善されるのでしょうか。県立釜石病院、大東病院の復旧の見通しと517床の復活の見通しはどうなっているでしょうか。
知事に質問しますが、県立病院の復旧・復興は各市町の復興計画の中心的課題であります。災害復旧ですから、現状の規模で復旧することをいち早く明らかにすべきではないでしょうか。大震災に乗じて県立病院の統廃合がなされることはあってはならいことだと考えますがいかがでしょうか。
【達増知事】
医療局において、津波等により被災した高田病院、大槌病院、山田病院について、仮設診療所の建設により、また地震により損傷した大東病院については、増築等の改修により、まずは外来診療機能の回復をめざし全力をあげて取り組んでいると承知しており、県においても財政的な支援を行うこととしている。
【保健福祉部長】
被災地医療確保対策事業費については、沿岸市町村の被災地における医療提供体制を早急に確保していくため、仮設診療所の整備等に要する経費を措置するもので、4月補正予算において3億8千万円余の事業費を措置していたが、今般示された国の補助制度を踏まえ、運営等の形態を見直すとともに、県立病院の仮設診療所を対象に加えるなど事業費の増額を行おうとするものである。また、今回の補正予算において、既存施設の修繕などで、応急的に診療を再開する医療機関に対し、被災の程度に応じて一定額を補助する措置を新たに盛り込んでいるところである。沿岸市町村では、津波等により病院が8ヶ所、一般診療所が50ヶ所、歯科診療所が55ヶ所と113の医療機関が被災している。このうち、52の医療機関が保険診療による診療を再開しているものの、医科で22ヶ所、歯科で39ヶ所、計61の医療機関は再開に至っていない。今般の補正予算で増額計上した被災地医療確保対策事業費を活用し、仮設診療所の設置と既存施設での診療向上の再開支援を進めることにより、9割程度の医療機関の診療再開を見込んでいる。
【医療局長】
高田、大槌、山田の3病院においては、発災直後から避難所等における救護活動を行なってきたほか、山田病院においては4月から、高田病院は6月から訪問診療を行なっており、大槌病院は4月25日から臨時的に町内のふれあいセンターにおいて外来診療を行ってきた。
現在これらの3病院とも、津波被害の及ばなかった地域に、仮設の診療施設を整備中で、まずは外来診療を中心に運営することとしており、これらの整備により発災前とほぼ同程度の外来診療機能を回復できるものと考えている。
大東病院については、現在も処方中心の外来診療を実施しているが、損傷が少なかった増築部分を9月ごろまでに改修した上で機能を移転し、通常の外来診療を行なっていることとしている。
釜石病院においては、地震により損傷した病棟の改修工事および耐震化工事を行なっているところであり、8月下旬には198床、10月中には48床の計246床の病床が再開する見通しとなっている。
・震災孤児への対応について
【斉藤議員】
第四に、被災地児童等サポート関連事業について質問します。県内の震災孤児の状況と現在の養育状況はどうなっているでしょうか。親族里親をはじめ里親制度の普及を図るべきと考えますがどう対応されているでしょうか。震災孤児を集めた小中一貫校の構想は大きな批判の声が出されています。断念・中止すべきではないでしょうか。
「いわて学びの希望基金」も震災孤児等を対象とした給付制の奨学金の創設をめざすものと思いますが、対象と給付額、基金の規模はどう構想されているのでしょうか。
【保健福祉部長】
児童相談所が、市町村および学校等と連携しながら調査した結果、5月26日現在、82人の被災孤児を確認している。また、被災孤児のほとんどが親族の下で養育されており、緊急に保護を要するような状況にはないことを確認している。
里親制度の普及について。被災孤児の養育環境の確保については、親族里親による安定した家庭的な養育環境がもっとも適切であると考えている。このため、被災孤児を養育している方に対して、親族里親制度の理解と周知を図ることが重要であることから、現在、児童相談所職員が個別に訪問し、本人や親族の意向を踏まえて相談対応をする中で、親族里親制度について十分なご理解をいただくよう説明している。
また、被災児童への主な支援制度を周知するリーフレットも親族里親制度について掲載し、市町村はじめ学校や関係機関へも配布し周知に務めている。
【総務部長】
「いわて学びの希望基金」を財源とする事業については、現段階では、津波震災による孤児を対象とした返済を要しない給付型の奨学金事業を想定している。給付水準や具体的な事業の詳細については、今後寄付金の状況を見極めつつ、関係部局において早急に検討を行いたいと考えている。
基金の規模については、幅広く十分な支援が行うことができるよう、多くの方々からの浄財を募りたいと考えているが、あらかじめ一定の規模を想定しているものではない。
【教育長】
震災孤児を集めた小中一貫校の構想について、津波で両親を失われた児童・生徒に対する支援のための方策の1つとして構想したものである。今後、福祉担当部局と連携しながら実態把握を行い、必要かどうかも含め適切に対応していきたい。
・水産業の復興について
【斉藤議員】
第五に、水産業の復興に関わる事業について質問します。788億円余の積極的な補正予算となっていることを評価するものです。
共同利用漁船等復旧支援対策事業費として285億円余の補正です。小型漁船2600隻の整備を図るものですが、この間、各漁協が確保した中古船や修理で活用できる小型船を含めると、どれだけの小型漁船の確保となるでしょうか。小型漁船の修理費補助は盛られないのでしょうか。5トン以上(定置)の漁船の建造は150隻程度、修繕は950隻程度が見込まれていますが、どれだけの復旧見込みとなるでしょうか。9分の2の漁業者負担は重いものがあります。負担総額の見込みはどうなるでしょうか。国に軽減策を求めるとともにさらなる軽減を図るべきではないでしょうか。久慈市のように集落で取り組んでいる定置網と漁船等も支援の対象とすべきと考えますがいかがでしょうか。
養殖用種苗供給事業(4億6181万円余)、水産業経営基盤復旧支援事業費補助(59億3478万円)が養殖事業の支援策として国の第二次補正予算を先取りした形で計上されています。水産養殖施設災害復旧事業費補助(9億6582万円余)を含め、震災前と比べてどれだけの復旧の規模となるのか示していただきたい。
製氷保管施設等早期復旧支援事業費として新規で31億円余が計上されています。民間水産加工事業者に対して公募で機器類の購入等の補助を行うものが6憶円余含まれているようだが、事業の対象と内容を示していただきたい。
漁場のガレキの調査と撤去の取り組みはどうなっているでしょうか。
【農林水産部長】
共同利用漁船等復旧支援対策事業費では、平成23年4月1日以降に、漁協が共同利用のため購入した小型の中古船と修理して活用する補修船が対象となり、これらを950隻程度と見込み、新たに作る5トン以下の小型船約2600隻と合わせて3550隻の小型船を確保しようとするものである。また、定置船等5トン以上の漁船建造・修繕は合わせて150隻程度と見込んでおり、登録漁船数の約3割程度を確保しようとするものである。この事業において、国および県の補助3分の2のほか、県は9分の1の補助かさ上げをすることとしており、国および県の補助を除く補助残は81億4千万円余となる。
漁協等の負担軽減については、国の二次補正で示される支援制度において、できる限り負担軽減が図られるよう引き続き国に要望していく。また、集落で取り組む定置網や漁船等については、所属する漁協が一括取得するものを利活用することは可能だが、あらかじめ地域において合意形成しながら、制度の活用を図る必要があると考えている。
養殖漁業についてだが、今般の津波災害により県内養殖施設の約26000台ほぼ全てが被災している。今回の補正予算においては、短期間で魚価収入につながるワカメ・昆布養殖施設を中心に約4割の復旧を図ろうとするものである。
製氷保管施設等早期復旧支援事業費のうち、水産加工業者生産回復支援事業については、被災した水産加工業者が行う冷凍・冷蔵機器や加工機器など機器類の購入・設置・賃借料などに対して、補助対象の上限1000万円で補助しようとするものである。
漁場のがれき調査と撤去の取り組みについては、今月から開始することとしているがれきの堆積量等の調査結果に基づき、撤去作業を早急に実施することとしており、本年度末を目処に撤去を進めていく。
・仮設住宅団地内への付属施設の整備について
【斉藤議員】
第六に、仮設住宅団地内に集会所の付属施設として、ベンチ、プランター、遊具などを整備する応急仮設住宅団地内環境整備事業費(1億8714万円)が計上されています。どれだけの仮設住宅に整備される予定か示していただきたい。仮設入居者の孤立化・孤独化を防ぎ、地域の復興めざす場として、すべての仮設住宅に、集会所もしくは談話室を整備すべきと考えるが現状と今後の見通しを示していただきたい。災害公営住宅整備事業として750戸分、11億1334万円、設計委託料及び地質調査委託料が計上されています。どの市町村に、いつまでに整備する計画か示されたい。
【県土整備部長】
現在293団地あるが、そこに設置するベンチ、プランター、遊具については、団地内の空きスペースを活用して50団地程度で設置することとしている。スペースが狭い約100団地程度でもベンチやプランターをできる限り設置することで、今後市町村と協議していく。
また、おおむね50戸以上の団地内に集会場を、小規模な団地に談話室を設置することにしている。これまで、完成した団地において順次設置を行なっており、今後完成するものも含め、集会場40ヶ所、談話室は110ヶ所程度設置する予定である。
災害公営住宅については、第一弾として被災者の多い陸前高田市など6市町を中心に750戸の県営住宅を建設する計画としており、今後用地を選定して設計に着手し、早い団地では来年度内の完成を目指す。
・消防賞じゅつ金、警察賞じゅつ金について
【斉藤議員】
第七に、消防賞じゅつ金(31億円余)、警察賞じゅつ金(6.6億円余)が計上されています。大震災の救助等で殉職された消防職員、消防団員、警察官に対する表彰となるものと思いますが、対象となる人員、1人当たりの額はどうなるのでしょうか。国、市町村からの支出含めて示していただきたい。
【総務部長】
この度の震災において犠牲になった消防職員は、現在のところ死亡・行方不明あわせて8名、消防団員は死亡・行方不明あわせて116名となっている。
このうち、賞じゅつ金の支給対象となるためには、公務災害の認定が必要であるが、現在各市町村において認定手続きを進めている段階であり、支給対象者数は確定していない。
支給額は功労の程度により定められるものであり、一人あたり490万円から3000万円の範囲となっている。なお、国および市町村においても、ほぼ同様の基準が設けられており、一人あたり支給額は、あわせてみるとこの約3倍となる。
【警察本部長】
3月11日の津波襲来による殉職もしくは行方不明となっている本県警察職員は、合計11名である。殉職9名、行方不明2名となっている。いずれの職員も、生命の危険が予断される状況下にもかかわらず、それをかえりみることなく地域住民の避難誘導もしくは救助活動の任務にあたった結果、その職に殉じたものであり、この11名に対する殉職者特別賞じゅつ金として計上したものである。
授与にあたっては、今後被災職員の所属する警察署長からの上申により、警察本部においてその功労等の審査を行い、その結果に基づき一人あたり6000万円の範囲内で授与される。
なお、国においては、第一次補正予算において、殉職者特別賞じゅつ金として1名あたり3000万円が予算措置されていると聞いているが、国の賞じゅつ金にあっても、被災職員の所属する警察署長からの上申により警察本部の審査を経て国に上申し、国の審査結果に基づき授与されるものである。
・がれきの処理状況について
【斉藤議員】
次に、議案第4号、災害廃棄物処理の受託に関する専決処分に関わって質問します。
ガレキの処理状況はどうなっているでしょうか。一時保管、分別、中間処理の状況を示していただきたい。今後の見通しと県内業者への発注状況はどうなっているでしょうか。
【環境生活部長】
岩泉以北については、おおむね撤去が完了した市町村があるなど、一定程度進捗しているが、宮古市以南においては、大半の市町村が完了予定時期を年度内としているところである。分別処理については、一部行われているが、これから本格的に取り組むという状況である。
今後の見通しは、8月中を目処に、県全体の廃棄物処理計画を策定し、3ないし5年以内で処理が完了するよう市町村と一体となって取り組むこととしている。
県内業者への発注状況は、県が受託している宮古市の災害廃棄物の撤去については、地元業者および県内業者に発注している。また、県が同じく受託している市町村の災害廃棄物の処理についても、一部発注手続きを進めているが、可能な限り地元業者および県内業者を活用していく考えである。
・復興基本計画(案)について
【斉藤議員】
議案第五号は、復興局を設置しようとする条例改正であります。
昨日は東日本大震災津波復興委員会が開催され、復興基本計画(案)が検討されました。知事に質問します。復興を進めるにあたって、「被災者が再出発できる生活基盤を回復すること」「住民合意を尊重し、『上からの押し付け』を行わないこと」を二つの原則として明記すべきと考えますがいかがでしょうか。復興基本計画案では、町づくりのグランドデザインとしてモデルが示されていますが、この押し付けとならないようにすべきです。あくまでも住民の知恵と合意を基にそれぞれの地域・市町村で町づくりを進めるべきではないでしょうか。また、町づくりに当たっては、海岸線を走る国道45号線とJRの路線の変更とかさ上げこそ重要な課題だと考えますがいかがでしょうか。商店街も住宅と離れたものではなく検討すべきではないでしょうか。
基本計画(案)では、復興の主体を「県民をはじめ、各分野や地域等の関係団体、企業、NPO、行政など、地域社会のあらゆる構成主体が連携して」としています。復興の主体は、あくまで主権者である地域住民であることを明記し、あらゆる構成団体との連携を図るとすべきではないでしょうか。
【達増知事】
復興の進め方についてだが、被災地については、まずは被災者の目線に立った生活再建支援を進めることが重要であり、その上で復旧から復興へと未来を見据えた取り組みを着実に進めていくことが必要と考えている。
こうした考え方に基づき、議員ご提言の2つの原則については、現在策定中の復興基本計画案においても、その役割としてそれぞれ、@被災者に寄り添い一人一人の安全を確保し、その暮らしの再建となりわいの再生を支援することA被災市町村が策定する復興計画等の指針となり、その自主的な復興を支援すること―という表現で明記されている。
また、復興に向けたまちづくりはもとより、各市町村が主体となり、地域住民との議論等を踏まえて進めていくものであり、県の復興基本計画案でモデルとして示す復興パターン等も十分に活用していただきたいと考えている。
被災地におけるまちづくりだが、まず海岸線を走る国道45号とJRの路線の変更と嵩上げについては、津波対策の基本的考え方として、海岸保全施設とまちづくりソフト対策を適切に組み合わせた「多重防災型」のまちづくりを基本としている。この考え方に基づき、鉄道と道路について新たな市街地と一体的に計画し、必要に応じてルート変更を行うほか、嵩上げ等により第二第三選定として防災機能を付加することを検討することとしている。
商店街と住宅の位置関係については、復興・まちづくりの重要な視点の1つに「コンパクトな都市形成」を掲げており、この視点に基づき効率的な市街地整備を図るとともに、暮らしやすさや街の賑わいを作り出すため、居住地と商業業務地を近接または一体化するよう配慮することとしている。
【政策地域部長】
復興の主体についてだが、いわて県民計画においては、計画の推進にあたり、県民一人一人の力、そして企業やNPO、市町村や県など地域社会のあらゆる力を結集しながら岩手の未来を一緒に作っていくという考え方を基本としている。したがい、今回の復興基本計画案においても、同様の考え方に立脚し、そのような表現をしている。
この計画案においては、復興のめざす姿として、「命を守り、海と大地とともに生きる、ふるさと岩手、三陸の創造」を掲げているが、その前提となる考え方として、なりわいと暮らしを早急に再生し、誰もが再び人間らしい日々の生活を取り戻すことができる、被災者一人一人に寄り添う人間本位の復興を実現するという記述もしており、議員のご提言についてもその趣旨を反映しているのではないかと考えている。
・二重債務の解消について
【斉藤議員】
産業復興の「天王山」と県が位置付ける二重債務の解消問題は、わが党も国会で独自の提案をしています。日弁連や全銀協も二重債務解消の提言をしています。検討の状況と実現の見通しをどう受け止めているでしょうか。
【商工労働観光部長】
5月10日に開催された、国の東日本大震災復興構想会議において、知事から、津波被害にかかる二重債務解消に向けた支援策として、国・県・金融機関などが出資するファンドによる企業の既存債務の買い取り等の支援制度の創設について提言した。
さらに5月21日、29日および6月4日の復興構想会議においても、当該事項の早期解消に向けた積極的な支援策について、重ねて提言している。
二重債務の解消に向けた支援策については、現在まで国から具体的な方策が示されていないものの、本県提案の趣旨については一定の理解が得られたものと聞いている。
≪再質問≫
・復興基本計画案について
【斉藤議員】
復興局長に復興の基本方針案についてお聞きしたい。
実は、公共施設、市町村庁舎や病院等の地域の拠点となる公共公益施設をコンパクトなまちづくりの核として適正な配置にすると。ところが、具体的な方針では、仮設診療所止まりで、病院の再建というのが明記されていない。なぜ核になるべき病院の再建というのがここでは明記されていないのか。
それと、全体として生活の再建よりもハード重視になっているのではないか。防潮堤の基準が高すぎるのではないか。そして国道やJRの復旧より三陸縦貫道などの高規格道路優先である。復興といったらやはり地元を走る国道・JRが優先だと思うがいかがか。
【上野副知事・復興局長】
公共施設の配置についての議論はいろいろあるが、いろんな公共施設の配置については、現在県が一つのモデルとして提案しているいくつかのパターンがあるが、そうしたものの中で、地域の住民の方々、特に避難弱者と言われるような方々の命をきちんと守れるように、他方でその町が将来的に復興に向けてきちんと歩み出せるような配置について、地域の方々が中心となって議論していただきたいと思っている。そうした意味では、いろんな議論が各地域でなされると思っているが、我々の示している3つの大きなパターンについても是非活用していただければと思っている。
ハードに偏っているのではないかというご指摘だが、ハードの配置について、高規格道路や鉄道、防潮堤などについて、特に防潮堤についてはやはり一定の機能が必要だろうと思っている。ただ、これは津波防災専門委員会の方でも議論があり、その中でも報告があったように、こうしたハードの整備だけで県民の方々の命をきちんと守れるという風には考えておらず、そうしたものの一定の整備は必要だが、あわせて議員ご指摘のようなソフトについてもこれからいろいろ工夫していく必要もあるし、これまでの経験・教訓も踏まえて、ソフトとハードの合わせたところの多重型の防災まちづくりの構想というものを基本計画の中で打ち出しているつもりであるので、ぜひこうした点も各地域でたたき台にしていただき、活用していただければと思っている。