2011年7月11日 商工文教委員会
震災に関わる雇用・中小企業対策に関する質疑(大要)
・震災に関わる雇用情勢・雇用対策について
【斉藤議員】
7月1日に大船渡のハローワークに行ってきた。4000人がこの期間に解雇されたと。4000人というのは、あの管内の雇用保険加入者はおそらく12000人である。3分の1が解雇された。大船渡管内は一番深刻である。
今回の震災に関わって、どれだけの解雇者・休業者が出ているのか。内陸ではどうなのか。
【雇用対策課長】
手元にある離職票・休業票の交付件数で述べると、3月12日〜6月26日現在の数字では、県全体で27119件、うち沿岸地域(釜石、宮古、大船渡、久慈)のハローワークでは12088件となっている。
【斉藤委員】
本当に深刻な事態になっている。
先ほどの説明で、震災等で求職者が13000人増加したと。13000人雇用を確保すると。これは少し違うと思う。そもそも、震災前も岩手の雇用状況というのは深刻だった。たしかに0.5倍まで回復したが、それでも全国で下から3番目ぐらいの水準である。その前が0.3倍に至らないという状況もあったので、部分的に改善したとはいっても、全国的にはもっとも雇用情勢が厳しい県で、震災で13000人求職者が増えたから、これに対応するということだけでは構えが小さいのではないか。それ自身の緊急性・重要性は分かるが、それ以前の岩手の雇用情勢を考えたら、当面13000人の対応ということではないのではないか。
【雇用対策課長】
たしかに岩手県においては、失業者等たくさんおられるわけだが、我々とすれば、まず当面の対策として、震災で膨れ上がった離職者の方に何とか雇用の場を提供しようというのがまず当面の目標であり、ここに重点をおいて取り組みを進めていきたい。
【斉藤委員】
構えが小さすぎると指摘しておきたい。しかし13000人の雇用確保というのも並々ならぬ課題である。具体的に13000人をどういう形で確保するのか、具体論を示していただきたい。
【雇用対策課長】
4月と6月の補正予算で、総計で10000人の雇用創出をめざすということでお願いしている。当初予算計上分を合わせると約14000人分となる。
震災分について申し上げると、10000人のうち、県が1500人で残りの8500人分が市町村に対する基金の補助事業で進めるということで進めたい。
【斉藤委員】
先ほどの報告だと、3000人の雇用創出だと。4ヶ月経って3000人というのは努力の表れではあるが、今の被災地域の状況から見たらこのスピードを上げなければならない。せっかく4月・6月で118億円の基金事業で特別の補正予算も組んだ。
今県で1500人、市町村で8500人のうちで、3000人というのはどういう内訳になるのか。
【雇用対策課長】
7月4日現在の雇用創出数で述べると、全体で3055人、県が342人、市町村が2713人である。
【斉藤委員】
県の分が1500人の目標で342人というのは低すぎるのではないか。被災市町村が人手不足で具体化が遅れているというのは分かるが、県が342人というのは低すぎないか。
【雇用対策課長】
県分の342人については、沿岸部を中心にした臨時職員の雇用である。これについてまず緊急的に手を付けて雇用を始めているという状況である。
残りの分については、県からの民間委託分である。これについては4月の補正で20億円を予算措置したところであり、現在20億円の枠の中で約15億円の事業が具体的に決定して、24事業が始まりつつある。
今後、雇用保険の給付が切れる秋口にかけて、具体的な求人が始まるように、契約事務を進めている。
【斉藤委員】
ぜひスピードアップしていただきたい。解雇者というのは雇用保険の数だけである。しかし大船渡管内でも就業者数はその倍以上はいる。雇用保険に加入していない人たちも失業している。だから、雇用保険が切れる辺りに焦点というのも1つだが、それはあくまでも1つの課題であり、膨大な解雇者が出ている中で、スピードアップしてやっていただきたい。そうしないと、被災地で頑張ろうといっても、いま仕事がなかったら頑張れない。
例えば、盛岡市内にもう1300件ぐらい転入している。2千数百人が盛岡市内で避難生活をしている。せっかく被災地で頑張って再建に取り組みたいという人たちの支援は時間との勝負である。仕事があるからこそ被災地で残って頑張れる。半年以上放置されたらいけないと思う。ましてや仮設住宅に入って自立を求められているので。そういう意味では、雇用保険が切れる秋口というのは1つだが、最大限スピードを上げてやってほしい。
市町村は8500人の目標に対して2700人余、市町村も本当に少ない人数で知恵を出すのが大変だと。そういう意味では、県から、民間の人材も活用して、いろんな現場に求められている事業というのはたくさんある。
例えば仮設住宅で、いま約7200戸の仮設に入っている。12000戸ぐらいは最終的には入ると思うが、そこに集会室・談話室が整備されたところが約3分の1強ある。ところが、集会室・談話室には鍵がかかっていると。管理する人がいない。コミュニティが確立していないということもある。本来ふれあいの場で孤立化・孤独化を防ぐために措置したものが、そういう体制がなく鍵がかかっている。本当に残念な事態があるので、そういう仮設住宅を訪問して、それぞれのコミュニティを確立する援助をするだとか、切実に出されているのは、仮設に対する通院バスや通園バス、買い物バスである。こういうものもコミュニティバスのような形で事業化することも可能だと思うので、本当に今求められている課題は多い。そういう点に機敏に対応して雇用に結び付け、地元の企業を応援するような施策をすべきではないか。
【雇用対策課長】
仮設住宅については、今後復興のステージに合わせて住民の方々の雇用ができるようなサービスをしていきたい。
【斉藤委員】
いま被災自治体に全国から職員が派遣されている。例えば、陸前高田市は68名の職員がなくなった。非正規を含めると105人になる。応援が入っているのは五十数人である。震災で今までの2倍3倍仕事が増えているときに、亡くなった数の分も派遣されていない。思い切って臨時職員を地元から採用するということも、この緊急雇用事業で必要ではないか。せっかくこういう基金事業があるので、ぜひ対応できるように県として援助していただきたい。
・中小企業対策について
【斉藤委員】
先ほど被災地の倒産・休業の実態が正確に分からないと。正確に分からなくとも4ヶ月経っているので。現段階でどのように把握しているのか。
【商工企画室企画課長】
いろんな機関で企業訪問等のデータを持ち寄っているというところである。その1つとして、東京商工リサーチというところもあるが、そちらの調査では、沿岸地区の主要企業数、これは約2800社程度と把握している。うち津波の被災企業というのが1860社程度で全体の67%程度。うち全壊となった企業は約750社で約27%。
主要企業相対の売上高は約5500億円程度で、被災企業の売り上げ相対というのは約3900億円で沿岸地区全体の7割程度と把握している。さらに、全壊となった750社の売り上げはこのうち2000億円程度で全体の35%と把握している。
これについても、データは集計中であるので、整理をして個々の企業に今後調査に入るという段階である。
【経営支援課総括課長】
倒産件数ということだが、民間の調査機関のデータでは、1月から6月までは29件、負債総額で85億円余、6月だけでは5件、負債総額は29億円余で全て震災関係の影響と聞いている。
【斉藤委員】
主要企業の概要は答弁された通りだと思う。
すでに再開したという企業数を把握しているか。
【企画課長】
正式なデータは持ちあわせていない。
【斉藤委員】
今回のような大災害のときには、進行過程なので、概括でも、こういう災害の中でこれだけスタートしているということが全体を励ます。新聞報道にも出ている。まだ一部だとは思うが、そういうところをつかんで全体を励ましながらやっていかなければならない。
それで、被災地域の雇用を確保する上でも、被災を受けた企業の再建というのは決定的に重要だと思う。先ほどの部長の答弁で、「補助金には予算の制約がある。補助金頼みになるのではなく」と。こういう立場ではいけないと思う。大震災・津波の被害を受けたのは自己責任でも何でもない。そして「マイナスのスタートからではなくゼロからのスタート」というのが本当に切実な被災地の声である。再建の土台をつくるというのは政治の責任である。予算が足りなかったら確保する、必要な商売・事業をしてきた全ての企業が再建できるような手助けをするのが政治の責任ではないか。
【商工労働観光部長】
災害が責任であるという点では全く同じであるが、一番肝心な部分の支援というのは、二重ローンの解消である。今の借金というものがあって次に対する事業活動の見通しが立たないというのは大きな点である。この点については、発災当時から一番大きな問題と考えており、ここの解決なくしては次に進めないということで、一番力を入れてきたところである。したがい、国の責任でやらなければならないということで、再三知事からも復興会議で強い提案をしてきたし、二次補正でようやくその見通しが立ってきたと。二重ローンの買い上げというのは、実質的に補助金に相当すると考えていいと思うので、被災企業に対する直接的な補助金というのは、二重ローンの買い上げはそれに相当するものと考えている。ですので、ここがいま議員ご指摘の通り「ゼロからのスタート」というのはまさにそこでなされると思うので力を入れていきたい。
【斉藤委員】
二重ローンの解消が要をなす問題、私もそう思う。そして岩手県が早くに国に提言してきたということもきわめて重要な提案だったと思う。我が党も独自の提案をしている。
まだこの二重ローンの仕組みが定まっていない。政府の案だと、中小企業再生支援協議会を活用すると。これは中小企業再生ファンドの利用ということになるが、これは今まである仕組みである。この活用になると、優秀な企業しか対象にならない。今までもほとんど対象になっていない。この仕組みだったら本当に一部の優良企業しか対象にならないのではないか。やはり被災を受けた企業が立ちあがられるようなものにしないと、一部の企業が債権の買い取りの対象になったが圧倒的にはならないということになる。そこを改善しないといけない。
【企画課長】
7月9日の朝日新聞にも報道されているが、政府の今回の案というのは、まったく新しい機構をつくるというものである。これまでの再生ファンドと言われる部分については、委員ご指摘の通り、だいたい組成額も50億円から60億円が上限である。そして中小機構の出資額も、その2分の1以内ということであり、どちらかというと優良な部門、不良部門があれば不良部門を切り捨てた形で再建できるようなところにだけ支援を行ってきたというのが従来の再生ファンドである。
今回の政府案というのは、まずは中小機構の剰余金約2000億円程度を活用して、被災3県に財源として充てていこうということで、大きく枠組みも違う。また出資割合についても、新聞報道によると、それを8割に引き上げるといった方向である。そして、広く対象については、企業というよりも事業者ということで、個人事業者または農業者等も対象としていきたいということであるので、これは今までの再生ファンドとはまったく違った新たな機構と認識している。
【斉藤委員】
かなり多数の被災事業者が対象になると受け止めて良いか。何か条件はあるのか。
【企画課長】
条件という部分からすると、メイン行がその事業者に対して新規融資を行うことが条件と考えている。
いわゆる超過債務により、新規融資ができないところを超過債務を解消することで新規融資ができるといった条件整備をしていくということであるので、どちらかというと今までも零細で売り上げが伸びてこなかった、そういったことが起因して超過債務に陥っているというところは一方では対象にはならないと考えるが、今回の災害が原因で超過債務に陥った企業については、支援が受けられると考えている。
【斉藤委員】
そこが微妙である。メイン行が新規融資をするところが対象になると。その場合には、商売してちゃんと借金を返せるという計画の提出が前提となってくる。これは災害のときには、銀行任せにしてはいけない。国が基本的には災害で生じた債務については買い上げるとか免除するとか、そういうことまでやらないと、7、8割の企業は対象にならないと思う。もっと改善を求めていくべきである。
よく頑張って5割だったと。その地域の雇用は5割程度しか回復しないということになる。今まで頑張ってきた企業は基本的には再建できる、そういう仕組みに思い切ってしていかないと、そしてその判断は銀行だということではいけない。そういうところの改善も引き続き強く求めていただきたい。
大震災の度に新しい制度をつくっていくというのが大事である。阪神淡路大震災のときには、被災者生活支援法もなかった。それがその後つくられた。今回の東日本大震災はまさに戦後最悪最大、部長が言うように二重ローンの解消が最大のテーマだとするなら、きっちりした制度がこの災害によりつくられたと、そして被災した全ての企業がこれでスタートラインに立てるということになるように、改善を求めていただきたい。
【企画課長】
二重ローン解消に向けた改善についてだが、岩手県の方から機構の立ち上げの準備委員会を先駆けてやっていきたい。その中で、金融機関頼みではなくて、自治体、産業コーディネーター、事業者の事情が分かっている方たち、そういった部分、こういったことで新規融資が可能ではないかと、まさに知恵比べだと思っているが、そういったアイディアを出しながらベースを整えていきたい。
【斉藤委員】
この間、中小企業仮設店舗・工場の整備、新聞報道では、仮設店舗については160社の申請があり1社だけ決まったと。先ほどの課長の話では、641件の希望があり6カ所が基本契約を結んでいるということだったが、報道との違いは何なのか。
【経営支援課総括課長】
641件というのは、全県の数字である。6月に宮古市で契約が結ばれたが、その後、釜石・久慈・野田というところで新たに7月に入ってから契約が結ばれた。
【斉藤委員】
そうすると、641件の希望というのは、申請ではないのか。こういう制度を申請するときには、この用地に仮店舗を設置するという申請書になると思うが、それなりの用地の目途をつけて申請されていると思うがいかがか。
【経営支援課総括課長】
希望というのは、市町村から機構に対する希望ということなので、それを受けて機構で実際に建てられるかどうか調査をして確定していくので、必ずしもそこに建てられるかどうかは調査の結果による。
【斉藤委員】
その641件の中で160社が申請したということか。うち1社しか決まっていないというのが報道だった。今の答弁は、4市町村6カ所が決まったと。市町村の枠は641件あるのだろうが、160社が実際に申請しているのではないか。
【経営支援課総括課長】
160というのは陸前高田市の分だと思う。6月7日現在だが148件ということだったので、おそらく陸前高田だけで160件ということだと思う。
【斉藤委員】
160件申請というのは陸前高田だけではないのではないかと思うが。
市町村の641件の希望というのは、民有地の活用も含めて一定の目途をつけて、ただそれが条件に合うかどうかの審査がされているということではないのか。
【経営支援課総括課長】
市町村から機構に対してエントリーシートを提出するということで、それが641件である。その上で現地調査などを行い、実際にそこに建てられるかどうかということ、その前提にはもちろん利用される、入居する店舗・工場の人たちの希望を聞いてということになる。したがい、必ずしも希望通りにいかないという場合も、用地・施設の関係やインフラの関係であるかもしれないが、いずれ希望を出発点にして調査している。
【斉藤委員】
貸工場も入っているが、内訳は分かるか。
そして641件というのは、それなりに用地の目途もつけていると思うが、それが民有地であったりインフラの整備でこれからということがあるのだと思う。災害時なので、今までの規制の枠の中ではなく、スピード感を持って対応されるべきである。
【経営支援課総括課長】
設置が決まったところだけ報告すると、宮古については、工場・店舗・事務所という用途になっている。野田村については、倉庫。釜石については、店舗。久慈については2カ所あり、事務所・工場、もう1カ所が工場となっている。
【斉藤委員】
中小企業グループへの施設整備補助についてだが、51グループから応募があると。51グループの場合は545億円で、予算はわずか79億円しかない。この点でも、希望があっても何分の1しかできないということになるのではないか。こういう予算こそ大幅増額を求めていくべきだと思う。
それから、この51グループの中に大企業というのは対象になるのか。
【経営支援課総括課長】
対象としては、要件としてサプライチェーンの重要な一翼を担う、あるいは地域への経済・雇用への貢献、あるいはその地域での基幹産業になっているというようなグループを要件にしているので、そのグループの形成の中には、企業の規模は問わない。大企業も含まれる。
【斉藤委員】
51グループの中で大企業も含まれて、中小企業がそれから出されてしまうと。中小企業優先で対応すべきではないか。
大企業は申請の中でどのぐらい占めているか。
【経営支援課総括課長】
大企業の数というのは把握していないが数社含まれている。
業種で申し上げると、製造業33件、小売業6件、サービス業5件、旅館業2件、その他5件である。
【斉藤委員】
県単の中小企業被災資産修繕費補助について、これはどれだけの市町村で具体化されて実績はどうなっているか。
被災工場再建支援事業費補助はどれだけの市町村で具体化され、どのような実績か。遅れているとすれば、どのように活かされるようにしていくのか。
【経営支援課総括課長】
12市町村中、現在大船渡市、山田町、岩泉町で申請の受付を始めている。
【企業立地推進課総括課長】
被災工場再建支援事業費補助だが、市町村によりほぼ制定したというところが3つある。その他、すべての市町村において、案件が出ればするやるという体制になっている。
具体的な案件については、現在1件出そうだという状況だが、その他にもさまざま状況を見ながら検討しているというところが多い。
・大震災の観光への影響、世界遺産を活用した観光対策について
【斉藤委員】
平泉の世界遺産が登録をされて、大変困難な中で、しかし一筋の光明が見えてきたという感じがする。観光業に対する大震災、原発の事故を含めた影響はどうなっているのか。
そして平泉の世界遺産を活用した観光対策はどうなっているか。
【観光課総括課長】
岩手県旅館ホテル生活衛生同業組合からの聞き取りでは、発災直後から4月中旬まで約1ヶ月間の宿泊キャンセルは、判明したものだけで約24万人。これは平成22年の宿泊客の1ヶ月分にほぼ相当するもの。その後、東北本線沿いの宿泊施設を中心に、復旧・復興関係者による需要の増加が見られる。
また、GW期間中の県内主要観光地における観光客の入り込みも大きく落ち込んでいる状況だが、最近は宮城県からの修学旅行客が来ていただいたり、あるいは平泉の世界遺産登録にともなう観光客の増加の傾向も徐々に出てきている。
平泉の世界遺産登録と来年予定しているデスティネーションキャンペーン、これは相乗効果を生かして、本県への誘客を図っていきたい。これを県内各地に波及させる取り組みを進めていきたい。具体的には、まず被災した地域の観光施設の復旧、被災した観光資源の立て直しについては、修繕補助をはじめ各種の運営資金の融資などの措置を講じている。
観光客を全県に波及という意味では、平泉を最大限活用していきたいと思っている。今まではどちらかといえば、平泉から宮城に向かうルートというある程度定番化されたものがあるが、北に向かってくるルートがまだ弱いところがある。そういう意味では、花巻・遠野・盛岡・八幡平といった北に向かうルートというものを何とか強化して、そしてそこからさらに沿岸部に向かうルートに結び付けていきたい。