2011年7月11日 商工文教委員会
教育分野での震災に関わる対応についての質疑(大要)


・被災した学校施設への対応について

【斉藤議員】
 特別委員会の視察で大船渡市、陸前高田市に行った。学校関係者からは、県立高田高校については、「新入生が地元で卒業できるように、3年以内で整備してほしい」と述べた。これは切実な要望で、私もまったくその通りだと思う。さまざまな要件はあるが、県の教育委員会として、3年以内に県立高校の整備を目指すという方向で関係市町村と協議すべきではないか。
 もう1つは、県内24校で学校施設を使えずに、他施設・他の学校で2校3校が一緒に、体育館を間仕切りして授業しているという状況である。大槌では、仮設の学校を二転三転しながら整備するということもあったが、学校を使えない24校について、仮設校舎が何校予定されているのか。その他はいつまでにどう改善されようとしているか。

【高校改革課長】
 高田高校については、今回の大震災・津波でほぼ全施設が使えない状態になっており、全面改築が必要となっている。そういうことでは、現在市で復興計画等のビジョンを検討中と聞いており、その中で、新しいまちづくり、例えば教育なり文教エリアをどこにするかといったような検討がされていると聞いている。陸前高田市の計画の中での非常に大きな柱であり、十分に慎重な検討が行われていると考えている。我々として、整備を考えるにあたっては、市の考えを尊重し相談しながら整備を進めていきたい。
 3年以内というご指摘があったが、これはこれから用地等についての話し合いをさせていただくことになろうかと思うが、土地用地性の関係、権利関係等々あると、それにより整備についてはどのぐらいかかるかは変動してくると考える。我々としても、できるだけ早く整備させていただきたい。今後とも陸前高田市と連携しながら検討を進めていきたい。
【学校施設課長】
 仮設校舎についてだが、我々に話がきているのは、2市町である。大槌町では5校を対象に応急仮設校舎を整備したいという話で、釜石市では4校について仮設校舎について整備したいということだった。
 整備時期の関係等もあり、早急に整備したいということもあり、文科省に事前着工届を出している。
 本復旧の関係では、各市町村で検討していると理解しており、用地の関係やどういう形でやるのがいいのかどうか、まちづくりの関係の中での検討も必要だろうと考えているが、いずれにしても、環境整備という意味では早く進める必要もあるので、必要に応じて国とも相談しながら進めていきたい。

【斉藤委員】
 高田高校については、スクールバスが大型8台、マイクロ1台で毎日、帰りはクラブ活動の関係で時間差でやっていると。これは本当に3年も4年も続くということになったら、大変なことである。いろんな諸条件があるので、県教委の思惑だけではもちろんいかないのだが、ぜひできるだけ早く、地元で学べるように、できれば今年入った新入生が地元で卒業できるような努力をやっていただきたい。
 陸前高田市長からも強く要望されたのは、津波の被害なので基本的には現在地につくれないと。そうすると、用地確保の補助がないと。いわば今の災害復旧というのは、現状復旧なので同じ場所に復旧することが前提で建物の補助はあると。新しい用地のときには、土地確保についても建物についても補助の規定がないと。これは県立病院の場合もそうである。仮設の場合もそうなのか。これは早く津波災害についての特例として、新しい用地を確保して新規に建設するときにも、きちんと今まで以上の補助を実現しなければいけないと思うがどうか。

【学校施設課長】
 委員ご指摘の通り、本復旧にともなう用地の購入に対しては国庫補助の対象になっていない。仮設校舎については、用地購入費は対象になっていないが、リース料という形で国庫補助の対象になっている。この件については、用地費を国庫補助の対象とするよう国に対しても機会あるごとに要望させていただいている。

【斉藤委員】
 こういうのは津波被害で当たり前で、その他の公共施設や庁舎もそうである。ぜひこういうものは民主党さんにすぐやっていただきたい。


・震災遺児・震災孤児への対応について

【斉藤委員】
 学校の環境改善にもかかわるのだが、震災遺児が382人、震災孤児が88人と。この中には就学前の子どもも入っていると思うが、その他に家族や友人など多くの人を失った子どもたちが多い。心のケアは非常に大切だと思う。特に震災遺児・震災孤児についてどういう対応がされているか。
 それから、今回の津波で学校の再開が遅れた。夏休みを短くするという話もある。この状況はどうなっているか。もしこの猛暑の中で、夏休みが短くなるということになれば大変なことだと思う。こういうときには、被災地の学校には思い切ってエアコンを整備するぐらいの措置が必要ではないか。本当に子どもたちを思いやる具体的な措置が必要ではないか。

【義務教育課長】
 震災遺児・震災孤児の状況だが、保健福祉部児童家庭課と一緒に調査を進めながら、6月24日時点で、被災孤児の小学生40名、中学生が29名、高校生が12名、被災遺児は小学生178名、中学生109名、高校生32名である。それぞれ孤児については、いずれも親戚や祖父母、叔父叔母などに身を寄せており、養護施設が1名、どの子どもも親権者や養育の下でスタートしている。
【高橋次長】
 今回の震災で遺児や孤児になられた子どもがたくさんいるということで、子どもたちにどういうケアをしていくかということはきわめて大事である。内容として、1つには経済的な支援をどうするかとか心のケアの問題もある。それから、法的な後見人をどうするかといった面での支援も重要で、関係部局と連携しながらさまざまな面から支援していくといことが大事だと考えている。
 経済的な支援でいくと、先般の臨時議会で「岩手の子ども希望基金」の設置について議決いただいたので、その基金を設置しているということである。具体的に基金を活用して、まずもって優先的に孤児に対して息の長い支援をしていくと。これは小学校から可能であれば大学を卒業するまで支援ができないかということで、現在具体的な内容を検討している。できれば9月定例会に関係予算を提案させていただきたい。同等に、むしろ遺児の方々も経済的な面で相当大変だと。孤児の場合にはいろんな支援制度があるが、遺児は…ということもあり、基金の協力いただける額がどれだけなのかということもあるが、その辺の状況等を含めて遺児に対する支援についても検討していきたい。
 心の問題や法的な面については、専門家を含めて個別具体的な相談体制を敷いていきたい。
 学校のエアコン等の整備についてだが、学校の方からは「せめて扇風機でも」というような要望も強いということで、エアコンの整備については今のこういう状況でなかなか備品の調達が難しいということや、財政的な面もある。委員からの貴重なご意見としてお伺いしておきたい。

【斉藤委員】
 県には義援金とは別に寄付金などもあるので、被災地の学校にエアコンをつけるのは誰も反対しないと思う。そういうことも含めて。そして夏休み期間が短くなって、この猛暑の中で本当に体育館を仕切りながら勉強する悪条件の中で、せめてそういう手立てだけは考えてやっていただきたい。


・放射能汚染問題について

【斉藤委員】
 実は文科省の基準がダブルスタンダードである。20ミリシーベルトが基準だといって、1ミリシーベルト以内を目指すと。子どもたちには1ミリシーベルト以内を目指すのは当たり前である。1ミリシーベルト以内ということになると、毎時で0.19マイクロシーベルトである。そうすると、奥州も一関も全部オーバーしてしまう。一関の運動公園は0.47になり、奥州は水沢体育館の雨どいのところは1.8である。前沢保育所の園舎の軒下は1.79、衣川中学校体育館軒下は2.41、南股地区センター施設の軒下は3.06である。そうすると1ミリシーベルトを超えてしまう。かなりシビアな状況だと思う。一関は繰り返しやっており、7月5日に行った放射線量調査では、千厩中学校は地表から50センチで0.40、そうすると完全に1ミリシーベルトを超えてしまう。そういう意味では、父母の方々が心配するのは当たり前である。子どもたちの安全、父母の安心感を確立するためには、県教委が責任を持って、全校の校庭やプールを調査しなければいけない。6つぐらいではいけない。
 奥州や一関や北上、盛岡は10キロメッシュで全部やると言っているが、こういう時期に早く手を打つということが大事である。新たな爆発でもなければ放射線量というのは基本的には高くならないが、福島原発がどうなっているか分からない。一度放出したものが雨により落ちてくる、そのまま放置されているということになっているので、ぜひこういう一関や奥州の独自の調査結果を見たら、県教委が責任をもって調査して実態を明らかにし、安全だというところは安全という風にやらないと、心配は解消されないと思うがいかがか。

【スポーツ健康課総括課長】
 一番初めに、事故収束後の望ましい放射線量ということで、文科省では年間1〜20ミリシーベルトというものを出した。その後、それでは高すぎるのではないかということで、文科省は目指すところを年間1ミリシーベルト以下にしたいということで、もう一度新しい数字を出してきている。このことが説明が足りていない、ご理解いただけていないところもあるが、20ミリシーベルトから1ミリシーベルトの間で抑えようと。さらには学校では1ミリシーベルトに抑えようということである。
 そして、毎時0.19マイクロシーベルトの件だが、これについては計算の方法が「8時間グラウンドに立っていて、残りの16時間を室内にいる」とし、室内を外の0.4倍の放射線量と換算し、非常に高い見積もりで出てきている数値である。そういうこともあり、0.1台や0.2台の数値が出てきて非常に心配ではある。ただ、そのところについても、目指すところには届いていないが頑張っていかなければ数値ではある。
 全校での調査ということだが、現在でも実は環境生活部のほうで補正をかけており、測定器具の購入についてということで測っているが、なかなか物品が調達できないというところであり、したがい、できるだけ多くの学校を測定地としながら、市町村と連携しながらやっていくのが当面できる対策だと考えている。
 軒下については、どうしても放射線量が高くなるというような傾向がある。国の方で測定する場合には、グラウンドの四隅・中央の平均をとるという形で数値を出すので、その辺をこちらでも勘案して測定しているところである。いずれにしても、測定地点については、できるだけ多くということで、結果についてもできるだけ早く公表していきたい。

【斉藤委員】
 教育長にお聞きしたい。3.8マイクロシーベルトというのは、20ミリシーベルトの基準で出たものである。この基準を設定したときに、小佐野さんという参与が、涙を流して「専門家としてこんなことは許されない。子どもたちに20ミリシーベルトなど絶対に許されない」と辞任した。それから1ミリシーベルトを目指すということになった。しかし基準は3.8で20ミリシーベルトの基準でやっている。単純にいくと、1ミリシーベルトを目指すというのだったら、せめて0.19マイクロシーベルトでやらなければいけない。そういう基準を文科省が決めないから、千葉県野田市は独自に決めた。1ミリシーベルト以下、毎時0.19マイクロシーベルトを目指すと。文科省は全くそれでは無責任。20ミリシーベルト以内という基準を子どもたちに押し付けるべきではない。1ミリシーベルト以下ということであれば、奥州にしても一関にしても超えるわけである。大幅に。そういう意味では、まったく説得力のない文科省のダブルスタンダードでやるのではなく、1ミリシーベルトを目指すというのであれば、そこで岩手県は必要な調査をすべきではないか。
 校庭で1マイクロシーベルトだったら土壌を入れ替えだと。これは対象になるところが出てくるかもしれない。そういうことも含めて、徹底して、これは早い時期の調査が必要である。基本的にはどんどん半減期があるから減っていくはずである。だから今が一番大事である。遅まきながら6カ所はやると。しかし遅まきで6カ所程度では県教委は本気かと言われてしまう。本当に子どもの安全にかかわる、父母の安心感に関わる大事な問題で、教育委員会の姿勢が問われていると思うが、徹底した調査と安全対策をとるべきではないか。

【教育長】
 いろいろ国において、いろんな経緯があったことは承知している。一方で、放射線の許容範囲についてはいろんな専門家の意見も出ている。したがい、県レベルでこのレベルが危険か、危険じゃないかと独自に判断してやるというのは、県レベルの知見では難しいと思う。したがい、文科省に対して、県として住民の方々に安心してもらえるような基準を示すこと、国の責任において、原子力行政は国の専管事項として国が責任を負っている事項なので、国民・県民が安心感を持てるような調査を責任を持って行うこと等について強く申し入れしている。
 また、現状においては、やはり極力市町村と一緒になりながらいろんな調査を行い、ただ残念ながら現状では機器などの制約がある。公的な調査を行える機関も福島の調査にとられなかなかないということもあるが、そういった中で市町村と一緒になりながら、県の他部局とも一緒に、どこまでやれる範囲で調査を行ってそのデータを速やかに県民に公表させていただき、それについて正しい情報をもっていただくということに、まずは全力をあげていきたい。

【斉藤委員】
 私が言っているのは、文科省はダブルスタンダードで無責任だと。しかし1ミリシーベルトを目指すと言っている。だから岩手県は1ミリシーベルトを目指して、それを超えるようなデータが出ているので、だったら徹底した調査をするのが当たり前ではないかと。1ミリシーベルトを超えるところが奥州や一関など出ている。そういう状況の中では、全県的に県教委が責任を持って早く調査して公表すべきではないか。
 最終的には国の責任だが、国がさっぱりやる気がない。そして原発の対応でさえ後手後手で、福島自身でさえ避難指示も曖昧である。そんな国の対応を待っていたら、岩手の子どもたちの安全を守れないし、一番守るべきは子どもである。すでに牧草地が基準値を超えて出ているのだから、県南・沿岸・滝沢まで。そういう中で、何よりも守るべき子どもの安全ということで、学校の放射線量の測定というのは県教委が責任を持ってやるべきではないか。

【教育長】
 やはり極力、できる限り市町村や県の関係部局と一緒になり、より多数のところで調査し、その結果を速やかに公表させていただくことが非常に重要だろうと思っており、努力させていただきたい。