2011年7月12日 災害対策特別委員会
県の復興基本計画案についての質疑(大要)


・県の復興計画案―被災者の生活再建を最優先に

【斉藤議員】
 まず、復興に向けた3つの原則ということで、安全の確保、暮らしの再建、生業の再生と。3つそれぞれは間違っていないと思う。ただ、安全を確保した上で、暮らしを再建し生業を再生すると。全体として、この構想は安全から入っている。私はそうではないと思う。やはり、被災者の生活再建を緊急最大の目的にして取り組まなかったら、安全な町をつくったが住む人がいなくなったということがあり得る。そこで生活が確保できない、仕事が確保できなかったら、この半年から1年の間に住む人がいなくなってしまう。何よりも、暮らしの再建、被災者の生活再建というのを最大の課題にして生業の再生、そしてそれと合わせて安全な町づくりを進めるべきではないか。

【平井復興局副局長】
 安全と暮らしの再建の兼ね合いだが、やはり復興計画は8年におよぶ計画期間を全体のコンセプトであるので、多数の死者を出した今回の災害の結果を踏まえれば、やはり安全な暮らし、安全な地域を再建するということを第一に置かざるをえないという風な考えである。その上で、生業の再生ということも非常に重要と考えている。これは、地域づくりが終わってから生業という意味ではなく、当面の生業の場を確保しながら地域づくりの計画を立てて実行していくという意味である。そのために、仮設の店舗や仮設商店街というようなコンセプトも具体的な施策の中で出している。

【斉藤委員】
 3つの原則は1つ1つは間違っていないと思う。ただ復興計画案は、安全が第一と。安全が第一というと、順番が違ってくるのではないかと。被災者の生活再建をやはり第一に据えて、被災者が故郷で復興の主体になるということが復興基本計画ではきちんと位置づけられるべきだと。
 安全な町ということで聞きたいのだが、中央防災会議は、減災の考え方を打ち出している。多重防災型の安全対策というのは、だいたい同じことを計画で言っているのだが、問題はどういうレベルで安全な町をつくっていくか。私は2段階あると思う。ほとんど防潮堤・防波堤が破壊されている中での緊急応急対策、これは措置しないと台風にも対応できないということになるので。もう1つは、10メートル前後の防潮堤を整備していくとなれば、これは一定の期間の必要なことになる。だから2段階で安全な町づくりは進めるべきだと。専門技術委員会の状況も拝見しているが、どういうレベルで岩手県は安全な町を進めようとしているか。今回の震災規模ではないだろうと思う。

【平井復興局副局長】
 復興基本計画案では、過去最大の津波高さを目標に津波防災施設を建設することが望ましいと書いている。しかしそれが地形条件や社会環境に与える影響の観点、それから費用の観点から現実的ではない場合は、おおむね百数十年程度で起こりうる津波高さを海岸保全施設の整備目標とするということにしている。
 減災の考え方というのは、その後者のケースにおいて、津波が越えてくるということが想定されるので、町づくりとかソフト対策で再び少なくとも人命は失わないようにしようと、できれば建物被害を最小限にとどめようという考え方であり、本基本計画案もその考え方をとっている。
【県土整備企画室企画課長】
 河川堤防や灌漑防潮堤の被災により、今後応急措置として急がれる二次災害防止のための対策だが、今回の地震・津波により、当部で所管している防潮堤や河川堤防のうち18ヶ所において破堤等が生じ、うち居住可能な集落や家屋が残っている地域、地域生活の復旧・復興のため対応が不可欠な地域等を中心に、高波や高潮等の浸水対応として13カ所について大型土のうや捨石による応急工事が必要となっている。
 工事の進捗状況は、大槌川等8ヶ所の応急工事についてはすでに完了している。残る5ヶ所についても、9月の台風期までには終了させる予定である。


・三陸縦貫道より国道・三鉄・JRの復旧を優先すべき

【斉藤議員】
 安全のところから入っているので、結局何が提起されているかというと、交通ネットワークの中で、三陸縦貫道や高規格道路というのが最優先課題で、県も国に真っ先に呼びかけたのはそうだった。私はそうでないと思う。被災地で破壊された国道や鉄道・三鉄、これが早急に復旧されなかったら町づくりができない。破壊された生活の足である、命の足である国道45線や三鉄、JRが三陸縦貫道や高規格道路よりも優先して整備される、そうしないと市町村の町づくりのプランがつくれない。三陸縦貫道北道路、八戸を含めると、今まで2000億円の事業費である。これを最優先したら、税金の使い方として大変なお金をそこに使ってしまうことになる。そうではなく、被災地の復興こそ最優先の課題にすべきである。

【平井復興局副局長】
 地域づくりのカギを握っているのが国道・JR・三鉄というのはその通りであるかと思う。ただし、これらは地域の骨格を直接的に決める要素である。これらの3つのほかに、防潮堤の設計などもそうだが、それらはすぐに我々が設計図を出して、予算を要望してすぐつくるというわけにはいかない。やはり、将来にわたって町の骨格を決めるものであるので、しかるべき手続きを踏んで市町村を中心に、住民参加をしっかりした上で計画を練っていただく必要があると。それとのやりとりの中で我々はそれぞれの施設の計画を立てて、予算要求していくということかと思う。
 三陸縦貫道については、今回非常に命の道路としての役割を果たしたということであり、発災直後から市町村長からの早期整備への声が非常に高かったわけである。したがい、ほぼルートが内陸側に推定できる三陸縦貫道については、今回被災した地区の直接の関係を持たないために、早期に要望の声を立ち上げて復興構想会議などで要望の声をあげてきたところである。
【復興局参事】
 三鉄の復旧関係について。前回の特別委員会の際に、官庁速報で補助率が国交省4分の3ということでそのうち新聞報道になるかもしれないということを答えたが、その通り新聞報道にはなったが、実はこの4分の3という補助率は国交省が財務省に対して要求するスタンスだということで、必ずしも国の予算でその通り引き上げられるということは現時点では確約されていない。そういうことで我々は危機意識を持って国に対して再三再四選出国会議員をはじめ国交相・財務相に知事先頭になり要望している。
 しかしながら、二次補正も確定していない状況の中で、三次補正の時期が非常に確定していないということで、時期が遅れれば遅れるほど三鉄の営業ができなくなるということで、今回6月補正でつなぎ融資を提出しているが、非常に厳しい経営状況下に置かれているということで、県と沿線市町村でもって何とか危機を打開しつつ、住民の生活のための三鉄を守ろうということで努力している。
 JRについては、東北運輸局が中心になり、国・県・市町村・JRなどがメンバーになり情報交換を行う「JR山田線復興調整会議」なるものを設置している。これは順次、山田線のみならず、各線についても関係県・市町村と一緒になり、まさに町づくりと一体となったJRのあり方という風なものを考えていかなくてはならないという考え方で臨んでいる。JRについては、損害額も非常に大きく、1キロあたり3億未満ぐらいではないかということで、現時点で県内のJRの沿線が約350キロということで、1000億円弱の被害額ということで、JR東日本もやはり腰を据えてかからないと計画策定に手間取るという話をうかがっている。

【斉藤委員】
 三鉄の復旧で高いレベルで復旧するには180億円かかると。高速の無料化で月50億円である。4ヶ月経ったら三鉄の復旧はできるとこういう点でも思う。県は努力しているので応援するが、やはり今復旧すべきJRや三鉄や国道を最優先すべきである。町の復興プランも年内には各市町村策定する。それまでに国道をどう再整備するか、JRはどうするかということになる。これは時間がかかる話ではない。
 三陸縦貫道は大きな役割を果たした復興道路、私もそう思う。しかし、総事業費と今までの県の負担分を示していただきたい。莫大な事業費である。私は優先順位として、毎日使う国道やJRや三鉄を財源の問題として最優先すべきではないのかと提起している。

【平井復興局副局長】
 三陸縦貫道の総事業費については、まだルートも確定していない状況なので、確実な数字を申し上げることができない。ただし、オーダーとしては、数千億ということになろうかと思う。
 これまで負担した県分については、平成22年度までの全体事業費が1713億円、うち直轄負担金として県が負担したのは298億円である。
 なお、三陸を縦貫する道路としては、八戸・久慈自動車道と、三陸北縦貫道があるわけだが、それらを含めた事業費は2129億円、うち県が負担した額は382億円である。


・県立病院の再建について

【斉藤議員】
 3点目は、特別委員会の視察で陸前高田市に行ったときにも指摘されたが、県立高田病院を早く再建してほしいと。直接高田病院の院長に会ったときには、「仮設診療所にも入院ベットがほしい」と。しかしこの8年計画の基本計画案には、県立病院を再建・整備するということは一言もない。仮設診療所を整備することにとどまっている。そしてそこでは何と言っているかというと、「新たな町づくりと連動し、人口集積の状況や高齢者等の支援ニーズに対応した保健・医療・福祉施設を整備する」と。いわば人口が減ったら病院の整備は必要ないのではないかと読めるような提起で、緊急な取り組み、短期的な取り組み、中期的な取り組みと書いているが、短期的な取り組みで平成23年中に地域医療機関の仮診療所を整備すると。中期的な取り組みは白紙である。8年以内に高田病院、大槌病院、山田病院を全て再建すべきではないか。なぜそのことが明記されないのか。高田病院の院長は、「入院病棟が必要でないと言うのなら、私は今すぐにでも辞める」と。最近仮設診療所を整備した山田病院の院長も、「入院病床を持った病院の再建が必要だ」と。もちろん大槌もそうである。なぜこれが欠落したのか。そういう点では、そこに意図があるのかどうなのか。

【保健福祉企画室企画課長】
 医療提供体制について。現時点で医療施設の復旧・復興に関する具体的な取り組み項目としては、単なる原型復旧ではなく、高台への移転等町づくりと連携した整備であるとか、災害対応機能の強化、あるいは遠隔医療を含めた保健・医療・福祉ネットワークの再構築、地域の医療・介護の充実を図る地域包括ケアシステムの構築といったことを考えており、今後実施計画案等を詰めていく中で、さらに具体化を図っていこうと考えている。
 現時点において、被災地では徐々に地元の医療機関が再開しているところであり、医療提供体制は医療チームによる災害医療救護から、地域の実情に応じて一部医療支援チームによる支援も継続しつつ、仮設診療所あるいは地元医療機関による医療提供体制への移行を進めているところであり、このための仮設診療所等の設置による診療場所の確保であるとか、医療スタッフの派遣支援を今現在重点的に進めている。
 また、この間に、新しい町づくりに対応した医療機関の復興や医療提供体制の構築に向けて検討を進めていくことが重要であると考えている。
 なお、入院機能がないところについては、これまでも医療救護チームの医療活動については、適宜医療機関の受診が必要な患者については、後方の病床へ移送して行ってきたところだが、これからなおかつ診察を中心とした応急的な医療から、医療機材等を揃えた一定の診療機能をもった施設による医療の提供体制へ移行を進めていく必要があると考えており、こういった入院が必要な患者については、さらに地域の病院であるとか二次救急医療対応の病院、さらには内陸部等の病院に搬送を行うこととしており、これらの病院における空き病床の相当数は確保されているところである。
 今後、県全体での医療の連携により、まず被災者等の医療の確保を図っていきたい考えるところである。

【斉藤委員】
 私が指摘したのは、8年計画で中期的な取り組みというので3つの段階に分けてやっているのに、県立病院については3段階目が空白だと。仮設診療所の整備までは書いているが、8年間のうちに県立病院を再建するということは書いていない。欠落している。書き忘れたのか。
 県立高田病院については、実は4月から病床を増やして2病棟90床体制で進める予定だった。高齢者の急性期医療を中心にして黒字に転換して、2病棟90床に増やす予定だった。本当は仮設診療所の段階でも入院病床を整備すべきだと思うし、ましてやできるだけ早く病院を再建すると。今日の新聞報道だと、昨日の委員会の審議では仮設診療所は2、3年だと。それだったら、3年後4年後どうするのか。病院を再建するという方向を打ち出して、その他は市町村と協議してとなると思うが、なぜそこが全然明記されないで空白なのか。そこに意図があるのではないかと指摘している。

【保健福祉企画室企画課長】
 医療局での復興に向けた対応の考え方としては、いずれ県の復興基本計画案に掲げている「新たな町づくりに連動した災害に強く質の高い保健・医療・福祉提供体制を整備する」との考えの下、今後地元市町や関係機関などの意見をうかがいながら、被災地域の医療提供体制の確保が図られるよう取り組みを進めていくということである。
 保健福祉部としても、必要な国からの財政支援等について、積極的な働きかけをしていきたい。


・復興の主体について

【斉藤議員】
 復興の主体について、私は地域住民が復興の主体だと思っているが、この計画の2ページ目で、「復興にあたって県民・関係団体・企業・NPO・高等教育機関など地域社会を構成するあらゆる主体が一体となって取り組む指針」だと。しかし、決定に関与する地域住民、有権者である地域住民が主体であり、さまざまなそういう構成団体と連携・協力して進めるというのが正しい規定だと思う。主体がこれでは曖昧である。そういう意味で、今のような点をしっかり明記する必要があるのではないか。

【平井復興局副局長】
 復興の主体については、地方自治体やNPO等をあげている。復興の真の主体が市民・県民であることはその通りであるが、それを直接にいうことはただその言葉で終わってしまうということである。
 我々は、県として、復興計画を立てるにあたり、県というよりは市町村、それから市町村並びにNPO等の各種いろんな主体が協力をし合ってつくっていくということを強調したがためにということである。


・水産業の復興状況について

【斉藤委員】
 産業再生では、一番柱になるべき水産業の復興、いまどういう状況までいっているのか。昨日の委員会では、養殖の整備などが県の予算の倍以上の要望が出ており嬉しい悲鳴だと思う。それだけ復興の意欲が県が考えた以上に出ているとすれば、思い切って新たに補正をしてでも、そういう復興の願いに応えるべきではないのか。

【産業再生課総括課長】
 6月の臨時議会において、議決いただいた第三の補正に基づき、漁船・定置網・養殖施設・製氷や冷凍などの陸上施設について、漁業者の要望等を聞いている最中である。
 基本計画にも書いているが、漁協を核とした漁業・養殖業の構築、産地・魚市場を核とした流通加工の整備、これらを一体的に取り組むため、現在漁協等から要望をうかがっている。その中で、養殖施設については、予算を措置した施設台数を上回るような要望がきている。今後は、まず第一に生産に結び付くのはワカメ・コンブが来年の春に結び付くので、これを主体として、各漁協の実情を勘案しながら、施設台数を調整していきたい。
 今回の補正において、県の上積みの補正もおこない、県段階で9分の7の補助率を確保したと。このことが、漁業者がやる気が出た1つの要因ではないかと考えており、これを契機として多くの漁業者が漁業を再開してほしいと思っている。