2011年7月12日 災害対策特別委員会
原発事故に関する請願に対する討論(大要)
放射能汚染対策を求める請願について
【斉藤議員】
請願項目を厳密に見ていただきたい。
1項目は、放射能汚染の調査、情報提供、除染の体制なので、これは基本的に合意できると。
2番目は、放射能汚染による被害県として、東京電力に被害農家への賠償責任を果たすよう働きかける、これも一致できると思う。
3番目は、1つは、一日も早い原発事故の収束の道筋を示せということなので、これも全く問題ないのではないか。2つは、原発に頼らない安全なエネルギー政策の促進である。原発止めろとは書いていない。この程度のことで反対するというのであればその論拠を示していただきたい。こういう事故が起こったら、原発に頼らないエネルギー政策を促進するのは当然のことではないか。3つ目は、東京電力の賠償責任を明確にということで、これは125号の次の請願と中身がかなり違う。これはこれで厳密に項目ごとに審査していただきたい。
福島原発事故で情勢は劇的に変わったと思う。そして、政治のあり方、政党や議員のあり方が今根本から問われている。6月19日付の岩手日報の全国世論調査では、「廃炉推進」が82%である。7月12日の朝日新聞でも、「原子力発電を段階的に減らし、将来は止めることに賛成か」―賛成が77%である。国民の圧倒的多数である。そういう劇的な変化が起きて、福島県自身、原発を推進した県が、原発に頼らない新しい福島県のあり方を提案している。原子力に依存しない、安全安心で持続的に発展可能な社会づくりというのが復興方針の基本・理念である。推進してきた福島県知事も、いまは脱原発である。原発事故というのはこのぐらい情勢の激変を示している。なぜかというと、この事故を通じて、原子力発電というのは、安全性の確立していない危険なものだということが明らかになった。一度事故が起きて、放射能が放出されると、それを抑える技術がない。それどころだけではなく、放射性廃棄物の処理・処分も決まっていない。原子力発電というのは、きわめて不完全・未完成な技術である。そしていまだに福島の事故は収束の見通しさえない。そういう意味でいけば、まさに政治の場でも国民の意識でも劇的に変化しているときに、124号のこの請願項目1つ1つを丁寧に読めば、当然賛成してしかるべきである。この項目に反対するというのであれば明確な根拠を示して議論すべきである。しっかり採択すべきである。
福島第一原発事故の早急な収束と原子力発電からの撤退および自然エネルギーの本格的な導入を求める請願について
【斉藤議員】
125号の請願は、請願項目にあるように、原子力発電をゼロにする期限を切ったプログラムを策定し、原子力発電からの撤退と自然エネルギーの本格的な導入を行うよう、政策転換を図ることを求めるものである。その他の項目については、最初に審議されたものと同趣旨であるので、(2)の中身について意見を述べたい。
今回の福島第一原子力発電所の事故が明らかにしたものは何か。今までのさまざまな事故とは異質の、放射能汚染が時間的にも空間的にも社会的にも広がる、今までのさまざまな事故とは異質の危険性をもった事故だったと思う。それは、何よりも原子力発電というのが安全性の確立していない危険な技術であるということをまざまざと明らかにした。一度事故が起これば、放射能汚染の広がりを抑えるすべがない、そして放射性廃棄物を処理・処分する技術もない。私はこの安全性の確立していない危険な原子力発電であること、そしてその原子力発電が世界有数の地震国、津波常襲地帯である日本の沿岸に集中立地しているという、この異常さもまた今回の事故で明らかになった。
福島原発事故は、4基が同時に事故を起こした。これは世界で初めてのことである。スリーマイル島の事故も、チェルノブイリ事故も原子炉1基の事故だった。しかし今回は、集中立地で、4基が同時に水素爆発やその他の爆発を起こして放射能汚染を起こすという深刻な事態に陥り、いまだに高濃度汚染水の対策はまったくとられていない状態である。
そしてこうした事故を起こした最大の原因は、安全神話である。苛酷な事故は絶対起こらないと、こう住民に説明をし、東京電力や国がまったく安全対策をとってこなかった。これは国会で厳しく具体的に福島原発の地震対策・津波対策が指摘されていたにもかかわらずとってこなかった「人災」である。日本においては、安全な原子力発電はありえないというのが今回の福島原発事故が示した問題だと思う。
だからこそ、福島県の当事者が、「これまで国および原子力発電事業者は、原子力発電所が何重にも防護策がとられているとして、その安全性を主張してきた。しかしそうした主張に対する信頼は今回の原子力発電所事故により根底から覆り、原子力発電という巨大なシステムを人間が制御することの困難さ、そして一旦事故が起これば再び管理できるようになるまで相当の年月を要し、きわめて広範囲に、長期にわたって甚大な被害を及ぼすことが明らかになった。今回の原子力災害でもっとも深刻な被害を受けた福島の地においては、脱原発という考え方のもと、原子力への依存から脱却し、再生可能エネルギーの飛躍的な推進を図るとともに、省エネルギーやリサイクルなどを強力に推進し、環境との共生が図られた社会づくりを進める必要がある」と。事故の直接の被害を受けた福島がこういう方向を打ち出している。
国内における潜在的可能性というのは、すべての原発の40倍、そして岩手の自然と資源というのはもっとも豊かな県の1つだと思う。原子力発電からの撤退から、自然エネルギーの本格的な導入に展開するなら、岩手県は新エネルギーの先進地として生まれ変わり、電力の自給率を画期的に高めることになるのではないか。
今回の原子力発電事故を踏まえて、こういう転換を勝ち取るためには、この請願の採択がきわめて重要である。ぜひとも採択していただきたい。