2011年7月21日 「県議選の重要な意義と争点、日本共産党の役割」(案)
東日本大震災津波救援・復興の取り組みを前に進め、
原発からの撤退、住民の命とくらしを守る県政を
3月11日の東日本大震災津波から4カ月が経過しました。延期されていた知事選挙は8月25日告示、県議選は9月2日告示、11日投票と決まり、8月21日告示の盛岡市議会議員選挙と連続してたたかわれることになりました。被災地である岩手県における選挙は特別に重要な意義を持っています。
一、被災者の生活と生業の再建を最大の課題に
救援・復興を前に進める選挙に
大震災津波では、これまでに県内の死者4600人、認定死亡者399人、行方不明者2131人、避難者9393人、建物被害28308棟(7月20日現在)となり、福島第一原発事故がくわわり、岩手県はもとより我が国の歴史でも未曽有の大災害となっています。多くの被災者は、なお心身ともに苦しみのふちにあり、依然として先の見えない不安のもとにおかれています。
大震災津波と原発事故からの救援・復興の課題は、今後、長期にわたって正面から取り組み、力を結集して打開を図るべき国政・県政の最大の課題となっています。また、大震災津波と原発事故は、日本の政治のあり方・県政のあり方、政党のあり方を根本から問うものとなっています。
日本共産党は、1人1人の被災者の苦しみに心を寄せ、被災地の地方議員はもとより、国会議員、県議会議員が連携し、被災地の調査を踏まえ被災者の生活と生業の再建に全力を挙げてきました。また、党の総力を挙げてこれまで2000人を超えるボランティア派遣に取り組むとともに、全国から寄せられた募金を県・市町村、漁協、農協、商工会議所・商工会などに1億4100万円余の義援金を届けてきました。こうした取り組みは、「国民の苦難軽減に献身する」という日本共産党の立党の精神を発揮してきたものです。
ところが、国政では、民主党と自民・公明の両党は、未曽有の危機のもとで、被災者そっちのけで党略的政争に明け暮れています。被災者が求める二重ローンの解消や漁業・地場産業の再建の願いには背を向ける一方で、消費税の増税や水産特区構想など構造改革路線を進めようとしています。岩手県の復興基本計画(案)は、8年計画といいながら、津波で壊滅した県立高田、大槌、山田の各病院の再建には触れず、縮小・統廃合を進めようとしています。安全なまちづくりを第一に掲げ、三陸縦貫道の整備や高規格道路の整備などこれまで掲げてきた大規模開発を優先して進めようとしています。復興の主体である地域住民の位置づけもあいまいです。
日本共産党は、(1)被災者の生活再建を救援・復興の最大の課題として位置づけ、劣悪な避難所生活の改善、住みよい仮設住宅の整備とコミュニティの確立、通院・買い物のための巡回バスの運行、義援金・災害弔慰金・被災者生活再建支援金の早期支給と拡充、障害者・高齢者対策に取り組みます。
(2)被災地沿岸の基幹産業である漁業・水産業の復興のため、国の責任で船、養殖施設の確保・整備を進め、水産加工施設の再建を図ります。中小商工業に対する特別の助成措置を取り、地域の産業と商店街を再建します。そのためにも二重ローン問題の解消を図ります。
(3)被災した庁舎とともに、県立病院、県立高校・学校施設の再建をまちづくりの中心課題に位置付け早期に整備を図ります。被災した民間医療機関に対する独自助成を実施します。被災した国道45号線、JR、三陸鉄道の早期復旧とかさ上げを求めます。
(4)復興とまちづくりに当たっては、「計画は住民合意で、実施は市町村と県・国が連携して、財政の大半は国の責任で」を原則にし、上からのしつけを許しません。
日本共産党は、延期された県議選はもとより、知事選、盛岡市議選でも、被災者の生活と生業の再建、住民合意の復興とまちづくりをめざし、東日本大震災津波の救援・復興の取り組みを前に進めるために全力を挙げて取り組みます。
二、原発からのすみやかな撤退を決断し
豊かな資源を生かした自然エネルギーの本格的導入を
福島第一原発事故は、他の事故には見られない「異質の危険」があること。今の原発技術が、本質的に未完成で危険なものであること。世界有数の地震国・津波国に集中立地することの危険、「安全神話」への固執が深刻事態を招いたこと。安全な原発などあり得ないことを示しました。放射能汚染の広がりは県内の牧草地、学校の校庭にまで及んでいます。日本共産党の国会での具体的な追及を無視して起こした今回の原発事故は、まさに「人災」です。
原発問題でも、これまで世界でも異常な原発推進政策を進めてきた自民党・公明党の責任、原発の14基もの新増設を決め、自公に輪をかけて原発を推進し、停止している原発の再稼働を進めようとしている民主党の責任は重大です。
日本共産党は、(1)原発からの撤退を決断し、5~10年以内に原発をゼロにする期限を切ったプログラムを策定することを求めます。老朽化した原発、住民合意が得られない原発は停止・廃炉にします。
(2)太陽光、小水力、地熱、風力など岩手県の豊かな資源を生かし、自然エネルギーの本格的な導入の先進地をめざします。
(3)「大量生産、大量消費、大量廃棄」のエネルギー浪費社会を見直し、低エネルギー社会への転換を図ります。
(4)牧草・稲わら・野菜等の放射線測定はもとより、海洋の測定、すべての学校の校庭・プールの放射線の測定を県内全域で実施し、安全の確保を図ります。
日本共産党は、一貫して原発の建設に反対し、「安全神話」のウソを追及してきました。原発の持つ危険性と、それを管理・監督する政府の無責任さを具体的にただしてきました。原発からのすみやかな撤退を決断し、自然エネルギーの本格的な導入を実現するため全力を挙げて取り組みます。県内各地での放射線測定の実施と公表で放射能汚染防止対策に全力で取り組みます。
三、達増民主党県政の実態―大型開発優先のゆがみと福祉切り捨て
岩手県政は、増田県政の3期12年に続き達増県政の4年で、12年間、民主党中心の県政が続いています。部分的に対立があるものの予算には日本共産党以外の政党・会派が賛成するオール与党県政が実態です。
(1)大型開発優先で全国ワースト2位の借金財政に、医療・福祉切り捨ての県政
達増県政の最大の特徴は、大型開発優先で県の借金が1兆5千億円に16年前の2倍に膨れ上がり、決算額比で全国ワースト2位という借金財政に陥り、県財政が危機的状態に陥りながら、530億円の簗川ダムや164億円の津付ダム(大震災津波で再検討を表明)など、不要不急、自然環境破壊の大型開発を進めようとしていることです。
一方で老人福祉や児童福祉費などの民生費の比率は全国39位で、全国最低クラスの福祉に冷たい県政となっています。この間、地域住民の強い反対の声を無視して、九戸、沼宮内、紫波、大迫、住田、花泉の6つの県立病院・診療センターの無床診療所化を強行してきました。大震災津波を口実に被災した県立病院の縮小、統廃合まで心配される事態です。介護保険の居宅サービス利用料は全国最低です。特養ホーム待機者は5974人に及んでいます。高すぎる国保税に対しても県補助はなく、滞納者からの保険証の取り上げ(6月1日現在、資格証明書795世帯、短期保険証13970世帯・留め置き899世帯)、滞納者からの財産差し押さえは4824件16億3360万円(09年度、盛岡市は178件1億1943万円)という県民に冷たい福祉切り捨ての県政となっています。
(2)深刻な雇用・就職難―誘致大企業が雇用破壊の先頭に
大震災津波の前でも県内の雇用状況は深刻でした。この2年間で事業主都合の離職者は6万6864人、非正規の雇止めは8610人で、そのうち90%は自動車、半導体関係の誘致大企業でした。県内の有効求人倍率は昨年の2月まで13カ月連続で0.3倍台という最悪の状況となりました。県内最大の誘致企業である関東自動車の非正規・期間工従業員は700人で全従業員の3割を占めています。大震災津波でいま、沿岸の離職者(雇用保険加入者、3月12日~6月26日)は12088人に及んでいます。県内全体では27119人となっています。
(3)農林漁業予算は10年間で半減以下に、中小企業予算はわずか38億円
岩手の基幹産業である農林漁業予算は、10年間で1357億円から648億円に半分以下に大幅に減少しました。農業就業人口は5年間で23852人、20.9%も減少しています。さらにTPP参加が強行されるなら、1469億円、農業生産額の60%が減少し、水産物生産額では191億円、約4割減少します。林業では合板で22億円の減少です。
県内の常用雇用の89%を占める中小企業対策予算もわずか38億円で、5年間で52億円から27%も減少しています。これでは地場産業が衰退するのは明らかです。
(4)35人学級の拡充に背を向ける。子どもの医療費助成は就学前までにとどまる
30人学級の実現を求める県民の運動の広がりの中で、東北で最後に35人学級の自意思に踏み込んだのが岩手県でした。その後小学校1年、2年、中学校1年(希望校)まで拡充されましたが、今年度から小学校1年生で国の制度として35人学級が実施されたにもかかわらず、県での拡充は見送られました。 子どもの医療助成は県内20市町村ですでに小学校卒業まで、中学校卒業まで、一戸町は高校卒業までに拡充されています。ところが県はお金がないと小学校卒業までの拡充(4億円でできる)に背を向けています。
(5)安全軽視の県政―倒壊危険校舎484棟(耐震化率73.1%)、消防職員の充足率66.1%
大震災津波の被害から学校の耐震化が求められていますが、県内の耐震化率は小中学校で73.1%、震度6強で倒壊の危険がる危険校舎は484棟に及んでいます。消防職員も基準人員に対し66.1%、1016人も不足しています。
(6)小沢擁護の異常な小沢チルドレン県政
達増知事は、水谷建設からの1億円のヤミ献金疑惑や政治資金規正法違反で刑事告訴されている小沢一郎氏を異常に擁護し、検察批判を公然と行っています。原稿棒読み知事、暴言が繰り返されました。こうした達増知事を無条件で擁護しているのが民主党会派です。県民無視の「小沢チルドレン県政」の転換が求められています。
四、県民の命とくらしを守る福祉と防災の県政へ
東日本大震災津波の救援・復興に全力で取り組むとともに、大震災前の県予算は大幅に見直し、国の検証対象となった簗川ダムや津付ダム建設事業は見直し復興財源に回すべきです。県民の命とくらしを大切にする県政への転換こそ、災害から命を守る県政、災害にも強いまちづくり実現の力です。
(1) 高すぎる国保税の引き下げ、特養ホームの増設を
・高すぎる国保税は、県市町村が力を合わせ1世帯1万円以上の引き下げを実現します。盛岡市ではため込んだ基金を活用するなら2万円の引き下げが可能です。滞納者からの保険証の取り上げは盛岡市のようにやめさせ、財産の差し押さえもやめさせます。
・介護保険の保険料・利用料の値上げを抑え、引き下げをめざします。特養ホーム待機者解消のため計画的に増設をはかります。居宅介護者訪問相談員を配置し、利用しやすい介護をめざします。
・後期高齢者医療制度を速やかに廃止し、高齢者への差別医療をやめさせ、負担の軽減に取り組みます。
(2) 県立病院の縮小・統廃合に反対し、被災した県立病院の再建と拡充を
・被災した高田・大槌・山田の各県立病院の早期の再建整備を図ります。高田病院については入院病床を持つ仮設診療所の整備を求めます。
・医師確保に努めつつ、無床診療所の充実と入院病床確保に取り組みます。
・看護師等の増員を図り、ゆきとどいた看護と医療の実現を図ります。
(3) 雇用危機・就職難を打開し、地場産業の再建で雇用確保に全力を挙げます
・緊急雇用確保基金事業(118億円、11000人)の早期事業化で雇用の確保に全力を挙げます。
・「働くなら正社員が当たり前」の立場で、誘致大企業の期間工切り・派遣切りをやめさせ、正規雇用化を推進します。
・高校生・大学生の就職難打開に全力で取り組みます。
・漁業・水産業・中小商工業への特別の支援と二重ローンの解消で、再建を図り雇用の確保に取り組みます
・常用雇用の89%を占める中小企業対策予算の抜本的な拡充を図ります
(4) 子どもの医療費を小学校卒業まで無料化に、35人学級の拡充を
・子どもの医療無料化を小学校卒業まで拡充します。窓口負担ゼロへ償還払いを見直します。
・保育料の軽減を図り、待機児童の解消へ保育園の増設に取り組みます。保育の新システムに反対します。公立保育園の民営化に反対します。
・35人学級を当面小学校3年生、4年生に拡充し、小学校全学年、中学校全学年への拡充をめざします。
(5) TPP断固阻止し、農林漁業の立て直しを図ります
・TPP参加に断固反対し、県民との共同を広げ断念させるまで戦います。
・農林漁業の再建に取り組み、農林漁業予算の拡充に取り組みます。
(6) 危険校舎の耐震改築・改修、住宅リフォーム助成の実現、消防職員の増員で災害に強い県政を
・耐震性のない危険校舎(is値0.3未満)は5年以内に改築・改修をめざします。
・県としても住宅リフォーム助成事業を実施します。
・消防職員の基準人員までの増員(充足率66.1%、997人不足、盛岡広域63.8%、312人不足)を計画的に進めます。
(7) 県民の声が届く県議会に
・県議一人90万円の海外視察の中止を―今年度は海外視察経費1090万円を削減させる
・議員報酬の20%削減を―今年度15%削減を実現
・政務調査費の厳正な支出と改革を―県議は自主的に変換し公費での裁判をやめるべき
・県民の声が届く議会に
五、県民の願いで県政を動かしてきた斉藤県議、かけがえのない日本共産党委の議席
事実上のオール用県政のもとで、「県民が主人公」の立場で、県の願いをまっすぐ県政に届け、県政を動かしてきたのが日本共産党の斉藤信県議の議席です。
(1) 被災者と心ひとつに東日本大震災津波の救援・復興に全力
・毎週被災地に足を運び、沿岸全市町村を訪問。志位委員長などの国会調査団とともに連携し、避難場所の生活改善、住みよい仮設住宅の整備など被災者の生活再建に取り組んできました。
・被災者の立場で救援・復興の提言、水産業の本格的再建、住みよい仮設住宅の整備、県立高田高校・被災学校の整備と放射線濃度の測定などの提言を県に繰り返し行ってきました。
(2) 建設的な提案で県政動かす―マスコミもうなる調査・提案力
・切実な雇用問題では、ソニー千厩テックの工場閉鎖や関東自動車の非正規切りなどの問題を現場に出かけ直談判。調査を踏まえ誘致大企業の雇用を守る社会的責任を追及し、関東自動車で5年間で248人の期間工を正社員に登用させました。全国に先駆けて県内各地でワンストップサービスを実現しました。
・特養ホーム待機者の解消では、介護殺人事件など深刻な実態を明らかにし、658床の第4期整備計画を1244床に586床の増床へ計画を見直しさせました。
(3) 県民の運動と力を合わせ県民要求を実現
・子どもの豊かな成長と1人1人に行き届いた教育の実現をめざす「30人学級を実現する岩手の会」の皆さんとともに力を合わせ、毎回の県議会で繰り返し取り上げ、小学校1年、2年、中学校1年生での35人学級を実現してきました。
・農協や労組、業者、民主団体と連携しTPP反対、住宅リフォーム実現、青年の雇用確保を求めの請願を、他会派の議員とも共同して採択させました。
(4) 生活相談・法律相談に取り組む―親身になって解決まで努力
毎週の生活相談、弁護士の協力をいただいて毎月実施している無料法律相談などで、住民の暮らしの相談に乗っています。年末年始の大雪と除雪対策、解雇・雇用問題、融資の相談、生活保護や医療問題など、どんな問題でも住民に寄り添って解決まで取り組んでいます。
(5) 県政を厳しくチェック、不正腐敗追及の第一人者
県や県警の不正経理問題や県工事に伴う談合問題、小沢事務所の「天の声」による県発注工事の疑惑問題など、県民の目線で徹底して調査し県政の不正腐敗を追及する姿は、他の追随を許さない独壇場です。ムダな大型開発の追及も企業献金をもらわない共産党議員ならではの役割です。
来るべき県議会議員選挙・知事選挙と一体でたたかわれる盛岡市議会議員選挙で必ず勝利し、東日本大震災津波の救援・復興の取り組みを被災者の生活再建を進める立場で前に進め、原発からのすみやかな撤退を実現する契機にするよう全力で取り組みましょう。日本共産党のかけがえのない議席の役割を広げ、住民の命とくらしを守る県政の実現、福祉と防災のまちづくりを進めるましょう。