2011年7月29日 災害対策特別委員会
中間とりまとめに対する意見(大要)


【斉藤議員】
 今回の中間とりまとめに対する建設的な意見・提言を述べたい。
 最初に、基本的な視点で5項目提起されているが、第一に、項目3に書かれている、「何より生活再建。暮らしと仕事が再生の出発点」というのが第一にくるべきである。やはりこういう大震災・津波の場合には、被災者の生活再建、生活基盤の回復というのは一番大事な課題である。それが人間の復興にもなるわけで、まず第一にそれを位置付けるべきである。
 項目1で書かれている「未来に向けた創造的な復興モデルに」とあるが、ここはもっと吟味すべきである。今の被災の状況というのは、そんな単純に夢と希望を書き込めるような状況では決してないと思う。本当に地域住民がこれから新しい町をどのようにしていくのかという議論を通じて、これは出てくるので、上から夢と希望を与えるだけではすまないのではないか。この表現も考えるべきだと思う。
 項目4のところでは、「再生可能エネルギーの先駆的導入」が基本的な視点に入っているが、本来再生可能エネルギーの先駆的導入というのは、今後の産業振興の中に入るのではないか。新たな産業の位置づけで町づくりの中にも入ると思うが、基本的な視点で縛るということよりは、それぞれの町づくりと産業振興の中で、新しい産業としてここは位置付ける課題ではないのか。
 項目5では、「県民一人一人が復興の主体。全ての英知を結集」と。これは大変大事な提起だと思うが、復興の進め方として、計画は住民合意で、そして市町村が主体になって、県・国と連携し、財政は国の責任でと。ここを復興の進め方としては原則問題として明記すべきではないか。これだけの大災害なので、基本的には国の財政的補償で進めることが必要だと思う。表題はその通りだが、復興の進め方についても是非明記していただきたい。
 大きな2番目の「全般的な事項」のところだが、4番目に「国の復興構想会議の提言についての早期の具体化」とある。率直に言えば、国の復興構想会議の提言には、重大な問題点もある。漁港や漁業の集約化、これは岩手はそういう方針をとっていないのだが、農地の集約化というのも出している。単純に復興構想会議の早期の具体化だけでは済まない、例えば財源問題でも復興増税と。重大な問題点も含まれているので、活用できることは活用するが、問題については被災地からも問題点を指摘していくということがこの点では必要ではないか。
 3ページの放射能汚染対策で、1項目改めて項目を立てるべきである。福島原発事故問題というのは、大震災・津波と一体のものである。そして、この原発事故が牧草・稲わらの汚染、肉牛の出荷自粛という岩手の畜産の危機的な状況に関わっているわけで、学校や保育園の校庭の放射線濃度も20ミリシーベルトという莫大な基準は下回っているが、1ミリシーベルトという基準からみると超えているところが少なくない。そういう意味でいくと、放射能汚染対策ということではなく、「福島原発事故とそれによる放射能汚染対策」という大きな項目で、この問題は今問題になっている牧草・稲わら、学校・保育園・幼稚園など子どもたちの問題も含めた放射能汚染対策というのを講じていただきたい。今日、県が知事を本部長とする対策本部も設置して、県自身がそういう知事を先頭にした対策本部で対応するということなので、細かい項目ではなく大きな項目で展開して、原発からの速やかな撤退も検討していただきたい。
 短期のところで、再生可能エネルギーの導入の促進というのがここにも書かれているが、再生可能エネルギーといった場合に、風力・太陽光・小水力・地熱などたくさんあるわけで、ここには木質バイオマス発電を農水省は考えているとあるが、そういう限られた話ではなく、再生可能エネルギーの活用というのは、原発54基分の40倍の可能性があると環境省がいっているわけなので、そして岩手県は全国でもっとも可能性に富んだ県だと思う。そういう中身でここは、町づくりのところでも産業振興のところでも明記をしていただきたい。
 大きな個別事項だが、「安全の確保、防災の町づくり」で、実は岩手県の復興基本計画の1つの問題では、復興の理念として被災者の生活再建が位置付けられていないということと、安全・くらし・生業という3つの原則を提起しているのだが「安全最優先」である。安全最優先で被災者の暮らしや生業の再生は実際には2の次3の次になると。やはり安全の町というのは、被災者の生活再建をしながらやっていくべきで、安全な町をつくったらすぐ人がいなくなったとなりかねない。阪神淡路大震災は、7割しか戻らなかった。あの大都市で。区画整理事業が行われ神戸空港もつくり、大型開発をやったが人間の復興にはならなかったという、そこを位置づけの問題としても先ほど強調した被災者の生活再建、生活基盤の回復ということを第一に展開すべきだと。そして基本的な考え方は、ちょっと細かいことが多すぎるのだが、がれきの早期撤去は緊急の課題だが、やはり防災の町づくりというふうになったら、津波やさまざまな災害からどう地域住民の生命・財産を守るかというのが基本的な考え方で打ち出される必要があるのであり、実は県の基本計画でもそうである。津波防災がほぼ中心に考えられて、日常的な災害、土砂崩れや内水被害、大雨洪水などについては弱い。今度の津波については新たな対応をしなくてはいけないが、日常的な災害を含めた安全な町づくりというのを正確に打ち出すべきではないか。そして巨大な津波については、基本的には避難で対応するというのが最大の教訓だったと思う。そういう避難路、避難場所の整備が大変大事ではないか。
 4ページのところで、「交通ネットワーク」については、2つの項目が緊急課題として提起されている。優先順位とすれば、三陸鉄道およびJRの早期復旧と、ここの方が緊急課題としては優先されるべき課題で、それと合わせて高規格幹線道路の早期完成と、位置づけとしはそのようにすべきではないか。三鉄で約110億円、JRは1000億円と言われている。国道45号線はどのぐらいの費用になるか。限られた財源の中で、日常の生活が破壊された国道やJRや三鉄の復旧というのを優先的に整備すべきではないか。
 5ページのところで、被災した県立病院の提起は大変大事な提起だと思っている。ここにも実は放射能汚染の調査というのがあるので、放射能問題は先ほど言ったようにまとめた形で1項目設けて提起していただきたい。
 二重債務の問題では、これも産業振興、経済振興のうえではまさに中心的な課題だと思う。いま国会で議論されており、参議院では自公が提案した案が共産党も賛成して政府案よりベストだと。一番の問題は何かというと、再建の意志のある全ての中小業者を対象にするかどうか、ここに今の二重債務問題の焦点がある。政府案は、債権買い上げ額が約2000億円、自公案は2兆円と。やはり全ての再建の希望のある中小業者を対象にした二重債務の仕組みを、公的な機関を設立してつくるということは是非明記して、被災した岩手の企業が救われるようなものに仕上げていくことが必要ではないか。