2011年8月5日 
福島原発事故による放射能汚染防止対策の申し入れでのやりとり(大要)


【斉藤議員】
 福島原発事故から5ヶ月近くが経過したが、福島原発事故については収束の見通しが立たないばかりか、稲わら汚染による肉牛の出荷停止という、大変な事態で、岩手の畜産・農業が危機的な状況に直面すると。そして米の放射能汚染も心配される。そういう中で、子どもや教育分野での放射能対策含めて、6項目を申し入れたい。
 肉牛の出荷停止問題だが、出荷停止された段階では、一日も早く解除申請に向けた取り組みを行っていただきたい。長ければ長いほど取り返しのつかない事態に陥る。聞くところによれば、福島県もまだだという話なので、遅れないようにしていただきたい。
 もう1つは、稲わらを使用した牛については、国が全頭を買い上げるという措置をとらないと、事実上売れないでしょうから、そこを早くやっていただきたい。
 出荷停止を余儀なくされた牛のエサ代、事故牛、価格の低下に対する全面的な賠償を国に求めるし、当面県としても買い上げを含めた対応をお願いしたい。
 出荷停止中のエサ代等の徴収猶予措置、これは農協が関わると思うが、国の責任で安全な稲わらや牧草、粗飼料を確保もお願いしたい。
 畜産農家の肥育サイクルがあるが、出荷停止の肉牛の買い上げを検討して、売れなければ子牛も買えないということになるので、この肥育サイクルを守る手立てが必要ではないか。福島県では、出荷停止中の肉牛の買い上げを県がやると。国はそれについて対応を考えるということなので。
 それから、全頭検査・全戸検査を万全な体制でやっていただきたい。
 原発事故による被害と負担については、東電と国の責任で、速やかに全面的な賠償を行うよう強く国に求め、県として賠償請求の取り組みを強化していただきたい。農業分野でも、何分の一しか賠償請求されたものについても支払われていないということなので、速やかな賠償を実現するようにしてほしい。
 2つ目に、米・農水産物の関係だが、米の放射性物質の検査は農水省も実施の方向と報道されているが、岩手県は奥州以南の4市町村だけだと。これでは岩手県の米は安全だということにはならない。ぜひ全市町村で米の放射線の検査はやって、岩手の全ての米が安全だと示すことが必要。
 野菜やリンゴ、果樹は、全ての主要産地で放射性物質の検査をすることと。検査を希望する産地についても、検査対象にすると。
 秋サケ、サバ、スルメイカやワカメなどの水産物についても、きちんとした検査をやっていただきたい。
 大きな3番目は、子どもの安全を最優先にすべての学校、保育園、幼稚園、児童館・学童クラブ等の放射線量の測定をやっていただきたい。やっと全学校・保育園の方向は出たようだが、地表から50p、1メートルだけでなく、地表地点の測定も大事である。保育園は、裸足で保育している。地面の放射線量というのが直接かかわるので、地表の方が高く出るので、地表地点も是非合わせていただきたい。
 文科省自身が、年間1ミリシーベルトをめざすと言っているので、この基準で、そこを超えたところは表土の入れ替えや除染を徹底することが必要。そしてこうした費用というのは、東電と国にきちんと責任をもたせると。岩手県は、事業主体を市町村や私学の場合は学校法人と言っているが、やはり県の責任で一括してやると。その方が損害賠償もやりやすいわけなので。
 4番目は、いずれ出る問題の度ごとの対応ではなく、岩手県内の詳細な土壌汚染地図を作成して、岩手県内の放射能汚染がどういう状況になっているのかということを踏まえた対策をしないと、後手後手ではいけない。
 損害賠償請求については毎月東電と国に請求すると。そして速やかな賠償を求めると。今日副知事には、紙とも子議員の国会での論戦をお渡ししているが、しぶしぶ東電の社長も全面賠償の責任を認めているので、認めてもすぐ賠償しないというのが東電なので、そこを徹底してやっていただきたい。
 最後は、こういう深刻な事故を受けたときだからこそ、岩手県からすみやかな原発の撤退、自然エネルギーの先進地を目指す本格的な導入という方向に踏み出すべきではないかというのが今日の申し入れの趣旨である。

【瀬川貞清県議予定候補】
 強調したいのは、農家をまわっても農業団体をまわっても、補償の問題と、見通しの問題について全く明確になっていないと。これをきちんと示してほしいということが共通しているのでお願いしたい。
 それから、農家をまわると、2軒に1軒が「枝ぶりのいい木を探している」というのと、「丈夫なロープを準備している」と冗談めかしに言う。だが、牛肉自由化のときに、犠牲者が出ているわけですから、絶対今回のことで県内から犠牲者が出るということのないように、明確なメッセージをきちんと出してほしい。

【高田一郎県議予定候補】
 一昨日、肥育農家を訪問してきたが、「BSEのときに1000万円の借金をして、そして何とか軌道に乗って、あと7年ぐらいで借金を返して老後を奥さんと一緒に過ごしたいと思っていた」と。ところが今回の出荷停止で、そういう人生設計も狂ってしまったと。本当に助けてほしいという声だった。本当に東電に対して全面的な補償、行政の支援がないと、いま本当に畜産農家の皆さんがやる気をなくしているので、本当に手をさしのべないと、離農者がどんどん生まれるという状況なので、ぜひそういった声に耳を傾けていただいて、従来にない抜本的な対策をとってほしい。

【高橋和夫盛岡市議】
 玉山区は、360戸ぐらいの農家があるが、大きいところもあれば小さいところもある。小さいところでは、今お盆が来るので、牛を売って孫たちのお盆の準備をしようというときに出荷できなくなったということで、非常にショックを受けて毎日牛と一緒に泣いているという話をされた。子牛なんかの場合には、30万円で売れないと採算が合わないという話をしているので、その辺を何とか検討していただきたい。いずれ、今の段階では見通しが立たないということで、早急な対策をお願いしたい。
 盛岡市内では、放射能の調査をした。そういう中で、渋民の小学校が数値が一番高かった。安全だという評価はされたが、我々の計算では、出た数字と今までの県で出している数字で計算すれば、0.93という年間の数値になるので非常に心配している。そういった対策についても是非お願いしたい。

【宮舘副知事】
 多岐にわたる要望をいただき、放射能の汚染防止については大変な事態だと思っている。
 県でも、先日放射能影響対策本部を設置して、知事が本部長になり、対策にあたっているが、今お話があったような肉牛の出荷停止にかかる対策、これが当面の一番大きな課題だと思っている。この出荷停止を早く解除できるように、汚染された稲わらを給与した農家については、全頭検査をするということでやっているし、これ以外の農家についても、全戸1頭以上検査して、規制値を下回ったものについては、販売なり認めるという風にしていきたい。これは検査次第だが、出荷制限の解除に向けて、できるだけ早く、願わくば今月末にも解除できるように取り組んでいきたい。いずれにしても、稲わらを使用した牛について国の全頭買い上げということだが、これについても県では当然国に要求しており、出荷制限の資料代もそうだが、いずれかかり増しになるので、そういったものについても全額国で補填してもらうように、強く要望しているところである。
 安全な稲わら、牧草などの粗飼料の確保についても、代替飼料など国にお願いしている。
 東電に対する損害賠償だが、これは一義的にはやはり国が責任をもってしっかり対処してもらうことが大事だと思っているので、これについても強く要望している。
 国の原発による賠償請求は話した通りだが、米も心配になってきており、すでに発表しているが、基準を超えるものについては、市町村を調査対象にして、一関市・奥州市・平泉町・旧藤沢町を調査するとしているし、その結果を参考にしながら、他の市町村についても追加を検討していかなければならないのではないかと思っている。
 野菜・果樹についても、主要な農産物を対象にして、検査を実施する。地元からの検査希望があれば、こういったものも踏まえてしっかりと対応していく必要があるだろうと思っている。
 水産物についても、海遊性の魚種や沿岸性魚種を対象に調査を継続していきたい。今のところは特に問題ないようだが、これからも継続していく。
 学校・保育園・幼稚園の関係だが、8月補正予算で計上することとしており、学校等における放射線量の測定や土壌の除染、仕組みとしては市町村への補助ということを考えており、2分の1を県でもつような形にしていきたい。特にホットスポットを除菌・除染する作業について補助したい。約3000万円ぐらいの予算を計上している。
 土壌汚染地図の作成だが、これも国では、航空機のモニタリングを実施するということで、県でも全域を対象にしてやってもらいたいということを3日に知事が国に要望している。こういったこともしっかりフォローしていかなければならないと思っている。これまでは福島や宮城で実施されているようだが、ぜひ本県でもやっていただきたいということをお願いしている。
 東電と国に対する費用負担・賠償要請だが、これは当然具体的な損害だけでなく風評被害も出ている。昨日は変な報道もあったようだが、こういったものは本当に無責任で岩手県を、被災地を愚弄しているようなことなので、強く抗議した。東電や国に対しても、しっかり要望していきたい。
 自然エネルギーの関係だが、これは当然県としても、復興計画にも盛り込んでいるが、再生可能エネルギーの導入ということについては、これまで以上にしっかり取り組んでいきたい。
 原発事故については、早急に収束をはかってもらうように、これは何度もお願いしているが、これが一番の基本だと思うので、国のほうにはしっかり取り組むようお願いしている。
 いずれにしても、重大な、想定していないようなことが次々と起きるので、できるだけ先取りしてやれるように取り組んでいきたい。

【斉藤議員】
 BSE問題のときには、岩手県は真っ先に前頭検査をやったと。しかし今回は出遅れたという声が強いので、岩手県が真っ先に農家や子どもたちの安全のために取り組んでいるという姿が大事だと思うので、後手後手にならないようにしていただきたい。