2011年8月9日 商工文教委員会
中小企業対策、雇用対策に対する質疑(大要)
・中小企業グループ補助金について
【斉藤委員】
この制度は、今まで中小企業には融資しかなかった中で、4分の3の補助という制度は画期的だった。それだけに、たくさんの要望が出されたと思う。本来なら、予算を超えて要望が出されたら、予算の規模を拡大して、基本的には特に問題がなければ、条件が合うのであれば全て対象にするということが必要だったと思う。
今回、国の二次補正があってさらに拡充ということになるが、こういう報道がある。「予算の枠が限られているということで、県は事前に対象事業費を大幅に圧縮し、実質的な補助率をカット。申請受付後のグループの集約を含めて、企業側の不満は根強く、予算不足と制度設計の不備を露呈した」と。当局も苦労したと思う。一番の問題は、予算の規模が小さすぎる。震災の状況、再建しようとする企業の希望に応えられない予算の規模というのがある。しかし残念ながら結果としては51グループの申請を再編して、8グループが認められたと思うが、申請された51グループは事業所数でいくらか。8グループは事業所数でいくらか。そして、新聞報道でも指摘されたこうした問題について県としてどう受け止めているか。
【経営支援課総括課長】
手元に資料がなく申請の段階の企業数はお答えかねるが、8グループについては116社である。
事業所の関係では、復興事業計画の中でグループの行う事業として必要なものにしぼっていただいて、それに対する4分の3の補助を行ったということで、8グループあったのでそれぞれのグループの中でそういう調整をしていただいた。
【斉藤委員】
51グループの申請に対して、22グループを8グループに再編したと。これはあくまでも予算の規模を最大限広く適用させたいということではあったと思うが、これから第三次の本格的な復興の補正予算を求めていかなくてはならない。そういうことを視野に入れて、第一次で申請した全てのグループが対象になるように対応すべきではないか。
51グループの申請に対して、22グループを8グループに再編したということだが、採択されなかったグループはどういう問題があったのか。優先順位の問題か。陸前高田市は、沿岸の地区でもここには入っていなかったようだが、特別の問題があったのか。
【経営支援課総括課長】
個々の採択されなかったグループについてはコメントは控えさせていただきたい。
三次補正については、やはり国に増額をお願いできないかということで議論していきたい。
【商工労働観光部長】
記憶が定かではないが、高田という地域でまとまったグループではなくて、高田の企業がいくつかのグループに分かれて採択はされているので、高田を意図的に外しているということはない。
高田の場合は、グループを組む体力がないと。ですから個別の企業も他の地域のグループと一緒になってやろうということで、今回の補助の対象になっているので、高田については様子を見ていかなければならないと思っている。
【斉藤委員】
聞きたかったのは、予算が限られているから8グループということになったのだと思うが、これが熟度優先順位ということであれば今回の補正予算が対象になるし、さらには第三次の補正予算を強く要求していく根拠にもなってくると思う。そういう意味で、若干の問題があるのであれば県が支援していくべき。これだけ再建の希望をもっているということは大事なことである。希望をもっているところには全面的に応えるという対応を県にはしていただきたい。
【経営支援課総括課長】
審査委員会で審査し、高い順位から採用したということであるので、そこに入らなかったものについては、要件とかグループの計画の中でもう少し練った方がいいとか、要件に照らして足らないとか、そういう面もあったと思うので、次の公募の際に応募される可能性もあるので、仮にそういったものについては、経営指導ということも我々の課での所管であるので、そういった面で支援していきたい。
51グループの構成社数については、339社である。
【斉藤委員】
今回も54億円の増額補正ということだし、本格的な三次補正というのもあるので、今回の印象とすればかなり無理してグループを広げたのではないかという感じもあるので、機能的な形で事業所の再建整備が進むように特段の対応をしてほしい。特に、今回の場合は、県が補正したのが4月28日、結局公表が8月5日でかなり期間がかかった。そしてこれから整備するわけである。また何ヶ月もかかるので、だいたいグループ補助金の中身というのは周知されていると思うので、今後の手続きはスピード感をもって、早く具体化できるようにしていただきたい。
【経営支援課総括課長】
予算については、成立後ということだが、すでに整備を進めている事業所についても対象にしていきたい。遅れがあるというご指摘もあるが、再建意欲のある事業所の皆さんに早く事業所を建て直していただいて、地域経済に貢献していただければと考えている。
・中小企業振興資金特別会計について
【斉藤委員】
高度化資金が約60億円補正されているが、これは震災対応ということか。
【経営支援課総括課長】
6月補正で一旦予算化されたものに、さらに増額するというものである。当初のものも震災対応というものである。
これは、グループ補助金の補助に見合って、高度化資金を活用する場合にそれを充てるというものなので、グループ補助金の増額を説明をしたが、それに見合ってこちらも増額するということである。
・中小企業被災資産修繕費補助、被災工場再建支援事業費補助について
【斉藤委員】
これはどのように市町村で具体化され、活用されているか。活用されていないとしたら、それは何が問題か。
【経営支援課総括課長】
修繕費補助は、制度化が9市町村で受付が5市町で始まっている。制度化しなかった町村については、対象の事業所がないということである。
【企業立地推進課総括課長】
被災工場再建補助は、すでに4市町において準備が進んでいる。具体的な案件は、今のところ具体的に相談があるのは1つだが、これはほとんどのケースで中小企業のグループ補助の方にまわっているという面があると考えている。
【斉藤委員】
これも4月28日の補正でいち早くやり、あの時点では大変先駆的な取り組みだったが、事業化・具体化が遅れているのは残念。ぜひスピード感をもって、これも予算の制約があるが、増額も含めて考えて対応していただきたい。
・二重債務問題について
【斉藤委員】
県と経産省の間で基本合意になったと。新聞報道を見ると、国が8割出資で500億円増勢と。一方で、金融機関には慎重な姿勢もあると書かれている。金融機関の姿勢がどうなのか。これは8月4日に岩手大学で、大震災後の日本ということで講演した経済学の専門家である札幌国際大学の浜田学長は、「岩手県はお金を貸さないことで有名な金融機関があるが」と。これは率直に言えば周知の事実で、実は盛岡タイムスにはこう書いている。「モラルハザードが起こらないようにしてほしい」と。この発言はいくつかのところであり、他の人から異様な感じで見られている。大震災で被害を受けて、マイナスからのスタートではなくせめてゼロからのスタートと言っているときに、こういう取り組みについてモラルハザードという認識で異常ではないか。私も何人かから聞いた。こういう認識では二重債務の解消に金融機関がブレーキ役になってしまうのではないかと危惧している。この取り組み状況を聞きたい。
【経営支援課総括課長】
8月7日に経産省と県で合意した。実は、これから合意した事項については、国の出資割合が8割とかという大枠について合意したものであり、これから準備委員会を設け具体的な話し合いを詰めていく。その上で、9月の中下旬には、このファンドに相当する機構を立ち上げたい。これからその内容について、買い取りの対象をどうするか、価格の決め方をどうするかなどを具体的にはこれから決めていく。新聞報道については、またこれから進めていくというものを、合意の前の話し合いの中での話題を取り上げたものと理解している。
【商工労働観光部長】
岩銀の頭取さんを含め、ファンドをつくることについては基本的には賛成であるとはっきりおっしゃっていただいた。これは周知の事実である。ただ一部新聞が、他の金融機関から細かいところを決めなければいけない問題はあるという意見を針小棒大にお書きになった。ただファンドをつくること自体、二重債務を解消していくということについては、これは県内の金融機関は結束しているということはその通りである。これから準備委員会をつくり、細かい約束事を決めていきたい。
【斉藤委員】
二重債務解消の取り組みが具体的に進んだということは貴重な前進。しかし、今回の政府案というのは、規模が極めて小さいと。これでは再建の意欲のある全ての事業者が対象にならない。
3県で、債務者は18000人で、返済の一時変更や条件変更は5500億円である。岩手県分はどのぐらいか。500億円規模ではまったく足らないのではないか。
【商工企画室企画課長】
地銀等の貸し出し、返済猶予等について新聞報道があったのは承知しているが、具体的に現在のところ金融機関から数値について正確なものとしては聞いていないので、県としては把握していない。あくまで推計値の中で、当面500億円規模を想定しながら進めていこうという、あくまでもガイドラインといったところで合意している。
【斉藤委員】
3県で、債務者は18000人で、返済の一時変更や条件変更は5500億円と発表されている。3分の1弱だとは思うが、推計でも岩手県の規模を把握してなかったら、どういう規模で必要か分からないではないか。政府の二重債務ローンというのは2000億円、2000億円の中で岩手県がなぜ500億円という小さい規模になるのか。2000億円自身が規模が小さい。今回やろうとしているのはその4分の1である。一歩前進ではあるが、こういう規模では再建の希望のある事業者は選択されてしまう。
国会では、実は参議院で自公案の二重債務解消の法案が通った。これは日本共産党も提案しかなり盛り込まれて債務の買い取りは2兆円規模である。そして相談の支援機構もつくると。被災者の立場に立って、そういう本格的な二重債務の解消の仕組みが国会でも参議院で通るという中で、こういう案こそ実現させる必要があるのではないか。
【商工企画室企画課長】
ファンドの500億円については、概算の県内の地銀三行、そして被災信用金庫の貸出額の中から、沿岸店舗の貸出額といったところから聞き取りの中で、だいたいの推計値の中でこれまでも議論してきた。また一方で、この二重債務問題に対しては、銀行独自での対応とかさまざまな対応があるということも当然あるので、そういった意味で全て返済猶予になったものがファンドの規模という認識はもっていない。一方、2兆円規模のファンドについて、どういう形であれ事業者が待っているのはスピードということが繰り返し言われている。できることからスタートするということから、準備委員会を立ち上げて、まずはスタートするというのが金融機関と県と経産省との合意である。
【斉藤委員】
早く立ち上げたいという気持ちは分かるが、原則で一番大事なのは、再建の意欲のある全ての事業者を迅速に支援することである。最初から金融機関任せで、500億円というのは金融機関として応援する規模はこのぐらいという発想である。金融機関が選別するのではなくて、この大震災で被災した再建の意欲のある全ての事業者を対象にすると。だから自公案では、その相談機構をつくっている。それが参議院で通っている。よくそこを踏まえて再建のある事業者を対象にするようなものとして進めていただきたい。
・雇用対策について
【斉藤委員】
雇用情勢は、5月と6月で若干改善されたということだが、有効求人倍率は全国で下から5番目で0.47、沿岸は0.3台などもっと厳しい。
1つは、県の120億円弱の緊急雇用事業、これをできるだけ早く被災地の再建の取り組みと結んだものとなるよう、仕事と雇用の確保を早く具体化してやっていただきたい。いまの実績はどうなっているか。特徴的な展開されている事業はどういうものがあるか。
やはり雇用の確保という点でも、事業所の再建が決定的である。被災を受けた事業所がどれだけ早く立ち上がるのか。商業・工業・製造業、被災した企業のうちどのぐらい立ちあがっているか。
【雇用対策課長】
緊急雇用対策事業だが、8月8日時点で、震災対応分として1万人の雇用創出目標を掲げているが、それに対して事業化がある程度具体化しているものが6622人分、これらのうち求人を始めた、あるいは近日中に始めるものが5676人分、実際これまで雇用した雇用数は3552人というものである。特徴的なものとしては、当初はがれきの処理などがメインだったが、最近は例えば、被災者の方がお仕事等に出られる場合の仮設住宅あるいは避難所における子どもの一時預かりだとか、タウン情報誌の発行、魚網・漁具等の復旧整備等が特徴的なものとしてあげられている。
【科学ものづくり振興課総括課長】
被災企業の再建の状況だが、当部とすれば、沿岸の企業、主だったものづくり企業の場合に申し上げると、228社を訪問・聞き取り調査している。うち「被害なし」「不明」等の53を除いた175社のうち、壊滅的な大きな被害が16、甚大ということでかなりの被害を受けたが再建したい意向をもつ企業が72社、175社のうち被害が甚大でなかなか再開の見通しが立たないといった16社を除けば再開の意志があるということで何らかの動きが出てきている。
【産業経済交流課総括課長】
沿岸の水産加工業者の状況だが、確認がとれた事業者134事業者だが、うち117社が何らかの被害があったということで、うち現時点で再開しているところが17社ある。今後再開したいというところが74社である。
【経営支援課総括課長】
商業施設ということだが、1000平米以上の大規模店舗で把握している限りでは、沿岸の41店舗中、再開しているのが30店舗、山田町で最近仮店舗で再開したというところもあるし、大槌町の大規模店舗が今回のグループ補助金を受けて再開に向けて取り組むと把握している。
【斉藤委員】
ぜひ沿岸の事業者が再開してこそ安定した雇用に結び付くので、この支援も全力をあげてやっていただきたい。商工会議所に行ったときには、8割は再開の希望をもっていると。商工会に行ったときには、7割は再開の希望をもっていて、2割は悩んでいると。これが長引けば長引くほど再開の希望が失われていく。その手立てをよろしくお願いしたい。
最後に関東自動車について。前回100名の期間工募集で、最近の新聞を見るとさらに100人期間工を募集ということで、新型ハイブリットの生産にも取り組むということだが、期間工の採用状況はどうなっているか。これだけ期間工を増やそうというのだったら、今までの期間工の正社員化をもっと進めるべきだと思うが正社員化の状況も合わせてお聞きしたい。
【企業立地推進課総括課長】
6月に100名を募集し、その後さらに9月末を目途としさらに100名を追加募集中である。聞いているところでは、現在のところ170名ぐらいのところまで決まったということである。引き続き関東自動車においては、正社員化については継続的にやっていくということであるので、その方向で我々も要請していきたい。