2011年8月10日 災害対策特別委員会
復興基本計画(案)に対する質疑(大要)
・多重防災型のまちづくりについて
【斉藤委員】
基本計画案では、多重防災型まちづくりと言いながら、全体としてはハード優先の対応になっているのではないか。今回のような巨大津波に対する最大の対策は、速やかな非難であり、避難通路、避難場所の整備こそ必要ではないでしょうか。
【復興局平井理事】
基本計画案においては、津波対策の基本的な考え方として、海岸保全施設、まちづくり、ソフト対策を適切に組み合わせた多重防災型まちづくりを進め、被害をできるだけ最小化する減災の考え方を示している。
この中で、まちづくりでは、避難の時間を短縮するための避難ビルや避難タワー等の配置。ソフト対策の中では、自主防災組織の強化や地域に根差した津波防災教育の充実を図ることとしている。このまちづくりのモデルを基本として、市町村の復興まちづくり計画の策定を支援してきたところだが、今後も各市町村のまちづくり計画の策定作業の過程において、より具体的な説明を心がけていきたい。
【斉藤委員】
海岸保全施設の整備について、計画案では、概ね百数十年程度の頻度で起こりえる津波に対応できる高さとするとしています。百数十年程度の津波とは、明治の津波を想定しているのか。昨日の専門委員会では、3つの地区に対して方向性が出されたが、この方向性を定めた基準・考え方はどうなっているか。
【県土整備部長】
今回の東日本大震災津波は、土木学会によると、貞観の津波と同程度かそれ以上の規模で、これらの巨大津波の発生頻度は1000年に一度と評価されている。
本県においては、この百数十年の間に、明治三陸地震津波、昭和三陸地震津波、チリ地震津波、そして今回の東日本大震災津波により大きな被害を被っている。これらの津波に、想定している宮城県沖連動地震津波を検討対象に加えて、それぞれの地域ごとに地形条件や社会環境に与える影響、費用等の観点から、計画の対象とする津波について現在津波防災技術専門委員会で検討を進めている。
【斉藤委員】
これまでの津波の浸水シュミレーションは、明治の津波、昭和の津波、チリ地震津波を想定したものだったと思いますが、今回このシュミレーションを大きく上回った要因、教訓をどう認識されているでしょうか。
【総務部長】
過去の明治三陸大津波、昭和三陸津波に加え、将来的に見込まれていた宮城県沖地震連動津波についてシュミレーションを行った。今回の東日本大震災津波における地震エネルギーは、これらの地震をはるかに超える規模だったということであり、実際の津波被害やシュミレーションを上回ることになったと。要はシュミレーションに対する代入値が大きすぎたということだと思っている。
実際の津波浸水シュミレーションの範囲内にとどまるものとは限らず、シュミレーション結果を絶対視して災害対策を考えてはいけないということが今回の教訓であったと受け止めている。このため、委員からも紹介があったが、復興基本計画においては、防潮堤等のハードの施設整備に頼るだけでなく、ソフト対策を適切に組み合わせた多重防災型のまちづくりを目指している。
・湾港防波堤の効果について
【斉藤委員】
湾港防波堤の効果について、釜石の湾港防波堤は、30年かけて千二百億円の事業費で高さ64メートルの世界最大規模のものでしたが、もろくも破壊されました。大船渡の湾港防波堤も破壊されました。本当にどういう効果があったのでしょうか。徹底してこうした検証をすべきで、この事業は見直すべきではないでしょうか。
【県土整備部長】
現在、国交省では、交通政策審議会の港湾分科会において、港湾における総合的な津波対策のあり方について検討を進めているところである。ここで、釜石港の湾港防波堤については、シュミレーションにより検証した結果、津波高さ4割、遡上高さ5割低減させるとともに、津波が防潮堤を越えるまでの時間を6分間遅らせたとされている。県としても、湾港防波堤が人命や財産の被害の減少に大きな役割を果たしたものと評価している。
湾港防波堤の復旧については、現在重要港湾における復旧・復興方針の策定にあたっているが、この中で防潮堤と一体となり背後市街地を防護し、復興まちづくりの根幹となる防災施設であるとともに、湾内の静穏度を確保することによる産業・物流を支える重要な基盤施設、湾港防波堤の復旧整備は必要不可欠であり、早期復旧や整備の促進の方針が示された。各委員からも熱望された。
県としては、県民の安全安心の観点から、復旧・復興方針に従い、早期に湾港防波堤の復旧整備が行われるよう、機会をとらえて整備主体である国に対して働きかけていく。
・被災した信号機の整備について
【斉藤委員】
安全なまちづくりで緊急の課題は、被災した信号機が、151カ所破壊され124か所がまだ放置されています。交通事故、死亡事故も発生しています。実施計画案では、交通安全施設整備は平成25年度までやるということになっているが、信号機や標識や表示などは今年度中に行うように見直すべきではないか。
【復興局平井理事】
今回の被災により、沿岸5警察署管内の信号機約4割にあたる151カ所が被災し、現在124カ所の信号が復旧していない。早急に復旧が必要と認められる信号機36カ所については、6月臨時補正予算で措置されており、2ヶ所において復旧を完了し、残り34カ所について現在早急に復旧作業を進めている。
また、それ以外の信号機の復旧については、がれきの撤去や道路の復旧等による交通流量の変化、被災市町村における復興計画の検討状況等を勘案し、早期の復旧に努めていく。
これらの信号機が復旧するまでの間、交通流量を勘案し、必要性の高い交差点については、警察官による交通整理や臨時の一時停止標識を設置し、あわせて交通安全広報を実施しながら交通事故防止に万全を期していく。