2011年9月22日 農林水産委員会
放射能汚染問題に関する質疑(大要)
・放射能汚染に対する県の課題の認識について
【高田委員】
今回の福島原発事故による放射能汚染の広がりというのは、大変な問題だと思う。特に畜産県岩手の農業が存亡の危機にたっているということを現場を回ってつくづく感じている。
私は今回の福島原発の事故を受けて、本当に岩手の農業が危機的な状況だという認識のもとに、今後の農業振興の対策を進めていくべきだと思うが、まずその点についての当局の認識についてうかがいたい。
同時に、今回の出荷制限に対する課題、さまざま対策をとっていると思うが、いま一番の課題は何かという点について、基本的な考え方についてうかがいたい。
【農林水産部長】
委員ご指摘の通り、非常に危機的な状況であり、一刻も早く放射性物質あるいは放射能の影響を排除するということに取り組んでいかなければならないというのが基本的な認識である。
畜産関係の課題だが、まずそれぞれ肥育だったり酪農だったり繁殖だったり、それぞれ経営の形態があるが、肥育であれば、とにかく流通に乗せるということがあるし、酪農であれば、原乳の質を確保するとか県外への出荷が制限されている農家もあるのでそういったものを解決していかなければならない。繁殖についても同じような問題があると認識している。
【高田委員】
私はこの間農家を何度も回ったが、従来の対策の延長線上では、農家はどんどん離農していく状況になっていくと思う。部長がおっしゃる通り岩手の農業が危機的状況ということで、従来にない抜本的な対策をお願いしたい。
・肉用牛肥育経営緊急支援事業、東電への賠償請求について
【高田委員】
今回専決処分された肉用牛肥育経営緊急支援事業だが、支援金の交付の単価が75万円から80万円と設定されている。これは4月から6月の生産費あるいは販売価格などを勘案した設定になっているということは聞いている。しかしこの間畜産農家からお聞きすると、この間最近は飼料価格が上がっているのではないかという話もある。円高の関係で違う側面もあると思うが、しかしこれは4月から6月の状況を勘案した価格設定になっているが、現在の状況を踏まえた単価の設定としては、合理的な単価に設定されているのかということをお聞きしたい。
【畜産課振興衛生課長】
先ほど述べたように、今年8月から6月の平均販売価格に準じて設定させていただいたというのはその通りだが、緊急に国庫の事業を導入する前に、県として生産者に対して支援金を早く交付したいということで立ち上げた事業である。常に、国の事業との情報交換をもとに設定させていただいたところであり、実を言いますと、国の設定の根拠というのもそういった積算の中身になっているので、県もそれに準じて設定させていただいた。
【高田委員】
国の考え方に基づく算定ということだが、やはり農家の実情に即した、再生産を保障できるような価格設定にしてほしいということを要望したい。
支援対象の販売価格が、いわゆる買い取り価格、支援金に満たない場合は、その差額については東電に対して要求していくことは理解しているが、この補償の見通しはどうなっているのか。
【担い手対策課長】
東電に対する賠償補償請求については、いまJAグループが中心になり、東京電力原発事故農畜産物損害賠償対策岩手県協議会というのを立ち上げ、実は昨日2回目の会合を行い、第1回目の請求についての話し合いが行われたところである。
牛肉についてはまだ議論されておらず、10月以降に順次行うわけだが、当面牧草の5月から7月末までの分を取りまとめており、金額で2900万円余について9月30日をもって請求することにしている。
順次この協議会については、10月以降も開催し、肉牛・稲わら・堆肥なども含めて請求していくことになるので、随時その情報についてはお知らせしていきたい。
【高田委員】
この支援金との差額については、東電の賠償として要求していくということだが、これはしっかりと補償されるような展望があるのか。
それから、新聞報道もされているが、県産牛からも基準値を超えるセシウムが検出されて、廃棄処分・流通をしないとなっているが、この廃棄処分の処理費用というのはどこが対応するのか。東電になるのか。
【担い手対策課長】
賠償請求についての補償は、訴訟の成り行き次第になるので、県から見込みについてはここではご回答できない。
【農政担当技監】
将来展望については、基本的にこれは原因者が払うというのが当然の原則であるので請求していくと。それに対して県としては、2つの面で考え方を持っている。1つは、まず東電の賠償がきちんと払われるように国がしっかり指導監督し、適正な支払いがされるように十分な指導をお願いするのが1つ。もう1つは、今回の損害賠償については、農業関係以外も含めて、前回の損害賠償審議会の中で支払われるべき対象と事項が決定されている。これは中間指針と呼んでいるが、できるだけこの中間指針に基づいた賠償請求ができるような技術的な支援をしていきたい。つまりきちんとした積算をもって、考え方をもって請求すれば、当然通るべきだということで、我々も協議会に参画している。
【農林水産部長】
規制値超えの牛肉の処分費用だが、現在県が費用を負担し、規制値を超えた牛肉の冷凍保管の費用を県が負担している。
【高田委員】
加害者責任がはっきりしているので、東電が責任を持つのは当然だと思う。
私も8月3日に東電本社に直接行き、被害の補償を1日も早くしてほしいと要請してきた。8日にも、東電の職員を一関に呼び、農家の皆さんを集めて賠償請求を求めた。この2回の要請行動を通じて感じているのは、非常に請求書が膨大だと。補償内容も、被害者に損害の立証責任を要求して、補償内容も非常に限定的になっている。仮払いについても大変遅い。国の指導も大事だが、やはり現場では東電に早く補償してもらわないと暮らしていけないと。早く価格が元に戻るような状況にしてほしいというのが畜産農家の切なる思いである。ですから、知事を先頭にして、東電にも直接乗り込んでいくという形、あるいは岩手の牛肉は安全だというPRの問題、行政も先頭に立ってそういうPR活動をしていく。あるいは、東電の加害者責任をあくまでも追及して、知事を先頭にしてそういう対応をしていくということが、今の東電の対応を見て非常に痛感しているところである。その点についてお答えいただきたい。
【農林水産部長】
行政としての取り組み・支援だが、風評被害払拭という取り組みが販売価格なりを元に戻していく、流通量を上げていくといったことにつながっていくと思うので、もちろんこれからも一生懸命取り組んでいく。
【高田委員】
風評被害というものはすぐ解決しないと思う。この風評被害についても、原子力損害賠償委員会の指針などを見ると、岩手も風評被害の対象県になっていると書かれている。しかし、いつ風評被害が解決するかという時期も分からない。そういう状況の中で、やはり岩手県が大変な状況の中にある方々に対して、肉用牛肥育経営緊急支援事業のような形で、一旦立て替え払いをして、そして県も頑張るから引き続き畜産農家の皆さんも頑張ってほしいというメッセージを送るということが、行政が果たすべき役割だと思うがいかがか。
【農林水産部長】
委員お話の通り、県として、こういう状況の中で、産業をどう支援していくかという態度を明らかにしていくことが、取り組んでいる皆さんを応援していくことにつながると考えているので、8月の臨時補正でも風評被害対策のための経費を承認いただいたので、それらも十分活用して、産業に取り組んでいる皆さんの応援をしていきたいと思う。
【高田委員】
いま農家の皆さんがやる気をなくしているのは、行政の強いメッセージがないということと、東電の対応が非常に不誠実だということに尽きると思う。ぜひそういう点で農家の皆さんが意欲を持って頑張れるような対応を進めてほしい。
・牧草の保管、堆肥の処分について
【高田委員】
利用自粛牧草等円滑化事業が1億9400万円専決処分されている。これは地元市町村との調整が行われているという状況だが、この問題では、本当にあとここ1ヶ月間で何とか対応していただかないと保管場所がなくなってしまう問題がある。これはどのぐらいで問題が解決するのか。やはりきちんとした時期的なことを示して対応していかないといけない。
一時保管場所にかかる経費については、今回の10分の10補助の中に、一時保管場所に関わる経費が入っているのか市町村うかがうと、まだここが明確にされていないので、はっきりしてほしいという要望も該当市町村から寄せられている。一時保管場所にかかる経費については、10分の10補助の中に入っているのか。
それから、堆肥の基準値を超えた処理について、特に繁殖農家などは困っている。これについても、処理に対する対応の指針もなかなか示されていない状況である。この点についても早急に考え方を示していく必要があると思うがいかがか。
【畜産課総括課長】
牧草の処分の時期の目途だが、鋭意努力してはいるが、やはり場所の確保の問題があり、いつまでにということはお示しできないが、なるべく早急に進めたい。経費については、生産者の方から、処分する場所までの運搬にかかる経費、焼却なり埋却なりにかかる経費について補正をするということにしているが、一時保管場所については、まだ検討中である。
【高田委員】
これは農家に負担させるようなことがあっては絶対にならないと思う。その点について明快な答弁をいただきたい。
【畜産課総括課長】
生産者の方の負担にならないように対応したい。